ピースボートでゆく世界一周スケッチ旅

「毎年海外に水彩画を描く旅に出ることにしている…」このブログのどこかで記した一文である。だがご存じのとおり、コロナ禍でその信条は3年ほど実行できなかった。コロナが5類に移行した今、その無念を晴らすべく、世界一周のスケッチ旅に出かけることにした。

 そこで、この際絵の好きな人はもちろん、世界中の建物や町、人々の生きる様を感じるのが好きな人のために、世界一周ノウハウ集を記録しておこうと考えた。

 この記事はなるべく現在進行形で書こうと思っている。細かな失敗や成功、気持ちの良い旅をするためのちょっとしたコツを忘れないうちに記録し、伝えようと思うからである。

 もしあなたが読んでいる記事が旅の途中のものであったなら、その続きがまだあるということだ。時間をおいてまた見に来て欲しい。新たな情報を皆さんに提供できるだろう。

◾️世界一周、何でゆく?

 実は私の「世界一周スケッチ旅」は昨日今日思いついたわけではない。「水彩画家」と名刺に書いた以上、それなりに実作を増やさねばならない。そのためには、一気に世界一周の旅に出て、毎日水彩画を描けば手っ取り早いと思ったのは随分前だ。

 では何で行くべきか?

 色々考えた。有名な豪華クルーズ船「飛鳥Ⅱ」なら最高だ。だがその費用は桁外れで、私はもちろん、世の多くの人が利用できる値段ではない。仮にその旅のノウハウを書いたところで読む人はほとんどいないだろう。

 では最も安い方法は…もちろんヒッチハイクだ。だが今度は桁外れの時間と体力、度胸が必要だ。もう若くない私には決定的に無理であろう。

 もちろん他にも様々な手段がある。だが私が最後まで悩んだ方法は二つ。世界一周航空機フリーチケットを使うか、ピースボートに乗るかである。両者は期間も費用もトータルではそれほど変わらないと私なりに計算した。

 私の妻は圧倒的に航空機派である。何故なら、飛行場のあるところであれば、世界中どこでも自分で自由に計画して、ビジネスクラスでの飛行機旅が楽しめるからだ。

 ただし、航空機のグループとチケット使用期間が限定されること、地球一周は一方向のみで後戻りはできないことは覚えておこう。

 ただこの旅の最大の欠点は、地球を一周する間ずっと荷物を持って移動しなければならないことだ。

 水彩画を描くことが目的の私にとって、春、夏、秋、冬全ての風景を描きたい。すると衣類だけでも相当の量になり、スケッチブックや絵の具、筆、水入れ、カメラなど普段のスケッチ道具一式も旅先に携行しなければならない。

 その点、船旅(ピースボート)ならば、荷物は宅急便で船室に送っておき、港に着いたら、季節にふさわしい服装で、スケッチ道具だけを持って出れば良い。

 結局この「荷物移動の容易さ」が今回船旅でゆくことにした最大の要因である。

 さてあなたは何を選ぶだろうか?十分に検討してほしい。考える時間とその後の楽しみは比例するはずだ。

 あなたの旅はすでに始まっている。

◾️ピースボートとは

 年に何回か比較的安価で世界一周の旅を企画している。コース、期間、値段など詳しくはホームページ(https://www.pbcruise.jp/)で調べて欲しい。若い人は3~4人部屋、2段ベッド、窓無しという条件で破格の値段で乗り込んでいるようだ。

 私が選んだのは、105日間の旅で以下のコースで地球を一周するものである。日本 ~ハワイ ~中米 ~パナマ運河 ~ジャマイカ ~アメリカ ~カナダ ~アイスランドからのイギリス ~フランス ~ポルトガル ~スペイン ~イタリア ~ギリシャ ~トルコ ~エジプト ~スエズ運河 ~スリランカ ~マレーシア ~シンガポール ~香港 ~日本。

 世界中の風景を水彩で描くという目標にとりあえずは不足はないと言っておこう。

 旅費は先のピスボートのホームページに載っているが、実はお得に行ける方法がある。いやあったというべきか。

まず安く行く大原則は「早割」を使うことだ。私が申し込んだ時は確か3割引き程度だったと思う。だが問題はその後である。

 この時選んだ船室は「絵を描くのが目的」と割り切って、バルコニー無し、かつ窓はあるが「救命ボート前で視界が遮られます」とのコメント付きのローコスト部屋だった。

 そして、コロナにより旅は中止、払い戻しが殺到したのはご存知の通りである。

 「払い戻しは分割で…」とのピースボートのコメントが新聞に載ったのはその直後のことだった。私もピースボートが倒産したら大変だから、すぐキャンセルすべきだと親しい友人から忠告を受けた。

 一瞬悩んだものの、コロナが収まればすぐに出かけるという決意は揺るぐことなく、結局延期の手続きだけをした。今思えばこの決断は大正解だった。

2年目も延期。そして3年目も延期。そして実はこの間に二度ピースボートのクルーズ船が変更になった。その度に、客室数は増加して、バルコニー付き船室が増加したのだという。

 その間、キャンセルせず、権利だけを保有した者へのプレゼントなのだろうか?私の部屋はいつのまにか、(景観最低)窓付き客室が普通の窓付き船室に、そして最後は最上階のバルコニー付き船室へとアップグレードされていた。

 最新のピースボートクルーズの値段を見ると、私が最初に払った金額の倍近い金額が提示されているようだ。

 多分に「コロナ」という偶然に左右された結果ではあるが、大切なことは「世界一周」を実行する強い意志を持つことだと思う。

◾️旅の準備

 先に触れたように、荷物は事前に宅急便で船室に送っておける。だが実は船室はそれほど広くない、というより相当に狭い。

 私が乗ったのは妻と二人のバルコニー付き船室だがベッドと隣室の仕切壁との隙間は65cmしかない。つまり床に物を置くスペースはほとんど無いということになる。それではと、ワードローブの幅を調べるとやはり90cmほどしかない。大量に段ボールを送っても収納するスペースが限られるというわけだ。

 その点で、百円均一店で売っている圧縮収納袋は実にありがたい。特に掃除機で内の空気を吸い出すタイプはオーロラ鑑賞用の真冬のダウンもペラペラに薄くなる。

 船室で段ボールから取り出し、そのままワードローブの最下部に折り畳んだまま収納している。全く邪魔にならない。

 ただし、この圧縮袋は一旦取り出すと、旅先に掃除機がない限り役に立たなくなる。要注意だ。えっ帰りの収納はどうする気かって?大丈夫。私達が帰ってくる時期は真冬なので、ダウンは着て帰れば良い。夏物は手で圧縮するタイプの袋に入れて収納するつもりでいる。

 なお、カップルでゆく予定の方は是非相手の意見を拝聴することをお勧めする。私の妻はなんと、やはり百円均一店で売っている「突っ張り棒」を持ち込んでいる。それを洗面台、鏡の前に装着し、化粧小物を吊したり、洗濯物を干したりしている。

 その他、気がつけば吸盤フックやらS字フックやらがあちこちの壁面で活躍し気が付けばとても暮らし良い空間になっている。

◾️絵の道具について

 この記事に限っては水彩画そのものは主要なテーマではない。だが長期のスケッチ旅となれば、それなりに必要なものも、日帰りの旅とは異なってくる。注意点を列記しておこう。

 ペン、鉛筆、絵筆、絵の具、スケッチブックなど日帰りの旅ならば予備はいらない。だが3ヶ月半の旅となれば話は別だ。特に私はこのブログでも何度もお伝えしたように、不注意による失敗が多い。物をなくす、置き忘れるなど日常茶飯事。

 だから今回は基本的に愛用の道具は全て同じ物を2つ以上揃えて持ってきている。

 特に使用頻度の高い絵の具、サップグリーン、ウィンザーブルー、コバルトターコイズ、クリムソンレーク、ローシェンナなどは、使用中のチューブに加え新品を2本ずつ追加したほどである。

 時間の限られた海外旅では、自分の愛用の画材は(絶対に)入手できないのだ。

◾️携帯電話と通信の重要性について

 いよいよ出航の日が来た。私の自宅は神戸、出航は神戸港だ。近くに公共交通機関の駅もある至便の地だが、(大量の)手荷物を現地まで運べるタクシーを利用することにした。

 この時利用したのがタクシーアプリ「GO」。かつてのように、予約の前日に電話して時間と行き先の説明不要、乗ってからの小銭の心配なども一切不要だ。

 運転手さんに聞くと、神戸でもはや客の9割がこのアプリによるのだという。コロナ禍の3年の間に著しく進歩したツールとしてはTV会議システムと双璧ではなかろうか?

 さて、乗船前のパスポートやクレジットカードの登録を済ませたら、ついに乗船だ。最もその直後は先に送った段ボールを開け、部屋に住めるように整理するのに、忙しくて旅行気分を味わうどころではない。

 身の回りを片付け終わった頃アナウンスが入る。船長主催の出航式だという。セレモニーの写真を撮ろうと、ポケットのスマホを探したが見つからない。

 そういえば、部屋についてから、携帯は一度も操作した覚えがない。妻に私の携帯に電話してもらったが、着信音はどこからも聞こえない。

 ひょっとして、さっきのタクシーに置き忘れたか。

 まもなく出航で、タクシーを探し出して、取りに戻る暇もない。

 考えて見れば、今後のスケジュール、途中で乗る航空機のチケット、ホテルの予約先、全ての支払いの操作も、そのための資金移動も全てデジタル、つまり携帯電話の中なのだ。

 その絶望感に呆然としながら、この旅行に備えて買ったアップルウォッチのiPhoneの位置確認ボタンを無意識に押してみる。

 するとどこからか反応音がなる。

「どこ?」妻が素早く反応。ベッド横のナイトテーブルの引き出しだ。湧き上がる期待感と共に中を覗き込む。

「あった…!」

 そうだ、部屋を片付ける前に、まずスマホだけ邪魔にならぬところに置いたのだった。

 妻からは散々叱られ、ひたすら恐縮するしか無かった私だが、改めて思い知らされた。旅先で命の次に大切なものは「スマホ」である。皆さんもご注意を!

◾️船内の食事

 ピースボートのシステムでは最初に支払う旅費に船内での食事代は含まれている。今回の船にはフルコースのダイニングが2店、自分で好きな物を取るビュッフェ形式のレストランが一店ある。

 ダイニングは朝と昼はどちらに行っても良いが、夜は人により時間指定がある。私と妻は6階のレストラン19:30から30分以内と定められている。

 ダイニングにはドレスコードがあり、Tシャツと短パン、サンダルの人は入れない。

 ダイニングというからには当然だと思う。自由な服装でという方はビュッフェに行けばいいのだから。

 だが問題は、運用方式だ。

 この両者のレストランは、驚いたことに、客ごとにテーブルを希望することはできないのだ。来た順番に大テーブルに詰められ、見も知らぬ客と隣り合わせになる。しかもそのテーブルがいっぱいになるまで、ウェイターは水も持ってこない。

 まるで学生時代に通った定食屋のようである。すでに安い料金で引き受けた客にまともなサービスは不要ということだろう。

 だから私の個人的評価は最低である。「ピースボートだから」と諦めるしかなさそうである。

 それに比べてビュッフェは相当自由度がある。朝は5時から、夜は12時までオープンしている。好きな時に、何度でも食べて良い。だからワインボトルだけ買えば、料理は無料でいつでも宴会ができる。若い人たちにとっては天国のような空間ではなかろうか。

 なお、ビュッフェの料理は決められた箱に詰めて船室に持ち帰ることができる。忙しい方(?)はいつでも空いた時間で室で食事ができるというわけだ。

◾️船上でインターネットを繋ぐ

船上ではスマホは電波が届かないので繋がらない。当然インターネットにも繋がらない。

だから普段ラインやFB、電子メールなどでやり取りしている友人達とは船内は通信ができないので、しばらく音信不通ですと伝えておいた。

だがやはり不便なこと極まりない。

まず電子版の新聞が読めない。各種公共料金、税金、社会保険など旅行中でも支払いは済ませなければならない。

大事な仕事関連のメールも入ってくる。たまらず、ピースボート船内の衛星有料Wi-Fiに繋いだ。

「なんだ、ちゃんとサービスがあるじゃないか」と思ってはいけない。

料金はなんと100分で2,200円。しかも速度は遅いので、口座の本人認証などを待っているうちに、あっという間に時間切れになってしまう。なるべく寄港地でネット用事を済ませるように事前に計画しておくべきだろう。

◾️海外でインターネットを繋ぐ

先に述べたように、もはやネット環境無くして海外旅行はできないと言っていい。国内で使っているdocomo、ソフトバンク、auなどの通信は当然海外では使えない。

ならばどうするか。

ヨーロッパ、アメリカの公共的施設内は、ほぼ無料のWi-Fiが使える。だが移動中で、Googleマップを使いたい時などは、やはり自分のネット環境がほしい。

かつては空港で現地用Wi-Fiルーターを1日あたりいくらでレンタルしていた。「イモトのWi-Fi」がその代表だ。

実はピースボートにも寄港地用のポケットWi-Fiルーターを貸出ししているが、こちらも船内無料Wi-Fi同様とんでもなく高額。でとても使用する気になれない。

だがありがたいことに、最近はほとんどのスマホが、SIMフリーになったので、海外用のSIMに差し替えれば、はるかに安く、ルーターのような持ち運びデバイスも不要で安定した通信環境が得られる。

SIMは一般的にはユーロッパ、アジアなど地域ごとに違うカードを挿す。またデータ容量と速度、使用期間など様々な条件で値段が違う。

どれにすべきかを、色々と検討した結果、「世界一周タイプ」15日間、4G、5Gが使える格安のSIMカードをAmazonで12枚購入した。

105日夫婦2人分節約してもこの枚数が必要だった。

◾️最初の寄港地ハワイへ

待ちに待った陸地。だが寄港してからすぐ上陸できるかというとそんなわけではない。特にアメリカは乗客一人一人のパスポートチェックと指紋登録を行うため、乗客1,800人が入国検査を終えるには3~4時間かかる。

行く予定の施設の閉館時間を確認するなど、上陸後のスケジュールは余裕を持って計画しよう。

ハワイの移動手段は、ピースボートのオプショナルツアー、自分で動く場合はタクシーまたはバスである。最近高架鉄道ができたがまだワイキキ界隈は走っていない。

実はハワイには以前に行ったこともあるので、今回は行き先は妻まかせ。どこにでもついていくからと軽く考えていた。

概略は税関を出た後、時間の関係でまず一番遠いマーケットに出かけて、帰りは船までバスを乗り継ぐつもりだった。

ところがタクシーを呼ぼうとUberアプリを作動させたが、最後の承認に必要なSMSコードが何度チャレンジしてもスマホに届かない。

諦めて、この日はとりあえずバスに乗ったが、Uberが使えなかったことがどうしても気になる。

船に帰ってから調べた結果、理由は格安SIMだった。Amazonで説明を見た時、データ通信、電話共に可能と書いてあったので安心していたが、付属の説明書をあらためて読んで見ると、「SMS非対応」と書いてあった。

皆さんも「格安SIM」にはご注意を。

ハワイのバスはトロリーと呼ばれる観光客向けのオープンバスとホノルル各地をくまなく網羅した「The BUS」がある。

前者は路線と時間が限られるため、現実的には後者を利用することになる。実はこのバスが曲者だ。まず便利であるとの裏返しなのだが、路線が複雑。しかも膨大な数の停留所には時刻表も路線図も一切ない。止まるバス番号が表示しているだけだ。

不便なのはそれだけではない。料金はどこまで乗っても大人3ドルなので高くはない。だが問題はお釣りが出ないこと。デジタル化の進んだアメリカだからと考え、ほとんど小銭を持っていなかった。だから初めこそ二人で6ドルが払えたが、乗り換え時には10ドル札2枚があるだけだった。

よく見ると周りの人はICカードをタッチして乗っている。

早速そのICカードをコンビニのABCストアで購入。他の商品はクレジットカードで買えるが、これは現金だけだという。料金は二人分で約16ドル。1日乗り放題である。

その日はこのカードを使い、無事帰船した。

翌日、再びバスに乗ろうとして、読み取り機にタッチしたが、エラー。

どうやら「1日」は24時間という意味ではなく、その日の24時までということらしい。

立派なICカードなのでもう1日分をチャージできるはずと、コンビニに入ったが、なんとチャージできる店は限られたコンビニだけだという。

特定企業の寡占を嫌うアメリカらしいシステムなのかもしれないが、観光客にとってはとても迷惑である。

◾️ピースボートのオプショナルツアー

先にハワイでの移動手段に「オプショナルツアー」があると書いた。今回のハワイでは一番安い「港 ~ワイキキの往復送迎バス」が一人14,000円である。

バスなら一人6ドル(840円)なので、約17倍の料金を払うことになる。いかに英語やデジタルツールが苦手な高齢者へのサービスだとは言え、とんでもなく高額だと言える。

◾️船内のイベント

長い船旅。いかに海が好きでも105日間、朝から晩まで海を眺めているわけにはいかない。人間は刺激が必要なのだ。

その点、ピースボートは色々と工夫している。

ハワイへ着く直前は屋外デッキでの巨大スクリーンでの映画会。今回はトップガンマーベリックだった。比較的新しい作品で、ちょうど私が見逃した作品だったこともあり、大満足!。しかも映画館と違い食べ物も飲み物も持ち込み放題。私達は気がつけば赤ワインのボトルを空にしていた。

その他、月見、夏祭りなど企画がされていた。

日常的な企画も多い。私が一番期待していたのが「水彩画教室」。過去の事例を調べると毎回、私が知っている有名な水彩画の達人が講師として乗船しているようだった。

今回は「葦ペン画教室」。材料は葦だが、いわゆる「ペン画」。参加しようかとも考えたが、勝手な水彩画を描くのも迷惑になると思い結局辞退した。

人気の教室は初心者向けダンス教室。私も妻の勧めで生まれて初めてのダンスに挑戦している。

◾️自主企画とピースボートの趣旨

先に述べたイベントは言わば講師によるカルチャセンター。もう一つ乗船者が主催する、同好会、サークルがある。まだ始まったばかりであるが、「ハワイで美味しいもの食べよう!」とか「一緒にワイン飲みましょう!」などという企画があり、私も妻も参加し、それなりに楽しい時間を過ごすことができた。

この自主企画は、「旅による交流が平和をつくる」というピースボートの運営方針から発生するもので、なるほどと頷ける企画も多い。何をいつどこでという情報は毎日発行される船内新聞で確認できる。

一方で、何かというとすぐ「隣の人と自己紹介してください」と司会者が仕切ったり、レストランで見知らぬ人と一緒に座らせたりすることに抵抗を感じる人もいるかもしれない。

◾️コロナ発生!

ハワイに到着する前に船内でコロナが発生したらしい。感染者は部屋に隔離され、手洗い、消毒、マスク着用を強く推奨するアナウンスがしきりに流れている。そういえば部屋を消毒する衣を着たスタッフの姿を見かけた。

乗客の中には、見知らぬ人同士が密集するレストランを避け、ルームサービスを利用する人が増えている。

船内の水を信用せず、部屋でペットボトルの水だけを飲んでいる人もいるようだ。

ハワイを出航し丸一日が過ぎたころ、船長より船内アナウンスがあり、医療的な緊急事態があり、コースを変更するとのこと。

一体何があったのかさっぱりわからない。コロナ対策の医療品搬入ためか?あるいは重症者が出たのか?

行き先はハワイ島だった。つまり航路は戻ったことになる。

そしてまさに今、私達が船室のバルコニーから見ているその下で、担架で患者が救急車で運ばれていった。

◾️メキシコで見るべき風景は?

さて次の寄港地はメキシコである。ピースボートのオプショナルツアーは先に述べたように、とんでもなく高価なので紹介しない。

勝手に下船し、飛行機に乗って絵にしたい街にゆき、次の寄港地はで合流する。もちろんその手配は全て自分でしなければならない。

だが、インターネットとスマホがあれば、今の世の中、旅行会社などというものは基本的に不要なのだと思っている。あなたもぜひ自分旅行にチャレンジしてほしい。

さて、船の次なる寄港地はメキシコの港町マンサニージョである。インターネットで調べたところさしたる見所はなさそう。地球の歩き方にも港町として表示があるだけで、観光的な記述はない。

そこで、マンサニージョで下船し、メキシコシティに向かうことにした。下船時刻午前中の予定だが、港から近くの空港まで車で1時間以上かかること、入国手続きの時間ロスなど不確定要素を考慮して、19時頃発、メキシコシティには20時過ぎに到着する航空機を予約した。

私の考えた、スケジュールは以下の通りだ。

初日は夜ホテル着なので、行動は翌早朝から。まずUberを使い、世界遺産であるテオティワカンに向かう。車で片道1時間かかるらしい。→1番出入口→ケツアル→太陽→月(登る)→ジャガー宮殿、ケツアルパパロトル宮殿→3番出入口から再びUberで市内に戻る。なんとかここまでを午前中に周りたいと考えている。

午後からは、有名なメキシコシティ歴史地区へ。具体的なコースはソカロ周辺→ マデラ通り→べジャスアルテス宮殿だ。

本当は現地で腰を下ろして、じっくりスケッチブックを広げたいところだが、過密スケジュールなので、最悪水彩画にできる構図を探し出し、カメラに納めて帰るつもりである。

私は建築家でもあるので有名なルイス・バラガンの作品も視察したい。調べると彼の作品ばかりを巡る旅行会社のツアーもあるようだが、時間的に合わない。だがバラガン邸、ヒラルディ邸だけは、予約すれば個人的に見られるとのこと。日本にいる間に予約をしようと思ったが、予約開始はちょうどハワイを出航するころ。次回ネットに繋いだときに予約しようと思っている。

住宅2件を見学し終わるとちょうど午後5時になる。地下鉄で再び市内に戻って食事、宿泊というコースである。

後はメキシコマンサニージョ到着を待つばかりだ。

◾️航路予定変更!?

突然船長からの緊急アナウンスが流れる。マンサニージョの寄港が2日遅れるという。

105日の長い航海、2日のずれなど大した問題ではない…とゆったり構えていられる立場ではない。何しろ、下船してからの飛行機やホテルの予約はすでに完了している。

2日のずれを修正しなければならない。それでも当初は比較的楽観していた。インターネットさえ使えればなんとかなると考えていたからだ。

ところが、変更処理をするため、インターネット利用券を購入しようとすると、船内売店に「一時的に売り切れ」の表示。どうやら衛星通信の契約データ量をピースボートのオプショナルツアー調整に使うため、一般客のインターネットを制限したようだ。

変更オプショナルツアーが発表された途端、制限は解除され、再びネット使用券が売り出された。だが代理店の対応システムが不備だったこともあり、結果的に時遅しだった。

予約した航空券は全て紙屑となってしまった。幸い予約したホテルは全て無料キャンセルできたことがせめてもの救いだった。詳細は省くが、今回の出来事で学んだ船旅での教訓は以下の通り。皆さんも参考にして欲しい。

①予約は全てオンライン上で変更できるシステムであることを確認する。
例えばブッキングコムの宿泊予約は問題なし。定められた日までの、日時変更、キャンセルは全て自動、オンラインで決済可能だ。
ところが同じブッキングコムでも、航空券予約はやめた方がいい。宿泊と違って、オンライン上に「変更」の項目が存在しない。どうやら変更はヘルプデスクに平常営業時間内に電話で申し入れて欲しいとのことだ。

船内では電話は通じない。電話先の営業時間と船内時差の考慮、英語での変更対応など敷居がとても高い。

しかもネット自体制限されていたので交渉に許された時間自体もほとんどなかった。並行して変更依頼メールを送ったが、「48時間以内」にメールで返答するとの自動メールが機械的に返信されるだけ。時間切れを待つしかないというわけだ。

なお、航空会社のホームページにアクセスして、予約番号を伝え、直接変更しようとしたが、代理店(ブッキングコム)の予約は受け付けられないと拒否されてしまった。

つまり、航空機はブッキングコムなどの代理店ではなく、航空会社のホームページから直接予約すべきだ。
それならばいつでも、どこからでも、ほんの数分インターネットにつながれば、誰ども即時に変更できる。皆さんも気をつけて。

②予約チケットのタイプを慎重に選ぶ
ホテル、航空券の区別に関わらず、一般に「予約日時限定、変更不可」が一番安い。確実に利用できるならこれを選ぶべきだろう。

私が今回選んだ航空券は、万一を考えての「フレキシブルチケット」だった。
これは出発の24時間以内なら日時変更は可能だがキャンセルはできない。先の変更不可チケットに比べると、2割ほど高かったが、船旅であることを考えればやむをえないと判断した。

最後は日程変更もキャンセル可能なチケット。今回はこれを選んでおけば、問題なかったのだろうが、値段は「フレキシブルチケット」のさらに2倍ほどしたと思う。キャンセル確率とのコストパフォーマンスをどう考えるか、悩ましい問題ではある。

さて先に述べたピースボート主催のオーバーランドツアーはどうなったか?こちらは、事前に莫大な予約金を受け取っているだけに、その調整に苦労したことは想像に難くない。

船内では知り合った知人に聞くと、日程が短縮され、内容が大幅に変わってしまったにも関わらず、返金は数%だけだという。彼は「ピースボートには二度と乗らない」と息巻いていた。

◾️メキシコ、マンサニージョに到着

乗船してからトラブル続きの旅も、やっとアメリカ大陸に到達した。メキシコシティーからグアテマラシティーへの旅は夢と消えたので、とりあえずこの港町を歩くことにした。

観光的には何もないとの情報だったが、船上からは、ご覧のように丘の上までカラフルな外壁の建物が続く、面白い風景が見られる。

気温は34度。湿度も高く、快適とは言い難い。スケッチブックを持って街に出かけたが、日陰を選び、帽子をかぶっていてもすぐに汗まみれだ。スケッチすることは諦め、あとで水彩画として仕上げられる構図をカメラに収めることにした。

絵になる町の風景はそれなりにある。屋根はスパニッシュ瓦、レンガにモルタル、ペンキ塗りの外壁。路地は基本的に地元産の切石を敷き詰めている。

ドアや窓は粗末ではあるが、古い建物にはアイアンワークの模様が施されている。中にはスペイン風イスラミックアーチを用いたものもある。日本の既成品を集めた建売住宅ばかりが並ぶ町に比べればよほど魅力的だ。

町は小さく、半日も歩けば大抵の雰囲気は掴めてしまう。船の乗客の中には暑さに負けて、昼食後、早々に船に退散した人もいたようだ。

食事、買い物情報を少し付け加えておく。お金はメキシコペソ。1ペソは10円弱。スーパーマーケットや露天商の値段を見る限り、物価は日本とあまり変わらない。

だが、店のトイレなどを覗くと、かなり綺麗なレストランを選んでも衛生状態は悪い。下水整備状況が悪そうだ。正直、この町でゆっくり食事をしようという気にはならず、シュリンプタコスとビールだけで引き上げた。

言葉はスペイン語。英語は99%通じない。そこで翻訳アプリを試してみた。ソフトの能力としてはそれなりに使える。が、この田舎町ではいまだに3Gしか使えない。ネットを介してのアプリは反応が遅く極めて使いにくかった。
幸い、妻がオフラインの翻訳アプリをインストールしていたので、大助かりだった。

商品の値札は💲表示。アメリカドルかと思ったらこれがペソだった。35💲のタコスは「4,000円!?」ではなく350円だった。

メキシコペソは銀行(バンコと発音する)のATMなどで入手できる。だが観光客の大半はアメリカドルで支払っている。お釣りはセントではなく、メキシコペソだ。

余ったペソはどうするか?雑貨を買うくらいしか思いつかなかった私だが、妻の提案を実行することにした。帰船直前に入ったバルの支払いに、まず小銭ペソを使い、残金をクレジットカードで支払うと交渉するのだ。

そこで、まず支払いカウンターの上に、ポケットにあるペソの有金を並べる。次にクレジットカードを手に持ち、「リメイン、OK?」と身振りもまぜながら確認するのだ。

幸い、レジ担当の女性は賢く、すぐに理解、無事支払いと、小銭の処理を終えることができた。皆さんも試してみると良いだろう。


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