水彩画は背景が大切?山奥の寺院 円教寺大講堂を描く

人気のある風景画とは?

 風景画を描くとき注意しないといけないことがある。以前に私が個展を開いたとき来場者にアンケートをお願いしたと書いた(「失敗しない個展の開き方→」を参照)。

 その結果わかったことが一つある。その時の出展作品は人物画よりも風景画の評判が良かった。しかしその風景画の中に実は人気の無いものがいくつかあるあるのだ。そしてそれらの共通点は、画面全体の構図、背景の色、テーマに何の工夫もなく、建物単体だけをスケッチしたものだ。

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ペン画で風景画を描くコツとは?

 ペン画で風景画を描きたいという人は案外多いようだ。私の場合は「ペン画」というより風景画の輪郭線としてペンを使うが、基本はそれほど変わらないと思う。今回はペンによる風景画の描き方を考えたい。

目次

  1. ペン画の分類

2.ペンの選択

3.ペンによる風景画のパターンと注意点

4.まとめ

■ペン画の分類

 ペン画と言っても種類は多い。ジャンルは人物画、風景画、静物画など。描き方もいろいろある。

 ペンだけで明暗をとる場合はハッチングで影を表現するが、私のように水彩やパソコンで着色しようとするとハッチングは邪魔になるので主として輪郭線として使うことになる。

 今回は後者、つまり風景画の輪郭線としてのペン画の描き方について述べたい。

■ペンの選択

 いわゆる本格的な「ペン画」を描く人は本当の各種ペンとインク壺が必要だ。だがここではあくまで屋外の風景をスケッチする場合のペンについて書く。考えられる条件は以下の通りだ。

  • 持ち運びやすく、準備に手間がかからないこと。
  • 手早く描くのでペン先が紙に引っかからないこと。
  • すぐ後から水彩を塗ることを考え、インクの乾燥が早く顔料が水に溶けないこと。

 これらの条件を考えると、ペンとインク壺よりも油性のサインペンが圧倒的に有利だ。あるいは万年筆タイプのイラストペンが便利だろう。

 さらに詳細なペンの選定については別の記事「「水彩画で使うペン!あなたならどれを選ぶ?→」を書いているので参照してほしい。

■ペンによる風景画のパターンと注意点

私のペン画は下書きをしない。旅先での時間を節約するのが元々の理由だが、「失敗しない」ペン画を描くにはやはりそれなりの修練がいる。私なりに考えたコツを教えよう。参考にしてほしい。

「簡単な」風景を選ぶ

 本来は風景画は「構図」がその命である。だから「簡単」をキーワードにするのは少し気が引けるのだが、初心者にとっては大切なことだと思う。

 ①図はその典型的なパターンだ。風景画の難しいところは透視図法を基準とする遠近感だ。特に建物の軒の線が複雑に交差する構図はとても難しい。

 だがこの絵のように遠景の山、中景のヨット、近景の海とヨットそれぞれの線がほとんど交差しない場合は、遠近法はモチーフの大きさと前後関係だけで決まる。だから初心者の練習にはもってこいなのだ。

 具体的なプロセスは以下の通り。まずポイントとなる線を引く。この絵の場合は背景の山(ハワイのダイヤモンドヘッドだ)の特徴的な稜線だ。

 この線を失敗するとどこの風景を描いたのか伝わらない。だが逆にいえばその線さえ引ければ後は手前に中景のヨットと近景のヨットを意図的に重ならないように、構図を考えながら大小をスケッチすれば良い。

 「順番にパーツを描き並べる」…こんな構図にまずはチャレンジしてみよう。初心者でも手早く絵になるペン画が描けるだろう。

正面から見た風景を描く

 これも「構図」という意味では「正面」をキーワードにするのは本来気が引ける。だがやはり初心者にとっては「正面の図」は悪くないモチーフだ。

 ②図は金沢の川沿いの街並みだが、屋根と格子の建具の連続が面白くてスケッチしたものだ。

 ご覧のように透視図法を使わないので消失点が無い。だから家の戸数と幅だけ決めればどこから描いて行ってもいい。パーツの連続だけでペン画が出来上がるというわけだ。

正しい線を探しながら描く

 私はあまりペンで建物の影を表現しない。その後の着色がしにくくなるからだが、あえて建物の線と影を一体に描く場合がある。

 ③図はオーストラリアでの町並みのスケッチだが小さな建物の屋根や窓、入口周りに細かな装飾が施されている。それらをいちいち正確にプロポーションを追って描いていたのでは、とても効率が悪い。

 だからこの時は思い切って大体この辺りという感覚で建物の線を何度も重ねている。すると正しい線のあたりが一番太くなる。

 人間の目はその中のさらに正しい線を勝手につないでくれるのだろうか、ご覧のようにラフに描いた割には街の雰囲気が表現できたと思っている。

透視図法を使って描く

一点透視(④図)、二点透視(⑤図)を使った風景画はやや敷居が高いが、構図を決め、目のレベルとなる水平線を引き、建物の軒の基準線を透視図法で引き、それを正しいプロポーションで割り込んでゆけばいい。詳細は「鉛筆はいらない!下書きしない風景画の描き方→」を参照にしてほしい。

まとめ

消すことのできないペン画を失敗することなく描くコツは、「失敗を恐れない」ことだ。間違えたと思ったらそれに構わず隣に正しい線を引く。この行為を繰り返していると、正しい線が引けるようになる、あるいは「正しく見える線」が引けるようになる。

まずは先にあげた「簡単」「正面」「探しながら描く」を試してみてほしい。きっと上達するはずだ。

P.S.
このブログには文中でリンクを張った以外にも関連記事を書いている。興味のある方は参考にしてほしい。

■カテゴリ「絵画上達法→
■「ペンと水彩で描く風景画の魅力とは→
■「建物のある風景の描き方→

水彩画の名画に見る女性像

浅井忠 「少女」

 人物画を水彩で描きたいと思い始めた人へ

 水彩画をはじめたばかりの人で、人物画を描きたいと思う人は多いはずだ。でも人物画はデッサン力が要求されるし、肌の色や、微妙な表情や背景との関係など、考えることが多く、手間がかかるからと距離を置く人が多いのも事実だ。

 私自身人物画、風景画両方とも好きだが、むつかしいと思うのはやはり人物画のほうだ。

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ペンと水彩で描く山寺の風景 出石の達磨寺

願成寺
山門前の達磨の木彫

山寺の風景を描く

 今日は兵庫県豊岡市出石町のスケッチだ。観光客には「出石そば」が有名だが、趣ある町並みは重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。

 かつての出石城の城下町で今は城跡だけがある。観光案内には「但馬の小京都」と記されている。

 私の地元神戸から片道2時間、何とか日帰りでスケッチ旅行できる距離だ。この日はゴールデンウィークで気候も良く、絶好のスケッチ日和だった。

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もっと知りたい水彩画の魅力!水彩紙とは?

 さて、水彩画を描き始めると、水彩紙の良し悪しで作品の出来栄えが変わることに気づくだろう。水彩紙の基本の性能とグレード、コスト比較については水彩画入門!始めに買うべき道具は?で紹介しているので、先に一読してほしい。
 ここでは、水彩紙をさらに極めたい方へ、あるいはプロの水彩画家を志す人のためにさらに詳しい情報をお届けする。かなり科学的、専門的、マニアックな話になるがご容赦願いたい。

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ここを描きたい日本の風景!

 水彩で風景を描き始めたあなた。身近な風景を描くのも楽しいが、旅先で描く風景も楽しいものだ。あなたは次の休みどこにスケッチに出かけるつもりだろうか?

 せっかく行くのだから気持ちのいい素敵な風景画描きたいと思うだろう。だが世の中のガイドブックは案外あてにならない。何故なら絵を描く人を対象に書かれていないからだ。そこで言わば「後悔しないスケッチ」のための「お薦めの旅先リスト」をまとめることにする。

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透明水彩のピンクはどうやって作る?

水彩画を描き始めた人へ

 自分のパレットを見てほしい。よく使う色、減りの早い絵具はどれで、使わない色はどれだろう。

 風景画を描く人は空の「青」や森の「緑」は必須だろう。木を描くには茶色も必要だ。緑には黄色も混色するだろう。だが多分赤色はあまり減っていないだろう。自然界にはあまり派手な赤はないからだ。

 私も風景画ではあまり赤を使わない。だが実は一年に一回だけ大量に赤を使う時がある。それは「桜」の風景を描く時である。

 桜の花は何色かと問われれば「淡いピンク!」と答えるだろう。だが実は水彩画では淡いピンク色の絵の具は売っていない。そして赤、青、黄の三原色を混ぜて作ることもできない。

 ではどうするか。油絵ならば赤に白を混色して作ればいいのだが、水彩画の場合は白を混ぜると透明感が無くなってしまう。(「水彩画の基本!知っておきたいグリザイユ画法と絵画の透明度→」を参照)

 だから赤を水で薄めてピンクを作ることになる。簡単といえば簡単なのだが実はこれが難しい。特に淡い桜のピンクは混色すると濁るのできれば単独色をそのまま水で薄めて桜色として使いたい。ならば一体どの赤絵具が桜のピンクにふさわしいのだろうか?

 今回はそんな水彩の「赤色」絵具で理想のピンクを作る方法を考えたい。

目次

◾️水彩の「赤色」絵具の種類

◾️赤色絵具の色相と彩度をチェックする

◾️赤色絵具の透明度をチェック

◾️まとめ

◾️水彩の「赤色」絵具の種類

 私のパレットにある赤絵具は冒頭の写真にある6色である。右上から反時計周りでカドミウムレッド、ローズドーレ、スカーレットレッド、ローズマダー、パーマネントローズ、アリザリンクリムソンである。 スカーレットレッドだけはシュミンケホラダム、あとはウィンザーニュートンだ。(「透明水彩入門! 絵具とパレットの使い方を知っている?」を参照)

◾️赤色絵具の色相と彩度をチェックする

 はるか昔、12色の固形絵具セットを使って桜の風景を描いたことがある。そのセットにあった、ただ一色の赤、クリムソンレークを水で薄めて桜の花を塗ったが、ちょっと赤すぎると感じた記憶がある。

 今回はそんな過去のあいまいな記憶は捨てて、厳密に比較しようと思う。まず6色を比較して最も「真紅」に近いと感じるのは下段中央の「パーマネントローズ」で彩度が高く鮮やかだ。その左ローズマダーはやや白っぽく、右のアリザリンクリムソンはやや黒っぽい。

 それに対して上段の三色はいずれも赤にやや黄色が入りオレンジ寄りの赤である。左からスカーレットレッド、ローズドーレ、カドミウムレッドの順でオレンジに近くなる。一番彩度が高いのはスカーレットレッド、次がカドミウムレッドでローズドーレはやや白っぽい。

上下2段の傾向を比較すると、やはり下段は赤すぎる。単独の色として使うなら桜というよりバラの花向きの色だろう。その昔桜色に使ったクリムソンはどんなに水に薄めてもやはり桜の「ピンク」とは違と思ったのは正しかったのだ。

淡いピンクの桜色にふさわしいのは、たっぷり水で薄めたスカーレットレッドあるいはローズドーレであろう。

◾️赤色絵具の透明度をチェックする

 だが水彩絵具は色味だけでは使えない。透明度を考慮しないと思うような絵は描けないことはすでに述べた通りだ。(「水彩画の基本!知っておきたいグリザイユ画法と絵具の透明度→」を参照)

 そこでまず上下を濃く、中央にかけて紙の白を残すように下地を塗った水彩紙を用意する。水を引いたその水彩紙に水をたっぷり含んだ筆で先の赤6色を垂らした状態が上図である。

 厳密に絵具の量を図って垂らしたわけではないので、各色まったく同条件とは言い難いが、それでもとても貴重な結果が得られたと思っている。以下に概略結果を示そう。

 まず見てほしいのは、水で薄めたピンクの部分だ。通常透明水彩は水で薄めれば下に塗った色が上の色と重なって見えてくる。だから原則的には水で薄まるにつれて赤→紫→青に見えるはずだ。

 一番透明感ある典型的な赤色はパーマネントローズだ。同心円状に赤→紫→青が見える。それに対して、上段のスカーレットレッドとカドミウムレッドは周辺部の薄い部分でも青は見えずほとんど白っぽくなってしまう。

 実はこの事実は予測されたことでもある。何故なら赤は黄色などに比べると一般に透明度が高い絵具が多い。今回の6色のうち4色はメーカーで表示する「透明色」だが、スカーレットレッドは半不透明色、カドミウムレッドは不透明色である。先に述べた「下地の青色」を消してしまう現象はこの2色が不透明であることによる。

◾️まとめ

 今回の実験結果には私自身とても満足している。結論を言おう。桜の淡いピンク色はローズドーレまたはスカーレットレッドを水で薄めて作れば良い。

 ローズドーレは透明色。だからその淡いピンク色を引き出すには下地の明るさが決め手だ。

 一方スカーレットレッドは水分の多少により鮮やかさに相当の差がある。濃く塗るとあまりにも鮮やかで桜色には見えない。だが相当量の水で薄めると実にいいピンクになる。しかし不透明なので下の色はほとんど消してしまう。透明水彩の良さをある意味消してしまう色だともいえよう。

 もっともそれは必ずしも悪いことではない。グリザイユ画法を使う時など下地に陰色として青や紫を使うことがよくある。ところが桜のような淡い色を上に重ねると「青」が強すぎると感じる時がある。

 そんな時は、ローズドーレではなくスカーレットレッドを使えばいい。水で薄めて淡いピンク色にしても下地の青を弱めてくれる。その後の色調整がしやすいのだ。

 ピンクは「赤色」を水で薄めるだけ…だがその表現技術は奥深いものがある。みなさんも来年の桜を描くときにこの記事を思い出してほしい。きっと役に立つはずだ。

p.s.
 このブログでは文中にリンクを貼った以外にも、以下のような関連記事を書いている。興味のある方は参照してほしい。

◾️カテゴリ「絵画上達法→
◾️水彩画を始めた人へ!プロが選ぶ絵具とは?

水彩画入門!大きな絵はどうやって描く?

普段小さなスケッチブックで描いている人へ。そろそろ大きな絵が描きたくなってきたのではなかろうか?

理由は色々だろう。「大きな絵は気持ちがいいから」あるいは「公募展に出そうとしたら、要項に20号以上と書いてあるから」などなど。

でも油絵なら20号のキャンバスは売っているが、水彩用のそんな大きなスケッチブックは売っていない。

今回はそんな初心者のために「大きな絵を描く」段取りと注意事項を教えよう。

目次

1.大きな水彩紙の入手方法
1.1水彩紙
1.2パネル

2.水張りの仕方
2.1パネルよりも小さい水彩紙の場合
2.2パネルよりも大きな水彩紙の場合

3.大きな絵を描くための道具と注意事項

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空の色は何故グラデーション?

 風景画を描くのが好きな人へ。あなたは晴天の空をどのように塗るだろうか?もちろん青い絵具を使うだろう。だが空の青は国によっても違うし、季節、時間、見る角度によっても違う。一色の絵具で描き切れるほど単純ではない。

 今回のテーマは空の色だ。と言っても描き方を考えるわけではない。空の色の不思議を科学的に考えたいと思う。(描き方を知りたい人は「水彩画入門!美しいグラデーションの作り方→」および「水彩画入門!空と雲の描き方は?→」を参照)

目次

1.色の基礎知識
2.空はなぜ青い
3.夕焼けはなぜ赤い
4.青空のグラデーションはなぜ出来る?
5.まとめ

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水彩画上達法!マスキングインクを使いこなす!

 水彩画を精力的に描き出したあなたへ。
 このブログでお勧めしたような水彩紙、筆、絵具などの「描く」道具についてはもう理解していただいていると思う(カテゴリ:絵画上達法を参照)

 だが透明水彩は紙の「白」を塗り残すのが基本。だから絵具から下地を「隠す」道具が必要だ。それが「マスキングインク」だ。その基本的な使い方については「水彩画の道具マスキングインクって何?→」ですでに触れた。この記事を読み進める前に目を通してほしい。

 また、私の作品紹介で以下に具体的な使用例を記しているので、参考にしてほしい。
 「水彩画入門色塗りの基礎技法を覚えよう!
 「ペンと水彩で描く風景画!ミラノ大聖堂を描く秘訣は?
 「水彩で描く風景 角館の武家屋敷
 「水彩で描く風景画 相倉と菅沼の山村
 「水彩で描く風景 世界遺産姫路城
 「水彩で描く風景画 アルハンブラ宮殿

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