ルノワールの絵画 人気の秘密は?

 絵が好きな人でおよそ印象派、ルノワールの絵画が嫌いな人はいないだろう。日本で必ず成功する展覧会は印象派、それもルノワールだというくらいだ。
 何故?。正直言ってそれを説明できるだけの勉強はしていない。ただ私が人をリアルに描く「人物画」というジャンルを知ったのはレオナルド・ダビンチの「モナリザ」のおかげであり(詳細はこちら→)、可愛らしい少女の肖像に憧れ、今でも好んで女性像を描くようになったのはルノワールの「イレーヌ・カーン・ダンヴェルス嬢の肖像」の存在があったからだ(詳細はこちら→)。
 だから大学に入り、アルバイトをして、最初に買った画集は「ルノワール」だった。もちろん今でも手元にある。

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裸婦の名画「グランドオダリスク」に会う!

 絵描きにとっては、「裸婦」を描いた「絵画」など当たり前の存在だろう。私自身、裸婦の絵は展覧会に行って良く目にするし、裸婦クロッキー会にも参加する。
 だが、子供の頃となれば話は別だ。中学生の頃、有名なルノワールの「イレーヌ・カーン・ダーンヴェール嬢の肖像」に憧れたと以前に書いたが(エピソードはこちら→)、少女像がせいぜい、成熟した女性像を、まして「裸婦」を目にすることなどほとんどなかった。随分と純情だったわけだ。

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これも基礎練習?動く子供をスケッチ!

 デッサン力をつける基礎的な練習がクロッキーであることは「人物画の基礎 クロッキーの道具と描き方(詳細はこちら→)」で述べた通り。
しかし、プロのモデルさんを雇うのも、クロッキー会に参加するのもそれなりにお金と段取り、手間がいる。だが実は他にもいい練習方法がある。それを教えよう。

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好きなのに見られない?ヨーロッパの有名絵画

 私は子供の頃から絵が好きだった。(子供の頃のエピソードはこちら→)特に美術の教科書に載っているようなヨーロッパの有名な絵画にずっと憧れていた。だが育った田舎にはなかなかそんな絵画がやってくることはなく、生まれて初めて見た本物のヨーロッパ絵画展は、大学生の時、愛知県美術館で開催された「ミレー、コロー、クールベ展」だった。私が一番好きな画家、コローの実物の絵が見られた感動を今でも覚えている。もちろんその時買った、カタログは今でも私の書斎に大事にとってある。

 その後自分で油絵を描き始めたこともあり、レンブラント、ゴッホ、マネ、セザンヌ、ルノワールなどヨーロッパの有名な絵を観るために、度々美術館に足を向けるようになった。特に最近ではフェルメールの「青いターバンの少女」が来た時などは、どのくらいその絵の前で立ち止まっていたかわからない。

 そんな私が、最近は自由な時間も増え、度々海外へ行くようになった。友人からはさぞかし、美術館巡りを楽しんでるんだろうねと言われることもある。だが残念ながらそうではない。ローマのバチカン美術館、フィレンツェのウフィツィ美術館、ミラノのブレラ美術館、ウィーンの美術史美術館、これらの有名美術館、いずれも玄関前は通ったものの、中に入ることはなかった。

 「せっかくのチャンスなのに何故?」と思うだろう。それは、入ったら最後、どの美術館も中味が濃い。おそらく最低2~3時間は出て来られない。それではせっかくのスケッチ旅の目的、絵を描く時間が無くなってしまうからだ。

 だから子供の頃からの願いであった、憧れのヨーロッパ絵画に存分に親しむ生活は残念ながら、未だにできていない。

 尤もそんな私が唯一訪れたヨーロッパの有名美術館がある。スペイン、マドリードのプラド美術館だ。もちろん世界三大美術館の一つと言われるほどなので、ガイドブックで場所だけは確認していたものの、「スケッチ優先」の計画をしていたので行くつもりはなかった。

 ところが町歩きの最中にスリに財布を取られてしまった(詳細はこちら→)。ヨーロッパ旅行では以前にも財布を無くして、痛い目にあっていたので、幸い財布の中身は最小限にしてあった。現金を補充して再び町歩きを始めたものの、創作意欲はすっかり消沈。気を取り直すべくプラド美術館に入ったというわけだ。

 さて、入館してみると、予想通り館内はとんでもなく広い。順に見ていくといくら時間があっても足りそうにない。そこで所蔵作品が充実していると言われるベラスケスを中心に見ることにした。

 ではこの日だけは存分にヨーロッパの絵画を堪能したかというと、残念ながらそうではなかった。もちろん一つにはスリにあった精神的な疲れもあったのだが、何よりあまりに延々と続く展示空間は緊張感を削ぐ。しかもベラスケスの絵は17世紀後半の作品、時代的にはバロックと言われるが、やはり茶褐色の色調が強くイメージがとても暗い。名作「ラス・メニーナス」も同様だった。

 それに比べると、ゴヤは18世紀初頭の画家で様式的にはロココに近いため、かなり色調も明るくなる。特に有名な着衣のマハ、裸のマハは素晴らしい。かなり長い時間この2枚の絵を眺めていた。そのあとは疲れもあって、手抜き鑑賞。なんとか一通り見終わったのは閉館時間の直前だった。手元のiPhoneのヘルスメーターを見ると、なんとこの日歩いた距離は30kmを超えていた。

 最近は私自身、足腰の衰えを自覚し始めたが、絵に接する時だけは、まだまだ若いようだ。私が絵も描かず、ヨーロッパの名画巡りをする、悠々自適の人生はまだまだ先になりそうだ。

忘れがちな人物デッサンのコツ

ある絵描きの失敗

 ある日の日曜日。その絵描き(Yと呼ぼう)は人物画のモデルを求め、いつものように近くのカルチャーセンターに出かけた。その日はいつにも増して気力は充実。彼は早々とアトリエの前列に陣取り、モデルの登場を待った。

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奇妙なデザイン!ヒンズーの風景をスケッチ

 トップページで、私の活動の一つは誰もが憧れる「異国の風景を描く」ことだと書いた。世界中の家庭に絵を飾ってもらおうと思えば、そこに自分の知らない世界を表現するのが一番の近道だと思うからだ。
 日本人の私には、ヨーロッパの風景はまさに憧れ、「異国の風景」だ。だがある意味、普段からTVや雑誌、旅行のパンフレットなどで、有名な風景は目にしており、なじみが深いと言える。
 ならば、あまりなじみのない、言い換えれば「奇妙な」風景があるのはどこだろう。私が今まで目にした(それほど多くはないが)経験で言えばそれは「ヒンズー教」の文化だ。そして実は私が生まれて始めて体験した「海外」の文化だった。

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二つのスケッチが語る山辺の道の風景とは?

 私がまだ社会人になりたての頃、奈良「山辺の道」をスケッチしたことがある。季節は5月、ゴールデンウィークだ。生憎の雨だったが新緑が鮮やかだったことを覚えている。
 何時間も畦道やら山道を歩くのだが、とある寺の裏庭に小さな小屋が立っている。覗くと中に地蔵が並んで立っていた。古ぼけた小屋に守られているせいか、地蔵さんの赤い涎掛けが鮮やかだった。
 長閑で微笑ましい地蔵さんの姿が私の記憶に刻まれた。

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月夜の絵画、ヨーロッパにある?

 日本人の暮らしには「月」はとても身近な存在だ。私が子供の頃には、中秋の名月には窓辺に団子、里芋、ぶどうを添えて、黄色く美しい満月を眺めた覚えがある。月にウサギがいるという故事もこの日に繰り返し聞くことになる。そしてあれほど仲が悪かった私の両親も、この日ばかりは、夫婦喧嘩をしなかった気がする。

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まるでコロー?日本の有名水彩画

上図の作品は誰が描いたかご存じだろうか?19世紀フランスのバルゾン派の絵画が好きな人なら「コロー!」と答えるのではなかろうか。
作者は有名な「浅井忠」。①は「グレーの古橋」②は「河畔洋館」という作品でいずれも浅井忠がパリに留学した時に描いたものだ。

実は学生時代は油絵一辺倒だった私が今、水彩画を一生懸命描いているのはこの浅井忠の描いた「コローのような」水彩画の存在が大きい。私が再び絵を描きだした経緯は「今から絵描きをめざすひとのために(詳細はこちら→)」で書いたとおりだが、それまで私の頭にあった画家の作品は、レンブラント、アングル、フェルメール、コロー、マネ達が描く、ややロマン的な写実絵画で基本は油絵の作品だ。
正直言うと、水彩は小中学校で適当に描いていただけ。全くの独学だ。だからやはりまずは水彩画の大家の絵を調べてみようと思ったというわけだ。たぶんインターネットで調べたのだと思うが、「浅井忠は油絵だけでなく水彩画にも才能を発揮した」という一文を発見。水彩画の画集が無いか調べると第一法規という会社から「日本水彩画名作全集」という本が出版されており、その第一巻が「浅井忠」だった。だがどうやら絶版で入手できないらしい。こんな時頼りになるのがやはり「amazom」。中古の画集が見つかり、さっそく購入。その中でとても気に入ったのが冒頭の2枚の絵である。

私はプロフィールのところでも書いたが、一番好きな画家は「コロー」だ。だからこの2枚の絵を見た時に、独特の落ち着いたグレーの色調と柔らかな筆のタッチがすっかり気に入ってしまった。しかもコローは油絵でグレーを表現(これは比較的容易だ)したが、浅井忠は水彩でグレーを表現している。水彩で美しい白、黒、グレーを表現することはとてもむつかしい。私はその秘密を知りたくて、未だに試行錯誤をしているといっていい。
コローの油絵はあくまで筆で丹念に重ねてあの柔らかさを出している。この2枚の絵は水彩らしい、水分をたっぷり含ませた絵具を紙にしみこませ、にじみとぼかしの組み合わせで空気や水の透明感を表現している。
現代の水彩画家はどちらかというと、同じような技法を駆使しながらも、もっと色が鮮やかだ。あるいは浅井忠の絵も当初はもっと鮮やかだったのかもしれない。浅井忠は51歳で世を去ったという。もう少し長く生きていれば、コローのように柔らかく、落ち着いた雰囲気の中でみずみずしく鮮やかな色彩を展開するそんな風景画が見られたかもしれないと思うととても残念な気がする。

なお、このブログで同じく明治の水彩画家「五百城文哉」について書いた(詳細はこちら→)。五百城は1963年生まれ、浅井は1856年生まれ。7歳しか違わないので、互いの画風について、意見を交わしたのではないかと考えて調べ始めたが、今のところそんな文献は発見できていない。だが明治の末期に生きた二人が片や超絶技巧、片やロマンチックな情景表現で競い合っていたのではないかと想像してしまう。
もしそんな事実が発見出来たらまたこのブログで報告したいと思う。

日本最古の西洋住宅?グラバー邸をスケッチ!

 ある日、アトリエを片付けようと、昔の資料を整理していた。本棚の奥から古いメモ書き兼用の安物のスケッチブックが出てきた。どのページも黄ばんでいる。パラパラとめくる。その中に見つけたのが、冒頭のスケッチ、長崎の「グラバー邸」だ。
 私のサインの上にある日付を見るとなんと1984年4月。30数年前のスケッチである。この頃は今のように真剣に絵を描こうなどとは思っていなかったはずだが、一応スケッチだけは残していたようだ。
 紙は水彩紙ではなく、普通の画用紙だ。だから影の部分をサインペンでハッチングしている。
 今も風景画を描くときは、アウトラインにサインペンを利用するが、ハッチングの影は描かない。何故なら透明水彩の淡く、明るい発色をと黒いハッチングの線が喧嘩するからだ。昔のスケッチなのでご容赦願いたい。

 さて今回何故、このグラバー邸を取り上げようと思ったかというと、理由は二つある。
 一つはこの建物の設計者が貴重な存在だからだ。私がよくスケッチする洋風の近代建築の設計者は大抵が海外の建築家(例えばジョサイア・コンドル)が設計したものか、彼らの弟子の日本人建築家(例えば辰野金吾片山東熊)が設計したものだ。
 このグラバー邸はそのどちらでもない。時代は彼らが活躍した明治よりも古い江戸時代、1863年に建てられた。だから、当然建築家などはまだおらず、建て主の貿易商トーマス・グラバーにも建築家としての素養は無かったようであるから、実質的な設計をしたのは当時の大工の棟梁だったのだ。
 日本人の住宅しか知らなかった彼らが、当時の西洋人の日常生活の代名詞であるバルコニー、ガラス、暖炉と煙突などを設計し、この地に建設した。驚きだ。
 この建物、2013年に「グラバー邸150周年」を迎えたという。私がスケッチをした当時、実はそこまでこの建物に価値があることを知らなかった。だが少なくとも「絵になる建物だ」と思わせてくれたことは事実である。

 二つ目の理由はこの建物が最近特に注目されるようになったからだ。このグラバー園、当時はそれほど観光客が多かったとは思えない。むしろ「長崎平和公園」の方が有名だっただろう。
 実は長崎市は1970年からこのグラバー邸のある敷地を「長崎の明治村」とする計画を推進していたらしい。私がここを訪れた以後、多くの建物が移築され、この構想が「グラバー園」としえ軌道に乗ったせいだろう。1991年に国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、2015年には、なんと「九州・山口近代化産業遺産群」の構成資産として世界遺産に登録されたのだ。
 この長崎の世界遺産をスケッチするについて個人的にコメントしておこう。実はグラバー邸を描いた同じスケッチブックには、やはり世界遺産に含まれる「大浦天主堂」も描いていた。
 しかし今回このブログの記事を書くにあたり、「大浦天主堂」は掲載しなかった。何故かというと、もちろんあまりにも昔のスケッチで、その出来栄えに満足していないこともあるのだが、天主堂に「モチーフ」として魅力を感じなくなったからだ。
 当時はそれなりに感動したからこそ、スケッチしたのだと思うが、その後私はヨーロッパの巨大な世界遺産の教会建築をいくつか見ている。教会建築に求められる「神への畏怖」はやはり建物の巨大さに直結する。大浦天主堂はやはり「小さすぎる」のだ。どうしても物足りなさを感じてしまう。(もちろん世界遺産としての価値は別物だが)
 さて、今回の記事により、長崎を一応私がスケッチしたお薦めリスト「ここが描きたい!日本の風景」に入れておく。だが冒頭に述べたように何しろ三十数年前のスケッチ。「長崎の明治村」構想が成就し、世界遺産に選定された今はさらにスケッチすべきシーンが増えているに違いない。
皆さんのスケッチ旅の行く先に加えて損はない・・・かな?

P.S.
今回はスケッチ旅の様子を記事にしたが、「肝心の水彩画はどうやって描くの?」と思っている人は以下に制作編をまとめているので参考にしてほしい。
■ペンと透明水彩を使う本格的な風景画の描き方は「ペンと水彩で描く風景画の魅力とは」を参照。
■透明水彩の基本を知りたい方は「色塗りの基礎的技法」を参照。
■建物を描くための透視図法のコツを知りたい方は「鉛筆はいらない!下書きしない風景画の描き方(詳細はこちら→)を参照。
■透明水彩の正しい着彩手順を知りたい方は「何故上達しない?知っておきたい水彩画の正しい着彩手順!(詳細はこちら→)」を参照。
■ペンと透明水彩による風景画の制作プロセスを具体的に知りたい方は「ペンと水彩で描くミラノ大聖堂(詳細はこちら→)」を参照。