加藤美稲水彩画 新作紹介

青森県黒石市中町

東北地方の民家を描く

季節は8月。大阪、神戸は40度近い猛暑。
されば涼しいに違いないと青森県黒石市中町までスケッチにやってきた。
しかし残念ながら猛暑は変わらない。苦難の末に書き上げた一枚を取り上げよう。

中町とは

国の選定した「重要伝統的建造物群保存地区」である。町の特徴は道路に面して「こみせ」と呼ばれる公共の屋根付き通路が続き、生活と一体となった空間を作っていることだ。
画面に描いた角地の民家は江戸時代から続く酒店で大豪邸である。
屋根はすべて赤いトタン屋根。柱が並ぶ「こみせ」と相まって町の顔を作っている。

作品解説

うっすらと雲の残る真夏の空が印象的だ。水をたっぷりと紙に染み込ませ、コバルトブルー、コバルトターコイズ、ウィンザーバイオレットで空を描く。
実は今回は空を描くのにいわゆる筆の「ストローク」は全く使わなかった。絵具を垂らして紙を傾けながらなじませる。この微妙な操作が決め手である。
空の色が微妙に変化する時この手法を使うとよい。

列柱の続く庇「こみせ」。この表現が今回の絵の出来を決めそうだ。
まず何本もある細い柱は最初にマスキングインクで覆っておく。実際の場面をスマホで写真を撮れば、この庇下は全て「真っ黒」である。

だがそれでは絵にならない。特に水彩画の場合「黒い部分」が多いととても汚い絵に見えてしまう。
今回は以下のような技法を使っている。

まず庇直下の一番暗い部分は紫(ウィンザーバイオレット)を塗る。そして地面の反射を受け明るくなる下部に向けて壁の茶色(ローシェンナ)をにじませながら継いでゆく。画面上で混色しながら塗ってゆくのだ。

こうすると紫色は暗い色として自然に見える一方で壁面の茶色と自然に交じり合うので素材感も出せる。
赤い屋根ともよく調和する。うまく表現できたと思っている。

制作過程を動画で保存する

このブログでは度々私の水彩画の制作過程を写真で説明してきた。
自分でその絵の課題を設定し、適した技法を予測し、その結果を記録する。そして次の作品で技を磨き、よりレベルアップした作品を描く…言ってみればこのブログの成長プロセスそのものでもある。

しかしここで紹介した、空を描く技法や、影色と素材色をぼかしながら塗る技法は水、紙、筆、それらの角度と操作のタイミングが重要であり、写真や文字では記録がしにくかった。

実は今回制作にあたり「VSDC」という無料のビデオ編集ソフトを使用してみた。とても無料とは思えないほど高機能でとても貴重な制作記録動画を撮ることができた。

「美緑(みりょく)空間アートギャラリー」メンバーの皆さんには、いずれその使い勝手について報告したいと思っている。楽しみにしてほしい。



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