スケッチ旅の初心者へ…必携の小道具とその使い方とは?

 以前に「スケッチ旅行に必要な道具とは→」と言う記事を書いた。この時は主として直接旅先で使う「画材」をテーマにした。それほど長期の旅を前提としていなかったからだ。

 だが個展に毎回違った水彩画を展示しようと思うと、国内でも3、4泊して、まとまって絵を描きたくなる。

 しかしそれなりに忙しい毎日を過ごしていると、結局前日の晩に画材と着替えだけをバッグに詰め、あたふたと家を出ることになる。思い当たる人も多いのではなかろうか?

 しかも私たちが出かけるのは普通の観光旅行ではない、水彩画の「スケッチ旅」だ。
観光ガイドブックの「旅の道具リスト」などは全く参考にならない。軽くて、嵩張らず、効率的に絵を描くための必携品が多くあるのだ。

 今回は私のそんな反省の念を込めて「長期スケッチ旅必携品リスト」を作成してみた。直ちに水彩画のテクニックが向上するわけではないが、きっとあなたにも役立つに違いない。

雨合羽

 移動中の大雨に備えて当然折りたたみ傘が必要だ。
折りたたみ傘と言ってもいろいろある。
私は厚みがたたむと熱さが1cmほどになってしまう「超コンパクトな傘→」を持っていく。

 ただし絵を描く時は傘は役に立たない。片手でスケッチブックを、もう一方の手でペンを持つと、傘を持つことはできない。つまり雨合羽は必須なのだ(これは百円均一店のもので十分)。

 もっとも合羽があったからといって、水彩紙が雨で濡れるとペンは滲んでしまう。合羽を着た上でスケッチブックブックを広げられる庇の下を見つけよう。

折りたたみ椅子

 風景画の決め手は「構図」である。つまり「ここだ」と決めた場所から描き終えるまで動けない。立ったまま描くのも良いが、それでは疲れてしまい1日に何枚も描けない。

 コンパクトな折りたたみ椅子は必須だ。私はかつては100円均一店で買った椅子を使っていたが、パイプがスチール製なので結構重い。
最近「アルミ製の軽量コンパクトな椅子→」を見つけた。今のところ気に入っている。

折り畳み座布団

折りたたみ椅子があれば座布団なんていらないと思うかもしれない。だが私たちは山道のあなたが選んだその場所でスケッチしなければならない。

足元は岩だらけでパイプ椅子が安定しない時がある。そんな時は座布団を岩の上に敷き直接腰掛けるのだ。材質はウレタンスポンジのもの、空気を入れて使うものなどがある。

現金ゆうちょ銀行のキャッシュカード

当たり前と思ってはいけない。重いスケッチ道具を肩にかけながら、財布、小銭入れを出し入れし、釣銭のやり取りをするのはとても煩わしい。

 だから最近はなるべく電子マネーを使うようにしているのだが、目的の風景がとんでもない田舎にあることもある。
 するとクレジットや電子マネーは使えない。現金だけが頼りとなる。「現金」はやはり必須なのだ。

 では財布を落としたらどうするか?
そんな時のために銀行のキャッシュカード、クレジットカードを財布とは別にして持っておこう。

 だがここにも落とし穴がある。
かつて田舎にスケッチに行った時、やはり支払いは全て現金ばかりで、財布の中身が心細くなった。
 当時私が使用していたのは三菱銀行と住友銀行。大手なら安心と思っていたのだが逆だった。
 その村にあるATMは聞いたこともない地方銀行と郵便局だけ。
それ以来、旅先ではゆうちょ銀行のキャッシュカードを必ずカードケースに入れている。

非常食箸、フォークスティック茶

 スケッチ旅行中は一般に早朝出発、陽が落ちてから宿に着く。
すると昼食はスケッチの最中に取ることになる。

 良く描き終えたら昼時で、食事できる店が近くに有れば最高だ。
だが私の経験上、そんなことはまずない。

 描き始めたら、昼時だからといって中断することはしないし、田舎に行くとそもそも店が無い。だから私はいつも非常食を持ち歩いている。

 チョコレートが栄養、カロリーがあっていいらしいが、夏は溶けて始末に負えないので、私はビスケットを持って行くことにしている。

 惨めな。などと思わないように。
絵を描きながら屋外でかじるビスケットはとても美味しいのだ。

 あるいはこんなこともある。
電車の都合で夜遅く到着した。食事は宿の自室でとろう。
そんな時の為にカップ麺をリュックに入れ、現地でフルーツを調達し、さあ食事というとき、気が付くと箸やフォークが無い…。

 食後にはスティック茶も欲しいだろう。これらも必携小道具と言えよう。
ついでに言えばお酒の好きな人は缶切り、栓抜きも必要だ。理由はお分かりだろう。

切符

 何故?当日駅の自販機で買うのでは?日帰り旅行ならその通り。
だが遠くに行く時は早割を使おう。だから切符も事前に購入することになる。家に忘れたら大変なことになる。チェックリストに必ず入れておこう。

 最近知ったお得な切符はJR西日本の株主優待券だ。
乗車券、特急券の合計金額が半額になる。この優待券は有効期限が近くなる程安く買える。

 私がチケットショップで買った時3,800円だった。
この時の旅行代金は約26,000円。支払ったのは半額の13,000円。
何と9,200円も特をした計算になる。

 ただしこのチケットは「片道」という条件があり、うまく使うにはコツがある。
綾羅木から小倉まで片道切符で旅してみた: JR西日本株主優待券の旅」という本で紹介している。参考にしてみるのもいいだろう。

ペン

 自分の使いやすいものを持ってゆけばいいが、ポイントは描く対象によって描き分けられるように太いもの、細いもの両方を揃えておくことと、できれば旅先で地面に落とし壊れた時のことを考えて同じものを2本ずつ持ってゆくとよい。

 私が最近よく使っているのはCOPICのマルチライナー0.5mm0.3mm、STEADTLERのピグメントライナー0.3mm、tachikawaのラインマーカー0.5mm同じくschoolGをスケッチブックの大きさ、建物、自然の風景の特徴に合わせて太細を使い分けている。

スケッチブックF6、SM

 持ってゆくスケッチブックをどれにするかは大事な選択だ。通常水彩紙のスケッチブックの最大はF10号、最少は葉書用を除けばF0号だ。

 当然大きい方が迫力のある絵が描けるのだが、今のところF10が収容できる旅行用のバッグは見つかっていない。
 だから10号を持っていこうとすると、スケッチブックだけ単独のバッグが必要となり最低でも荷物が2つ以上になってしまう。これは絶対に避けたい。

 同様にF8号も通常の旅行かばんやリュックには入らない。
と言う訳で私は「F6号がすっぽり収まるリュック→」を使用している(ただし国内旅行に限る。理由は「スペインをスケッチする マドリード編→」を参照)。

 スケッチにはF6号以外に小さめのスケッチブックが必要だ。
理由は一般に部屋に飾る絵としてはF6号よりも小さめのサイズの絵が喜ばれるからだ。

 私は今までに一番よく購入していただいた、SM(サムホール)サイズのスケッチブックを使用している。

 なお、リングタイプではなくブロックタイプのスケッチブックを持ってゆく場合は描き終わったシートを綺麗に切り離すためのペーパーナイフと保存するためのクリアファイルも必要だ。お忘れなく。

カメラ

 通常の観光旅行ならスマホの写真で十分だろう。
また私の場合ペンによる下描きは基本的に現地で描いてしまうので、写真は陰影の記録として取るのみだった。だからかつてはカメラは安物でよいと思っていた。

 だが、ある時、現地で何気なく撮った写真の中に、トリミングによっては水彩画としてとても面白い構図になることを発見した(旅先の写真から水彩画を描く方法→を参照)。

 しかし安物のデジカメで撮った写真では拡大、トリミングすると、ぼやけてしまう。とても絵画制作の使い物にならないことも同時に悟ったのだ。

 それ以来、(私はカメラマンではないので)「超高級」ではないが高解像度かつ軽量な「ミラーレス一眼レフ(SONYα5000(現在はさらに進化した品番がある)」を使用している。

iPhone、iPad、充電器

 今やスマホやタブレットは生活に欠かせない。特にスケッチ旅での移動にグーグルマップは欠かせない。

 私はグーグルアースで事前に現地の概略をある程度把握し、「行ってみたい」に登録しておく。そして到着したらすぐその場所へ直行することにしている。時間を節約するためだ。

 その準備をしておくことで、逆に現地ではゆったりと周囲を、あるいは後ろを振り返りながらいい構図を時間をかけて探すことができるのだ。

 そして忘れてはいけないのが「充電器」。田舎でのスケッチでは当然ながらコンセントは見つからない。必ず充電器を持参しよう。

大小の袋

 現地で入手したチラシや資料を保存する、絵を描いていて不要になったゴミを入れる、あるいは非常食の残りを携帯する…とにかくあるといろいろ便利である。
 袋の種類も使い捨て、ジッパー付きなど違うタイプのものを何種類か揃えておくとよい。

服装

  • 下着類
     現地での洗濯時間を節約しようと思うと日数分の下着を持参することになる。だが日数が増えるにつれ行き帰りに全部その都度詰めるのも煩わしい。私は「使い捨ての下着」も活用するようにしている。少なくとも日々荷物は軽くなる。
  • ヒートテック
     私の住んでいるのは神戸。だから真冬でもヒートテックはそれほど必要としない。だが、スケッチ先が山の中だったら絶対に必要だ。何十分、何時間も寒風吹きすさぶ野外に座り続けるのだから。
  • 指先を切り落とした手袋
     同じ理由で手袋も必携だ。ただし手先の感覚が鈍らないように指先を切り落としたものが必要だ。当然高価なものである必要はない。百円均一店で揃えよう。
  • 帽子サングラス
     いい構図を探そうと思うと、日陰ばかりで絵が描けるとは限らない。だから両方とも必須のアイテムだ。

 いかがだろう。「旅先で絵を描く」というだけで、普通の観光旅行とはずいぶん違う必携品リストが出来たと我ながら少し驚いている。
あなたの次の連休、水彩スケッチ旅に是非生かしてほしい。

P.S.
このブログの関連記事をあげておこう。興味のある方は参考にしてほしい。

P.P.S.
「水彩初心者はもう卒業した!」という方は「そろそろ腕試し!公募展に応募してみよう!→」を一読されたい。もうのんびりとはしていられない!?


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