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水筆を使用したマスキングインクの使い方とは?

 通常、水彩画では「白の絵具を使わない」。何故なら白は不透明色なので、絵具に白を混ぜた瞬間、透明感は失われるからだ(「絵具の知識 透明水彩は何故美しい?→」を参照)。

 だから白は塗り残すか、マスキングインクを使うことになる。今回はそのうち水筆を使ったマスキングインクの使い勝手を報告する。

目次

1.マスキングインクの基本
 1.1ガラス瓶入り
 1.2ペンタイプ
 1.3水筆使用タイプ

2.シュミンケホラダムのマスキングインクを試す
 2.1特徴
 2.2使い方
 2.3使い勝手

3.評価・感想

■マスキングインクの基本

 市場に出回っているマスキングインクのタイプは以下の3タイプだ(「水彩画の道具 マスキングインクって何?→」を参照)。

■ガラス瓶入り

 蓋を取り、筆に浸して描く。最初は筆で描くように滑らかで快適だが、すぐにインクの粘性が強くなり、インクの塊を水彩紙に置くイメージになり、自由な描写が出来なくなる。さらに硬化し始めたインクにつけた筆は使用後すぐに石鹸で洗うようにしてもなおかつ、すぐにダメになる。

■ペンタイプ

 瓶タイプとの一番の違いは蓋を取る必要がないこと。ペン先のキャップを外すと細いインクの線がいつでも出てくる。インクの硬化が無く、安心して使える。筆を痛めることもない。

 欠点はペン先の太さが固定されているので、イラストにはいいかもしれないが、細い、太いを使い分けたい水彩画には、やや不向きであることだ。

■水筆使用タイプ

 インクの硬化を心配することなく、かつ筆の柔らかさを活かしてインクが塗れる両方の要求をを満たす使い方である。先の「水彩画の道具 マスキングインクって何?→」では一番使い勝手がいいと報告した方法である。

 だがこの方法にもやはり欠点がある。水筆を毎回洗う必要があることと、水筆を浸す瓶のインクがやはりだんだん硬化して、水筆の水分がインクを浸した後、毛先の中で混ざりにくくなることである。

■シュミンケホラダムのマスキングインクを試す

 マスキングインクはどの画家も苦労して使っているようで、水彩画の教本、インターネットの水彩道具サイトを見ると色々な方法があり、中には矛盾する意見もあるようだ。

 私自身は少し前から、先の「水筆に水を入れ、インクの乾燥を防ぎつつ塗る」方法をとっていたが、インターネットで「シュミンケホラダム」のマスキングインクならば、水筆に直接入れて描け、内のインクが硬化することもないと言う書込みを見て、早速試してみることにした。

■特徴

 先にコストを報告しておこう。画材店により差があると思うが、両者ともAmazonで比較する。シュミンケのペンタイプは25mlで1837円、瓶タイプ20mlで1210円だ。対してミツワの瓶タイプは55mlで715円。

 同じ瓶タイプで比較して同容量当たりのコストは4.7倍。シュミンケンケのインクは相当に高価である。

 他社と比較した成分の違いは、通常のゴム成分ではなく、硬化しにくい素材を使用している、アンモニアが含まれてないということらしい。ただしいずれも私自身がメーカーに直接確認した内容ではないことをお断りしておく。

■使い方

 私が購入したのはペンタイプだ。そのまま使ってもいいが、せっかくの「硬化しにくい」性質を活かさない手はない。水筆に直接注入して使用してみることにした。

■使い勝手

 最初の使用感はとてもよい。筆の動きに沿って滑らかにインクが出てくる。これからはシュミンケかと思った。使用後、敢えて筆先の水洗いをせずキャップをしただけで保存し、二週間後再度使用した。

 最初の一筆は変わらない描き味で「これは使える!」と思ったのだが、二筆からがいけない。

 スムーズにインクが出てこず、時間が経つにつれ、筆先が乾燥して硬くなり、全くインクが出なくなった。そこでホルダー部分を強めに握ると、一気に溢れてぼとりとインクの固まりが落ちてしまった。

 そこで筆先を水につけ固まったインクを洗うと、また出るようになるが今度は水分が多すぎるのか、薄すぎて塗ったのか塗れていないのかがさっぱりわからない。

 下図は実験のために適当に塗ったサンプルだ。

 最初の水平に引いた線は筆幅で引けているが、その後の曲線状の線は固まってしまった筆を水で溶かしながら使用した線だ。

 ご覧のように右端の方がインクが塗れていないのがわかる。おそらく筆先に残った成分は水で溶けて塗れたものの、本体から流れるはずのインクは出が悪く、右半分は塗れてなかったのだろう。

■評価・感想

 残念ながら、私が期待した「水筆内のマスキングインクが硬化することなく、いつでも滑らかに水筆の線が引ける」機能は満足されていない。

 原因は、時間が経つとやはり筆の毛先のジョイント部分のインクが硬化して流れるはずの道を塞いでいるようだ。

 もちろん、毛先のユニットを毎回丹念に洗えば、いつまでもスムーズに描けるのかもしれない。

 だが通常のインクに比べコストが5倍近いことを考えると、やはり水筆には水を入れ、乾燥を防ぎながら、マスキングインクを浸して描くと言う先の方法に軍配が上がるようだ。

 ただ、シュミンケのインクの「成分が違う」ことは確かなようで、他のインクに比べ、断然剥がしやすい。指で軽く擦るだけでも剥がせる。

 ミツワのマスキングインクは専用のラバーを使わないと綺麗に剥がれない。強く擦ると紙質によっては絵そのものも痛めてしまうことさえある。

 だから現状でベストの選択は「水筆には水を入れ、シュミンケの瓶入りマスキングインクを浸して描く」だ。ちょっとコストは高いが皆さんも試してみたらいいと思う。

 もし私の評価よりもよい結果が得られる方法、コツなどあったら教えてほしい。
 マスキングインクの使い方は水彩絵具の使い方以上に難しい。私の正直な感想である。

P.S.
このブログ内の関連記事を記しておく。興味のある方は参考にしてほしい。
■「水彩画上達法!マスキングインクを使いこなす!→
■「水彩画入門 色塗りの基礎技法を覚えよう!→
■カテゴリ「絵画上達法→

絵描きのための「インプットブック」とは?

 このブログを読んでいる方は絵の好きな人ばかり。毎月、いや毎週のように展覧会に行っているかもしれない。

 そんなあなたに質問だ。展覧会終了後のチケットの半券、あるいは印刷された作品目録などはどうしているだろうか?

 私の場合、とりあえず机の引き出しにしまい、きちんと分類してファイリングしようなどと思っているうちに、日常の書類の出し入れに紛れて、いつに間にか失くしてしまうということが多かった。

Amazon アレクサは使える!

 今、私はこの文章をリビングの昔のステレオ機器で好きなクラシック(「クラシック音楽のすすめ→」を参照)を聴きながら書いている。とても良い音で快適だ。いや問題はその音質や曲の種類ではない。

 言いたいのはこの選曲はAmazon アレクサに覚えさせた私の好きな曲ばかりを集めたプレイリストから流れているということなのだ。

 この便利なAI機器に詳しくない方に順を追って説明しよう。アレクサとはシンプルに言えばインターネット回線を利用して情報の出し入れを人の声とアレクサの声でやりとりするものだ。

 最近はアレクサは対応の電気器具が増えてきたので照明のオンオフなどもできるようだが、私の家の照明は対応していない。

 情報のやり取りは普段はアレクサの音声を小型のBoseのスピーカーに接続して使っている。

 「アレクサ、ニュースをかけて」「天気予報を教えて」というと現在の場所、時刻に合わせた内容を話してくれる。また「アレクサお米を買って」というとAmazonのお米リストから選択できるようになる。支払いは私のカードからだ。

 買い物リストも口で言うだけで勝手にリスト化してくれる。使うときは出先でiPhoneからそのリストを開けばよい。

 音楽関係の機能に絞って説明すると、最近はリビングのTVで鳴っている音楽に向かって「アレクサ、この曲なんていう曲?」というと歌手と曲名を教えてくれるようになった。

 もちろん好きな歌手と曲名をリクエストすると、Amazonプライムミュージックに記憶された曲ならすぐにかけてくれる。

 ありがたい機能が色々な曲のうち自分の好きな曲を「アレクサ、この曲をお気に入りに入れて」というと「お気に入り」というプレイリストができてそこに好きな曲を入れてくれる。だから「アレクサ、お気に入りのプレイリストをかけて」と言うとそれが再生されるのだ。

 最初は妻と二人でお互い気に入った曲を入れていたのだが、妻は私の曲が気に入らないらしく、すぐに「アレクサ、この曲スキップして!」と省いてしまうのだ。

 そこで「アレクサ、夫のプレイリストを作って」というと「夫」というプレイリストを作ってくれる。そこへ気に入った曲を「アレクサ、この曲を「夫プレイリストに追加して」というと私の好きな曲だけが入るというわけだ。

 聴きたくなったら「アレクサ、夫プレイリストをシャッフル再生して」というだけでBoseのスピーカーから自分だけのBGMが流れるてくれるのだ。

 さてアレクサが「使える!」というのはここから先だ。

 せっかく作った「夫のプレイリスト」をBoseの小さなスピーカーだけでなく、電車の中のブルートゥースイヤホンでも、リビングのオーディオ機器の大スピーカーでも聴きたいと思うのは当然だろう。

 それが最近、できるようになったのだ。

 まず、iPhoneにAmazonのアレクサアプリをダウンロードする。以前は出来なかった機能なのだが、そのアプリ内にも自宅でアレクサに命じて作ったプレイリストが自動的に読み込まれているのだ。

 外出先でiPhoneに向かって、アプリの中から「アレクサ、夫のプレイリストをかけて」というと、いつも使っているブルートゥースイヤホンからすぐにその音楽が流れて来る。混みあう電車でいちいちめんどくさい選曲をしなくていい。感動だ。

 そこで次に挑戦したのが先に聞いていた古いステレオ機器との接続だ。このスピーカーはなんと30年前に買ったもの。最近、テープもレコードもCDもあまり聞かず、もっぱらネット配信ばかりだったのでほとんど使っていなかった。

 幸いアンプはもう少し新しく「デジタル入力」に対応している。そこでアップルTVのHDMI端子をこのアンプに繋ぐ。そこから先、大スピーカーまでは30年前のアナログ接続だ。

 まず同じようにiPhoneのアレクサアプリを起動する。そして今度はボタンをタップして、「夫のプレイリスト」をかけてと言う。
 「アレクサ」と呼び掛けなかったのは、それをすると、アレクサ本体が起動してしまい、Boseのスピーカーに音が行ってしまうからだ。

 この状態ではiPhoneで音楽が鳴っているだけだが、ここで「画面ミラーリング」でiPhoneを選べば良い。するとアレクサ→iPhone→アップルTV→アンプと情報が流れ、突然大音量でステレオが鳴り出した。

 久しぶりに聞く本格的なオーディオはなんと聞き応えがあることか。アンプまでの信号は全てデジタルなので音の劣化は全くない。(ソフトバンクのwifiが混雑していなければ)。

 素晴らしい世の中になったものだと改めて実感している。

 なお、電車の中で、妻とお気に入りリストを共有して互いのイヤホンで聴けるかと試したが、許されるデバイスは一つだけだった。

 もっともデバイス5つまで増やせるオプション契約もある。アレクサは親切に「加入しますか?」と聞いてくれたが、今のところ「いりません」と答えておいた。何事もお金次第。これは時代が変わっても同じだ。

単身者のための時間術

 今や日本の3割の世帯が単身者だと言う。つまり自分を含めた両隣には必ず単身者がいると言うことだ。

 かく言う私も三度単身者の暮らしをしたことがある。学生時代、結婚してからの単身赴任、そして離婚後だ。

 単身者の生活についての悲喜こもごもは世の中にベストセラー本が溢れているのでそちらに譲るとして、今回は私のようにやりたいことでお金を稼ぎたいと思っている単身者の時間術について書きたいと思う。

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好きなのに見られない?ヨーロッパの有名絵画と美術館

 私は子供の頃から絵が好きだった(「絵で稼ぐことを覚えた子供→」を参照)。特に美術の教科書に載っているようなヨーロッパの有名な絵画にずっと憧れていた。

 だが育った田舎にはなかなかそんな絵画がやってくることはなく、生まれて初めて見た本物のヨーロッパ絵画展は、大学生の時、愛知県美術館で開催された「ミレー、コロー、クールベ展」だった。

 私が一番好きな画家、コローの実物の絵が見られた感動を今でも覚えている。もちろんその時買った、カタログは今でも私の書斎に大事にとってある。

 その後自分で油絵を描き始めたこともあり、レンブラント、ゴッホ、マネ、セザンヌ、ルノワールなどヨーロッパの有名な絵を観るために、度々美術館に足を向けるようになった。特に最近ではフェルメールの「青いターバンの少女」が来た時などは、どのくらいその絵の前で立ち止まっていたかわからない。

 そんな私が、最近は自由な時間も増え、度々海外へ行くようになった。友人からはさぞかし、美術館巡りを楽しんでるんだろうねと言われることもある。だが残念ながらそうではない。

 ローマのバチカン美術館、フィレンツェのウフィツィ美術館、ミラノのブレラ美術館、ウィーンの美術史美術館、これらの有名美術館、いずれも玄関前は通ったものの、中に入ることはなかった。

 「せっかくのチャンスなのに何故?」と思うだろう。それは、入ったら最後、どの美術館も中味が濃い。おそらく最低2~3時間は出て来られない。それではせっかくのスケッチ旅の目的、絵を描く時間が無くなってしまうからだ。

 だから子供の頃からの願いであった、憧れのヨーロッパ絵画に存分に親しむ生活は残念ながら、未だにできていない。

 尤もそんな私が唯一訪れたヨーロッパの有名美術館がある。スペイン、マドリードのプラド美術館だ。もちろん世界三大美術館の一つと言われるほどなので、ガイドブックで場所だけは確認していたものの、「スケッチ優先」の計画をしていたので行くつもりはなかった。

 ところが町歩きの最中にスリに財布を取られてしまった(「スペインをスケッチする マドリード編→」を参照)。ヨーロッパ旅行では以前にも財布を無くして、痛い目にあっていたので、幸い財布の中身は最小限にしてあった。現金を補充して再び町歩きを始めたものの、創作意欲はすっかり消沈。気を取り直すべくプラド美術館に入ったというわけだ。

 さて、入館してみると、予想通り館内はとんでもなく広い。順に見ていくといくら時間があっても足りそうにない。そこで所蔵作品が充実していると言われるベラスケスを中心に見ることにした。

 ではこの日だけは存分にヨーロッパの絵画を堪能したかというと、残念ながらそうではなかった。もちろん一つにはスリにあった精神的な疲れもあったのだが、何よりあまりに延々と続く展示空間は緊張感を削ぐ。

 しかもベラスケスの絵は17世紀後半の作品、時代的にはバロックと言われるが、やはり茶褐色の色調が強くイメージがとても暗い。名作「ラス・メニーナス」も同様だった。

 それに比べると、ゴヤは18世紀初頭の画家で様式的にはロココに近いため、かなり色調も明るくなる。特に有名な着衣のマハ、裸のマハは素晴らしい。かなり長い時間この2枚の絵を眺めていた。

 そのあとは疲れもあって、手抜き鑑賞。なんとか一通り見終わったのは閉館時間の直前だった。手元のiPhoneのヘルスメーターを見ると、なんとこの日歩いた距離は30kmを超えていた。

 最近は私自身、足腰の衰えを自覚し始めたが、絵に接する時だけは、まだまだ若いようだ。私が絵も描かず、ヨーロッパの名画巡りをする、悠々自適の人生はまだまだ先になりそうだ。

スケッチが好きな旅人の独り言

 私は旅先でスケッチをする瞬間が好きである。

 白いスケッチブックの上で黒いペンの線が幾重にも交差し、形が出来上がっていく。

 輝く太陽の光は青空に散り、建物の外壁を白く焼き、地面に屋根の影を落とす。線が形となり、面が光を受け、画面に色が付き、その風景が自分のものになってゆく。絵描き冥利に尽きる。(「絵を描くことであなたの人生は充実する!→」を参照)

 でもそんな幸せな時間を作り出すのは実は結構大変なのだ。

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これがおすすめ! 有名絵画

 私のおすすめ絵画NO.1は迷うことなく言う。コローの「フォンテーヌブローの想い出」だ。

 私は大学に入るとすぐ美術部に入り、本格的に油絵を描き出した。当時の大学は学生の自治、自由を重んずる雰囲気が強く、総合「レジャーセンター」などと言われていた。

 当然堅苦しい顧問の先生などいるはずもない。皆が勝手に好きな絵を描く。展覧会こそしょっちゅうあったが、出品するのも、しないのも全く個人の自由。
 慣習的に展覧会の初日に批評会をする。だが、相当出来の悪い手抜きの絵でもよほどのことがない限り「いいね」で済まされ、酷評されることはほとんどない。皆の頭にはその後に予定されている当時「コンパ」と呼ばれていた飲み会しかない。

 だからはっきり言うと、美術部員とは言っても大半はお遊びで、絵のレベルはひどいものだった。大学祭で部員の大作をずらりと展示するものの、来た人が「レベル低いね」と呟くのを度々耳にしたものだ。

 もっとも今思えば私も似たようなレベルだったと思うが、今の私のアトリエにある書棚には数冊の画集がある。いずれもこの頃に入手したものだ。ページをめくると所々、当時の絵具の跡がついていたりする。

 それなりにこれらの画集を参考に上手く描こうとしていたわけだ。

 最初に書棚に並んだのはアングル(その理由は「裸婦の名画 グランドオダリスクに会う→」を参照)。次にルノワールだった(その理由は(「私の人物画が売れた訳→」参照)。

 そのほかにいまだに並んでいるのは、レンブラント、フェルメール、シャルダン、クールベ、そして最も傷みの激しい画集、それがコローの画集だ。

 コローの画集の何をそんなに一生懸命見ていたかと言うと、やはりその独特の色調だ。特に森や川のある抒情に溢れる風景画の色調はコローにしか出せないと思う。

 当時彼の作風に関する文章も結構読んだ記憶がある。例えばあのグレーの色調は彼が作品の仕上げの段階で、パレットに残っていた絵具をペインティングナイフで混ぜ合わせて、キャンバスのあちこちにこすりつけることによってできたと言うものだ。

 もちろん試すまでもなく、そんな単純な技法であの雰囲気が出せるはずもない。だが「どうやったら、あのグレーの色調が出せるか?」は当時のわたしの最優先課題だったのだ。

 そうして、大学4年の春、遂にそのコローが日本にやってきた。しかも通常は東京から京都、または大阪に巡回してしまう有名展覧会がこの時は名古屋の愛知県美術館でも開催されたのだ。

 そこで見た、この展覧会の目玉の絵がこの「フォンテーヌブローの想い出」だったのだ。

 大作だ。やはり画集とは迫力もディテールの描き込みも全く違う。グレーに統一された色調は比類がない。

 そして私の興味は「どうやってこの色調を出したか?」に向いた。まず、画面は艶があって極めて平滑。ナイフで擦り付けた後は皆無だ。先の「パレットに余った絵具を・・・ナイフで・・・」と言う解説は少なくとも間違いだと確信した。

 一見ぼかしまくっているようだが、よくみると小さな葉や小枝に至るまで筆の穂先に神経を集中して、丹念に描き込んであるのがわかる。

 絵具はは何色も何層も重ねてあるらしく、「コローのグレー色」なる絵具名は当然ながら判らない。

 ただ私なりに彼の色調を真似しようと、この頃から、黄色はクロムイエローからレモンイエローに、緑色はビリジアンからサップグリーンに、濃い茶色はローアンバーからセピアに変えた覚えがある。

 そしてその翌年、同じく愛知県美術館で私の大学の美術部展があり、私は100号の風景画を出品した。題名は「千曲川の想い出」。

 美術部の合宿でスケッチしたものをもとに描いた風景画だが、コローの「フォンテーヌブローの想い出」を意識したことは言うまでもない。
 色調もコローのグレーを徹底して真似た。いま思えばその絵が私が描いた最後の大作、100号の絵だった。

 この絵はそんな私の若き日の思い出の一枚なのだ。

絵描きのためのパソコンソフト

 絵や書道は手書きでこそ味がある。だから私はパソコンは一切使わない・・・などと言うアーチストは昨今いないに違いない。

 私も絵は手描き賛成派であるが、パソコンはやはり便利だと思う。うまく使えば日常の雑事の時間を節約し、絵を描く時間をより長く確保できる。

 今回は「絵描き」におすすめのパソコン、あるいはタブレットのソフトおよびその便利な機能をご紹介する。

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水彩画を綺麗にスキャンするには?

 自分の描いた水彩画をスキャンしてインスタグラムにアップロードしようとしている人、あるいは作品をスキャンし加工して、印刷して年賀状に使おうとしている人は結構多いと思う。

 最近は、デジタル化が進み、安い機材から高級機材までなんでも揃っている。だが一方でどれを買ってどう設定したらいいかなど考え始めるときりがない。

 今回はそんな作品のデジタル化に悩む人のために、目的に応じた、必要十分な方法をお伝えしようと思う。

目次

1水彩画を印刷したい
 1.1自宅のフラットベッドスキャナーを使う
 1.2ミラーレス一眼を使う
 1.3外注業者に依頼する

2水彩画をインスタグラムに投稿したい
 2.1フラットベッドスキャナーの画像を加工する
 2.2iPhoneや iPadで撮影する

3まとめ

■水彩画を印刷したい

 水彩画を印刷する場合、一般に使う道具は3種類ある。それぞれについて説明しよう。

■自宅のフラットベッドスキャナーを使う

 一番多いのは自分の描いた水彩画をスキャンして年賀状にするなどの用途だろう。

 この場合は家庭用のインクジェットプリンターに付属のスキャナーでスキャンし、画像ソフトで加工し、そのまま自宅のプリンターで印刷すればいい。A4までの原稿ならばこのスキャナーはとても便利だ。
 最大の利点は原画の紙が多少丸まっていても、歪みなくスキャンできることだ。

 最近のスキャナーはあまりデジタルに詳しくない人のために「お任せモード」を搭載している。

 それなりにうまくスキャンできているのだが、やや粗く、白っぽい。なによりその設定がブラックボックス。やはり、作品をポスターにしたり、本人載せたりしようと思うともうすこし、詳しいスキャンの仕方を知っておいたほうがいい。

 簡単な設定方法を説明しよう。スキャンするときのポイントは大きく言えば2つある。一つは解像度。スキャンしたファイルから商用印刷することを考えるなら、最低350dpiから400dpiにしておこう。(もちろん大前提としてフルカラー、写真モードを選択しておく)

 通常「標準」スキャンを選ぶと200dpi~300dpi程度になってしまうようなので注意が必要だ。先の「お任せモード」はファイルサイズからみると300dpiくらいのようだ。

 もう一つのポイントは「白っぽさの設定」だ。下の画像は解像度を400dpiにしてデフォルトの設定でフルカラースキャンしたもの。実は原画に比べると随分白っぽい。スキャナーで一番気を付けないといけないのはこの部分なのだ。

どうすればいいか?

 「ヒストグラム」という機能を使って調整すればいい。私のスキャナーでは手動設定すると、このヒストグラム調整がスキャン時にできる。
 もしこの機能が搭載されていないスキャナーあれば、画像ソフトでヒストグラムを調整しよう。方法は簡単だ。

 上図の右側のグラフが400dpi、デフォルトスキャンの場合のヒストグラムグラムだ。横軸はピクセルの白さ(黒さ)、縦軸はその色のピクセルの量を表している。図の左側、つまり黒っぽいピクセルが殆どなく、殆ど白に近いピクセルの数が極端に多い。だから画像が実物以上に白っぽくなってしまうのだ。

上右図はそのヒストグラムを調整したものである。原点から右肩に上がる直線を右にドラッグする。原画の一番暗いピクセルの位置を原点にすればいい。するとメリハリのあるバランスのいい画像になる。このヒストグラム調整後の画像が上左図である。これは原画に近い。

 違いが判ると思う。スキャン時の設定、「解像度」と「ヒストグラム」を忘れないようにしてほしい。

■ミラーレス一眼を使う

 A4サイズまでの原画ならばフラットベッドスキャナーが使えるが、通常よく使うF6号はどうするか?

 実はこれがなかなか悩ましい。通常ならA4サイズ以上の原画はコンビニでスキャンすればいい。コストも一枚30円程度。自分で嵩張るA3スキャナーを買う必要は無いと思う。だが実はF6は幅方向が若干A3からはみ出るのだ。

 正直いうと、人物画の背景は多少カットしても問題ない場合が多いので構わずA3スキャナーを使っている。だが風景画はカットするとやはり構図が崩れてしまう。だから、私はミラーレス一眼レフで撮影している。

 プロが撮影する時は望遠レンズで歪みを少なくして、きちんと正面から撮るらしいが、私は標準レンズである程度の歪みは覚悟の上で撮影している。

 何故なら、解像度の調整、ヒストグラムの調整のため、どうせパソコンに持っていくことになるので、歪み調整も画像ソフトですればいいと思っているからだ。

 ただ、解像度を含めたトータルな画質はフラットベッドスキャナーよりもはるかにいい。相当大きなパンフレットへの印刷にも耐えられそうだ。

■外注業者に依頼する

 個展を開いたら、同時に二人の人から同じ絵を売ってほしいと言われたとする。さああなたならどうする?

 私は実際にそんな経験があった。そこで先方に「ジークレー版画印刷」を提案した。色も耐候性も本物に劣らない。水彩紙にそのまま表現する再現性抜群の印刷だ。

 この場合は、大型のスキャナーで外注するか、ジークレー印刷の業者にスキャンも一式依頼するのが良さそうだ。値段はF6で3万円程度のようだ。

■水彩画をインスタグラム(ブログ)に投稿したい

 こちらは印刷するよりもずっと敷居が低い。何故ならサーバ側で表現する画像のピクセル数が限られるからだ。順に説明しよう。

■フラットベッドスキャナーの画像を加工する。

 印刷用でスキャンした画像はそのままだとサイズが大きすぎる。自宅にWiFi環境があればいいが、通常の4G回線でパケットのデータ制限がある場合は、すぐに上限値に達してしまう羽目になる。
 画像ソフトでリサイズしよう。72dpi、800×600サイズ程度で十分である。

■iPhoneや iPadで撮影する

 実は先に挙げたような電子媒体に投稿するのなら、 iPad、iPhoneで撮影するのが一番手っ取り早い。
 解像度はむしろ高すぎるくらい。どうせインスタグラム側でサイズダウンされるのだが、OS側で扱えるのなら敢えてサイズダウンの手間をかけなくてもいい。

 この両者が一番優れている点は2つある。一つはソフト面の連携の良さだ。撮った写真をボタン一つで投稿できてしまう点である。
 もう一つはヒストグラムの調整が要らない点だ。理由はよくわからない。おそらくスキャナー内の人工的な反射光と自然光の反射光の違いなのだろうと思う。

 画像の歪み補正は、無料のソフトをダウンロードして使えばいい。私は「Genius Scan」を使っている。とても使いやすい。おすすめだ。

■まとめ

 私が自分の作品のデジタル化を始めたのはもう20年前になる(「絵描きのためのパソコン選び→」参照)。当時はそもそもメモリの制限が大きく、ろくなスキャンはできなかった覚えがある。

 いまはipadやiphoneさえあれば一通りのことができてしまう。時代は常に進化する。取り残されないようにしたいと思っている。

絵描きのための机が欲しい!?

 私は絵を描くとき通常は、まず鉛筆、ペンなどで線描きまでを現地でおこない、自宅に帰ってから着彩することが多い。その時、現地で決めた構図の写真を取り、パソコンに取り込んで、モニターを見ながら着彩している。

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