「絵を描くことであなたの人生は充実する!」

■「美緑(みりょく)空間」とは?

 このブログのタイトル「美緑(みりょく)空間」は私の絵描きとしての世界観を表している。

 「美緑」とは生命感のこと、「空間」とは人の存在する場のことだ。 その二つが一緒になった美緑(みりょく)的な空間を描くことが私の創作活動の目的だ。

 ゆえに私の絵には、自然と共にある人や建物は登場するが「人を寄せ付けぬ秘境」は登場しない。誰もが自分の部屋に飾って安らげる、優しい絵を描きたいのだ。

 そして絵は美術館で見るものではない。 自分の身の回りで、いつも目に触れるものでありたい。

 だから出来るだけ多くの人に「アートのある生活を」提供したい。 いずれは世界中の家庭に。

 それが私の夢だ。

■絵描きとは何をする人?

 夢の実現に、何をすべきか。私の絵描き活動を紹介しよう。

異国の情景を求めて旅をする。
 毎年海外へスケッチ旅行に行くことにしている。といっても私の生活にそれほど金銭的余裕があるわけではない。
 ただ、生涯で描きたいと思う場所を、リストアップすると、残りの人生、毎年スケッチに行かないと描ききれないと悟っただけだ。
 だから人生の予算のうちの「海外スケッチ費用」を絶対的なものとしてカウントしている。
 生涯計画のなかで年間20万円程度の旅行費用など、誰でも、きっと何とかなるはずだ。なにしろ朝から晩まで、初めて見る異国の美しい風景を好きなだけスケッチできるのだ。
 これ以上の人生の喜びは無い。(私の体験談はこちら→https://miryoku-yoshine.com/category/journey-world/
 絵の好きな人は自分で、描きたいところをリストアップしてみてほしい。そして生涯のスケッチ計画をしてほしい。
 私と同様、きっとすぐに、来年の飛行機の早割りチケットを予約したくなるはずだ。(海外スケッチ旅の心構えはこちら→https://miryoku-yoshine.com/overseas-sketching-knowledge/

旧き良き日本の風情を求めて旅をする。
 個展の計画をするときは、海外だけでなく、日本の風景もあったほうがいい。
必ずしも見に来てくれるお客様が海外の風景にあこがれているとは限らないからだ。
 私の経験で言えば、日本人なら誰もがあこがれる風景がいい。「ここ、行ったことがある!」とわかるとそれだけでその絵に好感を持ってもらえる。今までに売れた風景画はたいていそのパターンだった。
 日本の旅は年初に一年分の計画をする。行く先は国が選定した「重要伝統的建造物群保存地区」からリストアップしている。現在全国に120箇所ほどあり、私が描いた町はまだ約30箇所に過ぎない。こちらも出来れば生きている間に全て描きたいと思っている。楽しみだ。(私の風景画の描き方に興味のある方はこちら→https://miryoku-yoshine.com/landscape-painting-with-pen-and-watercolor/
 なお私がスケッチした場所と絵描きとしての個人的感想を一覧表(ここを描きたい日本の風景→)にしておいた。これからスケッチ旅行に行こうと思っている人は参考にしてほしい。このリストは現在も作成中で随時更新していくつもりだ。定期的にチェックしてみて欲しい。

魅力的な女性を描く。
 美しい女性を見て感動するのは誰でもできる。だが、その女性の魅力を自分の手で画帳に表現することは絵を描く人にしかできない。そしてこの楽しみは絵を描かない人には永遠にわからないのだ。(私が女性像にこだわる理由はこちら→
 しかし実は人物画を描こうとすると、たちまち直面する問題がある。初めての個展で人物画を出品したとき、友人の最初の質問はほとんど「モデルは誰?」だった。 つまり、風景は自分で好きに対象を選べるが、人物はそうはいかない。相当の「大家(たいか)」と呼ばれる画家でも好みのモデルを探すのに苦労しているそうだ。
 私の解決法は近所の「人物画教室」に通うこと。来ている人が全員でモデル料を分担するので安く済むからだ。もちろん、モデルさんも、服装も、ポーズも自分の望むようにはならない。それでも画力の向上に枚数を描く事は絶対に必要だ。大いに利用させてもらっている。(私の人物画の描き方に興味のある方はこちら→https://miryoku-yoshine.com/how-to-draw-a-portraitpainting/

作品集「美緑(みりょく)空間」

作品集(絵描きとしての活動記録)を執筆、出版する。
 最初の個展のとき私の作品をテーマにした本「美緑(みりょく)空間」を自費出版した。作品制作時の想いを添えている。わかりやすくて面白いとなかなか好評だった。この時は旅の記録が中心であったけれど、今後は多くの人が絵を描きたきくなるような「役立ち記事」を充実するつもりだ。
 そして書籍は個展を開くよりも、より多くの人に美緑(みりょく)空間の世界観を伝えてくれる可能性がある。だからいずれVol.2も発行したいと考えている。

美術館、博物館の作品を観て感性を磨く。
 アートにはインプットが必要だ。
どんな天才芸術家でも作り続けるだけの行為、アウトプットだけを続ければいずれアイデアは枯渇する。そうならないために、インプットつまり美的な刺激が必要だ。
 自分が描くジャンルの絵を見ることだけがインプットではない。敢えて違うジャンルの作品を見ることも多い。(例えばこちら→https://miryoku-yoshine.com/the-wonder-of-the-tea-house/
 刺激は美術館だけではない。歴史的な建造物にも美的感覚は刺激される(例えばこちら→https://miryoku-yoshine.com/ohtu-city-anou/)。

このブログ「美緑(みりょく)空間」で情報発信する。
 私がブログを始めたのは約10年前だ。個展を開く自信も、具体的戦略も無かったころ、なんとなくブログなら自分の感性を発信できるのではないかと考えたのだ。
 だがネットによる情報発信効果は私の予想を超えていた。例えば、最初の個展を開いた当時、訪れる人は私の知り合いばかり。案内状を見て作品を目的に来てくれる人はほとんどいなかった。
 ところが前回の個展は、半数近くがSNSを含めたネット情報をみて来てくれたお客様だった。つまり知り合いだから来たのではなく、絵を見たいから来た人が大半だったのだ。
 ネットを利用した情報発信は今やアーチストに欠くことのできないもうひとつの武器だと思っている。
ちなみに私はSNSでも情報発信している。フェイスブックでは失敗作も含め活動状況を、インスタグラムでは主に海外への発信を意識している。それぞれのURLは以下のとおりだ。
・フェイスブックhttps://www.facebook.com/yoshine.kato
・インスタグラムhttps://www.instagram.com/painter_yoshine

■個展を開くだけで満足してはいられない!?

2度目の個展風景

 幸い、過去3回の個展は好評だった(と思っている)。自分の作品を見てもらい、感想を聞き、見知らぬ人とコミュニケーションが出来る。
 実に楽しい。喜んでもらい、絵が売れれば収入も得られる。金額の多寡ではない。サラリーマンの給料とは一味違う報酬だ。
 でも実は気がついた。このまま個展を繰り返すだけの活動でいいのだろうかと。もちろん私個人はそれなりに楽しく充実した人生だ。
 しかししょせんは私一人の活動。絵が売れればその作品はお客様一人の物になり、「より多くの人に」見てもらうことは出来ない。
 まして「全ての家庭にアートを」提供することなど永久に出来ない。もちろん大作家の作品ならば画商が企画し、バイヤーを世話し、相当の高値で売るという従来の商業的形態はある。
 だが、そんな高値売買の、限られた時間と場所と人脈が支配する世界では、普通の家庭が、いや世界中の家庭で「絵を飾って生活を楽しむ」ことはできないのだ。

■ブログ「美緑(みりょく)空間」を訪れたひとへ

 そこで提案がある。たぶんこのブログを訪問してくれた方は、絵を見るのが好き、あるいは自分でも少し描く、あるいはすでに相当描けるセミプロの人だろう。
 絵を見るのが好きな人はまず自分で描いてみてほしい。少し描ける人は、画力をつけて、リビングに飾ってもらえるレベルになってほしい。セミプロの人は、個展を開いて作品を少しでも多くの人に見せて、感動させてほしい。
よく考えれば「全ての家庭にアートのある生活を」提供するのは私だけである必要はない。
 感動させる人が多ければ多いほどいいのだ。

■アートギャラリー「美緑(みりょく)空間」のメンバー募集

 先の提案は、言い換えれば、私の個人的活動目標を皆さんに押し付けるというものだ。
 なんて身勝手な。
 そこで考えた。ネットの持つ情報発信力の可能性は先に述べたとおり。この際このブログを利用して私のような絵描き活動をしてくれる仲間を集めたい。
 名前は絵を描いて見せる場なのでとりあえず「美緑(みりょく)空間アートギャラリー」とし、そのメンバーを募集したいと思う。
 入会資格は絵が好きなこと。それだけだ。当然会費は無料だ。自分で絵を描き、いずれは絵描きとして活動をするために必要な情報をこのギャラリーメンバーで共有したい。具体的な内容はメンバーになってから・・・。

メール配信その他のシステムは現在構築中だ。もうしばらく待ってほしい。

P.S.
 私のブログには以下の6つのカテゴリがある。
スケッチの旅 日本編
スケッチの旅 海外編
絵画上達法
絵描きとして生きるには
ためになる美術講座
加藤美稲Painter_Yoshineはどんな人?
加藤美稲Painter_Yoshine 作品集水彩画
 どれも絵を描こうと思う人にとって有用な記事だと自負している。しかし残念ながら私の経験または意見を一方的に発信するだけのものだ。

また仮に来訪者とメールアドレス交換をして個別に意見交換するとしたら、必ずしも私の考えに賛同しない、不特定多数の人に対応しなければならない。
 これでは、相当の手間がかかり本来の活動目的とずれてしまう。だからこのブログとは別に、世界観を同じくする特定の仲間とサークル的な活動をする場を設けたいと思ったのだ。
 ギャラリーメンバーは最低限自分で絵を描き、上達し、人に見せて、喜んでもらうことを目指してもらいたい。もちろん私の知識と技術の提供は惜しまない。しかし単なる画力向上が目的ならばそのための出版物はいくらでもある。ここではむしろメンバーとのコミュニケーションを大切にしたいと考えている。
 私の作品の制作プロセスやそれについての個別の質問を受けようと思う。これから絵を描くという人には大いに参考になるはずだ。すでに画力のある人は、作品を見せてもらい、メンバー間でのテクニック自慢をしてもらってもいいだろう。
 メンバー全体の実力が上がってくれば、ネット上で展示会を開くのもよい。いずれは(適正価格で)売れる仕組みも作り、世界中に広がれば「美緑(みりょく)空間」の本来の夢の実現に近づくことになる。どんなメンバーが集まるかもわからないので、 具体的な方法は未定だが、メンバーが集まれば意見交換して構築してゆく予定だ。

水彩画にふさわしいグリザイユ画法とは?

グリザイユ画法で描かれた油絵 「横たわるオダリスク」

 皆さんは「グリザイユ画法」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

 水彩画教室、特に初心者用の教室ではあまり教えてくれない。だがこのブログでは頻繁に登場する、水彩画を描くにあたってとても有用な技法なのだ。
 今回はこの「グリザイユ画法」についてまとめてみる。

目次

1.グリザイユ画法とは?

2.油絵におけるグリザイユ画法

3.水彩画におけるグリザイユ画法

 3.1シンプルな水彩グリザイユ画法

 3.2下塗りの効果を活かしたグリザイユ画法 

4.水彩画グリザイユ画法の注意点

 4.1不透明色を塗ってはいけない!

 4.2色を重ねすぎてはいけない?

5.まとめ

■グリザイユ画法とは?

 グリザイユ画法とは一言で言えば、先にグレーの諧調で明暗を表現し、その上にモチーフの固有色を重ねて、明暗と材質感両方を表現する方法である。ただしこの画法を使いこなすにはある程度の知識とコツが必要だ。以下に具体的に述べよう。

■油絵におけるグリザイユ画法

 皆さんが子供の頃使用していた、いわゆるマット水彩(学童用水彩絵具)を使っていた頃のことを思い出してほしい。
 下の色に新しい色を重ねると、下の色は消えてしまう。これを不透明絵具と言う。
 実は古くからあるヨーロッパのテンペラ画も、フレスコ画もガッシュも日本画もこの不透明絵具で描かれた絵画である。

 不透明絵具で描かれた絵の出来は最終的に一番上に塗る色の巧みさに左右されると言っていい。だがその常識を覆し、絵具に「透明」な世界を持ち込んだのが「油絵」である。

 不透明絵具は基本的に顔料を高密度で塗るもの。だから一番上の顔料の色だけが反射して私たちの目に入る。(透明絵具の歴史と科学については「絵具の知識 透明水彩は何故美しい?→」を参照のこと)。

 一方油絵では顔料を油に溶かすことにより、顔料自身の透過光と反射光、油層の透過光、反射光が混ざり合って目に入る。
 つまり下の色の上に新しい色を重ねても下の色が透けて見えるようになったのだ。これを「透明絵具」という。

 グリザイユ画法とはこの油絵の透明な性質を利用した技法である。具体的に説明しよう。
 まず先に白と黒の絵具を混ぜグレーの絵具を作る。正当な技法ではグレーの階調を3種類→5種類と徐々に増やしてゆき、まずモノクロの絵を完全に仕上げる。

 そして絵具が完全に乾いてから上にモチーフの固有色を透明な油絵具で薄く塗ってゆく。何層にも薄い絵具層を重ねることにより、画面に複雑な表情を生み出すことができるのだ。
 冒頭に掲げた私の好きなアングルの「横たわるオダリスク」はその代表例として伝えられている。

■水彩画におけるグリザイユ画法

 私は若い頃ずいぶんこのグリザイユ画法を使って油絵を描いていた。その作品は今や所在不明でお見せすることは出来ないが、この画法が私に一番合っているとそのころから思っていた。

 だから水彩画を描き始めた時も、初心者用水彩画教本にある「薄い色から」あるいは「遠くの色から」塗るという描き方ではなく、グリザイユ画法を使ってで水彩を描いてみようと思ったのだ。

■シンプルな水彩グリザイユ画法

 最初に考えたのは、油絵のグリザイユ画法をそのまま使うことだ。
 つまり水彩紙にいきなり白と黒を混合したグレーを塗っていくやり方だ。

 だが実は水彩の場合はこの方法はよろしくない。なぜかというと、油絵の場合は油と絵具の層を何層でも重ねられるので、いったん暗くなった部分も上に白を塗れば改めて反射面ができる。

 ところが水彩画のグリザイユ画法では明るい部分はあくまで水彩紙の「白」い面で反射した光が明るい面になる。
 いきなりグレー系の色を塗ると、その下の白い反射面を消してしまうことになるのだ。

 だから透明水彩の場合は、白と黒の顔料量を調節したグレーではなく、水分の多少つまり顔料の濃度を調整して明暗を出すのが良いようだ。

 この方法を使うと明るい部分は顔料密度が薄いため、下地の白が反射され、水彩画らしい瑞々しさを保つことができる。さらに特定の色相の濃淡でグリザイユを施すと、上に色を重ねた時、混色による色よりも色相の範囲が広がり、表現がより豊かになるというメリットがある。(詳細は「絵具の知識 透明水彩は何故美しい?→」を参照してほしい)

  私の場合はプルシャンブルーでグリザイユの明暗を表現することが多い。またインテリアを描くときにはセピアの濃淡を使用したこともある。

 油絵の作品の色調はグリザイユの上に重ねる透明色の重ね方で決まる。ところが透明水彩の場合は、グリザイユに何色を使うかで絵の色調が決まってしまう。この基本色の選択が作家によってかなり違うのもこの辺りに理由がありそうだ。
 では「水彩シンプルグリザイユ画法」の具体的なプロセスを説明しよう。

 上図はペン描きが終わった状態。モチーフは有名なスペイン、グラナダの「アルハンブラ宮殿」だ。ペンはいつものようにサインペン。水彩紙はラングトンF6号だ。
 なお、今回のメインテーマではないので割愛するが、透視図法を使って簡単に建物を描く方法については「鉛筆はいらない!下書きしない風景画の描き方→」を参照してほしい。

 ②図はプルシャンブルーの濃淡で画面全体にグリザイユを施した状態だ。山の頂部分が薄いグリーンに見えるのは、山の色を意識してグリーンを塗ったたわけではない。
 山頂を覆う真っ白な雪を強調したかったので、マスキングインクで紙面を保護したからだ。
(詳細は「マスキングインクって何?→」を参照してほしい。)

 上が完成図だ。プルシャンブルー一色で描いた明暗の上に、樹種の違いによる色、建物などの固有色を重ねている。

 特別に「影の色」を混色によって作らなくても、下地のグリザイユによる明暗が固有色と重なって優しく、自然な陰影表現ができることがわかるだろう。

 そして最後にマスキングインクを剥がすと、純白の雪が表現できるというわけだ。

■下塗りの効果を活かしたグリザイユ画法

 先に述べた「シンプルグリザイユ画法」では基本的に「ウェット オン ドライ」という画法、つまり乾いた紙面に筆で濃淡を描いた。だから水彩画独特のにじみやグラデーションを使うことができない。林の緑も筆先のぼかしによるものだ。

 そこで最近の私は上述のシンプルなグリザイユ画法に、水彩画の特質を活かすちょっとした改良を加えている。それはグリザイユを施す前に絵の狙いに合わせた色調のグラデーションを施しておくことだ。

 上の絵はグリザイユに先行して、下塗りとして3つのゾーンにグラデーションを施し、その後にグリザイユを施した段階である。

 具体的にプロセスを説明しよう。

 まず空のゾーン。朝の光に反射する水面と空のグラデーションである。
 使用した色はインディアンイエロー、トランスルーセントオレンジ、コバルトターコイズ、コバルトブルーである。

 次に明るい空と対照的に陰の塊となる右側の建物のゾーン。
 使用した色はウィンザーバイオレットとプルシャンブルー。やはりグラデーションを施して塗っている。

 そして残る地面や明るい建物のゾーン。
 使用色はインディアンイエローとウィンザーレッドである。

 この段階では細かなパーツの色調の差は意識していない。いずれのゾーンも水をたっぷり使い、にじみやぼかしの効果を最大限に利用したウェット オン ウェットで描いている。

 そして完全に下塗りが乾いてから、軒下や植え込みの影をプルシャンブルーとウィンザーバイオレットの混色でグリザイユを施している。

 明暗を表現するのに「シンプルグリザイユ画法」用いたプルシャンブルーを単独で使用せず、バイオレットを混ぜたのは。この絵では「陰」の部分に「青」をあまり感じさせたくなかったからだ。

 バイオレットを加えているので、軒の部分はより無彩色に近い陰になっているのがわかるだろう。
 先のシンプルグリザイユ画法よりも水彩画らしいグリザイユ表現ができていることがお分かりだろう。

 次に、この上に固有色を置いてゆく。民家の外壁にはローシェンナー、植え込み部分にサップグリーンを薄く塗り、全体の調子を確認している。
 重ねた色数はごくわずかであるにもかかわらず、下塗りにグリザイユを施してあるので、色数以上の複雑な表現になっていることがわかるだろう。

 この絵の大半はこの段階で完成しているのだが、建物の表現はもう少し手を入れる必要がある。

 空や海のような自然の造形と違って、建物にはシャープな線がある。その線を境に明暗や色相の違いを描き分ける必要があるのだ。

 そのためには再びウェット オン ドライでエッジを表現し、さらにそれを柔らかくぼかすために、部分的にウェット オン ウェットで描き加える・・・。あるいはドライブラシで濃い色を強調する。これを何度も繰り返すことになる。

 何度も水を引き、ウェット状態を作ると、先に影を入れた濃い色がだんだん薄くなる。そんな時は全体のバランスを見ながら、さらに陰を濃くする。
 こうして完成したのが下の絵である。

■水彩画グリザイユ画法の注意点

 ここまで水彩画におけるグリザイユ画法のプロセスを説明してきたが、油絵にはない注意すべき点がある。

■不透明色を塗ってはいけない!

 グリザイユの下塗りが終了したら、上に塗る色は透明色とすること。せっかく明暗の調子を整えたのに、その上に不透明色を重ねるとその明暗を台無しにしてしまう。

 油絵ならば、部分的にグレーを重ねさらに透明色を重ねるという方法もあるが、透明水彩ではほぼ修正は不可能と考えていい。絵具の選択は慎重にすべきである。

 例えば先の絵で私が建物の基本色として重ねた「ローシェンナー」は透明色であるが、同じ茶色でも「セピア」や「インディアンレッド」は不透明なので、使ってはいけない。

 尤も、下地の色の彩度が強すぎると感じた時は部分的に敢えて不透明色を使うということはある。(水彩絵具の透明度については「水彩画の基本!知っておきたいグリザイユ画法と絵具の透明度→」を参照してほしい)

■色を重ねすぎてはいけない?

 透明水彩の場合は、たとえ透明色であっても、何層も重ねると顔料の密度が濃くなり、紙の白が完全に隠れてしまう。
その瞬間から画面の彩度が極端に落ち、いわゆる「濁った」絵になってしまう。
 言い換えると、「その瞬間」を見極めた時がその絵の完成ともいえる。

■まとめ

 水彩画をある程度学んだ人はぜひこの「グリザイユ画法」にチャレンジしてほしい。
 ただし文中に使用した「ウォッシュ」、「ウェット オン ウェット」など聞き慣れない用語、あるいは透明色、不透明色の科学的な理解など基礎知識を知っておくと、より理解が深まると思う。このブログでは関連する記事をいくつか書いている。
 文中に貼ったリンクはもちろん下記のリンクも是非参照してほしい。

透明水彩の用語と基礎知識→

ペンと水彩による風景画の描き方→

水彩画によるミラノ大聖堂の描き方→

絵具の選び方→

絵具とパレットの使い方については→

透明水彩で描く人物画 デッサン編!

この鉛筆デッサンの目的は何だかわかるだろうか?

 「人物画の基礎練習!」と思った人は不正解。私は単なる練習のために安くはない水彩紙に時間をかけて描かない。

 「似顔絵!」ちがう。そんなに似せるための誇張はしていない。

 「鉛筆画の作品!」と思った人も不正解。鉛筆画を生業とするアーチストの作品をみてほしい。おそらくはこの鉛筆画よりももっと強弱が強く、濃いところはほとんど真っ黒であろう。

 正解は「水彩画の下塗り」だ。私の人物画の作法は上図のように鉛筆でグレーの色調を整え、その上に透明水彩を塗るというものだ。以前、鉛筆の線だけで仕上げた絵とその上に透明水彩絵具を施した絵を比較して大まかな制作プロセスを紹介した。(その基本的なプロセスや道具の詳細はこちら→

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人物画の基礎 クロッキーの道具と描き方

人物クロッキーのすすめ

 巷のカルチャーセンターの初心者教室の受講者作品展を見に行ったことがあるだろうか?

 一番多いのが静物画つぎが風景画だ。「人物画」は上級者コースにならないと描かれないようだ。当然だろう。人物画は風景画よりもむつかしい。

 何故かというと、風景画は多少デッサンが狂っても、その風景を見ていない人には、その差がわからない。
 ところが人物画はデッサンが狂うと、たとえそのモデルの人物に会ったことがない人でもすぐに「おかしい」とわかってしまうからだ。

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水彩画入門 色塗りの基礎技法を覚えよう!

  水彩画を描き始めた人へ。あなたは次の言葉を知っているだろうか?
「平塗り」
「ウォッシュ」
「ウェット オン ウェット」
「バックラン」
「リフティング」
知らない言葉が多いのではなかろうか。いずれも水彩画の「塗り」に関する基礎用語だ。

水彩画は誰もが子供の頃から馴染んだ、扱いやすい画材だ。だからと言って、基礎的な知識もなく、全くの直感だけでいい絵が描けるほど、単純な世界でもない。このブログの目的はトップページに書いたように、他人に喜んでもらえるような絵を描くことだ。そのためにはそれなりに基礎の理論とテクニックが必要だ。

絵具や水彩紙の理論については「絵具の選び方」「絵具の歴史と科学」や「初めに買うべき道具」「水彩紙とは?」の記事を参照してほしい。
 デッサンについてはとりあえず「誰でもできるデッサン練習法」と「顔のデッサン、5つの勘違い!」を読んでほしい。
 今回の取り上げるのは水彩画ならではの「色塗りの基礎技法」だ。特に透明水彩の世界では先に挙げたように、案外専門用語が多く戸惑うこともある。人により定義も若干違うようだが、基礎となる考え方に大差はない。一通り理解しておくと、あなたの制作に役立つだつだろう。

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スケッチ好きにおすすめ! 江戸東京建物園

 建物のある風景、古い街並みを描くのが好きな人にとって、「東京はスケッチする場所が少ない!」と思っているのではないだろうか?

 私自身、10年ほど東京で仕事をしていて、そう思っていた。事実、古い町並の証明である国の選定する「重要伝統的建造物群保存地区」は東京には一つもない。

 だがそんな、人におすすめの場所がある。それが「江戸東京建物園」だ。場所は東京都小金井市。「都立小金井公園」内にある。東京駅からはJR中央線で武蔵小金井へ。そこから公園までバスでゆく。1時間と少々で行ける。

 江戸から昭和初期までの建物を移築、保存したもので愛知県犬山市の「明治村」と似たようなテーマパークだ。(「歴史遺産をまとめてスケッチ!明治村」はこちら→)。
 最も都内に位置するだけあって、敷地の広さ自体は明治村の1/10以下である。

 ただ、私が感心したのは「建物園」と言いつつ、「人」が住む場を演出していることだ。明治村はどちらかというと「博物館」であり建物は展示物である。

 この「建物園」では建物は人が住む器であることを意識しているようだ。移築されている建物もいわゆる「名建築」というよりも「懐かしい建物」が多いようだ。いくつか紹介しよう。

 まずは藁葺き屋根の農村(吉野家)。冒頭の写真の建物だ。周囲は緑に囲まれた林の中の一軒家。いい雰囲気だ。

 近づいて見ると、屋根の煙出しから囲炉裏(いろり)の煙が出ているようだ。薄暗い座敷では野良着を着た老人が何やら手作業をしている。農村の生活が演出されていて、まるで歴史小説の1シーンを見るようだ。
 もちろん観光客が話しかければ、建物の由来を説明してくれるに違いない。

 こちらは昭和初期の銭湯「子宝湯」だ。私は子供の頃まさにこんな銭湯に通っていた。

 さすがに、営業はしていなかったが、入口の番台も上が空いた男湯、女湯の間仕切りも当時のままだ。ただこの銭湯は私が行っていた銭湯よりもかなり格調が高い。

 定番の「富士山」はもちろんだが、平家物語の那須与一や弁慶と牛若丸の絵もある。室内の装飾的な造作もなかなか凝っている。

 映画「千と千尋」に出てくる「湯屋」のモデルになったらしいということで、この建物園での人気は随一だという。

 最後に私の一番のおすすめを教えよう。先程の「子宝湯湯のすぐ近く、路地を曲がるとこの風景が現れる。

 何ということはない、木造の古びた建物が並んでいる。感心したのは路地の風景を作り込んでいること。
 まず一番リアルな演出は地面を土のままとしたこと。そして家の前の地面には各家庭が思い思いに鉢植えで季節感を演出する。
 さらに窓の手すりには布団が干してあるという懲りようだ。

 これだけでも、昭和の町の記憶を呼び起こしてくれるに十分なのに、しばらく懐かしさに浸っていると、何と麦わら帽子を被り、首に手拭いを巻いたおじさんが路地に水撒きを始めた。考えて見れば、こんな暑い日に、土埃の舞う道に面した家の住民にとっては当たり前の仕事だ。

これが「向こう三軒両隣」の風景なのだと納得。早速スケッチブックを広げペンを走らせたことは言うまでもないだろう。

P.S.
スケッチ好きな人のために関連する記事を以下にまとめている。参考にしてほしい。

ここが描きたい!日本の風景→

スケッチの旅 日本編→

スケッチの旅 海外編→

スケッチ旅の道具→

iPadとタッチペンで絵は描けるか?

 皆さんの中でiPadでスケッチをしてみたいという人はいないだろうか?

 きっと相当いるに違いない。私自身もそう思っているからだ。

 水彩画は油絵に比べれば、持ち運びも簡単でコンパクトだとはいえ、スケッチブックはもちろん、絵具も筆も水入れも必要だ。しかもウォッシュ→乾燥→ウォッシュ→など水彩画独自の時間のかかる面倒な工程もある(透明水彩の用語と基礎技法についてはこちら→)。

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水彩画で使うペン!あなたならどれを選ぶ?

 ペンと水彩で風景画を描こうと思っている人へ。あなたはどんなペンを使っているだろうか?

 絵画用のペンをインク壺に浸して描くというのが古典的で正当な方法だろう。
 だが現実的に、私のように頻繁にスケッチ旅に出かける者にとっては、やはりさっと取り出し、気軽に描けるペンが欲しい。インク壺を持ち歩くのは正直言って苦痛だ。

 今回は、そんなちょっとめんどくさがり屋の人のために、より簡単で、いい絵が描けるそんなペンは無いか、私なりの経験と、検証結果をお話ししようと思う。

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スケッチ旅行に必要な道具とは

旅先で美しい風景をスケッチしたい!

 最高の時間の過ごし方だ。だが実は持っていく道具を間違えると、せっかくの気分が台無しになることもある。今回は水彩画で風景画を描いて見たいという方のために、私のお薦めの画材をお伝えしよう。

スケッチブックの選び方は?

 リング綴じのものとブロックタイプのものがあるが、短時間で何枚も描く屋外スケッチにはリング綴じの方がいい。
 通常、水彩画教室などでは大きいスケッチブックを指導されると思うが、私は初心者には小さめのサムホールや0号をお薦めする。私自身の経験で言えば大切なことは

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絵具の知識 透明水彩は何故美しい?

■透明水彩は何故美しい?

 プロの水彩画家が描く水彩画はなぜ美しいのだろう。もちろん絵の才能があるから。だがそれよりももっと直接的、絶対的な差がある。それは子供の頃使っていた、マット水彩絵具(学童用半透明水彩絵具)ではなく、プロ用の透明水彩絵の具を使っているからだ。

 まず発色がよく美しい。透明感がある。どういうことかというと、マット水彩絵の具は絵具を重ねると基本的に下の絵具は消えてしまう。しかし透明水彩絵の具では下の色は消えず上に塗った色と澄んだ状態で重なり合うということだ。特に水彩紙の上に塗ったときの美しさには不思議な感動さえ覚える。今回はその感動は何故起きるのか調べてみた。

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下書きはいらない!建物のある風景をペンで描く

 皆さんは風景画を描く時、下書きに何を使うだろうか?

 おそらく鉛筆だろう。何故なら大半の水彩画教本には、2Bから4Bの柔らかい鉛筆で下書きをし、色を塗って仕上げた後、最後に邪魔な下書きの線を消すという手法が書かれているからだ。

 もちろんその方法に文句はない。王道だと言っていい。でも下書きをしない方法もある。ペンでいきなり風景画を描き始める方法だ。

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