「絵を描くことであなたの人生は充実する!」

■「美緑(みりょく)空間」とは?

 このブログのタイトル「美緑(みりょく)空間」は私の絵描きとしての世界観を表している。

 「美緑」とは生命感のこと、「空間」とは人の存在する場のことだ。 その二つが一緒になった美緑(みりょく)的な空間を描くことが私の創作活動の目的だ。

 ゆえに私の絵には、自然と共にある人や建物は登場するが「人を寄せ付けぬ秘境」は登場しない。誰もが自分の部屋に飾って安らげる、優しい絵を描きたいのだ。

 そして絵は美術館で見るものではない。 自分の身の回りで、いつも目に触れるものでありたい。

 だから出来るだけ多くの人に「アートのある生活を」提供したい。 いずれは世界中の家庭に。

 それが私の夢だ。

■絵描きとは何をする人?

 夢の実現に、何をすべきか。私の絵描き活動を紹介しよう。

異国の情景を求めて旅をする

 毎年海外へスケッチ旅行に行くことにしている。といっても私の生活にそれほど金銭的余裕があるわけではない。

 ただ、生涯で描きたいと思う場所を、リストアップすると、残りの人生、毎年スケッチに行かないと描ききれないと悟っただけだ。
 だから人生の予算のうちの「海外スケッチ費用」を絶対的なものとしてカウントしている。

 生涯計画のなかで年間20万円程度の旅行費用など、誰でも、きっと何とかなるはずだ。なにしろ朝から晩まで、初めて見る異国の美しい風景を好きなだけスケッチできるのだ。

 これ以上の人生の喜びは無い。(カテゴリ「スケッチの旅海外編→」を参照)
 絵の好きな人は自分で、描きたいところをリストアップしてみてほしい。そして生涯のスケッチ計画をしてほしい。

 私と同様、きっとすぐに、来年の飛行機の早割りチケットを予約したくなるはずだ。(「海外スケッチの旅5つの心得→」を参照)

旧き良き日本の風情を求めて旅をする

 個展の計画をするときは、海外だけでなく、日本の風景もあったほうがいい。
必ずしも見に来てくれるお客様が海外の風景にあこがれているとは限らないからだ。

 私の経験で言えば、日本人なら誰もがあこがれる風景がいい。「ここ、行ったことがある!」とわかるとそれだけでその絵に好感を持ってもらえる。今までに売れた風景画はたいていそのパターンだった。

 日本の旅は年初に一年分の計画をする。行く先は主に国が選定した「重要伝統的建造物群保存地区」からリストアップしている。現在全国に120箇所ほどあり、私が描いた町はまだ約30箇所に過ぎない。

 こちらも出来れば生きている間に全て描きたいと思っている。楽しみだ。(私の風景画の描き方に興味のある方はペンと水彩で描く風景画の魅力とはを参照してほしい)

 なお私がスケッチした場所と絵描きとしての個人的感想を一覧表(「ここを描きたい日本の風景→」を参照)にしておいた。これからスケッチ旅行に行こうと思っている人は参考にしてほしい。このリストは現在も作成中で随時更新していくつもりだ。定期的にチェックしてみて欲しい。

魅力的な女性を描く

 美しい女性を見て感動するのは誰でもできる。だが、その女性の魅力を自分の手で画帳に表現することは絵を描く人にしかできない。そしてこの楽しみは絵を描かない人には永遠にわからないのだ。(「私の人物画が売れた訳→」を参照)

 しかし実は人物画を描こうとすると、たちまち直面する問題がある。初めての個展で人物画を出品したとき、友人の最初の質問はほとんど「モデルは誰?」だった。

 つまり、風景は自分で好きに対象を選べるが、人物はそうはいかない。相当の「大家(たいか)」と呼ばれる画家でも好みのモデルを探すのに苦労しているそうだ。

 私の解決法は近所の「人物画教室」に通うこと。来ている人が全員でモデル料を分担するので安く済むからだ。もちろん、モデルさんも、服装も、ポーズも自分の望むようにはならない。

 それでも画力の向上に枚数を描く事は絶対に必要だ。大いに利用させてもらっている。(「素描をデッサンだけで終わらせない!私の人物画作法とは→」を参照)

作品集「美緑(みりょく)空間」

作品集(絵描きとしての活動記録)を執筆、出版する

 最初の個展のとき私の作品をテーマにした本「美緑(みりょく)空間」を自費出版した。作品制作時の想いを添えている。わかりやすくて面白いとなかなか好評だった。この時は旅の記録が中心であったけれど、今後は多くの人が絵を描きたきくなるような「役立ち記事」を充実するつもりだ。

 そして書籍は個展を開くよりも、より多くの人に美緑(みりょく)空間の世界観を伝えてくれる可能性がある。だからいずれVol.2も発行したいと考えている。

美術館、博物館の作品を観て感性を磨く

 アートにはインプットが必要だ。
 どんな天才芸術家でも作り続けるだけの行為、アウトプットだけを続ければいずれアイデアは枯渇する。そうならないために、インプットつまり美的な刺激が必要だ。

 自分が描くジャンルの絵を見ることだけがインプットではない。敢えて違うジャンルの作品を見ることも多い。(例えば「美術館で見た茶室の不思議→」を参照→)

 刺激は美術館だけではない。歴史的な建造物にも美的感覚は刺激される(例えば「戦国時代の技が生んだ日本の美とは →」を参照)。

このブログ「美緑(みりょく)空間」で情報発信する。

 私がブログを始めたのは約10年前だ。個展を開く自信も、具体的戦略も無かったころ、なんとなくブログなら自分の感性を発信できるのではないかと考えたのだ。

 だがネットによる情報発信効果は私の予想を超えていた。例えば、最初の個展を開いた当時、訪れる人は私の知り合いばかり。案内状を見て作品を目的に来てくれる人はほとんどいなかった。

 ところが前回の個展は、半数近くがSNSを含めたネット情報をみて来てくれたお客様だった。つまり知り合いだから来たのではなく、絵を見たいから来た人が大半だったのだ。

 ネットを利用した情報発信は今やアーチストに欠くことのできないもうひとつの武器だと思っている。

 ちなみに私はSNSでも情報発信している。フェイスブックでは失敗作も含め活動状況を、インスタグラムでは主に海外への発信を意識している。それぞれのURLは以下のとおりだ。
・フェイスブックhttps://www.facebook.com/yoshine.kato
・インスタグラムhttps://www.instagram.com/painter_yoshine

■個展を開くだけで満足してはいられない!?

2度目の個展風景

 幸い、過去3回の個展は好評だった(と思っている)。自分の作品を見てもらい、感想を聞き、見知らぬ人とコミュニケーションが出来る。

 実に楽しい。喜んでもらい、絵が売れれば収入も得られる。金額の多寡ではない。サラリーマンの給料とは一味違う報酬だ。

 でも実は気がついた。このまま個展を繰り返すだけの活動でいいのだろうかと。もちろん私個人はそれなりに楽しく充実した人生だ。

 しかししょせんは私一人の活動。絵が売れればその作品はお客様一人の物になり、「より多くの人に」見てもらうことは出来ない。

 まして「全ての家庭にアートを」提供することなど永久に出来ない。もちろん大作家の作品ならば画商が企画し、バイヤーを世話し、相当の高値で売るという従来の商業的形態はある。

 だが、そんな高値売買の、限られた時間と場所と人脈が支配する世界では、普通の家庭が、いや世界中の家庭で「絵を飾って生活を楽しむ」ことはできないのだ。

■ブログ「美緑(みりょく)空間」を訪れたひとへ

 そこで提案がある。たぶんこのブログを訪問してくれた方は、絵を見るのが好き、あるいは自分でも少し描く、あるいはすでに相当描けるセミプロの人だろう。

 絵を見るのが好きな人はまず自分で描いてみてほしい。少し描ける人は、画力をつけて、リビングに飾ってもらえるレベルになってほしい。

 セミプロの人は、個展を開いて作品を少しでも多くの人に見せて、感動させてほしい。

よく考えれば「全ての家庭にアートのある生活を」提供するのは私だけである必要はない。感動させる人が多ければ多いほどいいのだ。

■アートギャラリー「美緑(みりょく)空間」のメンバー募集

 先の提案は、言い換えれば、私の個人的活動目標を皆さんに押し付けるというものだ。なんて身勝手な。

 そこで考えた。ネットの持つ情報発信力の可能性は先に述べたとおり。この際このブログを利用して私のような絵描き活動をしてくれる仲間を集めたい。

 名前は絵を描いて見せる場なのでとりあえず「美緑(みりょく)空間アートギャラリー」とし、そのメンバーを募集したいと思う。

 入会資格は絵が好きなこと。それだけだ。当然会費は無料だ。自分で絵を描き、いずれは絵描きとして活動をするために必要な情報をこのギャラリーメンバーで共有したい。具体的な内容はメンバーになってから・・・。

メール配信その他のシステムは現在構築中だ。もうしばらく待ってほしい。

P.S.
 私のブログには以下の6つのカテゴリがある。
スケッチの旅 日本編
スケッチの旅 海外編
絵画上達法
絵描きとして生きるには
ためになる美術講座
加藤美稲Painter_Yoshineはどんな人?
加藤美稲Painter_Yoshine 作品集水彩画
 どれも絵を描こうと思う人にとって有用な記事だと自負している。しかし残念ながら私の経験または意見を一方的に発信するだけのものだ。

 また仮に来訪者とメールアドレス交換をして個別に意見交換するとしたら、必ずしも私の考えに賛同しない、不特定多数の人に対応しなければならない。

 これでは、相当の手間がかかり本来の活動目的とずれてしまう。だからこのブログとは別に、世界観を同じくする特定の仲間とサークル的な活動をする場を設けたいと思ったのだ。

 ギャラリーメンバーは最低限自分で絵を描き、上達し、人に見せて、喜んでもらうことを目指してもらいたい。もちろん私の知識と技術の提供は惜しまない。

 しかし単なる画力向上が目的ならばそのための出版物はいくらでもある。ここではむしろメンバーとのコミュニケーションを大切にしたいと考えている。

 私の作品の制作プロセスやそれについての個別の質問を受けようと思う。これから絵を描くという人には大いに参考になるはずだ。すでに画力のある人は、作品を見せてもらい、メンバー間でのテクニック自慢をしてもらってもいいだろう。

 メンバー全体の実力が上がってくれば、ネット上で展示会を開くのもよい。いずれは(適正価格で)売れる仕組みも作り、世界中に広がれば「美緑(みりょく)空間」の本来の夢の実現に近づくことになる。

 どんなメンバーが集まるかもわからないので、 具体的な方法は未定だが、メンバーが集まれば意見交換して構築してゆく予定だ。

もっと知りたい水彩画の魅力!水彩紙とは?

 さて、水彩画を描き始めると、水彩紙の良し悪しで作品の出来栄えが変わることに気づくだろう。水彩紙の基本の性能とグレード、コスト比較についてはこちらhttps://miryoku-yoshine.com/first-watercolor-paper-to-buy/で紹介しているので、先に一読してほしい。
 ここでは、水彩紙をさらに極めたい方へ、あるいはプロの水彩画家を志す人のためにさらに詳しい情報をお届けする。かなり科学的、専門的、マニアックな話になるがご容赦願いたい。

続きを読む

建物のある風景を描く…北野天満宮

魅力ある風景画を描く秘訣は?

 一番簡単な方法は「魅力的な建物のある風景を描くことだ」。

 もちろん普段の私たちの生活では見られないヨーロッパの建築を描ければいうことはない(「スケッチの旅海外編→」を参照)

 だがそうそう海外でスケッチするチャンスがあるわけではないだろう。だから日本で魅力的な建物を見つけることになる。

魅力的な建物を探す

 ところが日本の宗教施設である神社はヨーロッパの教会建築と違い由緒ある本殿ほど一般人には見られない。

 もちろん教会建築もいわゆる御神体は厳重に守られているものの、どんな大きなキリスト教会でも祭壇に近付いて祈ることができる。私自身どこをスケッチしていても咎められたことはない。

 神々しさを「絵にする」ことが許されないのは日本の「神社」くらいではなかろうか。伊勢神宮しかり、出雲大社しかりだ。(「神代の風景か? 出雲大社を描く」→参照)

天満宮とは

 そんなわけで神社を描こうとすると、いつもストレスが残るのだが、実は神社の中でも全国に1万以上あると言われる「天満宮」は別のようだ。

 というのはまず祀ってあるのは「神」ではなくあの菅原道真公であること。「学問の神様」と呼ばれているが、あくまでも「人」である。

 そのせいか、建物には「荘厳」「厳粛」という言葉よりもむしろ「品の良さ」「立派さ」を感じてしまうのは私だけだろうか?

京都…北野天満宮を描く

 中でも京都の北野天満宮はその総本社であり、本殿は国宝である。一の鳥居から楼門を通り本殿に続く参道は存分に日本の神社の風情を見せてくれる。そして境内の正面に拝殿、その奥に本殿がある。

 もっともこの建物は原初的な神社と違い本殿と拝殿だけのシンプルな構成ではない(「建物のある風景を描く 平野神社→」を参照)。現状の建物は江戸時代初期に建てられたもので、両者と「石の間」、「楽の間」をつなぐ「八棟造り」という形式の神社だという。

 正面から見る拝殿は立派だが、いかに国宝とはいえ、左右対称の構図は絵としてはつまらない。幸いこの神社は本殿の周囲を歩いてスケッチできる。歩くにつれて「八棟造り」の複雑な屋根が華麗な姿を見せてくれる。

 冒頭の写真をみてほしい。美しい桧皮葺の屋根は、素材感は優しいのに、構成はダイナミックだ。何層にも重なる屋根の造形は実にバランスがよく、構図的には文句なく魅力的な絵になりそうだ。

 続く写真に見られるように各所のディテールも美しい。柱、梁、屋根周りの金細工は密度が高く、どれも超一流の工芸品だ。

 あらためて思う。巷の「神々しい」神社と違って、この国宝はそのすばらしさを惜しげもなく、すぐそばでみせてくれる。学問の神様は探求心旺盛な絵描きには優しいようだ。

P.S.
このブログでは文中にリンクを張った以外にも関連する記事を書いている。興味ある人は参考にしてほしい。

■カテゴリ「絵画上達法→
■「スケッチの旅日本編→
■「加藤美稲水彩画作品集→
■「ここを描きたい日本の風景!→
ペンと水彩で描く風景画の魅力とは→
■「建物のある風景の描き方→

ここを描きたい日本の風景!

 水彩で風景を描き始めたあなた。身近な風景を描くのも楽しいが、旅先で描く風景も楽しいものだ。あなたは次の休みどこにスケッチに出かけるつもりだろうか?

 せっかく行くのだから気持ちのいい素敵な風景画描きたいと思うだろう。だが世の中のガイドブックは案外あてにならない。何故なら絵を描く人を対象に書かれていないからだ。そこで言わば「後悔しないスケッチ」のための「お薦めの旅先リスト」をまとめることにする。

続きを読む

透明水彩のピンクはどうやって作る?

水彩画を描き始めた人へ

 自分のパレットを見てほしい。よく使う色、減りの早い絵具はどれで、使わない色はどれだろう。

 風景画を描く人は空の「青」や森の「緑」は必須だろう。木を描くには茶色も必要だ。緑には黄色も混色するだろう。だが多分赤色はあまり減っていないだろう。自然界にはあまり派手な赤はないからだ。

 私も風景画ではあまり赤を使わない。だが実は一年に一回だけ大量に赤を使う時がある。それは「桜」の風景を描く時である。

 桜の花は何色かと問われれば「淡いピンク!」と答えるだろう。だが実は水彩画では淡いピンク色の絵の具は売っていない。そして赤、青、黄の三原色を混ぜて作ることもできない。

 ではどうするか。油絵ならば赤に白を混色して作ればいいのだが、水彩画の場合は白を混ぜると透明感が無くなってしまう。(「水彩画の基本!知っておきたいグリザイユ画法と絵画の透明度→」を参照)

 だから赤を水で薄めてピンクを作ることになる。簡単といえば簡単なのだが実はこれが難しい。特に淡い桜のピンクは混色すると濁るのできれば単独色をそのまま水で薄めて桜色として使いたい。ならば一体どの赤絵具が桜のピンクにふさわしいのだろうか?

 今回はそんな水彩の「赤色」絵具で理想のピンクを作る方法を考えたい。

目次

◾️水彩の「赤色」絵具の種類

◾️赤色絵具の色相と彩度をチェックする

◾️赤色絵具の透明度をチェック

◾️まとめ

◾️水彩の「赤色」絵具の種類

 私のパレットにある赤絵具は冒頭の写真にある6色である。右上から反時計周りでカドミウムレッド、ローズドーレ、スカーレットレッド、ローズマダー、パーマネントローズ、アリザリンクリムソンである。 スカーレットレッドだけはシュミンケホラダム、あとはウィンザーニュートンだ。(「透明水彩入門! 絵具とパレットの使い方を知っている?」を参照)

◾️赤色絵具の色相と彩度をチェックする

 はるか昔、12色の固形絵具セットを使って桜の風景を描いたことがある。そのセットにあった、ただ一色の赤、クリムソンレークを水で薄めて桜の花を塗ったが、ちょっと赤すぎると感じた記憶がある。

 今回はそんな過去のあいまいな記憶は捨てて、厳密に比較しようと思う。まず6色を比較して最も「真紅」に近いと感じるのは下段中央の「パーマネントローズ」で彩度が高く鮮やかだ。その左ローズマダーはやや白っぽく、右のアリザリンクリムソンはやや黒っぽい。

 それに対して上段の三色はいずれも赤にやや黄色が入りオレンジ寄りの赤である。左からスカーレットレッド、ローズドーレ、カドミウムレッドの順でオレンジに近くなる。一番彩度が高いのはスカーレットレッド、次がカドミウムレッドでローズドーレはやや白っぽい。

上下2段の傾向を比較すると、やはり下段は赤すぎる。単独の色として使うなら桜というよりバラの花向きの色だろう。その昔桜色に使ったクリムソンはどんなに水に薄めてもやはり桜の「ピンク」とは違と思ったのは正しかったのだ。

淡いピンクの桜色にふさわしいのは、たっぷり水で薄めたスカーレットレッドあるいはローズドーレであろう。

◾️赤色絵具の透明度をチェックする

 だが水彩絵具は色味だけでは使えない。透明度を考慮しないと思うような絵は描けないことはすでに述べた通りだ。(「水彩画の基本!知っておきたいグリザイユ画法と絵具の透明度→」を参照)

 そこでまず上下を濃く、中央にかけて紙の白を残すように下地を塗った水彩紙を用意する。水を引いたその水彩紙に水をたっぷり含んだ筆で先の赤6色を垂らした状態が上図である。

 厳密に絵具の量を図って垂らしたわけではないので、各色まったく同条件とは言い難いが、それでもとても貴重な結果が得られたと思っている。以下に概略結果を示そう。

 まず見てほしいのは、水で薄めたピンクの部分だ。通常透明水彩は水で薄めれば下に塗った色が上の色と重なって見えてくる。だから原則的には水で薄まるにつれて赤→紫→青に見えるはずだ。

 一番透明感ある典型的な赤色はパーマネントローズだ。同心円状に赤→紫→青が見える。それに対して、上段のスカーレットレッドとカドミウムレッドは周辺部の薄い部分でも青は見えずほとんど白っぽくなってしまう。

 実はこの事実は予測されたことでもある。何故なら赤は黄色などに比べると一般に透明度が高い絵具が多い。今回の6色のうち4色はメーカーで表示する「透明色」だが、スカーレットレッドは半不透明色、カドミウムレッドは不透明色である。先に述べた「下地の青色」を消してしまう現象はこの2色が不透明であることによる。

◾️まとめ

 今回の実験結果には私自身とても満足している。結論を言おう。桜の淡いピンク色はローズドーレまたはスカーレットレッドを水で薄めて作れば良い。

 ローズドーレは透明色。だからその淡いピンク色を引き出すには下地の明るさが決め手だ。

 一方スカーレットレッドは水分の多少により鮮やかさに相当の差がある。濃く塗るとあまりにも鮮やかで桜色には見えない。だが相当量の水で薄めると実にいいピンクになる。しかし不透明なので下の色はほとんど消してしまう。透明水彩の良さをある意味消してしまう色だともいえよう。

 もっともそれは必ずしも悪いことではない。グリザイユ画法を使う時など下地に陰色として青や紫を使うことがよくある。ところが桜のような淡い色を上に重ねると「青」が強すぎると感じる時がある。

 そんな時は、ローズドーレではなくスカーレットレッドを使えばいい。水で薄めて淡いピンク色にしても下地の青を弱めてくれる。その後の色調整がしやすいのだ。

 ピンクは「赤色」を水で薄めるだけ…だがその表現技術は奥深いものがある。みなさんも来年の桜を描くときにこの記事を思い出してほしい。きっと役に立つはずだ。

p.s.
 このブログでは文中にリンクを貼った以外にも、以下のような関連記事を書いている。興味のある方は参照してほしい。

◾️カテゴリ「絵画上達法→
◾️水彩画を始めた人へ!プロが選ぶ絵具とは?

京都の秋…大原を描く

京都を描くなら…

 風景画が好きな人にとって、京都は最も描きがいのある町だろう。世界遺産の寺院がいくつもある上、交通の便が良い。新幹線はもちろんのこと、市内は地下鉄、阪急、京阪、JR、その他私鉄が通っており、どこの寺院でもアクセスは比較的容易だからだ。

 だから京都をスケッチし始めると、三十三間堂、清水寺、知恩院、南禅寺など市内の寺だけですぐにスケッチブックはいっぱいになるに違いない。

続きを読む

水彩画入門!大きな絵はどうやって描く?

普段小さなスケッチブックで描いている人へ。そろそろ大きな絵が描きたくなってきたのではなかろうか?

理由は色々だろう。「大きな絵は気持ちがいいから」あるいは「公募展に出そうとしたら、要項に20号以上と書いてあるから」などなど。

でも油絵なら20号のキャンバスは売っているが、水彩用のそんな大きなスケッチブックは売っていない。

今回はそんな初心者のために「大きな絵を描く」段取りと注意事項を教えよう。

目次

1.大きな水彩紙の入手方法
1.1水彩紙
1.2パネル

2.水張りの仕方
2.1パネルよりも小さい水彩紙の場合
2.2パネルよりも大きな水彩紙の場合

3.大きな絵を描くための道具と注意事項

続きを読む

建物のある風景を描く 平野神社

建物のある風景を描くのが好きだという人はそれなりに多い。私もその一人である。だが実は同じ建物でも「神社」のある風景は絵になりにくい。何故か?今回は神社の基本解説とその一例、平野神社のスケッチを紹介する。

目次
1.神社が絵になりにくい訳
2.神社の様式の基本
3.平野神社の特徴
4.平野神社をスケッチしてみた!


神社が絵になりにくい訳

 冒頭の私の質問がピンときた人は相当建築に詳しい人だ。答えは「本殿がスケッチできない」からだ。

 神社はとても神聖な建物で神の宿る本殿は普通の人は入ることはもちろん見ることも難しい。

 一番格式の高い伊勢神宮では本殿は遥か彼方にあり、皇室の血縁者だけが側で参拝できる。一般の人は近寄ることも、建物を見ることさえもできない。伊勢神宮のシンボル写真がはるか手前の五十鈴川に架かる橋の鳥居なのもそれが理由だ。

 伊勢神宮のように大きくなくても、大抵の神社は本殿と拝殿がセットになっていて私たちが目にするのはその拝殿であり、神社建築独特の屋根とその上にある鰹木や千木も拝殿に隠れて見えない事が多い。

 「風景画」を「人の生活を表現したもの」と定義するなら神社は最も縁遠い風景なのだ。

神社の様式の基本

 だが神社建築は日本独自の文化的な遺産であることに違いない。日本人の絵描きとしては神社を描きたいと思うのも本音である。そういう人のために、神社建築の基本だけ説明しておこう。

 日本の神社には二つの形式的な系統があった。言うまでもなく伊勢神宮と出雲大社である。両者の決定的な違いは前者は平入、後者は妻入りである事だ。共通要素は両社とも直線的な切妻屋根を持つことだ。

 伊勢神宮の建物を「唯一神明造り」、出雲大社を「大社造り」という。だが実は私たちの周りに、この両者に代表される形式の神社建築はあまり多くない。

 その理由は二大神社である社をそのまま真似するのが畏れ多いこと、構造的に進化してゆくこと、優美な日本文化と融合したことなどが挙げられる。

 出雲大社の妻入り形式を受け継いだのが「春日造り」、伊勢神宮の平入の形式を受け継いだのが「流れ造り」である。

 後代の春日造り、流れ作りと古来の大社造り、唯一神明造りとの違いは、入り口に庇のような小屋根がついたことと、屋根が曲線になりイメージが優美になったことである。さらに建物のパーツも朱塗りで華やかになった。

 私たちが普段目にする神社の大半は平入屋根の入り口部分が長く伸びて庇状になった流れ造りだと思う。散歩がてら近所の神社をもう一度見て欲しい。

平野神社の特徴

平野神社はもう一方の発展した形式、「春日造り」である。妻入りの建物の正面に庇がついている。切妻の屋根の一方をそのまま伸ばして庇とする流れ造りよりも建築的には複雑だ。

この様式の代表例は言うまでもなく奈良の春日大社。配置図を見ると、本殿は春日造りの建物が独立して4棟並んでいる。

 だが例に漏れず、この本殿は写真撮影禁止だ。通常は手前の中門から参拝し、本殿は見ることはできない。

 それに対して平野神社は本殿の全貌を間近に見ることはできないものの、拝殿の後ろに、切妻の本殿が4棟並ぶ姿を誰でも見る事ができる。素晴らしいことだ。

 せっかくの日本建築の遺産、どんなに高貴な建築でも「見せないことが」良いことだとは私は思えない。いつかどんな神社の本殿でも誰もが見られるようになってほしいと思う。

 さらに調べてみると、同じ春日造りでもこの平野神社の本殿は2棟づつ連結した建物が並んだ「比翼春日造」別名「平野造り」と呼ばれる貴重な建物らしい。

スケッチしてみた!

 つまり平野神社は学術的に貴重な建築様式であり、かつ本殿が誰でもスケッチできるという珍しい神社なのだ。冒頭のスケッチをご覧いただきたい。神聖な森を背景に4つの本殿の屋根がリズムカルに並ぶ様は神々しく、かつとても美しい。すぐにスケッチブックを広げたことは言うまでもない。

 ちなみにこの絵のままの姿を普通に写真に撮ることはできない。何故なら通常は下の写真のように、手前の拝殿の柱や軒が邪魔して視界は遮られてしまうからだ。

その点、スケッチなら風景画にとって不要なものは自由にカットできる。これもまた絵描きの特権である。

P.S.
今回の記事に関連する記事を以下に記す。興味ある方は参考にしてほしい。
■カテゴリ「ためになる美術講座→
■私の作品実例は「加藤美稲水彩画作品集→
■「神代の風景か? 出雲大社を描く→
■「ちょっと風変わり?伊勢神宮お膝元の町並みデザイン!→
■「ここを描きたい日本の風景!→

空の色は何故グラデーション?

 風景画を描くのが好きな人へ。あなたは晴天の空をどのように塗るだろうか?もちろん青い絵具を使うだろう。だが空の青は国によっても違うし、季節、時間、見る角度によっても違う。一色の絵具で描き切れるほど単純ではない。

 今回のテーマは空の色だ。と言っても描き方を考えるわけではない。空の色の不思議を科学的に考えたいと思う。(描き方を知りたい人は「水彩画入門!美しいグラデーションの作り方→」および「水彩画入門!空と雲の描き方は?→」を参照)

目次

1.色の基礎知識
2.空はなぜ青い
3.夕焼けはなぜ赤い
4.青空のグラデーションはなぜ出来る?
5.まとめ

続きを読む

水彩画上達法!マスキングインクを使いこなす!

 水彩画を精力的に描き出したあなたへ。
 このブログでお勧めしたような水彩紙、筆、絵具などの「描く」道具についてはもう理解していただいていると思う(カテゴリ:絵画上達法を参照)

 だが透明水彩は紙の「白」を塗り残すのが基本。だから絵具から下地を「隠す」道具が必要だ。それが「マスキングインク」だ。その基本的な使い方については「水彩画の道具マスキングインクって何?→」ですでに触れた。この記事を読み進める前に目を通してほしい。

 また、私の作品紹介で以下に具体的な使用例を記しているので、参考にしてほしい。
 「水彩画入門色塗りの基礎技法を覚えよう!
 「ペンと水彩で描く風景画!ミラノ大聖堂を描く秘訣は?
 「水彩で描く風景 角館の武家屋敷
 「水彩で描く風景画 相倉と菅沼の山村
 「水彩で描く風景 世界遺産姫路城
 「水彩で描く風景画 アルハンブラ宮殿

続きを読む

鉛筆画の消す技術と道具

 鉛筆は絵描きにとってある意味、主役となる道具である。石膏デッサン、人物デッサンをそれだけで完成させることができるし、水彩画の下書きとして風景画にも使用できる。とても表現豊かな画材なのだ。

 一方消しゴムや練りゴムなど、「消す道具」は一般的には脇役で、教本で取り上げられることもほとんどない。でも「消す技術」なしには、鉛筆の持つ本来の表現力は決して発揮できない。

 今回はそんな鉛筆画の「消す」技術と「道具」について考えたい。

続きを読む