3.絵描きとして生きるには

私の人物画が売れた訳は・・・

 2度目の個展の時、それまであまり評判の良くなかった私の人物画が初めて売れた!

 何故だろう?本心は買っていただいた方に聞かないとわからない。だが、私なりに最初の個展以来、人気の無い人物画(「失敗しない個展の開き方→」を参照)にこだわって工夫を重ねた点がいくつかある。今回は「売れた訳」を推測しようと思う。あなたの絵描き活動にもきっと役立つはずだと思うから。

何故私が人物画を描くか

さてその前に、なぜ私が人物画、それも女性像を描くかということに触れたい。

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自分の絵をギャラリーに飾ろう!

 「絵の好きな人」から「絵を描く人」になったあなたへ。

 そろそろ自分の絵を額に入れて飾ってみよう。もちろん自身のある人はグループ展に参加する、個展を開く、公募展にチャレンジしてもらっていい。
 だがまだそこまでの自信がないという人もいるだろう。そんな人にお勧めする。自分の家、いや最初は自分部屋でもいい。ギャラリースペースを確保してみよう。

そして自分の描いた絵を額に入れて飾るのだ。

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そろそろ腕試し!公募展に応募してみよう!

 絵を描き始めたあなたへ。そろそろ腕試しがしたくなったのではないだろうか?

 私のプロフィールを見てもらえればわかるが、私は芸大を出たわけでもないし、特に絵の先生に師事したこともない。だから自分の腕がどれほどのものか、評価してくれる人もいなかった。

 もちろん個展を開くようになってからは新聞やネットの個展の記事を見て、ファンになってくれた人もいる。だがいわゆる「他流試合」というものを知らない。そんな時気になるのが「公募展」だ。自分の絵が世の中で通用するものかどうか、応募したくなる。当然の帰結だろう。

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「絵を描くことであなたの人生は充実する!」

■「美緑(みりょく)空間」とは?

 このブログのタイトル「美緑(みりょく)空間」は私の絵描きとしての世界観を表している。

 「美緑」とは生命感のこと、「空間」とは人の存在する場のことだ。 その二つが一緒になった美緑(みりょく)的な空間を描くことが私の創作活動の目的だ。

 ゆえに私の絵には、自然と共にある人や建物は登場するが「人を寄せ付けぬ秘境」は登場しない。誰もが自分の部屋に飾って安らげる、優しい絵を描きたいのだ。

 そして絵は美術館で見るものではない。 自分の身の回りで、いつも目に触れるものでありたい。

 だから出来るだけ多くの人に「アートのある生活を」提供したい。 いずれは世界中の家庭に。

 それが私の夢だ。

■絵描きとは何をする人?

 夢の実現に、何をすべきか。私の絵描き活動を紹介しよう。

異国の情景を求めて旅をする

 毎年海外へスケッチ旅行に行くことにしている。といっても私の生活にそれほど金銭的余裕があるわけではない。

 ただ、生涯で描きたいと思う場所を、リストアップすると、残りの人生、毎年スケッチに行かないと描ききれないと悟っただけだ。
 だから人生の予算のうちの「海外スケッチ費用」を絶対的なものとしてカウントしている。

 生涯計画のなかで年間20万円程度の旅行費用など、誰でも、きっと何とかなるはずだ。なにしろ朝から晩まで、初めて見る異国の美しい風景を好きなだけスケッチできるのだ。

 これ以上の人生の喜びは無い。(カテゴリ「スケッチの旅海外編→」を参照)
 絵の好きな人は自分で、描きたいところをリストアップしてみてほしい。そして生涯のスケッチ計画をしてほしい。

 私と同様、きっとすぐに、来年の飛行機の早割りチケットを予約したくなるはずだ。(「海外スケッチの旅5つの心得→」を参照)

旧き良き日本の風情を求めて旅をする

 個展の計画をするときは、海外だけでなく、日本の風景もあったほうがいい。
必ずしも見に来てくれるお客様が海外の風景にあこがれているとは限らないからだ。

 私の経験で言えば、日本人なら誰もがあこがれる風景がいい。「ここ、行ったことがある!」とわかるとそれだけでその絵に好感を持ってもらえる。今までに売れた風景画はたいていそのパターンだった。

 日本の旅は年初に一年分の計画をする。行く先は主に国が選定した「重要伝統的建造物群保存地区」からリストアップしている。現在全国に120箇所ほどあり、私が描いた町はまだ約30箇所に過ぎない。

 こちらも出来れば生きている間に全て描きたいと思っている。楽しみだ。(私の風景画の描き方に興味のある方はペンと水彩で描く風景画の魅力とはを参照してほしい)

 なお私がスケッチした場所と絵描きとしての個人的感想を一覧表(「ここを描きたい日本の風景→」を参照)にしておいた。これからスケッチ旅行に行こうと思っている人は参考にしてほしい。このリストは現在も作成中で随時更新していくつもりだ。定期的にチェックしてみて欲しい。

魅力的な女性を描く

 美しい女性を見て感動するのは誰でもできる。だが、その女性の魅力を自分の手で画帳に表現することは絵を描く人にしかできない。そしてこの楽しみは絵を描かない人には永遠にわからないのだ。(「私の人物画が売れた訳→」を参照)

 しかし実は人物画を描こうとすると、たちまち直面する問題がある。初めての個展で人物画を出品したとき、友人の最初の質問はほとんど「モデルは誰?」だった。

 つまり、風景は自分で好きに対象を選べるが、人物はそうはいかない。相当の「大家(たいか)」と呼ばれる画家でも好みのモデルを探すのに苦労しているそうだ。

 私の解決法は近所の「人物画教室」に通うこと。来ている人が全員でモデル料を分担するので安く済むからだ。もちろん、モデルさんも、服装も、ポーズも自分の望むようにはならない。

 それでも画力の向上に枚数を描く事は絶対に必要だ。大いに利用させてもらっている。(「素描をデッサンだけで終わらせない!私の人物画作法とは→」を参照)

作品集「美緑(みりょく)空間」

作品集(絵描きとしての活動記録)を執筆、出版する

 最初の個展のとき私の作品をテーマにした本「美緑(みりょく)空間」を自費出版した。作品制作時の想いを添えている。わかりやすくて面白いとなかなか好評だった。この時は旅の記録が中心であったけれど、今後は多くの人が絵を描きたきくなるような「役立ち記事」を充実するつもりだ。

 そして書籍は個展を開くよりも、より多くの人に美緑(みりょく)空間の世界観を伝えてくれる可能性がある。だからいずれVol.2も発行したいと考えている。

美術館、博物館の作品を観て感性を磨く

 アートにはインプットが必要だ。
 どんな天才芸術家でも作り続けるだけの行為、アウトプットだけを続ければいずれアイデアは枯渇する。そうならないために、インプットつまり美的な刺激が必要だ。

 自分が描くジャンルの絵を見ることだけがインプットではない。敢えて違うジャンルの作品を見ることも多い。(例えば「美術館で見た茶室の不思議→」を参照→)

 刺激は美術館だけではない。歴史的な建造物にも美的感覚は刺激される(例えば「戦国時代の技が生んだ日本の美とは →」を参照)。

このブログ「美緑(みりょく)空間」で情報発信する。

 私がブログを始めたのは約10年前だ。個展を開く自信も、具体的戦略も無かったころ、なんとなくブログなら自分の感性を発信できるのではないかと考えたのだ。

 だがネットによる情報発信効果は私の予想を超えていた。例えば、最初の個展を開いた当時、訪れる人は私の知り合いばかり。案内状を見て作品を目的に来てくれる人はほとんどいなかった。

 ところが前回の個展は、半数近くがSNSを含めたネット情報をみて来てくれたお客様だった。つまり知り合いだから来たのではなく、絵を見たいから来た人が大半だったのだ。

 ネットを利用した情報発信は今やアーチストに欠くことのできないもうひとつの武器だと思っている。

 ちなみに私はSNSでも情報発信している。フェイスブックでは失敗作も含め活動状況を、インスタグラムでは主に海外への発信を意識している。それぞれのURLは以下のとおりだ。
・フェイスブックhttps://www.facebook.com/yoshine.kato
・インスタグラムhttps://www.instagram.com/painter_yoshine

■個展を開くだけで満足してはいられない!?

2度目の個展風景

 幸い、過去3回の個展は好評だった(と思っている)。自分の作品を見てもらい、感想を聞き、見知らぬ人とコミュニケーションが出来る。

 実に楽しい。喜んでもらい、絵が売れれば収入も得られる。金額の多寡ではない。サラリーマンの給料とは一味違う報酬だ。

 でも実は気がついた。このまま個展を繰り返すだけの活動でいいのだろうかと。もちろん私個人はそれなりに楽しく充実した人生だ。

 しかししょせんは私一人の活動。絵が売れればその作品はお客様一人の物になり、「より多くの人に」見てもらうことは出来ない。

 まして「全ての家庭にアートを」提供することなど永久に出来ない。もちろん大作家の作品ならば画商が企画し、バイヤーを世話し、相当の高値で売るという従来の商業的形態はある。

 だが、そんな高値売買の、限られた時間と場所と人脈が支配する世界では、普通の家庭が、いや世界中の家庭で「絵を飾って生活を楽しむ」ことはできないのだ。

■ブログ「美緑(みりょく)空間」を訪れたひとへ

 そこで提案がある。たぶんこのブログを訪問してくれた方は、絵を見るのが好き、あるいは自分でも少し描く、あるいはすでに相当描けるセミプロの人だろう。

 絵を見るのが好きな人はまず自分で描いてみてほしい。少し描ける人は、画力をつけて、リビングに飾ってもらえるレベルになってほしい。

 セミプロの人は、個展を開いて作品を少しでも多くの人に見せて、感動させてほしい。

よく考えれば「全ての家庭にアートのある生活を」提供するのは私だけである必要はない。感動させる人が多ければ多いほどいいのだ。

■アートギャラリー「美緑(みりょく)空間」のメンバー募集

 先の提案は、言い換えれば、私の個人的活動目標を皆さんに押し付けるというものだ。なんて身勝手な。

 そこで考えた。ネットの持つ情報発信力の可能性は先に述べたとおり。この際このブログを利用して私のような絵描き活動をしてくれる仲間を集めたい。

 名前は絵を描いて見せる場なのでとりあえず「美緑(みりょく)空間アートギャラリー」とし、そのメンバーを募集したいと思う。

 入会資格は絵が好きなこと。それだけだ。当然会費は無料だ。自分で絵を描き、いずれは絵描きとして活動をするために必要な情報をこのギャラリーメンバーで共有したい。具体的な内容はメンバーになってから・・・。

メール配信その他のシステムは現在構築中だ。もうしばらく待ってほしい。

P.S.
 私のブログには以下の6つのカテゴリがある。
スケッチの旅 日本編
スケッチの旅 海外編
絵画上達法
絵描きとして生きるには
ためになる美術講座
加藤美稲Painter_Yoshineはどんな人?
加藤美稲Painter_Yoshine 作品集水彩画
 どれも絵を描こうと思う人にとって有用な記事だと自負している。しかし残念ながら私の経験または意見を一方的に発信するだけのものだ。

 また仮に来訪者とメールアドレス交換をして個別に意見交換するとしたら、必ずしも私の考えに賛同しない、不特定多数の人に対応しなければならない。

 これでは、相当の手間がかかり本来の活動目的とずれてしまう。だからこのブログとは別に、世界観を同じくする特定の仲間とサークル的な活動をする場を設けたいと思ったのだ。

 ギャラリーメンバーは最低限自分で絵を描き、上達し、人に見せて、喜んでもらうことを目指してもらいたい。もちろん私の知識と技術の提供は惜しまない。

 しかし単なる画力向上が目的ならばそのための出版物はいくらでもある。ここではむしろメンバーとのコミュニケーションを大切にしたいと考えている。

 私の作品の制作プロセスやそれについての個別の質問を受けようと思う。これから絵を描くという人には大いに参考になるはずだ。すでに画力のある人は、作品を見せてもらい、メンバー間でのテクニック自慢をしてもらってもいいだろう。

 メンバー全体の実力が上がってくれば、ネット上で展示会を開くのもよい。いずれは(適正価格で)売れる仕組みも作り、世界中に広がれば「美緑(みりょく)空間」の本来の夢の実現に近づくことになる。

 どんなメンバーが集まるかもわからないので、 具体的な方法は未定だが、メンバーが集まれば意見交換して構築してゆく予定だ。

失敗しない個展の開き方 VRを使おう!

VRで確認した個展の風景

 このブログの記事、「失敗しない個展の開き方」(詳細はこちら→)では、案内状、パンフレット、芳名帳、オープニングパーティーなど初めて個展を開催する人のために基本的な注意事項を描いた。今回はその後、私が知った便利な技術VR(ヴァーチャルリアルティ)の利用法、コツを教えよう。

 実は最初の個展でとても苦労したことがあった。オープン前日の飾り付けだ。その理由は2つある。一つは安い画廊代のせいもあるが、飾り付けに関して画廊の主人が全く無関心、無知識であったことだ。
 だから飾り付け作業を全て一人でする羽目になった。安くあげる学生のグループ展ならば、確かに画廊の人は何もしてくれない。だが皆で飾り付けるグループ展と違い、個展での飾り付けの責任はその作家にある。と思って一人で飾り付けを始めたが、実際にやってみると、恐ろしく効率が悪い。
 例えば一枚絵を掛ける。水平になっているか、あるいは隣の絵と高さが揃っているかなど、一枚一枚脚立から下り、離れて、チェックし、修正のためにまた脚立に上り・・・・これを延々と繰り返さねばならない。
 絵の照明も同様だ。明るさ角度の操作と絵に当たる光具合のチェックをそれぞれ全部一人で確認しないといけない。最初の個展の時は、そこまで頭が回らず、飾り付けに3時間以上かかってしまった。
 初めて個展をする方、展示に慣れた画廊の方が飾り付けに参加してくれるかどうか必ず事前に描く人することをお薦めする。
 私の場合、2度目、3度目の個展の時は慣れた画廊のスタッフが手伝ってくれた。絵の水平、間隔、高さ、ネームプレートなど適切に、素早く調整してもらいとても感謝している。

 そして今回の本題はここからだ。
 絵の配置を適切に指示するためには事前の計画が重要だ。最初の個展の時、事前に配列は決めておいた。
 だが実際に並べてみると、不都合が起きた。絵のバランスが悪いのだ。具体的に言うと、例えば人物画。
 当初から人物画だけまとめて展示しようと思っていた。だが知らぬ間に、赤い服の女性像が連続して並んでいたり、顔の向きが揃いすぎて不自然であったりするのだ。
 風景画も日本の風景と海外の風景をそれぞれまとめようと思っていたのだが、似たような構図、色調の絵が並んで、単調な展示に見えたりする。だから現地であわてて順序を入れ替えたりする必要があった。
 いずれも事前の検討不足だ。

 だが事前に全作品をチェックできる、ギャラリーと同じ大きさのアトリエがあるならともかく、普通の絵描きではそこまでの精密な事前チェックは無理だ。
 そこで考えた。幸い私には建築の知識がある。2度目の個展からは3次元の立体モデルを使って事前検討をするようにしたのだ。
 まず予めもらった画廊の図面から、3次元の立体モデルで画廊を作る。そして展示する絵の大きさの額の立体モデルを必要な枚数だけ作る。
 次に展示作品をスキャナー又はカメラで撮影しJPGファイルを準備する。そして各額のオブジェクトプロパティを開き、画像を自分の描いた絵のファイルにリンクさせる。ソフトにより若干の差はあると思うが基本の操作は同じだろう。
 パソコン上で画廊の空間と絵の配置を満足するまで徹底してシミュレーションし、配置を決める。そして最終チェックはVR用に変換したファイルをVRメガネで見ると、まさに画廊を歩くようにして配置のチェックが出来る。
 冒頭の絵はその一シーンを撮影した物だ。
 いざ飾り付けの当日はこの立体モデルから各壁面の姿を切り出して印刷し、画廊の人に渡せば、何も指示しなくても、作業が進められるというわけだ。

 VRは実によくできている。今から個展を開こうとしている人は是非試してほしい。これからの絵描きはデジタル技術にも強くなる必要があることを実感している。

失敗しない個展の開き方

最初の個展 大阪心斎橋 ギャラリーA Stair

 絵が好き、ブログも作って作品をアップしている。グーグル検索に自分の名前が載るようにもなった。そんなあなた。次のステップは個展を開くことだと思い始めたのではないだろうか。賛成だ。

 もちろん絵が売れればいいが、何よりも来場者に自分の絵の感想を直接聞けるし、作品の出来栄えを肌で感じることが出来るからだ。私の経験を中心に役に立つ情報をお伝えしよう。

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評価される絵を描く秘訣

スペイン トレド
 二度目の個展の案内状に使用した絵

 私は定年後、プロの水彩画家になると決心した。そのためにはまず絵を描くことだと、学生時代以来久しぶりに、猛然と絵を描き始めた。とりあえずの

目標は毎週1枚、年間52枚の絵を描くことだ。

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今から絵描きを目指す人のために

イタリア ローマ ナヴォーナ広場

■今の人生に満足?

 サラリーマンも50代後半になるとその道のキャリアに終わりが近づいてきたことを悟る。そのまま大過なく勤め上げ退職金と年金で余生を送る・・・よくある人生だ。だが私の場合そんな選択が出来なかった。
 もう一度自分の人生を振り返り、これでいいかと問いかける。そろそろ封印してきた「絵描きになる」という道をもう一度追っかけてもいいじゃないか・・・そんな決断をしてしまったのだ。

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絵描きのための生涯資金計画

 私の絵描きとしての活動はトップページで書いているとおりだが、海外スケッチ旅も、個展開催も、本の出版も当然ながらそれなりに費用が必要だ。
 しかし私は本格的な絵描きとしての活動は初めて間もない。当然そちらからの収入はまだ少ない。でも、「世界中の家庭にアートのある生活を」という私の理想に邁進するには、活動をやめるわけにはいかない。ならば資金を何とかしなければならない。
 というわけで今回は資金の話をしようと思う。ただし当然だがお金の話、資金計画なるものは、個人の状況によってその計画に個人差が出る。
 まして私は建築の知識と絵の知識はそれなりに持っているが、ファイナンシャルプランナーでも、金融マンでもない。
 だから私が今まで勉強した知識、参考図書、その概略と私見などを述べることにする。絵描きとしての将来の資金計画に不安のある方の参考になれば幸いである。

 まず私自身の資金に関する前提条件を述べておこう。私は「今から絵描きを目指す人のために」で記したように、会社の定年と同時にいわゆる熟年離婚をした。
 従って、その時までにの貯金も、退職金も前妻と折半にした。それだけならいいが、当然住む家も別々に必要なので、もう一軒マンションを購入し、新たなローンを抱えた。
 さらに前妻は専業主婦だったので私が将来もらえる年金も半額近くに減らされてしまった。つまり、将来の資金計画を真剣に考えないと、絵描きになるどころではなかったのだ。
こんな状況で私が学んだことがいくつかある。私と同じように将来の資金計画に不安を抱える人のために、それを順に述べよう。

■現状の収入と支出を把握しよう。
月の収支を集計し年単位でいくらの赤字、黒字かを把握しよう。

■現状の資産と借金を把握しよう。
資産とは貯金、株、不動産などをいう。借金は住宅ローン、カードローンなど。

両者を比較すると4パターンのタイプに分かれるはずだ。あなたは以下のどのパターンに当てはまるだろうか。
①年単位の収支が赤字となり、資産は借金の方が多い人。
②年単位の収支が赤字となり、でも借金よりは資産が多い人。
③借金の方が資産より多いが、年単位の収支は黒字の人。
④借金はあるが資産の方がそれを上回っており、年単位の収支は黒字になる人。

それぞれのパターンでどうすべきだろうか考えよう。
①のパターンの人
 この方は残念ながら、将来資金計画を論ずる段階に至ってない。まず、収入を増やす、生活を切り詰めることをして、最低限年単位で黒字にすることをすぐにでも実行すべきだろう。
②のパターンの人
 親から遺産をもらって、暮らす人はこのタイプ。資産がたっぷり有れば実はこの方が理想の絵描きかもしれない。資金計画も単純なので、ここでの議論から割愛する。
③④のパターンの人
 ③は40歳過ぎの標準サラリーマン、④は定年前のサラリーマンの家庭が典型的なパターンだろう。そして私自身も若い頃は③、定年前は④だった。だから私の例で対策例を述べよう。

 実は私は40歳の頃から、将来の資金計画をずっと立てて来た。毎年年初に、昨年の年間収入、年間支出、資産、借金を算定し、何歳になったら自分の純資産(資産-借金)がマイナスになってしまうか、わかりやすく言うと生活のための貯金が底をつくかを計算し続けて来た。

 ここで皆さんにアドバイスしたい。
 大切なことはまず現状を把握すること、そして将来の姿を予測することだ。闇雲に不安を抱えるだけでは問題はけっして解決しない。そして一番大切なことはこの将来計画で、長く生きるためだけに、自分のやりたいことの資金をケチらないことだ。

 私の場合、将来にわたって海外スケッチ旅をするとか、個展をするとか、美緑(みりょく)空間の理想実現のための投資費用を見込むとか、最初から何歳の時にいくら、あるいは毎年いくらとエクセルに必要金額を記入してしまう。だからアウトプットは「何をあきらめるか」ではなく「何歳まで生きられるか?」だ。
 40歳頃は将来何があるか分からないので、退職金はあてにせずシミュレーションした。78歳と出た。だがこの頃はいずれ好転するだろうと気にもしなかった。

 55歳を過ぎて子供も就職し、退職金予測、年金予測も正確に投入すると、やっと85歳と出た。ほっとしたのも束の間、離婚後の数値を入れると、何とまたまた78歳までしか生きられないと出た。

 大切なのはこの数字を継続して追いかけることだ。 もちろん人により、貯金も生活のグレードも、夢の実現に必要な金額がちう。 だが毎年の数字を見れば今から何をすべきか、何を変えるべきかを考えることが出来る。
 あなたも是非自分の人生を計算してほしい。計算に当たって私が参考にしたのは以下の本だ。
 ・後藤弘著 「サラリーマンの生涯資金計画」
考え方が素晴らしい。しかしちょっと古い本なので今の経済情勢には合わない。同様の趣旨の本を探した方が良いと思う。
 ・松本晃一著 人生の計算(パソコンで読む究極のライフ・シミュレーション) エクセルの人生シミュレーションシートの作り方を教えてくれる。税制などが今と異なるが、基本は同じだ。私は20年前からずっとこのシートを毎年メンテしてシミュレーションしている。

 夢のための資金は削らないと書いたが、私は日々の生活は徹底して削ろうと思った。新聞や雑誌の「節約術」特集などは時代に合った税制やクレジットカード、各社のポイント付与率などがタイムリーに記されていて、とても参考になった。
 そして要点はスマホのメモファイルにまとめて普段から見られるようにしている。

 年金、保険などについての最新情報及びそれにあわせた節約術は荻原博子著 「年金だけでも暮らせます」に役立つ情報が網羅されている。
 ただしこの著者は政府、銀行など、いわゆる体制側の発言をかなり批判しており、「投資は不要」を強く主張しすぎているので注意が必要だ。

 経済論に基づく投資及び資産運用全般については高橋洋一氏、小林慶一郎氏、三橋貴明氏、藤巻健史、大前研一氏らの著作が最近の経済動向を捉えて、私たちがどうしたらいいか示唆をくれる。彼らは何冊も本を出しているので、出来るだけ新しい著作を読むといいだろう。
 ちなみに私はこれら経済関連の本は自分では買わない。全て図書館で借りる。すぐに情報が古くなるからだ。そしてその時代に応じて彼らの結論も少しずつずれてくる。判断はあなた自身でする必要がある。

 それで、私は結局どうしたか?
 今年の年初の私のシミュレーション結果はいまの夢を追っても「95歳までは生きられそう」だった。理由は簡単に言えば二つある。

 一つは資産が増えたこと。前妻と分けた退職金を貯蓄ではなく投資に向けたせいだ。特に結果的に見ると日本の株式投資を減らし、アメリカ、又は世界への投資銘柄を増やしたことが良かったようだ。やはりこの超低金利の時代、私のように78歳までしか生きられないという結果が出たものはにとって、貯蓄だけに頼っていては、資産は増えないというのは正論だ。
 ただし大半の人は荻原博子氏の言うように政府や銀行に「騙されやすい」ことも事実で、損をした人も多いはずだ。対抗するためにはある程度の経済の勉強、情報収集は必要だ。
 そしてもう一つの理由は再婚したことだろう。経済活動をする二人が一緒に住むと、日常の共有による合理化が出来るし、年金を含む税制の優遇措置が受けられるからだ。

 絵描きは絵さえ描ければ幸せ・・・などとは言うまい。絵は感性が大切。でも人生は理論と計算が大切なのだ。