5.スケッチの旅 海外編

古都安平の建築とデザイン

 台南に安平(アンピン)という街がある。今は台南NO.1の観光地だが、その昔はオランダの領地だった。17世紀初頭のいわゆる「大航海時代」の中国の明との領有権争いに勝ったからだ。台湾はずっと中国の領土であると思っている人が多いと思うが、実は台湾最古の「都市」であるこの安平を築いたのはオランダ人だったのだ。
 オランダ人が築いた代表的な建築がいまでも残っている。安平古堡(アンピン グーバオ)と呼ばれる城砦だ。

続きを読む

高雄に残る和風建築のデザイン

 台湾はご存知の通り1894年の日清戦争以来第2次世界大戦で日本が敗れるまで日本の領土だった。旧日本軍の武道場などは中国にとっては負の遺産なのか、ほとんどは壊されるか、他の用途に転用されているらしい。

続きを読む

透明水彩で描く風景画 アルハンブラ宮殿

 言わずと知れたスペイン、グラナダのアルハンブラ宮殿。有名な写真はいくらでもある。
 世界遺産としてテレビでも何度も放映されているだろう。でも敢えて言いたい。自分で描いた一枚は特別な存在だ。その時その場所で感じたことが必ず絵に現れているからだ。
 絵描きとしてのスペインの歩き方はすでに記している。(詳細はこちら→
 今回は私が描いたアルハンブラ宮殿の作画手法とプロセスを述べようと思う。

続きを読む

パソコンで描く水彩風イラスト 初級編

 「この風景いいな!」と思った時、すぐに水彩絵の具とスケッチブックを取り出す・・・水彩画家としてはこれが最高だ。
 だが誰もがいつでも絵が描けるわけではない。そんな時どうするか・・・今日はパソコン(タブレットも基本は同じだ)で簡単に絵を描く方法を教えよう。

続きを読む

水彩で描く風景 古都シエナ

 イタリアの古都シエナはフィレンツェから電車で1時間ほどの距離にある。フィレンツェほど大きくはないが町全体が中世の姿をそっくりそのまま留めている。

続きを読む

淡彩スケッチで描く韓国 景福宮

韓国 ソウル 景福宮

 私が一人で海外スケッチ旅に出かけたのは韓国のソウル。この時スケッチ旅行での英語の重要性に気づいたのは以前に書いた通り(詳細はこちら→)。
 この時の旅は日本発の往路も韓国発の復路もともに早朝出発という観光には最悪の飛行機。2泊した割には絵を描く時間は中1日しかないというスケジュールだった。

続きを読む

淡彩スケッチで描く風景画 上海

その夏の上海は暑かった。

史上最大の動員数を誇った上海万博が開かれた年、私は建築設計の仕事でこの街に出張していた。

仕事そのものは極めて順調だった。設計仕様のチェック、確認、打ち合わせと滞りなく済んで行った。

しかし初めてみる中国は私にとってまさにカルチャーショック、文化大激震(?)だった。

土地の広さも人口も密度も桁外れだ。

人が群れ、密集し、蠢き、都市が揺れている。

そして四十度を超える連日の猛暑にも増して、人々の熱気が街中に充満しているのだ。

その熱気は私が仕事を終えた夜も衰えることを知らない。当然、その日ホテルに帰ったのは深夜。すぐにベッドに潜り込む。

だが、疲れているはずなのに、何故か翌朝、陽が昇ると同時に目が覚めていた。

カーテンを開けると、眼下に黄金色に輝く上海の街が広がっている。

水平線近くに広がる大河は揚子江の支流らしい。

よく見ればすでに船も港も人も動き始めている。

ひしめいて建つ建物の影はさすがにまだまだ青い。

しかし水平線の上に輝く日光はすでに白く町を炙り出したようだ。

熱い上海の一日。始まりの瞬間をこの目にして、俄然私の創作意欲に火がついた。

ビジネスのためにやってきたので、水彩紙のスケッチブックは無い。

だが幸い、打合せノート兼設計のスケッチ用の安物のスケッチブックを持ってきていた。

早速サインペンを手にスケッチを始めた。30分ほどで線描きを終えると、それなりに満足感を覚えて、スケッチブックを閉じた。

さて、仕事だ。おっとその前に腹ごしらえ・・・・。

こうして私の初めてのアジア上陸体験は終わった。

強烈な印象を私に残してくれた上海。

スケッチブックにはペンで描かれた名残がある。

が、あの街の熱さは伝わってこない。

色を塗ろう。

帰国して続きが描きたくなった。

とりあえず透明水彩はのりそうだが、水彩紙では無いのでほとんど水分を吸ってくれない。絵具は紙の上に溜まったまま蒸発を待っている。ならばと、水を減らして濃い絵具を塗れば、筆跡だけが残り、ぼかしはまったく効かない。透明水彩の絵具を使っても、紙が悪いとその良さを引き出してくれないことを改めて思い知らされた。

悪戦苦闘。

だめだ。

これ以上塗ると、画面が濁ってしまう。

こうして完成・・・というより塗り終えたのが冒頭の淡彩スケッチである。

少しだけ解説しておこう。

透明水彩独特の表現が一切ないのはすでに触れた通り、水彩の重要な道具である水彩紙が無かったからだ。

だがそれなりの工夫をした。

サインペンはいつもの油性、0.3mm。ホテルの中で一気に描いた。時間がないので下書きはしない。多少の線の歪みや間違いは気にしない。

ペンの勢いをそのまま表現している。

次に彩色。

水彩紙ではない薄い画用紙なので、混色や重色による微妙な、奥行きある表現はできない。

したがって、重要なことはまず最低限の必要な色数を絞ること。パレットの24色全て使う必要はまったくない。

今回のテーマ言わば「上海の熱」だ。

だから、光る部分はウィンザーイエローとパーマネントローズで描き、対比させる陰の部分はほとんどプルシャンブルー、一色だけで水分を調整することによって明暗を施している。

時間がない時でも「描きたい」という気持ちは大切にしたいと思う。

「淡彩スケッチで描く」のは私の「絵に対する情熱の一表現」であると言ったら嘘になるだろうか?

レトロな和風デザイン?! 台南の林百貨店

 久しぶりに台湾を訪れた。以前行ったのは台北と台中。今回は初めての台南だ。
 事前に下調べをしたが「地球の歩き方」を初め、どのガイドブックも台湾の目玉は食べ物だという。もちろん私もそれなりに、美味しい料理を堪能したことは否定しない。
 だがこのブログは絵を描く人、あるいは好きな人のためのものなので、残念ながらそちらの情報は割愛する。

  さて、台南にはスケッチしたくなるような見所は多くある。そのうちのひとつ、レトロな和風デザインの建物、林百貨店を紹介しよう。
 場所は台南駅南西にある7本の道路が交差するロータリーから西へ5分ほど歩いた交差点の角にある。すでに夕暮れだったので私の外観写真が暗い点はご容赦願いたい。
 褐色のレンガ色、5階建ての建物が目指す林百貨店だ。1932年(昭和7年)竣工。第二次大戦のときに空襲でかなり破壊され、長い間放置されていたが、2014年にリニューアル、再び百貨店としてオープンした。
 一見して、他のビルとは趣が違うことがわかってもらえるだろうか。
 手前のビルは石張りと大型ガラスのモダンなデザイン、奥の建物はコンクリートかモルタルかはわからないが、低層のかなり古ぼけた建物だ。
 今、台南市の表通りにある建物は現代的なデザインか、終戦直後のぞんざいなデザインの建物がそのまま残っているか、二極化している気がする。
 この建物のように日本で言えば明治時代から昭和初期のきちんとした「近代建築」が見られることはとても貴重なのだ。

  設計者はインターネットでの記事によると、石川県出身の建築家で当時、台南州地方技師兼台湾建築会台南州支部長だった梅沢捨次郎とある。
 この建物を設計したのは40歳代半ば頃、建築家としては、脂の乗り切った年代だ。そしてオーナーは山口県出身の実業家、林方一だ。
 まず外観デザインを見てみよう。
  私がおやっと思ったのは外部にぐるりとバルコニーが廻っていることだ。一般に商業建築は古今、洋の東西を問わず、敷地境界いっぱいに建てることが多い。何故なら、少しでも多く商品を並べたいからだ。だから内部の面積を減らすことになる外部のバルコニーなどは本来ご法度のはずなのだ。
 しかし実は建築家としては、不特定多数の人が密集している百貨店だからこそ、火事のときの避難スペースとして外部にバルコニーが欲しいと思うのは自然なことなのだ。
 よく見ればバルコニーの手摺のデザインもかなり凝っている。設計者のバルコニーに対する熱情にオーナーが負けた・・・などと勝手に想像してしまうのは私だけだろうか。
 近づいて、建物の頂部を見てみると頂部を特徴付ける曲線デザイン、堀の深い窓。最上部のバルコニーはシンボリックな円形窓でくりぬかれている。実にユニークだ。

 一階廻りは、歩行者の通行スペースとして1スパン分外部に解放されている。台湾の商業施設全般によく見られる、この方式は日本統治時代に政府が指導した標準商業建築様式だそうだ。
 外周り列柱の足元、柱脚のデザインや柱頭いわゆるキャピタルのデザイン、梁型のデザインも凝っている。今見れば十分クラシカルだが当時では個性ある最新デザインだったに違いない。

  内部のほんのりと明るく、赤みを帯びた優しいインテリアの色調も当時のままだという。
 天井のランプのデザインも秀逸だ。最近は小型で明るいLEDを使うので、ランプの形は見せず、光の見せ方をデザインする方法が主流だが、こんなランプを意識する設計も悪くないと改めて感じさせられた。
 百貨店建築ではなるべく天井を高く見せたいので、天井を張らず梁は柱との接合部で斜めに構造的に「ハンチ」をとることが多い。これも定石通りなのだが、ハンチと柱頭を一体化した見事なデザインだ。

 最上階レストランのテラスに設けられた階段から屋上に上がってみた。
 土産店の入口の横には懐かしい赤いポスト。そして少し風変わりな鳥居と灯篭もある。エレベーター機械室もちゃんとデザインされている。
いよいよ日が暮れてきた。屋上の手摺上のランプに灯がともる。当然、やはりちゃんとデザインされていた。
「レトロな和風デザイン」・・・悪くない。案外現代的で新鮮だ。

古都 高雄の最新アートスポットとは?

 台湾の古都、高雄を訪ねた。実に活気のある町だ。到着して驚いたのは台湾国鉄と地下鉄が同時に乗入れる高雄駅の周囲は大規模再開発中。駅の周囲はほとんどが工事現場。砂煙で空気も霞んでいるくらいだ。ちなみにこの再開発、2023年完了予定だという。

続きを読む