5.スケッチの旅 海外編

下書きはいらない!建物のある風景をペンで描く

 皆さんは風景画を描く時、下書きに何を使うだろうか?

 おそらく鉛筆だろう。何故なら大半の水彩画教本には、2Bから4Bの柔らかい鉛筆で下書きをし、色を塗って仕上げた後、最後に邪魔な下書きの線を消すという手法が書かれているからだ。

 もちろんその方法に文句はない。王道だと言っていい。でも下書きをしない方法もある。ペンでいきなり風景画を描き始める方法だ。

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ペンと水彩で描くミラノ大聖堂 その制作プロセスを公開! 

 私の絵描き活動の一つである海外スケッチ旅、今日のテーマはあの有名なミラノ大聖堂だ。
 最初にイタリアを訪れたときは旅程の都合でミラノには行けなかった。だから2度目のイタリア旅行ではまずミラノのホテルを押さえた。そしてもちろん有名なミラノ大聖堂を真っ先にスケッチしようと決めていた。

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ハワイは海だけじゃない!悲しき王朝の歴史を描く

イオラニ宮殿

 このブログでハワイの記事を二つ書いている。ホノルルの(ハレクラニホテルから見た海岸の風景→)と(カウアイ島の南国風景→)をスケッチしたものだ。
 両方ともハワイらしい南国の日常をペンでスケッチしたもの、あるいはそれをパソコンで色つけしたものが主体だった。
 「異国の日常」をスケッチすることはもちろんこの「美緑空間」の目的でもあり、私にとっても貴重な体験であり絵を描く基礎訓練にもなるのだが、できれば、せっかくハワイに来たのだから、この国らしい、エキゾチックな建物のある風景を水彩画で描きたいと思っていた。

 実はハワイにもそんな私の希望を叶えてくれる歴史的建造物がある。それが冒頭に掲げたイオラニ宮殿だ。そして民主主義の国アメリカ合衆国に存在する唯一の王宮でもある。
 ハワイは有史以前から人が住んでいて、先祖はポリネシア人だという。統一したのが有名なカメハメハ大王だ。このイオラニ宮殿の入り口にも王の彫像がある。
 ハワイの王宮というからには、ハワイの先住民、あるいはその王国の文化が反映された、さぞかし民族的趣味が反映された建物だと思うだろう。だがご覧のように、意外に違和感のない西欧風デザインだった。インターネットで調べてみると、竣工は1882年。建築家はどうやらアメリカ人のようだ。

鹿鳴館

 その時日本は明治15年。同じくこの頃、イギリス人建築家ジョサイア・コンドルの設計した有名な「鹿鳴館」ができていた。その姿は今は見られないが、当時の写真を見ると、イオラニ宮殿とデザイン的に通ずるものがあるような気がする。
 つまり、このイオラニ宮殿も鹿鳴館も民族の文化より西欧化を急いだ時代のシンボルだったのだ。
 日本はその後、近代化に成功し、現在に至っているが、残念ながらハワイ王国はこの宮殿が出来てから10年後に滅びてしまい、アメリカ合衆国に吸収されてしまった。またハワイの先住民自身も西欧人が持ち込んだ伝染病により、人口が激減したという。
 そんな歴史を背景にこの建物は今ホノルルに建っている。予約をすれば豪華な宮殿内部インテリアも見学できるらしいが、私が訪れたときはそんな企画はなかったように思う。

 私の時間は限られていた。だからほとんど悩むことなく、「ここ!」と構図を決め、「南の王国」の風景をペンでスケッチした。
 幸い水彩紙(ラングトン)を持ち歩くようになった頃だった。おかげでスケッチだけで終わることなく、帰国してから透明水彩で仕上げることができた。
 この絵の制作プロセスは、「ペンと水彩で描く風景画の魅力とは→」に記した基本通りであまり変わらない。ペンの線を生かすように、透明色であるプルシャンブルーでグリザイユを施した後、固有色を重ねている。
 ただ、今回は常夏のハワイでのスケッチ。暑さを避けるため、私がスケッチブックを広げたのは当然だが、緑豊かな木陰の中。
 だから宮殿の風景を切り取る周囲の樹木は逆光になるので、どうしても暗くなる。これを奥の風景と同じブルーでグラデーションを施すと手前の木々が真っ青になってしまい、そのあとの固有色(サップグリーンなどの透明色)が美しく見えない。
 だから手前の木々の暗部はわざと不透明度の高いオリーブグリーンを主体とし、さらに赤みのあるウィンザーバイオレットを加えて明度を落としている。
 このグリザイユ画法と絵具の透明度の関係については少し勉強が必要だ。以下に詳しい記事を書いているので参考にしてほしい。
水彩画の基本!知っておきたいグリザイユ画法と絵具の透明度→

P.S.
 その他、私の水彩画の基本技法を以下に記しておく。興味ある方は参考にしてほしい。
■透明水彩絵具の基礎技法については「水彩画入門 色塗りの基礎技法を覚えよう!(詳細はこちら→)」
■ペンで建物を描く秘訣は「鉛筆はいらない!下書きしない風景画の描き方(詳細はこちら→)」

奇妙なデザイン!バリ島の風景をスケッチ

 トップページで、私の活動の一つは誰もが憧れる「異国の風景を描く」ことだと書いた。世界中の家庭に絵を飾ってもらおうと思えば、そこに自分の知らない世界を表現するのが一番の近道だと思うからだ。
 日本人の私には、ヨーロッパの風景はまさに憧れ、「異国の風景」だ。だがある意味、普段からTVや雑誌、旅行のパンフレットなどで、有名な風景は目にしており、なじみが深いと言える。
 ならば、あまりなじみのない、言い換えれば「奇妙な」風景があるのはどこだろう。私が今まで目にした(それほど多くはないが)経験で言えばそれは「ヒンズー教」の文化だ。そして実は私が生まれて始めて体験した「海外」の文化だった。

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フィレンツェ その人気の秘密は?

 スケッチ好きな皆さんへ。
毎年公表される、世界の「大富豪に人気のある都市」ランキングのトップはどこか、ご存知だろうか?

 私が目にした新聞記事によれば、毎年、京都とイタリアのフィレンツェが争うのだという。

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この建物は何?台湾で見た不思議な建物!

 海外旅行が好きな人へ。

 冒頭の写真にある奇妙な建物は何だかお分かりだろうか?わかる人は相当建築に詳しい人だ。
正解は台湾、台中にあるオペラハウスである。正式名称は「台中国家歌劇院」と言う。

 台湾へスケッチ旅を考えている人には是非訪ねて欲しい建物だ。設計者は日本の有名建築家、伊東豊雄氏である。この建物は国際コンペで設計者が選ばれた。その奇抜なアイデアはコンペ直後はもちろん、実施設計中も工事中もずっと世界中の建築関係者から注目を集めていた。

 やっと完成したと聞き、早速旅行のスケジュールをたてて、見に行こうとした。人情として、建物だけではつまらないと、上演されるオペラも見ようとしたが、どういうわけか私の滞在中は公演予定がない。

 飛行機のチケットはかなり早めに押さえたので、その日までには何らかの演目は決まるだろうと楽観的に考えていたが、結局大小どの劇場でも一切の公演は行われなかった。

 建物ができたばかりのせいなのか、台湾のお国柄のせいなのかはなのかはわからない。私が行く前後1か月ほどだけが公演が無かった。同じようにオペラも見たいという人は事前によくチェックしてから飛行機のチケットを買うことをお勧めする。

 さてせっかく行くのにいくら何でも外観だけでは勿体無いと、ネットで調べてみると、この施設やはり人気があるのだろう、公演がなくても有料の館内巡回ツアーがあるという。ただし開始時間が限られている。やはり事前の確認が必要だ。

 残念ながら私はツアーに間に合わなかった。しかしありがたいことに建物の外観はもちろん、内部の共用部は自由に入れるということがわかった。飛行機のチケットは無駄にはならなかったのだ。

 この施設、外観もユニークだが、御覧のように内観はもっと奇抜だ。上と下の空間がなんとなく、どこまでも、くねくねとつながっている、不思議な建物だ。

 「日本にはこんな不思議な建物が無いのは何故?」と思うかもしれない。実は日本の建築設計者、デザイナーがこの手の吹き抜けの多い建物を設計するときに必ず悩まされるのが日本の法規に必要な防火シャッターだ。皆さんもデパートやショッピングセンターで無数のシャッタレールが壁や天井に走っているのを見たことがあるだろう。ところがこの建物にはそれがない。だからこんな美しい局面の壁や天井が出来上がる。実にうらやましい。

 なお壁が垂直に建っていないので、日本の建築基準法で定義する「延べ床面積」というものも無いらしい。面積がわからないと固定資産税も払えないではないか・・・などと考えてしまうのは一般人の悲しい性。こんな破格のデザインの建物では素直にその幻想的な空間を楽しめということだろう。

P.S
台湾の見所を以下のカテゴリにまとめている。スケッチ旅の参考にどうぞ。
「スケッチの旅海外篇/台湾(詳細はこちら→)」

ベルガモ一人旅 切り取られた歴史の風景

コッレオーニ礼拝堂

 今回のスケッチ旅。行き先はイタリアのベルガモ。中世の建物が残る、とても小さな町だ。ミラノから鉄道で1時間ほど、ベルガモ駅で降りる。
 ヨーロッパでの旅は鉄道を使っているうちはそれほど気を使わない。事前に発車、到着時刻もわかるし、駅の表示にはほぼ英語が併記してあるからだ。
 だからここまでは順調。問題はこの先、目指す丘の上の「チッタ・アルタ」と呼ばれる旧市街までの道のりだ。

 ガイドブックによれば、チッタアルタの麓のロープウェイ乗り場まではバスで行くという。チケット売り場は鉄道駅のすぐ近くで見つかった。幸い切符売りの婦人も英語が通じた。
 だが売り場前のバス停で待つが、いつまでたってもお目当のバスは来ない。バス停の表示は全てイタリア語だから、どのバスがどこへいくかなどと言う細かな情報は全く読み取れない。

 たまらず売り場に戻ってバス停の位置を聞くと、
「Go to left!」
どうやらバス停の場所を間違えていたようだ。本当に田舎の一人旅は気を使うことばかりだ。

 そんなロスはあったものの、なんとかロープウェイに乗り、丘の上のチッタ・アルタに到着。
 ここは中世の頃は城塞都市。事前の情報によるとその全貌が望める場所があると言う。そこへいくにはさらにロープウェイに乗らねばならない。まずはこの街の一番上高いところから町を見る。そこから見るチッタ・アルタはさながら天空の城のようだ。

 当然、ここでまずスケッチしようと考えた。だがこれだと思う構図は展望台には見つからず、散々歩き回った末、どこかの民家の玄関先の塀の上にスケッチブックを置いて描くことにした。幸い、家の人から注意されることもなくスケッチを終えた。

 さて、せっかく来た中世の町。少しゆっくり古い町並みを楽しもうと再びロープウェイに乗り、街に戻った。
 見所はコッレオーニ礼拝堂。ルネサンス時代の建築のようだ。正面も素晴らしい。対面する建物の2階から見た姿も美しい。このスケッチは別の記事で取り上げた。見てほしい。

 だが私が見つけた一番のシーンが冒頭に掲げた写真だ。起伏に沿って折れ曲がる通路沿いのアーチで切り取られた姿だ。
 いつも思う。ヨーロッパの町は建物で切り取られた縦長の構図がよく似合う。まさにこれもその一つだ。

路地の風景

 歩いていると、また一つそんな風景に出会った。軒先を飾る庇の濃い陰は明るい空を角度をつけてシャープに切り取る。広角レンズで無理やり建物を収めると、天空に向かう中世の建築が私の視界を埋め尽くす。圧巻だ。

 同じ中世の風景でも日本の、水郷で囲まれた藁葺き屋根の穏やかな集落風景となんと違うことか。

 民族の文化の差は建築と都市に現れるという。まさに真実だ。

 実は私は旅先でこのような「切り取られた風景」の写真をよく撮る。理由は前景と遠景両方を画面に収めることで、その土地の文化の特徴がよくわかるからだ。
 だが実を言うと、この構図はあまりスケッチしていない。何故なら近景部分が遠景と比較するとあまりに拡大図になりすぎて、絵のバランスが崩れるような気がするからだ。

 そうは言っても魅力的な構図であることは間違いない。新たなテクニックが身についたらいずれ絵にしたいと思っている。

P.S.スケッチ旅の記事を下記のカテゴリにまとめている。興味ある方は覗いてほしい。
スケッチの旅海外編はこちら
スケッチの旅日本編はこちら→

パソコンで描く水彩風イラスト 初級編 ハワイの海辺

 「この風景いいな!」と思った時、すぐに水彩絵の具とスケッチブックを取り出す・・・水彩画家としてはこれが最高だ。
 だが誰もがいつでも絵が描けるわけではない。そんな時どうするか・・・今日はパソコン(タブレットも基本は同じだ)で簡単に絵を描く方法を教えよう。

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ペンと水彩で描く古都シエナ

 イタリアの古都シエナはフィレンツェから電車で1時間ほどの距離にある。フィレンツェほど大きくはないが町全体が中世の姿をそっくりそのまま留めている。

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淡彩スケッチで描く韓国 景福宮

韓国 ソウル 景福宮

 私が一人で海外スケッチ旅に出かけたのは韓国のソウル。この時スケッチ旅行での英語の重要性に気づいたのは以前に書いた通り(詳細はこちら→)。
 この時の旅は日本発の往路も韓国発の復路もともに早朝出発という観光には最悪の飛行機。2泊した割には絵を描く時間は中1日しかないというスケジュールだった。

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