6.スケッチの旅 日本編

水彩で描く風景 美濃紙の町

 私の生まれ故郷は岐阜市。数年前に同窓会があり、久しぶりに岐阜を訪れた。神戸からわざわざ岐阜まで来たのだからと、岐阜の風景をスケッチしていこうと考えた。
 と言っても岐阜県の有名な風景「白川郷」の合掌造りや、「高山の商家の町並みまではもう一泊しないと行けない。もう少し近くにないかと調べると岐阜市内から1時間と少々で行ける「重要伝統建造物群保存地区」があることがわかった。「美濃市美濃町」商家の町並みだ。
 実質的に岐阜に住んでいたのは高校時代までとは言え、案外地元のことを知らないのだと改めて感じさせられた。
 岐阜駅から高山本線で美濃太田駅までゆき、そこから長良川鉄道に乗り換える。途中は長良川の絶景が楽しめる。梅山駅で降りて、歩くこと15分。「うだつの上がる町並み」に到着だ。
 美濃市の名産である「美濃紙」は2014年11月27日、ユネスコ無形文化遺産に登録されたそうだ。さぞかし大勢の観光客でにぎわっているだろうと思いきや、3連休の休日にもかかわらず人はまばら。インバウンドの客もまだこの美濃までは押しかけてこないようだ。

 町並み保存地区の範囲はそれほど広くはない。美濃市駅から歩いて到着した街の西南端入り口から、ぐるっと反時計回りで約20分ほどで町を一周できる。
 その感想は・・・残念ながらあまり芳しいものではなかった。所々に「おっ!」思う構図を発見するものの、奈良の今井町を訪ねた時のような「町に足を踏み入れた瞬間の興奮」は感じなかった。
 どうも住民の保存に対する関心が低いようだ。例えば「美容室」などという大きく派手な看板がすぐ隣の貴重な「うだつ」を気にすることなく掲げられている。街のホームページを見ても狙いは「文化」よりも「売り上げ」のようだ。
 〇〇家公開中、入場料〇〇円とか、みやげ物飲食店の写真入案内ばかりでこの街の歴史などほとんど書かれていない。日本の歴史と文化をスケッチしに来た私には寂しい限りだ。
例えば、この町の特徴の一つは、古い町なのに道幅が広いこと。通常江戸時代の道幅は4間(7.2m)だと言われているが、ここはその2倍近くありそうだ。うだつと同様火事の延焼対策なのか、交通量確保のためなのか。そんな事情もわからない。
 ただいえるのは絵を描くとき画面に道の両側の建物を収めると、中央が空いて構図が取りにくかったことを覚えている。

 さて冒頭の絵の説明をしておこう。この絵は私のブログの風景画の描き方(詳細はこちら→)の中で説明用に使った絵なので、制作プロセスについてはそちらを参照にしてほしい。
 だから今回の説明は「構図」に絞ろう。先に述べたように道の両側に建物を配置する構図は今ひとつと感じた。
 だから町並みの片側だけを描くことにした。すると一般的には建物の軒ラインが1方向に揃って見えるだけで単調な構図になりやすい。
それでもこの構図がそれなりに絵になると考えた理由はやはり「うだつ」だ。いくつものうだつとその上に載る鬼瓦が単調になりがちな軒にアクセントとリズムを与えてくれると思ったからだ。かつ背景が空ではなく山並みがあること。空の青と山の緑が茶色の町並みに変化を与えてくれると思ったのだ。
 そんな条件にぴったりと合致したの構図は町の中でここだけだったのだ。

水彩で描く風景 世界遺産姫路城!

姫路城 春爛漫

 私が描く日本の風景は古い町並みが多い。その理由はトップページで触れた通りだ。そして「町並み」は一般に建物単体で見るとそれほどの文化的価値はない。住民の努力によって町ぐるみで保存活動をしないと、すぐに町並みは歯抜け状態となる。このブログでも、いくつかの町並みで残念なコメントをせざるを得なかった。

続きを読む

水彩で描く風景 安芸の小京都

竹原の町並み 作者 加藤美稲

 今日の絵は広島県にある「竹原」。JR広島駅から呉線という単線のローカル線に揺られること、約2時間。
 国の指定した「重要伝統的建造物群保存地区」だ。元々は製塩の町として発展し、今も江戸時代の街並みがよく残っているという。
 この日は、真冬、1月だったがぽかぽかと陽気がよく、スケッチブックを持ってこの町を訪れた。

続きを読む

水彩で描く風景 佐渡島 宿根木(しゅくねぎ)

 佐渡島の絵を描く・・・というと大抵の人は金山と荒海を思い浮かべるかもしれない。しかし金山はすでに無く、無人の荒海だけを描くのはこのブログ、美緑空間の使命ではない。
 今回は「宿根木」という日本の町並みの中でも一風変わった、濃密な住空間を描くのが目的だ。

続きを読む

水彩で描く風景 角館の武家屋敷

大樹の門 作者:加藤美稲

 今回のテーマである角館(秋田県仙北市角館町)は私にとって特別な町だ。
 というのも、私がスケッチ先としてよく選んでいる「重要伝統的建造物群保存地区」の選定制度が施行されたのは昭和51年から。今から40年ほど前、私が大学の建築学科に入学した翌年にあたる。
 実は私が古い建物をスケッチし始めたのはこの制度と「町並み保存」という運動を知ったのがきっかけだ。特に妻籠、白川郷、三寧坂、祇園、萩、角館はこの制度による第一回の選定地区であり、建築を学び始めた大学生の私に「人」と「町並み」というこの「美緑空間」にとって大切なキーワードを意識させてくれた町でもあるのだ。

続きを読む

日曜画家の町・・・神戸を歩く

神戸の魅力は異人館だけじゃない?!

 「ハイカラ」で「モダン」な町と言われる神戸。最近は京都と大阪にインバウンドの観光客を奪われ、人口も急激に減りつつあると言う。神戸に住む私としては寂しい限りだが、日曜日になるとスケッチブックをもってうろつく日曜画家がたくさんいる。そんな人のためにスケッチすべき建物と風景をいくつか紹介しよう。
 観光客に人気があるのは「重要伝統的建造物群保存地区」である北野の「異人館通り」が有名だが、それについては別の機会に譲るとして、今回は神戸の「近代建築」をスケッチすべく取り上げよう。

続きを読む

水彩で描く風景画 相倉と菅沼の山村

山間に住まう 作者:加藤美稲

 私が日本の風景を描く時、国が選定した「重要伝統的建造物群保存地区」を旅することが多い。
 そして一般的にこの「重伝建」は文化財を維持、保存し得る環境の町、つまり人口密度が高く、経済的に余力のある寺内町、宿場町、商家町などが多い。
 だから今も旅するのに交通機関に不自由することはない。

続きを読む