イタリア

イタリアをスケッチする ローマ編

 2013年夏。ついに憧れのイタリアにやって来た。絵描きになることを目指し、「人」と「建物」をテーマに絵を描くと決めたのだが、本場イタリアの建築をこの目で見ていないことに実は引け目を感じていた。古典建築をスケッチする喜びをじっくりお伝えしよう。

絵描きになることを目指し、「人」と「建物」をテーマに絵を描くと決めたのだが、本場イタリアの建築をこの目で見ていないことに実は引け目を感じていた。古典建築をスケッチする喜びをじっくりお伝えしよう。

共和国広場

とても休んでなんかいられない

 ここはローマのホテル。長時間のフライトに疲れた脳の意識はかすみがちだ。 しかし針を戻した時計はまだ午後4時。しかも夏時間せいなのか空は真昼のように明るい。エコノミー症候群になりかかった体に鞭打ち、スケッチブックをかかえてさっそく街へ繰り出した。

江戸時代から残る広場に感動!

 事前に綿密に動くコースを決めていたので、行き先を迷うことはない。テルミニ駅のすぐ近くのホテルから北へ歩くと共和国広場に出る。もともとはローマ時代、ディオクレティアヌス帝の広場だったものを19世紀に再整備したものだという。当初の予定では通過するだけのつもりだったが、雄大な広場とそれを囲む建物全体がすでに江戸時代にはできていて、いまもそのまま残っていることに感動。さっそくローマ最初の一枚を描き始めた。
 しかししばらくして気がついた。実はイタリアの建築はこのくらいの古さは当たり前。この程度の感動でいちいちスケッチしていては永久に予定のコースを踏破することはできないと。

サンタ・マリア・デル・アンジェリ教会

 共和国広場をスケッチしたあとは、広場に面するサンタ・マリア・デル・アンジェリ教会へ。さすがに、いや当然というべきか、建物のデザインを台無しにするような「入場券ブース」という無粋なものは無い。入り口前に立つおじさんに直接入場料を渡して入るのだ。 ガイドブックのこの教会のお勧め度は星二つ。だからたいしたことがないとわかれば、すぐ次の建物に行こうと思っていた。ところが一歩足を踏み入れた瞬間、壮大な宗教空間に圧倒されてしまう。

またまたスケッチブックを広げることに。

 壮麗さの秘密は、まず内部空間の巨大さ、次に柱と壁の重々しい装飾、そして対照的に軽やかに浮かび上がる白い天井だ。ペンを走らせながらも心地よい静けさに、時間を忘れ、気がつくと1時間が経過していた。

いかん・・・今日中にあと4つの建物を見なければ。

サンタ・マリア・デラ・ビットリア教会 逆光がまばゆい

 2枚のスケッチを終えるとさすがにちょっとローマの風景に慣れてきた。「ディオクレティアヌス帝の浴場跡」はちらと見るだけで我慢し、

そして「サンタ・マリア・デラ・ビットリア教会」!

 この教会は大きな道路の交差点に建ち、実はこのあたりが現在のローマ市の中心らしい。だが周りには近代的なビルなどまったく無く、どこまで言ってもローマ情緒たっぷり。たまらずスケッチを始めたものの、さすがに時刻はもう夕暮れ。太陽は西に傾き、逆光をまともに受ける最悪のコンディション。それでもぎらつく夕日に屹然と建つ石の存在感、三角の破風と十字架のシルエットが美しくて一気に描きあげる。
 この後「クイリナーレ宮」「サンカルロ・フォンターネ教会」を駆けるようにして見た。後者は奇才ボロミーニの設計。規律正しいルネサンス建築とは一味違う、個性的な曲線デザインが感動的だ。スケッチしようとしたがさすがにもう夕暮れ。後ろ髪を引かれる思いで帰路についた。

サン・ピエトロ寺院

 サン・ピエトロ寺院へ

 翌日、太陽が昇るのを待ちかねたようにホテルを飛び出す。地下鉄に乗って午前8時前にサン・ピエトロ寺院に到着した。朝日が寺院の正面を照らし、少しピンクがかった外壁と白い柱、水色のドームが絶妙のバランスで浮かび上がる。さっそくミケランジェロが設計した回廊の片隅に日陰の席を確保し、スケッチブックを広げる。ドームの曲線や列柱のリズムを一心不乱に見つめてペンを走らせる時の高揚感は何物にも変えがたい。

 しかし幸せな気分は長くは続かないもの。

この絵を描き終えようとするころ、私の視界をたびたび人の姿が遮る。さすがにちょっといらついて、ふとわれに帰ると、いつの間にかすさまじい群集が右手の回廊から僕の目の前まで並んでいる。そう、バチカン美術館の開館時間を待つ人達だった。「早起きは三文の徳」・・・もう少し寝坊していたら、サンピエトロは私のものにならなかった。

サンタンジェロ城

  次の目標はサンタンジェロ城だ。

 絵描きの旅は今日も忙しい。日本では見られない円形の城。こんな巨大な建造物が紀元123年に建てられたというのだから驚きだ。日本はまだ弥生時代のはず。こんな巨大な建造物が作れるはずもない。ローマ帝国の偉大さを改めて思い知らされた気がする。
 さて絵を描こうとしたものの、時刻はまだ10時過ぎなのに照りつけるローマの陽光は半端ではない。城の円形がきれいに見えて、足元にはアーチの橋がかかって、テヴェレ川には青空が映りこんで、そして何よりも日陰であること。こんな条件が適う場所を求めて歩くこと30分。やっと確保した街路樹の木陰の下。雄大な城を描くために大きめのスケッチブックを広げる。幸いサンピエトロ寺院と違って、ややこしい装飾はほとんど無し。気持ちよくスケッチしていたが、ふと気が付くといつの間にか手元のペン先が反射光でギラリと眩い。そう太陽は昇るのだ。手早く、真夏の炎天下で2枚目のスケッチを終えたとき、喉の渇きはもはや我慢の限界。CAFÉを捜し求めて水分補給すべきか、このまま我慢して城に登るべきか。 しばし考えた挙句、古代ローマ人に敬意を表して後者を選択。 延々と続く階段の長いこと。 時々現れる窓は美しいローマの町並みを切り取って見せてくれる。

サンタンジェロ城より眺める

 それなりに、ローマ文化を堪能しつつ、ひたすら昇る。すると・・・あった。お城のテラスにCAFEが。 運よく日陰の涼しそうな席をゲット。しかも窓の外にはサンピエトロ寺院の光景が広がっている。
ウェイター「注文は?」
もちろん、「ドラフトビア!」
ウェイター「スモール?」
もちろん、「ミディアム!」(本当はラージと言いたかったのだが)
喉が勝手に水分を吸収するのを見届けた後、ゆっくりと眼下の風景をスケッチ。
京都、いやどこかの観光地のように長居をして追い出されることも無く、しばし幸せな時間をすごした。

ローマって素晴らしい。風景も、ビールも。

ナヴォーナ広場 高級CAFEのテントの下でスケッチ

 さて、ゆっくりしてはいられない。今日はまだまだ予定がある。サンタンジェロ城からテヴェレ川を渡り、20分ほど歩いてナボーナ広場へ到着。
 またまた 素晴らしい!左のオベリスクと噴水の彫刻はベルニーニの作品、正面の教会はボロミーニの作品だ。そして広場は真昼の強烈な日射にもかかわらず観光客が溢れている。
  人ごみに邪魔されず、日陰で、しかも座って描けるベストなアングルを見つけた。そこは高級CAFEのテントの下。仕方が無いので(?)、やむを得ずまたまたドラフトビアを注文(しかも2杯!)。昼食のサンドイッチをつまみつつスケッチをした。
  建物の華麗な装飾にひるむことなく、惑わされること無く、ほんの30分ほどでペン描きスケッチを終えられたのは、ローマの雰囲気に手が慣れてきたからかいつもよりちょっとペースの速いアルコールのせいだったのか。

パンテオン

  さらにナヴォーナ広場を抜けてパンテオンへ。内部は人の頭しか見えない。 この人ごみの中ではスケッチは無理!あきらめてさらに有名なトレビの泉へ。予想はしていたが、

観光客がひしめいていて・・・

絵を描くどころか、とても泉に近づくこともできない。近づいて泉にコインを投げ入れる趣味はないので、早々に退散しスペイン広場へ向かう。かの大階段が現れる。皆いったい何をしているだろう。座り込む人があふれていて上る気にもならない。残念ながらここもスケッチをパス。
 広場の道をまっすぐに抜けるとやっと、やっとポポロ広場に到着する。事前の計画ではこの広場に面する「双子教会」を描くつもりだった。ガイドブックの点数も抜群!だが実際目にしてみると、残念ながら、たぶん改修工事のせいだろう、細部がちょっとお粗末で不自然。創作意欲喪失・・・ローマのすばらしさが私の建物を見る目を厳しくしたのかもしれない。

スペイン広場とトリニタ・デイ・モンティ教会

トリニタ・デイ・モンティ教会へ

 そこで今度はボルゲーゼ公園を経由してトリニタ・デイ・モンティ教会へ向かうことにした。 実はこの教会の下が先程通ったスペイン広場だ。教会が一番美しく納まる構図を求めてあの人ごみの大階段を降りることに。こんなところでスケッチブックが広げられるだろうかと心配したが、ちょうどこのとき広場でお祭りが始まった。ありがたいことに階段に座っていた人たちは一斉にそちらに移動。その一瞬の隙をついて立ち位置を確保、スケッチすることができた。
 描き終えたとき、さすがにもう足と腰は麻痺状態・・・。

帰ろう!ビールが待っている。

コロッセオ

 ローマ滞在最後の日。 夕刻にはフィレンツェ行きの列車に乗らねばならない。今日も描きまくるぞと意気込み、またまた急ぎ足の旅に出る。
 この日の最初のスケッチはあまりに有名なコロッセオ。その存在感。見る人を圧倒するフォルム。精密に組み上げられた巨大な石の塊。柱にも壁にもあちこちに削ぎとられたような窪みが残っている。
 降り注ぐ雨が石を溶かしたのか、戦人(いくさびと)の槍のあとなのか、いずれにしても、2000年の時が刻まれた証拠にちがいない。
 興奮する気持ちがペンの動きを加速するのか、快調にこの日の一枚目を描き終えた。そして次は隣接するフォロ・ロマーノ。期待にたがわぬローマの遺跡。さてスケッチをしようとしたとき、気がついた。

なんとペンケースが無い!

 手提げ袋を芝生の上に横たえたとき滑り落ちたに違いない。真っ青になり、心当たりを必死に探すも、もはや無駄。海外では一瞬でも手元から離れたら二度と戻ることはないという格言を現実に味わうことになった。
 どうする・・・・さんざん悩んだ末、最後は楽天家の私。列車の時刻までは観光を楽しむと割り切った。 かくしてローマ3日目の成果は一枚のみとなってしまった。残念。
 さて市の中心部に戻って、フィレンツェ行きの列車が発つぎりぎりまで、明日使えるペンが売っていないかとあちこち探し求めたが、店頭に並ぶのは事務用、お土産用のおしゃれな水性のペンばかり。水彩絵具を重ねても滲まない、細い油性のペンはとうとう発見できなかった。失意のうちに列車に乗り込む・・・。

イタリアをスケッチする フィレンツェ編

フィレンツェの町並み 画材店休業!

ローマでスケッチ用のペンを落としてしまった私。ペンが無ければ絵は描けない。その日の夜遅くフィレンツェのホテルに到着すると、インターネットで早速市内の「画材店」を検索した。さすがに芸術の都フィレンツェ。数件の画材店がヒットした。ちょっと安心し、その日は眠りにつくことに。

翌朝食事を済ませると、まっすぐに画材店へ。けれど運命の女神は私を見放しているようだ。

訪ねた画材店は全て臨時休業だった。

私の困惑をよそにドゥオモの広場では、地元の画家たちが観光客相手の似顔絵を描いている。突然ひらめいた。発見!彼が手にしているのは、きっとプロ用のペンに違いない。
英語が苦手な私だが、この際そんなことは言っていられない。知っている単語を並べ会話を試みる。「あなたが使っているのと同じペンが欲しいのだけど、どこで買ったか教えてくれませんか?」
「今の時期、画材店はみんな夏季休暇中だよ」
「でも、一軒だけやっている店があるよ」
「地図は持っているか?わかりにくいので、注意して。今がここ。次の道を左に入って・・・ここを右。この角の店だよ。」

ありがとう!


このやりとりはなんとすべて英語。人間必死になると、会話も出来るようになるらしい。いや僕の実力に合わせて、ゆっくりと話してくれた優しいイタリア人のせいか。芸術家は気難しいと言われるが、なんの、このフィレンツェの画家の親切は一生忘れまい。

一日半ぶりにスケッチ。ドゥオモの鐘楼。

ドゥオモの鐘楼

ペンを得た喜びに満ちている・・・と言いたいところだが実はこの時かなり苦戦した。
いつも私が使っているペンは1本300円の日本製。指先の強弱とスピードにあわせて、太くなったり、かすれたりと、結構自由自在に表現できる。
ところがイタリアの画材店では日本製のペンは一本1000円もするのだ。それなのに日本では高級ブランド品のステッドラーのペンは一本300円で買える。
当然ステッドラーのペンを買ったのだがこれが実に使いにくい。強く描いても線は太くなってくれず、弱く描くと、インクが出てこない。どうやら線の強弱は筆圧でなくペンのスピードで調整する必要があるようだ。この後ペンの癖をつかむのに四苦八苦しながらのスケッチとなった。

次のターゲットは「クーポラ」。

クーポラはブルネレスキが設計した ルネサンスの「花の都フィレンツェ」のシンボルそのものだ。
ただこの町の街路はとても狭い。クーポラの全体像を描こうとすると、ヴェッキオ橋を渡ってピッティ宮へ行き、さらに「裏庭」というにはあまりに広大なボーボリ公園まで行かねばならない。見晴らしのよさそうな場所を求めて歩くこと1時間。すばらしい場所を見つけた。左からドゥオモの鐘楼、クーポラの全景はもちろん、ヴェッキオ宮とサンタ・クローチェ教会の塔も見える。いわばフィレンツェの役者が勢ぞろいといったところか。

クーポラ全景

舞台の背景は広大な青い空。ゆっくりと流れる白い雲は時を忘れさせる小道具だ。
何百年も変わらぬ光景。
夢中でペンを走らせていた私と同じ場所で
同じ光景を描いていたルネサンスの画家がきっといたに違いない。

ベッキオ宮殿

真夏のフィレンツェ。空が青い。

歩いていて感じるのはその空の青さだ。日本の夏のようにやや白く滲んだ水色の空ではない。
コバルトブルーの絵の具を大きなバケツから空一面にぶちまけたように「青い」のだ。
灼熱の太陽は褐色のはずのヴェッキオ宮の外壁を白く照らし、青空は深く、濃く、鮮やかに輝く。Cafeのテントの隙間から偶然、見上げたこの構図。まさにフィレンツェの夏だ。

サンタ・クローチェ教会

フィレンツェは路地から見る教会が美しい。

サンタ・クローチェ教会の鐘楼はこの道幅にあわせて設計したのかと思うくらい、細長いプロポーション。
しかも石と鉄、レンガと瓦、木の建具が絶妙の色彩で町に溶け込んでいる。フォレンツェの魅力の秘密はそんな歴史のパレットに詰まっているのだ。

アルノ川にかかる一番美しい橋は?

有名な橋はもちろん「ポンテ・ヴェッキオ」。 しかし実は土産物の店が好き勝手に張り付いて、観光客が群がる姿は美しいとは言いがたい。橋としての気品はお隣の「サンタ・トリニタ橋」のほうが上だ。
その事実を証明してやろうとスケッチブックを取り出したのだがすでに夕刻。強烈な夕陽が正面から、水平に僕の目を射抜く。帽子などまったく役に立たず、あまりのまぶしさにこの日は退散。

サンタ・トリニタ橋

そして翌日の早朝。朝陽のサンタ・トリニタ橋をスケッチすることにした。すがすがしい朝陽が空の青色を奪って、建物をオレンジ色に染め、水面を金色に照らしている。なんて美しい!この光景を目に焼付け、昼一番の列車でベニスへ向かう。

フィレンツェからユーロスターに乗りヴェネツィアへ。

イタリアをスケッチする ヴェネツィア編

 フィレンツェからユーロスターに乗りヴェネツィアへ。昼間は動き回り移動は夕方にというのが旅の定石だが、イタリアでは真昼の移動も悪くない。車窓に流れるのどかな緑一色の田園風景を楽しめるからだ。
  旅の達人なら、押し寄せる眠気を気にせず、そのまま白昼夢を楽しむだろう。だが私は初めてヨーロッパを訪れた初心者。 車内アナウンス が駅名を告げるたびにびくびくし、緊張するうちに目的地になんとか到着した。
 この日予約したホテルは、ヴェネツィア本島ではなく、手前の駅メストレ。
チェックインを済ませ、再び列車に乗り、海を渡りサンタルチア駅に到着したのは午後3時過ぎだった。

サン・ジェレミア教会

 残り時間を気にしつつ、地図を片手にまずはサン・ジェレミア教会の広場へ。太陽は西に傾いているとは言え、猛烈な熱波はひるむことを知らない。たまらず長く伸びた建物の影に避難し、スケッチブックを取り出す。
すっかり癖になってしまった、CAFEでビールを飲みながら絵を描くという至福の時だ。

ヴェネツィアの運河

 水の都ヴェネツィア。つまり町の主役は運河と船。だから建物も運河に沿って作られ、その隙間が街路になり、それが出会うところが広場と教会になる。そんなこの町の成り立ちを思い知る。
 夕暮れを気にして再び歩き始めたものの、道は細くて、曲がりくねって、どこへ行くのかさっぱりわからない。歩けば歩くほど、方向感覚が無くなって、地図などさっぱり役に立たない。おまけにフィレンツェの芸術家たちはあれほど親切だったのに、ベニスの商人は道を聞いても、ろくに答えてくれない。さらにイタリアに来てから、毎日ハードスケジュールが続いたせいか私の足も悲鳴をあげている。

  そんな疲れた体に鞭打って、この日最後にスケッチしたのがこのシーンだ。ゴンドラで行く運河の突き当たりに建物が面している。絵になる風景も主役はやっぱり運河だった。

イタリア最後の日。最悪の一日になってしまった。

 イタリアに来てから連日の猛暑と晴天。この国では雨など降らないのだと思い込んでいたが、なんとこの日は朝から大雨ならぬ大嵐。しかしここまできて一日中ホテルで遊んでいるわけにいかない。傘の下から吹き込む横殴りの雨にずぶぬれになりながら、お目当てのサンマルコ寺院を目指した。
「寒い」・・・濡れた服に吹き付ける冷たい風が容赦なく体温を奪う。
「遠い」・・・またしても迷路。気がついたら同じところを2度歩いていたことも。
「疲れた」・・・ぐっしょりと水を吸った靴は鉛のよう。しかも足は連日の強行軍でまめだらけ。
  三重苦に悩まされながらも何とかサンマルコ寺院に到着。そしたら・・・
なんと!

 「外壁改修中!」

 建物正面から右側が工事用の仮設足場で覆われてまったく見えない。いかに絵とは言え半分を想像で描くわけにはいかず、いつもは楽天的な私もさすがにがっかり。

サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会

  疲れ果てぐったりとベンチに座る私を慰めてくれたのが対岸に見えた3つのドームと尖塔のある建物。
 嵐の中、海に浮かぶその印象的な姿に思わず、寒さを忘れてスケッチしたが、後で調べるとその名は「サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会」。設計はかの有名なパラディオだった。さすがに美しい。
 本当はヴェネツィアでもっとスケッチする予定だったが天気には勝てない。

 僕のイタリア旅行は終わった。

追伸
海外旅行に食べ物の話は欠かせない。本当は美味しい、お勧めのレストランやCAFÉの情報を皆さんに提供できると良かったのだが、残念ながらスケッチで疲れ果て、目の前にあったレストランで適当に空腹を満たすという毎日。最初は美味しかったパスタも最後はトマトソースを見ただけでうんざり。帰りのエミレーツ航空の昼食の牛丼が最高に美味しかったことをせめてお伝えしておこう。