ペンと水彩で描くミラノ大聖堂 その制作プロセスを公開! 

 私の絵描き活動の一つである海外スケッチ旅、今日のテーマはあの有名なミラノ大聖堂だ。

 最初にイタリアを訪れたときは旅程の都合でミラノには行けなかった。だから2度目のイタリア旅行ではまずミラノのホテルを押さえた。そしてもちろん有名なミラノ大聖堂を真っ先にスケッチしようと決めていた。今回はその制作プロセスを解説しよう。

目次

1.ミラノ大聖堂の歴史をチェック!

2.ミラノ大聖堂の外観の特徴とは?

3.ミラノ大聖堂の作画計画を練ろう! 

4.まずはペン描き!

5.下塗りはどうする?

6.グリザイユで影を描こう!

7.建物の固有色を塗っていこう!

8.仕上げ!

■ミラノ大聖堂の歴史をチェック!

まずこの聖堂の簡単な歴史を確認しておこう。建設が始まったのは14世紀。だが中断、設計変更を経て完成したのは19世紀、ミラノ公国を征服したフランス、ナポレオンの命により竣工したとのことだ。なんと建設に500年のかかっている。

 途中の設計にはレオナルド・ダ・ヴィンチやブラマンテもかかわっていたといういわくつきの大聖堂だ。

ミラノ大聖堂の外観の特徴とは? 

 建築様式は典型的なゴシック様式だ。(ゴシック建築について詳細を知りたい方はこちら→)。ただし、パリのノートルダム寺院のように正面に双塔のあるファサードではなく、無数の尖塔が競いあうように並び立つデザインだ。

 各尖塔は細い柱が組み合わさって上に伸びているので、ファサードは無数の垂直線が強弱をつけて立ち上がり、開口部の装飾や聖人の彫刻がそれに絡まりあうように配されている。
 このファサードこそミラノ大聖堂の個性であり、美しさそのものと言える。

■ミラノ大聖堂の作画計画を練ろう! 

 さて、そんな美しいミラノの大聖堂を描こうとしたものの、実は完成のイメージをどうするかしばし悩んだ。塗りなおしの効かない水彩画は油絵と違っては最初の制作計画がとても大切なのだ。

 先に述べたようにこの聖堂のファサードはとんでもなく複雑だ。無数の尖塔を、見たままに、いつものようにペンと水彩で描き切るか?(私の風景画の描き方に興味ある方はこちらを→)あるいは思い切って省略し、面の変化と形だけの表現とするか?

 当然前者は相当の時間と根気が必要だ。さらにいつもならペンの線も多少の失敗は何とでもなるという気で描くのだが、これだけ線が複雑に絡む建物はさすがに慎重さを要する。

 悩んだ末、結論はいつも通り「ペンと水彩で見たままを描く」だ。せっかくイタリアまで来たのだから、とことん自分の描き方で・・・と思ったからだ。

 私が旅先で使用するスケッチブックのサイズは通常F0、SM(サムホール)、6号の三種類(その理由はこちら→)だが、今回はもちろん6号だ。大きめのサイズでないとあのディテールは描ききれない。

■まずはペン描き! 

 いつものように下書きをせず、いきなりペンで描いた・・・と言いたいところだが、さすがに今回は鉛筆で軽くあたりを採っている。と言ってもあまり細かく鉛筆で下書きしていてはそれだけで時間を採られてしまう。

 だから、建物全体の縦横のサイズ、屋根の勾配比率、目立つ尖塔の位置と間隔だけをチェックすることにした。おおまかな鉛筆の線を頼りにその間にある尖塔や装飾は、誤解を恐れずに言うと、「上から、目に入る順番に」描いていく。

 本来、スケッチの基本は「全体から細部へ」なのだが、これだけ「細部」が多いと「全体」と「細部」を行き来するだけで時間がかかってしまうからだ。

 もちろん各パーツの位置は透視図法に従って矛盾の無い位置に描くことは必要である。ただこれもあまり図法にこだわって分割線を何本も引いているとこの無数の垂直線、どれがどこにあるかわからなくなり、やはり時間をロスしてしまう。(透視図法を使った建物の描き方はこちら→

 だからある程度のガイドラインがあれば、思い切って(対象をよく見ながら)直感で位置決めをする勇気も必要だ。
 それでもペン描きだけで2時間半以上はかかったかもしれない。気が付いたらすでに日が傾いていた。

 私は通常、旅先での時間を節約するため、現地のスケッチはペン描きまでで止め、なるべく多くのスケッチをすることにしている。だからこのスケッチも着彩は帰国後のものだ。

今回の水彩画の制作プロセスを簡単に簡単に説明しておこう。使った紙はアヴァロン300g/㎡、絵具はウィンザーニュートン透明水彩だ。

■下塗りはどうする?①図

 まず、ペン画の上に下塗りを施す。下塗りは絵のモチーフにより様々だが、今回は聖堂の外壁の石色を意識して薄い黄色(ウィンザーイエロー)と赤(パーマネントローズ)を混色して平塗り(「水彩画入門 色塗りの基礎技法を覚えよう!→」を参照)し、乾かないうちに空にブルー(コバルトブルー)を垂らした。

■グリザイユで影を描こう!②図

 いつものようにグリザイユ画法で(「水彩画の基本!知っておきたいグリザイユ画法と絵具の透明度→」を参照)で明暗をつける。

 今回は都市の風景で森や林などの緑系の色が無く、画面が単調になりそうだったので、グリザイユを施すときにプルシャンブルーとウェンザーバイオレットを併用し、下塗りの段階で単なる明度差以上の変化をつけるように工夫した。 今回はこの段階でリブ柱や人物にマスキングインクを施している。

■建物の固有色を塗っていこう!③図

 建物各所の個別の色を塗ってゆく。地面の表現、両側の建物は画面の雰囲気を出すための重要な要素。細かく描きすぎないことと、色調のバランスを考えることが大切だ。
聖堂の外壁は①の石色の水分を減らしより濃い色を重ねて、重厚感を表現している。

■仕上げ!④冒頭の絵(完成図)

  濃い影はさらに濃く色を入れる 。外壁は同じ材料だが頂部をやや黄色を強く、下部をやや赤みを強くし、変化をつけている。最後にマスキングインクをはがした後に、全体になじむように色を入れて完成だ。

P.S.
私のその他の水彩画作品はこのブログの「加藤美稲水彩画作品集→」を見てほしい。
海外スケッチ旅に興味のある方はブログのカテゴリーである「スケッチ旅海外編→」を見てほしい。

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