水彩画は子供の頃から親しんだ画材。だから誰でも気軽に始められる。だが誰もがぶつかる壁がある。それは慣れて、筆の使い方も色の混ぜ方、水の含ませ方も一通り覚えた頃に訪れる。
「どこかプロの画家との違いがある。何故だろう?」
でも子供じゃあるまいし、そう簡単に上達するはずがない。やはりわたしには才能がないのか・・・と諦めてはいけない。やる気があれば絵は必ず上達する。
いつまでたってもあるラインを超えられない人には理由がある。それは自分の絵を客観的に見られないからだ。どこが素人くさいのか分析していないからだ。まずは自分と同じテーマで描いた、いい絵をじっくり見てみよう。
どこで?美術館?有名画家の画集??そんなに都合よく参考になる絵が見つかるはずないじゃないと言うかもしれない。
心配することはない。いい方法がある。まず使用料は無料。現代芸術作品の世界中の傾向がわかる。その絵が評価されているかどうかは「いいね」の数でわかる。
もうお判りだろう。インスタグラムだ。(フェイスブックでもわかるが、自分の求める作品だけをハッシュタグ、例えば#人物画 #風景画などと検索すれば、いくらでも参考の絵が出てくる)
その中で、自分の個性と客観的な人気を合わせ目指す方向を決める。参考になりそうな絵は片っ端から保存しよう。そしてじっくり自分の絵とのギャップを考えてみよう。
素人っぽい絵になる原因は主に二つある
ケース1は各部の彩度が鮮やかすぎて画面に統一感がなくなる場合。ケース2は逆に統一感はあるが怖がって全体的に色が薄すすぎる場合のどちらかだろう。
さて改めて、インスタグラムで自分が選んだ絵と自分の絵を比べてみよう。さてあなたはどちらだろうか?
もしケース1の統一感がないことが原因であると判ったら、最初の下塗りとその上に乗せる色の濃さを加減する必要がある。
インスタグラムには動画で塗りのプロセスを公開している作品もある。具体的な例をチェック、比較してみると良い。
そして実は、私の場合はケース2だった。特に最初の頃は、ブログでの公開を前提に考えていたので、多少色の薄い絵でも、スキャンして、しきい値を調整し、アップするとそれなりに味が出てしまうのだ。
しかし個展で額に入れて実物を飾ると、絵の弱さは一目瞭然となる。
さてどうするか。もちろん欠点に気がついた時点で、次からの作品で注意することは当然なのだが、それよりももっと効果的な方法がある。
以前描いた絵に再度筆を入れよう!
教科書的には多分タブーとされていた方法だ。
それが何故タブーとされていたかというと、スケッチや水彩画は「一瞬の感動の表現」であり、後から筆を入れ描き直すなどとんでもないということらしい。
しかし私は自分の作品の問題点が明確にわかっていて、それをほっておくことがいいことだとは思わない。一作ごとに進化するであろう、自分のテクニックで加筆し、絵が良くなるならその方がいいと思っている。
参考に私の絵の例をお見せしよう。冒頭の右の絵が最初に描いてから数年後に再度筆を入れた絵、左が当初ブログにアップした絵だ。
全体的に彩度をあげ、明度差を大きくし、背景の山の表現には水をたっぷり使って、水彩独特の滲みの表現を強調したものだ。
いかがだろう。水彩画に後から手を加えることは悪いことだろうか。客観的に以前の失敗が頭に入っていれば、新しいチャレンジを重ねることでその効果は具体的に自分のものになる。あなたは確実に上達できるはずだ。
P.S.
ケース2で私と同じテクニックを使うためにはある程度、水彩紙が丈夫であることが前提だ。そのためにも初心者であっても普段から300g/㎡の上等な紙を使うことをお薦めする。(「水彩画入門!始めに買うべき道具は?→」を参照)
P.P.S.
今回は一度描いた水彩画を修正することに焦点を当てたが、もっと基礎的なことが知りたい方は描きに記事をまとめているので、参照してほしい。
■カテゴリ「絵画上達法→」
■透明水彩の基本を知りたい方は「水彩画入門 色塗りの基礎技法を覚えよう!→」を参照。
■建物を描くための透視図法のコツを知りたい方は「鉛筆はいらない!下書きしない風景画の描き方→」を参照。
■透明水彩の正しい着彩手順を知りたい方は「何故上達しない?知っておきたい水彩画の正しい着彩手順!→」を参照。
■ペンと透明水彩による風景画の制作プロセスを具体的に知りたい方は「ペンと水彩で描くミラノ大聖堂→」を参照。
スケッチ旅行のノウハウを知りたい方は下記の記事を参考にしてほしい
■スケッチ旅行に必要な道具とは
■ここを描きたい日本の風景!
P.P.P.S.
私の水彩画は「加藤美稲水彩画作品集→」で一部を公開している。興味のある方は覗いてほしい。
私の絵描き活動全体についてはトップページで紹介しているが、同じ目的で活動してくれる方も募集(現在システム構築中)したいと思っている。興味ある方は参加してほしい。
[…] この作品の解説をしておこう。紙はもちろん水彩紙。パルプ100%の英国製ラングトンだ。 最近購入したラングトンは、すぐ表面が風邪をひいてしまう気がして、使うのをやめてしまったが、かなり以前に購入したこの水彩紙はまったく問題がない。ロットにより差があるのか、製法が変わったせいなのかは不明だ。 この絵は少し前にこのブログでも触れたが、一度描き終えた後、上から再度着色をしている(その記事「水彩画上達法」についてはこちら→)が、表面強度はコットン100%紙とまったく遜色なかった。 画面の線は、いつものようにサインペンだ。それほど複雑な構図でもないので下書きはしない。いきなりペンで描く。多少の失敗は気にしない。 よく見てもらえればわかると思うが、間違えた線が所々ある。皆さんも、ペンで描くなら、なるべく大胆に描く練習をするといい。実は案外気にならないものなのだ。 絵具はウィンザーニュートンの透明水彩絵具の24色の固形絵具、パレット付タイプだ。 この絵の大きさはSM(サムホール:227mm×158mm)。それほど大きなサイズではく、同じ色を大量に塗る必要はないので、本当は20色も要らない。赤、青、黄色を混色するだけで描けるはずだ。ただやはり人によって好みの色が何色かあり、それがいつも安定して、同じ発色をしてくれるというのはありがたい。 私の場合はグリザイユ(グリザイユ画法について知りたい方はこちら→)に使うプルシャンブルーと、森を描く時のサップグリーン、草原を描く時にサップグリーンに混ぜるウインザーイエローは欠かせない。木々を描くときはセピアも必須だ。 どの水彩画家も自分の画面にオリジナルの色調を持っているが、その秘訣は案外どのメーカーのどの色を中心に据えるかという好みで決まっているのかもしれない。 […]
[…] 実はこの絵はその段階で最初の個展に出品したが、その後もう一回修正している。以前に水彩画上達法(詳細はこちら→)で書いたとおり、私は一度完成した絵に再度筆を入れることをタブー視していない。 当時はそれなりに満足していたのだが、菜花の鮮やかさがまだ表現しきれていないと思い始めたのだ。 ウインザーイエローは水彩の黄色としては申し分無く鮮やかだ。だが透明水彩の場合、油絵と違い紙の白さがどうしても透ける。だから明度は高いが彩度は油絵ほど高くならないのだ。 しかも一度塗った色は、その上からどんな修正を加えても、それ以上に鮮やかになることは絶対にない。(透明水彩絵具の技術的知識についてはこちら→) […]
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