透明水彩入門 滲みとぼかしのテクニック!

 透明水彩を使い始めると、油絵にはない、「滲み」と「ぼかし」のテクニックを極めたくなる。
 人物画、風景画いずれにも使えるテクニックだ。(水彩画の基本の描き方については色塗りの基本テクニックはこちらを→風景画はこちらを→人物画はこちらを→参照してほしい)
 今回はそのテクニックを使う上での注意事項を述べようと思う。

■ぼかしのテクニック

 パターンとしては二つある。水で湿らせたぼかし用の筆を使う場合と乾いた筆を使う場合がある。
 水で湿らせたぼかし用の筆を使うテクニックはある程度乾いた下地に使う。例えば森を描くとしよう。
 まず明るい部分に暗い樹木の外形を描く。その形はシャープに出したい。しかし内側はぼかして他の色を混ぜたい。
 そんな時は外形を描いた筆とは別な筆で、絵具が乾かないうちに、穂先に絵具をつけていない、水だけで湿らせた筆で内側をなぞるのだ。
 すると外形はシャープなラインを保ったまま内側はぼかすことができる。次にぼかした内側にさらに濃い絵具で次の樹形を描き入れ、さらにその内側を先程のぼかし用の筆でなぞるのだ。
 こうしてはっきりとした樹形を残しつつ、こんもりとした、ぼかしの効いた樹木のグラデーションが描けるというわけだ。
 ぼかし用の筆は筆跡が残らない、平筆がいいだろう。ぼかすだけなのであまり高価な筆は勿体無い。かと言ってナイロン筆では柔らかなぼかしができない。私は別の記事で書いた(詳細はこちら→)百円均一の店で買った馬毛の平筆を使用している。
 もう一つ気をつけないといけないのは先に書いたように「ある程度」乾いた水彩紙に使うということだ。
 湿らせたままだと最初の筆を置いた瞬間に、滲んでしまいシャープな線が表現できない。かと言って乾きすぎるとぼかしの筆跡が残ってしまう。
 つまりこのテクニックを広い面積でしようとすると、乾く前に処理を終えなければならないのでとても忙しいことになる。私は右手に絵筆を、左手にぼかし用の筆を握り、頻繁に持ち替え、描いている。
 次に乾いたぼかし用の筆を使う場合。例えば広い草原を塗るとしよう。
 まず湿った水彩紙にたっぷりと水を使った草原色を一気に塗る。遠くの草原そのものは水分の変化だけでも味が出るが問題は近景の草だ。
 一本一本草を描く人もいるだろうが、あまりに細かい草はそんな手間はかけていられない。そこで乾いた筆の出番だ。
 下地の草原がある程度乾いたら、上に近景の草色を置き、乾いたぼかし用の筆で穂先を一気に跳ね上げるようにして描く。草原のぼけ具合が綺麗に出るはずだ。一度試してみるといい。

■「滲み」のテクニック

 こちらは最初から最後までたっぷりの水で水彩紙を湿らせてから使用する。先程の森を例に取れば、樹木の遠近、樹種の違い、光と影のゾーンの違いなど、下地色と描画色のエッジの変化を絵具が水彩紙に染み込む偶然の形に任せてしまうのだ。
 シャープな人為的なエッジはでないが、油絵には絶対不可能な水彩画独特の表現が可能となる。
 そしてこのぼかしのテクニックは下地色を一旦完全に乾かしてから、重ね色で滲ませる場合と、下地色が乾かないうちに、紙上で混色しながら滲ませる場合がある。
 前者の方法では下地の色に描画色のフィルター、フィルムを重ねたイメージであり、色は濁らない。
 後者は部分的に混色が起こるので、濁って彩度が落ちる可能性があるが、モチーフの色が単一の色相でなく色々な素材が混じったり、変色したりしている場合はむしろ面白い表現になる。
 私は風景画で古い建物の石やレンガの壁の表現に一部混色の手法をよく使っている。
 滲み用の筆は元々エッジの線を表現しないのでなんでもいい。極端なことを言えばたらすだけなのでスポイトだっていいわけだ。
 「滲み」は偶然の形に任せると書いた。実は滲みが厄介な点もここにある。つまり細かなコントロールが難しいのだ。
 特に暗い色の滲みが明るい部分に染み出してくると、厄介であることは想像できるだろう。
 私の場合、最初から滲ませたくない部分が判っている場合はマスキングインクで滲み色の侵入を防止しておく。(マスキングインクの使い方についてはこちら→
 何度も重ねる部分はいちいちマスキングインクを剥がすわけにもいかないので、滲ませる部分だけに慎重に水を引き、滲ませる。
 それでも越境した滲みはティッシュを横に常備しておき、すぐに吸い取るようにしている。これも結構気を使う作業ではある。

 というわけで、「ぼかし」、「滲み」共にマスターするにはなかなか大変だ。でもそれだけに、うまく仕上がったときには、水彩画家だけの喜びがあるのだ。

P.S.
今回は「ぼかし」と「滲み」だけをテーマとしたが、水彩画をマスターするための「色塗りの基礎技法」(詳細はこちら→)についてもまとめたので、興味あるひとは読んで欲しい。

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