顔のデッサン3つの教訓!なぜ似ない?

人物画はモデルに似ていなくても良い!?

 「人物画は似顔絵ではないからモデルに似てないことを気にしなくていい」。確かにその通りだ。その理由は「顔のデッサン練習中!?知っておきたい五つの勘違い」で述べた。しかしこのブログの目標(トップページ、詳細はこちら→)は少なくとも、人に喜んでもらえる水彩画を描くことなので、依頼者から肖像画を頼まれた時、「全く似ていない」のでは困る。そこで今回は先の5つの勘違いを理解したうえで、やはり、それなりに似せるために、守るべ3つの教訓について、自戒の念こめて記そうと思う。

 最初に断っておくが、ただ単に顔を似せるなら特徴を誇張して描くという漫画的な方法があるが、ここでは扱わない。あくまで写実的に、敢えて言えば、売れる程度には似ている人物画を描くと言うことだ。

顔のデッサンなぜ似ない?

 顔が似ない理由は、たぶん3つある。一つ目は顔の大きさと形。二つ目は眼、口、鼻などのパーツの形と大きさ。そして最後はそれら相互の位置関係だ。これら全てが正しければ、絶対に似ないはずはない。

 だが私を含め、それら全てをいつも完璧に表現できる人などそうそうはいないだろう。繰り返しの練習が全てを解決してくれるかもしれないが、闇雲な練習では得られる成果は少ない。注意すべきポイントを知って練習した方がいいに決まっている。そこで今回は私の失敗例を挙げて具体的に説明しようと思う。

■顔の大きさと形について

 顔の外形を描く、いや顔の大きさを決めるにあたっては、実は決定的にアプローチの違う2つの方法がある。
 一つの方法は、眼、口、鼻のパーツから顔の大きさを決める方法。このブログでプラハのカレル橋での似顔絵描きのテクニックに感動したエピソード(プラハのスケッチ旅についてはこちら→)を書いたが、彼が描いていたのは顔だけ。だから両眼と眉、鼻の関係だけに神経を集中して描き、髪や肩のラインは顔を基準にして流すようにして描けばそれなりに仕上がる。もしあなたが、街角で似顔絵のアルバイトをするならこの方法がいいだろう。
 もう一つの方法は、画面の構図から顔の大きさを決める方法だ。大きな肖像画を依頼されたら、こちらの方法になるだろう。全体のバランスが狂っていたらいかに顔だけ似ていても絵にならないからだ。私の場合、F6以上のサイズで描くときはこちらの方法をとっている。

■目口鼻などパーツの形について

 手っ取り早く対象に似せるにはこの練習が一番いい。自分の顔のパーツを鏡を見て練習すれば良いだろう。もし自分の顔では描く気がしないというならタレントの写真を見てその魅力的な形を練習してもいい。インターネットの似顔絵サイトにはよく、パーツの描き方が掲載されているのでそれを見てもいだろう。 
 もちろん各パーツは顔面の微妙なカーブの上についているので、それを意識しないと、本当のパーツにはならない。それでも、私の経験で言えば、パーツだけならば、ある程度器用な人なら少しの練習でうまくなる。しかし所詮は部分に過ぎない。それだけでは写実的な絵には絶対にならない。

目口鼻など パーツの大きさについて

 形に比べれば難易度は高い。特に目の長さ、鼻の幅、唇の幅は見る角度によって変わると言うことを覚えておく必要がある。当然だが顔の高さ方向に対して正面から見ると一番広く見えるし、横顔が一番幅狭く見える。
 基本的な対処方法は顔の大きさに対する各パーツの大体の比や基準水平線、中心線の関係を覚えておき、モデルが多少動いても、それに合わせてすぐ修正できるようにすることだ。
 難しいがこれも、顔を平面ではなく立体で捉える癖をつければ、ある程度の練習でできるようになるはずだ。

■顔とパーツの位置関係、パーツ相互間の位置関係について

 デッサンしていて、モデルの顔と似ない最大の理由はここにある。しかも厄介なのは、パーツの常識的な形や大きさを理解している人ほど、失敗しやすいのだ。
 実例をあげよう。幸い20分ごとに写真を撮っていたので、失敗のプロセスがわかるとおもう。

①図
今回はモデルさんのポーズが気に入っていた。特に左側の腰と右側の膝のバランスを考えると顔は画面の中央よりも左に寄る。ちょうどよい顔の位置を決定しデッサンを始めた。大まかな体の大きさ、顔の大きさ、目口鼻の位置を捉えたところだ。
②図
さらに立体感を表現する。光と影の稜線を意識しながら影を濃くしてゆく。まだ眼、口、鼻のパーツは描かない。
③図
ここで初めて眼を入れる。すると今まで気がつかなかったが、実物のモデルさんに比べると両眼の間隔が狭過ぎ、面長になりすぎたことを発見した。
④図
そこで目の距離を広げ、鼻との寸法関係を適切にするため、目も若干大きくした。

 さてここで、皆さんに質問だ。いったん完成したこの④図、実は少しおかしいところがあるのだが、どこがおかしいかわかるだろうか?
 正解は「顔の大きさ」だ。下の写真と比較して欲しい。画像にガウスをかけてあるが、体に対する顔の比率が大き過ぎることがわかるだろう。そして実は顔もモデルさんとは全く似ていない。

 それでは何故こんな事態になったのか考えてみよう。
 「人の顔は複雑だから・・・」などと言ってごまかしていてはいつまでたっても飾ってもらえるような絵は描けない。
 理由は明確だ。③の段階で面長すぎる顔になったことを発見した時、目と鼻の関係だけを見て眼を大きくし、それに合わせて顔も少し広げてしまったからだ。だから目や口も実際より相対的に大きい。当然似るはずもない。この時、もう少し冷静に、おかしい原因を考えるべきだった。
 面長な顔になるのは両目の間隔が狭いからではなく、鼻に対して目の位置が高いからなのだ。両目尻りと鼻の下を結ぶ三角形を見てほしい。⑤のモデルさんの写真では横長の2等辺三角形になっているが、③のデッサンではむしろ正三角形に近い。だから本来の2等辺三角形になるよう目の位置を下げるべきだったのだ。そうすれば④のような顔の大きすぎるデッサンにならずに済んだはずだ。

 そしてそんな修正を後から繰り返すことになった元凶は実は①にあったのだ。①をよく見て欲しい。眼の位置を決める水平ラインが引いてある。多分これが眼の中心線であったはずなのだが、このときは体のポーズに気を取られ、眼の下瞼をこの線に合わせてしまっている。だから目の位置が高くなってしまった。
 一方あご下の位置は全体のプロポーションで決まるから動かない。結果的に面長の顔になってしまうというわけだ。

 実は③と④の間違いに気づいたのはすでに作品の着彩を始めた後だった。「おかしい」と思った時はすでに遅し、修正を繰り返したが、最後まで満足いかず。これは妥協の仕上がりとなってしまった痛恨の作品である。

■今日の教訓は3つある。

鼻筋となる顔の中心線、眉や目などの水平基準線の位置は最初に、何度も確認すること
■眼を描きこんで、「似ていない」と思ったときは、決してパーツ間の距離だけを見て修正してはいけない。体と顔、顔とパーツなど常により大きい部分との関係をチェックすること。
■人には癖がある。そして同じ間違いを繰り返す。それを論理的に早く発見すれば上達も早い。今回はプロセスを写真に撮っていたのでその原因を発見でき、皆さんに伝えることができた。だから皆さんにもお勧めする。自分の作品の制作過程を写真に残そう。そうすれば自分の悪い癖を発見できるだろう。

P.S.
 今回のテーマは「顔」だった。しかし人物画は似顔絵ではないので顔だけを描くのが目的ではない。いろいろな要素を勘案して描く必要がある。その基本的な手順は「私の人物画作法→」を読んでほしい。
 また透明水彩の下絵としての鉛筆デッサンのコツとプロセスについては「透明水彩で描く人物画 デッサン編→」で別に記事を描いている。是非参考にしてほしい。

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