私の人物画が売れた訳は…

 2度目の個展の時、私の人物画が初めて売れた。
 風景画に負けず劣らず愛着を感じてきたはずなのに、最初の個展では来場者の評判は今一つ。それだけに正直嬉しかった。

 私の人物画が何故売れたか?・・・もちろん本心は買っていただいた方に聞かないとわからない。だが、私なりに最初の個展以来、こだわって工夫を重ねた点がいくつかある(「失敗しない個展の開き方→」を参照)。

 今回はその「売れた訳」を推測しようと思う。あなたの絵描き活動にもきっと役立つはずだと思うから。

何故私が人物画を描くか

 さてその前に、なぜ私が人物画、それも女性像を描くかということに触れたい。

 中学生のころ、私が初めて油絵に興味を持ったのは、美術の教科書に載っていたルノワールの「イレーヌ・カン・ダンヴェール嬢の肖像」を見たからだ。

 こんな可愛い女性の絵を自分の手で描けたらいいなと思ったのだ。だが当時田舎の中学生が油絵を描くなどという雰囲気もチャンスもなく、平凡な中学生活を送っていた。

  そんな時教師をしながら油絵を描いていた伯父が私に油絵をやってみないかと勧めてくれた。折しも夏休み。時間はある。しかも「自由研究」とすれば宿題も済ませられる。

 絵具やパレット、筆の使い方、油の使い方などを一通り習い、さっそく描き始めることにした。

 さて何を描くか?
 本当は「イレーヌ嬢の肖像」のような女性像を描きたかったのだが、思春期の恥ずかしがりやだった私はそんなことは口に出せず、でもとにかく人物画が描きたかったので、結局モデルの要らない「自画像」を描くことにしたのだ。

  初めての経験であったにもかかわらず、自分では傑作ができたと感じていた。
 それを心優しい伯父にみせると、「なかなかいいね。でもここをこうするともっとね、・・・・色も、もうちょっと・・・」などとあちこち手を入れ始め、終了したときは完全に別の絵になっていた。

その時以来、今に至るまで、いつか私なりの「イレーヌ嬢の肖像」を描いてやるぞというこだわりが今に至るまで続いているというわけだ。

山紫水明 加藤美稲

私の人物画が売れた理由は?  

 さて、そんな訳で延々と人物画を描き続けていたわけだが、2度目の個展でやっと人物画が売れた。それが上の作品だ。タイトルは「山紫水明」。ご覧の通りチャイナドレスを着た女性の絵だ。

 実はこの絵は来場者の評判がとても良かった。その人たちのコメントを総合するとどうやら絵が売れた理由は4つあるようだ。順番に説明しよう。

1.デッサン、色使いなど技術に基本的な破綻がないこと

 「継続は力なり」という結果の裏返しだ。最初の個展以降、私が絵の制作にかける時間数は圧倒的に風景画よりも人物画に費やしている。それなりに欠点の克服に時間をかけてきたつもりだ。

2.ポーズや表情も含め魅力的な女性であること

 最初の条件は、困難ではあるが本人の努力次第だ。だがこの条件はモデルさんの技量と器量による。
 だからと言って「当たり前」と済まさないほうがいい。

 何人もの婦人像を描いているとわかるのだが、一つのポーズで同じ姿勢を取り続けるという基本ができていないモデルさんが実に多いのだ。
 まして、いい表情が作れるモデルさんは貴重だ。売れる人物画はいいモデルさん無しには絶対にできないと思っている。

絵の背景と人物に明確な関連があること

 人物画の初心者に多いのだが、背景を余白を埋めるためだけに、何も考えずに塗る人がいる。だがそれでは背景と人物が別のものになってしまう。

 冒頭の「イレーヌ嬢」の背景を見てほしい。深い森の中にいるような幻想的な背景。きっと妖精のような少女にふさわしい背景をルノワールは必死に考えたに違いない。

 その点この時のモデルには「チャイナドレス」という強烈なイメージがある。だから背景には中国の森、川、建物のイメージを合成して描きこんだのだ。

落ち着いた独特の色調であること

  この絵が売れた最大の理由だと思っている。実はこの頃から意図的に取り組んでいた手法だ。通常水彩画は鉛筆の線をあまり残さない。なぜかというと、水彩画の特徴である淡い、「にじみ」や「ぼかし」のテクニックを殺してしまいかねないからだ。

 だが私は敢えて鉛筆の線の上に水彩絵の具を塗ることにしている。
 真っ白な水彩紙にいきなり絵具を塗れば、チャイナドレスの赤も、森の緑ももっと鮮やかに見せられる。
 だが私は敢えて鉛筆のグレーのグラデーションの上に絵の具を塗ることにより、画面に落ち着いた統一感を生み出すようにしているのだ。(私の人物画の制作プロセスに興味のある人は「素描をデッサンだけで終わらせない!私の人物画作法とは→」を参照してほしい)

  人物画を好きな人は多い。でも有名な画家が必ず描くモティーフでもある。それだけにプロの描く人物画は自分だけの描き方を探すことが大切だと思っている。

P.S.
 このブログでは以下のような関連記事を書いている。興味ある方は参考にしてほしい。

 ■カテゴリとして

■デッサンについては

 ■水彩で描く人物画については



メールアドレス  *

18 件のコメント

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。

    このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください