水彩画の名画に見る女性像

浅井忠 「少女」

 人物画を水彩で描きたいと思い始めた人へ

 水彩画をはじめたばかりの人で、人物画を描きたいと思う人は多いはずだ。でも人物画はデッサン力が要求されるし、肌の色や、微妙な表情や背景との関係など、考えることが多く、手間がかかるからと距離を置く人が多いのも事実だ。

 私自身人物画、風景画両方とも好きだが、むつかしいと思うのはやはり人物画のほうだ。

 水彩の人物画に「名画」あるか?

 そんな時、頼りにするのは世に多くある「名画」ではなかろうか?
油彩画ならあなたもそんな名画をいくらでも知っているだろう。フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」ダビンチ「モナリザ」なルノワール「イレーヌ嬢の肖像」・・・。

 ルネサンス絵画、印象派の絵画、とにかくヨーロッパの絵画で人物画を探すのに苦労はいらない。私が人物画を描きたいと思ったきっかけも油絵の「名画」だった(「私の人物画が売れた訳は…→」を参照)。

 でも水彩画で有名な人物画はあるかといわれると、よほど美術史を専門に学んだ人でないと知らないだろう。

 もちろん私も知らなかった。学生時代以来再び絵を描こうと思ったものの、その手段を水彩画にしぼることにためらいがあったのは、実は「人物画を(油絵に負けないレベルで)水彩で描けるか」という不安があったからだ。

 そこで水彩画の名画で人物画がないか調べてみた。
 まず通常に美術館で記される「watercolor」はいわゆる透明水彩のことで、世にに広がったのは19世紀初頭、それも主にイギリスからであるらしい。(「絵具の知識 透明水彩は何故美しい?→」を参照)

 基本的に油彩画に比べて歴史が浅いのだ。そしてそれを日本に広めたのは幕末~明治にかけて、イギリス人で特派記者兼挿絵画家のチャールズ・ワーグマンとイタリア人フォンタネージだという。

 そしてワーグマンから教えを受けたのが高橋由-や五姓田義松(ごせだ よしまつ)。フォンタネージから教えを受けたのが浅井忠だったらしい。
 私が調べたところでは高橋由一はやはり油絵が有名で、彼の水彩画の作品は特定できなかった。

 五姓田義松 (ごせだ よしまつ) は最近でこそ有名のようだが、一般の知名度はいまひとつ。
 そこで浅井忠にしぼって調べてみると昭和57年に「日本水彩画名作全集」が第一法規から出版されていた。

 その第一巻が浅井忠だ。ずいぶん古い本なので当然普通の書店にあるはずもない。そこでインターネットで調べるとありがたいことにamazonで古書が売っており、さっそく購入した。

 浅井忠 「少女」

 冒頭の「少女」はこの画集に掲載されている水彩画の「女性像」だ。
 ご覧の通りの存在感!。

 油絵にまったく引けを取らない。 白い肌の頬にほんのりと赤味がさし、伏し目がちにたたずむ少女の様子は水彩らしい滲みやぼかしを存分に生かした表現だ。

 それほど細密に描いたわけでもないのに、柔らかな光を受けた髪の明暗、質感の表現と バックに溶け込むような光と影、空気感も魅力的だ。
 現代の水彩テクニックの規範というべきレベルだ と思っている。

 私がかすかに抱いていた水彩で人物画を描くことに対する不安はこの「少女」を見て完全に払拭された。今から人物画を描こうとしている皆さんはどうだろうか?

P.S.
ちなみに画集に描かれている説明ではこの絵が描かれたのは1894年ころ。浅井忠38歳の作品である。

P.P.S.
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■カテゴリ「ためになる美術講座→
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■「水彩で描く人物画!5つの注意点とは?→

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