水彩画に見る 雨の風景

萬鉄五郎「雨の風景」

 水彩画の好きな皆さんへ

 最近は雨ばかり。スケッチにもいけず、ネットで天気予報を確認するたびにさらにがっかりする人も多いのではなかろうか?

 でもスケッチに出かけて、途中で雨に降られると大変だ。水彩絵具は水に溶ける。だから濡れると絵具が滲んでしまうし、紙も濡れて皺になる。せっかく描いた作品がだいなしだ。

 雨は水彩画の大敵なのだ。

 だから私の作品に雨の絵はほとんどない。おそらく皆さんもそうではないだろうか?

 でも考えてみると、「雨」もまた日本の風物詩。プロ、アマを問わず絵描きにとっては魅力的な題材のはずだ。

 確かに日本では雨を描いた名画は多い。代表は歌川広重の浮世絵だろう。「大はしあたけの夕立」や「庄野白雨」は誰もが知る名画だ。

 だが浮世絵は元々屋内で製作するもの。それに対して、水彩画は元々明治時代に油絵のような重い道具がなくても、手軽に戸外で絵が描けることを長所として広まったという事情がある。

雨の魅力

 だから水彩画には雨の絵は似合わないのだと思っていたが。やはり「雨」の魅力を描いた水彩画家はいたのだ。

 冒頭の絵は萬鉄五郎「雨の風景」だ。日本の水彩画の全盛期と言われる、明治末期1904年の作品だ。彼は同じ場所で雨の風景を何枚も描いたらしい。

 この絵は降る雨を白い線で表現している。不透明色の白を細筆で描いたのか、マスキングインクを当時すでに使っていたのかは分からない。(彼は日本画にも造詣があったらしいのでおそらく前者だろう)

 個人的な感想を言えば、広重の雨に比べると、リズム感がない。だからこの絵は写実的ではあるけれど、叙情的ではない。水彩画として「美しい」とは思えない。

 だから私は名画であるこの「雨の風景」を見ても実はそれほど感銘を受けなかった。私の中では相変わらず「雨」は水彩画の天敵だったのだ。

 ところが、最近インスタグラムで世界中の画家たちの水彩画を見ていると、結構都市の雨の風景を描いている。そしてそれがとても面白い。

 その最大の理由は雨によってドラマチックな光の演出が可能になることだ。通常高い建物の並ぶ都会では足元の道は影で暗くなる。だが雨水で濡れた地面を強調すると、画面の下半分もまた、空と同じように輝き、そこに街の風景が映り込む。

 そして霧雨の中で揺らめく大気の表現はウェット技法(「水彩画入門 色塗りの基礎技法を覚えよう!→」を参照のこと)でにじみを最大限に活かす透明水彩お得意の手法にぴったりだ。

 現代作家の作品は著作権の関係でここに直接は載せられないが、「水彩画」「雨」とでも検索するといくらでも出てくる。あなたも試してみるといい。

 しかし、「雨」の下ではスケッチブックを広げられないという事実はどうしようも無い。雨の風景を得意とする現代の画家たちも、おそらく現地で写真だけをを撮り、アトリエで描いたに違いない。

 長年、現地でのスケッチをモットーにしてきた私だが、雨のシーンには改めて魅力を感じている。自分の構図で撮影した高解像度の写真を大いに利用すべきかもしれない。

 いずれ、いい「雨の風景」が描けたらまた皆さんにご報告しようと思う。それまでお待ちを。

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