美術館で見た茶室の不思議

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 大阪 中之島の東洋陶磁美術館を訪れた。北欧の有名な「アラビア」の陶磁器とマリメッコを見るためだ。この美術館はもともと陶磁器に特化した美術館なので北欧陶磁器の展示は当然なのだが、何故マリメッコなのか不思議に思う人も多いだろう。

 ちなみにマリメッコとはフィンランドのアパレル企業で、ファッションブランド名 でもある。鮮やかな色と大胆なプリント柄をデザインした商品が特徴だ。私の妻もこのブランドの 婦人服と靴が大好きだ。
 フィンランド航空の機体のケシの花(ウニッコという)模様と言えば思い出す人も多いのではなかろうか。

 実は今回この展覧会の一番の目玉は茶室とマリメッコデザインのコラボレーションだった。茶室を説明し始めるとそれだけで一冊の本が書けてしまうが、敢えて誤解を恐れず説明しよう。多少の齟齬はご勘弁願いたい。
 一般の住宅と一番違うのは、部屋の広さと、天井高さ、入り口の寸法関係だろう。基本的にスケールが小さめだ。それは茶室の目的である「主人と客が身分の隔たりなく語り合う」という濃密な空間を作るための作法と言って良いだろう。

 さてマリメッコ茶室。いかがだろう。少なくとも私が見たところ、物理的な空間、寸法の妙はまさに茶室そのもの。自然で違和感はない。
 それでいて壁と天井は全面マリメッコデザインのクロス張り。茶室の権威であれば「とんでもない」とすぐに却下しそうなものだが、美術館の企画が素晴らしいのか、日本とフィンランド、互いのデザイナーが素晴らしいのか、結果として全く破綻がない。
 見事だ。

 もちろん偶然の産物であるはずがない。よく見れば、さすがと思わせる工夫があちこちにある。床の間の周りのクロスは模様こそ大柄だが、色は侘び寂びに通ずるグレー。
 逆ににじり口のアーチ枠の向こうには派手な色のあのウニッコ模様を配している。まさに大胆かつ繊細な設計だ。

 FB(フェイスブック)の「美術館、博物館、芸術関連仲間」にこの茶室を紹介したところ、凄まじい反響があった。メンバーには茶道家もおられたようだが、「斬新、楽しいお茶席になりそう」と全面的に絶賛。きわめて日本的な茶室がこんなに簡単に西洋のそれもかなり奇抜なデザインと何故なじむのか?
 しかし歴史を振り返れば利休による余計な要素を剥ぎ落とした、究極の茶室と言われる一畳代目(とても狭い)の茶室、逆に有り余る財力を投入した秀吉の「黄金の茶室」が並存する。そして今回、ある意味素材を無視した究極の「装飾茶室」ができたように思うのだ。
 実を言うと私は茶道はたしなまない。しかしあの茶室なら、逆にきちんと作法通りにお茶を飲んでみたいと思った。
 茶室とは世界中の文化を呑み込む不思議な空間なのかもしれない。

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