古くて斬新なアート発見!友禅の美

 このブログのトップページに書いたように、絵を描き続けるには常に芸術的な刺激を受け続ける必要がある。アウトプットだけではいずれアイデアは枯渇するからだ。
 私は刺激を受け続けるために、なるべく話題の美術館は行くようにしているが、今回は私が生まれて始めて見た「京友禅」の展覧会の話だ。

 それは私が社会人になって間もないころ。当時の会社仲間と金沢へ旅行に行った。参加人数が多かったせいもあり、昼間は自由時間がたっぷりあった。
 私が訪れたのは「石川県美術館」。現在はすぐ近くにある「金沢21世紀美術館」が有名で一番人気だが、当時はこの美術館が一番大きかった。
 だから特に展示に興味を惹かれた訳でなく、建築設計に携わる者として、金沢の代表的な美術館建物を見ておこうと思っただけだ。そしてこの日開催されていたのが人間国宝の友禅作家「森口華弘展」だった。
 この偶然に今はとても感謝している。実は当時の「友禅」に関する私の知識はその単語を「聞いたことがある」程度。入場券を買い、展示室の入口に立ってもなお「友禅だってしょせんは着物、工芸品、織物の展示でしょ」と侮っていた。

 だが、展示室へ入ると状況は一変する。
 「これが友禅か!」声が出なかった。
 目に飛び込む作品はとても着物とは思えない。上部に襟があり、左右に両袖がある。確かに着物なのだがそこにあふれる季節感、いや世界感とい言ったほうがいいのかもしれない。
 梅、桜、海、空、風、ススキ、菊・・・まさに日本文化そのもの!。そしてこの心地よさは、世界共通の感覚に違いない。
 よく見ればこれらのモチーフは対象をシンプルに描き写したわけではなさそうだ。大きさも、形も現実よりある時は大きく、ある時はひねられ、どれも見事に抽象化されている。これらは優美な曲線に沿ってパターン化され小紋として繰り返される。
 そうかと思うと、大きな梅の木が大胆に背中に描かれ、その周りを花びらが踊っていたりする。
 解説を読むとモチーフの配置やパターンの繰り返し方は膝や肩など人の動きに合わせて計算されつくされているという。
 アイデアの奇抜さ、豊富さ、線の美しさ、色彩の豊かさ・・・どれも工芸というより、着物に描かれた図像そのものもプロの画家のそれをはるかに上回る。

 私は全ての視覚芸術の中で「絵画」が一番好きだ。次に彫刻。焼き物は実用性がないと評価できないと思うので、やや私の好みから遠い。まして友禅など田舎育ちだった私には最も縁遠いものと思っていた。当然芸術の対象としてなど考えてもいなかった。
 だが違う。友禅は最高の芸術の一つだと思う。山口華弘氏は2008年に亡くなった。本来は私がその展覧会で買った図録からいくつかをスキャンしてこのブログに載せたかったのだが、作家の死後50年以上たたないと、たとえ図録であっても著作権法に違反するらしい。
 インターネットで調べると日本工芸会のホームページ(こちら→)に私が見た作品の一部が掲載されていた。リンクを張っておいたので是非見てほしい。

 なお「人間国宝」とは文化財保護法に記載されている「重要無形文化財の保持者 」のうち、個人でそれを保持する人をいう。1954年に制度が始まり2019年2月までで、認定者はわずか109人だそうだ。そして今回触れた華弘氏の息子、森口邦彦氏も人間国宝だという。親子二人で芸術的刺激をインプットし続けた人生だったわけだ。実にうらやましい。

P.S.
芸術的な刺激を受け続ける・・・私の些細な体験をこのブログのカテゴリ「ためになる美術講座→」で公開している。興味ある方は見てほしい。絵を描き続ける刺激の一端でも感じてもらえれば幸いである。

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