神代の風景か? 出雲大社を描く

出雲大社へ!

 ある年の11月。カレンダーを見ていると、勤労感謝の日を含んだ休日がとても都合よく並んでいることに気がついた。

 普段の休日は自宅にこもって水彩画を描くことが多いのだが、暦がくれたこのチャンス、ちょっと遠出をしてスケッチ旅に出かけようと思った。

 行先はめったに行くことのない山陰地方、それも私が描く「古き良き日本の風景」から絶対に外せないであろう「出雲大社」だ。(美緑(みりょく)空間へようこそ!→を参照)

神社を描くのはむつかしい!?

 しかし実はこの大社を描くにあたり一抹の不安を抱いていた。日本の二大神社はご存じのように、この出雲大社と伊勢神宮だ。

 そして伊勢神宮に行ったことのある人はわかるだろうが、あまりに格式が高い神社は、一般人の私たちが本殿に近づくことは出来ないのだ。(近くでお参りできるのは天皇家だけ)

 私はスケッチブックを手に周りをうろついたが、少しでも神域に近い場所(?)で描こうとすると、警備員に出ろと言われ、結局絵になる風景は描けなかったという苦い経験をしている。

出雲大社とは?

 伊勢神宮が祀るのは天照大神(あまてらすおおみかみ)で天上の神、出雲大社が祀るのは大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)で地上にいる神だ。別名大黒様。つまり私たちにはより身近な存在だ。

 そのためなのかどうかわからない。周囲の板塀越しではあるが、伊勢神宮と違い、本殿に十分近寄り、建物をちゃんと見ることができる。
 しかも伊勢神宮のように、仰々しいガードマンにスケッチしている場所を咎められることもない。心ゆくまで、ゆっくりとスケッチできる。

 さて、初めて目にした出雲大社は実に不思議な建物だった。
 屋根は檜皮葺。柱や壁は白木。材料は日本の普通の民家と同じで親しみを覚えるはずなのだが、その巨大さは、周囲の自然のスケールから突出している。その威圧感は尋常ではない。

 それもそのはず、本殿の高さは24メートル。伊勢神宮の2倍以上ある。はるか昔はその2倍、48メートルあったというから驚きだ。

 私が神戸からここまで来るのに新幹線を使っても、5時間以上かかっている。
 現代でも、交通不便なこの片田舎にこれらの巨大な資材(檜)を運搬し、ろくな重機も建築技術もない時代に、こんな巨大な建物を建てたことに、感動せざるを得ない。
 神の権威と結びついた政治力と民衆の信仰心の為せる技だろう。

 ただ、そんな背景は別として、純粋に水彩画家として見てもこの建物は面白い。
 伊勢神宮は平入らしい(「ちょっと風変わり?伊勢神宮お膝元の町並みデザイン!→」を参照)が、こちらはご覧のように妻入りだ。そして 本殿の前後、両脇に高さの違う建物の屋根がいくつも並行にプロポーション良く、配置されている 。

 だから本殿を側面から見ると、とてもリズミカルな構図になる。神社建築独特の要素である、屋根の千木と鰹木も画面の絶妙のアクセントになっている。
 古代人には信仰心だけでなく、すでに十分な芸術センスも備わっていたようだ。
このスケッチはもちろん水彩画として仕上げている。その制作プロセスはまた後日に。

p.s.
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