京都をスケッチ…北野天満宮を描くべき理由とは?

魅力ある風景画を描く秘訣は?

 一番簡単な方法は「魅力的な建物のある風景を描くことだ」。

 もちろん普段の私たちの生活では見られないヨーロッパの建築を描ければいうことはない(「スケッチの旅海外編→」を参照)

 だがそうそう海外でスケッチするチャンスがあるわけではないだろう。だから日本で魅力的な建物を見つけることになる。

魅力的な建物を探す

 ところが日本の宗教施設である神社はヨーロッパの教会建築と違い由緒ある本殿ほど一般人には見られない。まして水彩画にそれを仕上げるなど不可能に近い。

 もちろん教会建築もいわゆる御神体は厳重に守られているものの、どんな大きなキリスト教会でも祭壇に近付いて祈ることができる。私自身どこをスケッチしていても咎められたことはない。このブログでも教会の水彩画作品を掲載できるのだ。

 神々しさを「絵にする」ことが許されないのは日本の「神社」くらいではなかろうか。伊勢神宮しかり、出雲大社しかりだ。(「神代の風景か? 出雲大社を描く」→参照)

天満宮とは

 そんなわけで神社を描こうとすると、いつもストレスが残るのだが、実は神社の中でも全国に1万以上あると言われる「天満宮」は別のようだ。

 というのはまず祀ってあるのは「神」ではなくあの菅原道真公であること。「学問の神様」と呼ばれているが、あくまでも「人」である。

 そのせいか、建物には「荘厳」「厳粛」という言葉よりもむしろ「品の良さ」「立派さ」を感じてしまうのは私だけだろうか?

京都…北野天満宮を描く

 中でも京都の北野天満宮はその総本社であり、本殿は国宝である。一の鳥居から楼門を通り本殿に続く参道は存分に日本の神社の風情を見せてくれる。そして境内の正面に拝殿、その奥に本殿がある。

 もっともこの建物は原初的な神社と違い本殿と拝殿だけのシンプルな構成ではない(「建物のある風景を描く 平野神社→」を参照)。現状の建物は江戸時代初期に建てられたもので、両者と「石の間」、「楽の間」をつなぐ「八棟造り」という形式の神社だという。

 正面から見る拝殿は立派だが、いかに国宝とはいえ、整いすぎた左右対称の構図を水彩画にする気にはなれない。幸いこの神社は本殿の周囲を歩いてスケッチできる。歩くにつれて「八棟造り」の複雑な屋根が華麗な姿を見せてくれる。

 冒頭の写真をみてほしい。美しい桧皮葺の屋根は、素材感は優しいのに、構成はダイナミックだ。何層にも重なる屋根の造形は実にバランスがよく、構図的には文句なく魅力的な絵になりそうだ。

 続く写真に見られるように各所のディテールも美しい。柱、梁、屋根周りの金細工は密度が高く、どれも超一流の工芸品だ。

 あらためて思う。巷の「神々しい」神社と違って、この国宝はそのすばらしさを惜しげもなく、すぐそばでみせてくれる。学問の神様は探求心旺盛な絵描きには優しいようだ。

P.S.
 日本全国を水彩画で描きたい!
 ある意味、そんな気持ちでこのブログを書いている。「旅」、「風景画」、「水彩画」に興味のある人は、是非このブログを定期的に覗いてほしい。きっと役に立つ情報が見つかるはずだ。

 また文中にリンクを張った他にも以下のような関連する記事を書いている。興味ある人は参考にしてほしい。