京都の風景 伏見の酒蔵を描く

スケッチする場所を探している人へ

 水彩で日本の風景を描きたい…そんな時、皆さんなら何処に行けばいいと思うだろうか。 おそらく大半の人が「京都!」と答えるだろう。

 だが単なる観光ならまだしも「スケッチ」をしようと思う人は少し考えた方がいい。
 特に「秋の紅葉」で有名なお寺に、快晴の天気予報が出た休日にうかつに近づくと、悲惨な目に合うことは間違いない。

 とんでもない数の観光客が殺到し、絵なんて描くことはまったく出来なくなるののだ。(「京都の秋 何処を描いたらいい?→」を参照)。

 その点、今回のテーマ「伏見の酒蔵」はそれほど人が殺到することもない、ある意味地味な観光名所である。
 だが私たちのように水彩画を描く人間にとっては、「日本の風景」を描くのに十分すぎるモチーフが揃っている、お薦めの町なのだ。

「伏見の酒蔵」とは?

 この町の良いところをあげると、まず交通の便がよく行きやすいこと。
 京阪電車の「中書島駅」から歩いて5分ほど。さらにこの町から歩いていける駅は他にも京阪「伏見桃山」や近鉄「桃山御陵前」もある。駅の数の多さはもちろん、大阪駅から最短40分で行ける。

 そしてこの町最大の長所はここに建つ建物の種類は「酒蔵」であり、他の有名な京都の建物、いわゆる寺院や町屋とは趣が異なることだ。

 特に酒蔵はご覧のように屋根勾配もきつく変化に富んでいる。漆喰の白と褐色の木目の色の対比も美しい。それに保存状態の良い建物が多い。
 特に月桂冠大倉記念館、黄桜カッパカントリー、キンシ正宗の堀野記念館などは、見応えがある。

 少し離れるが新高瀬川沿いの松本酒造も保存状態がいい。橋のたもとから見る風景はいうことなしだ。特に春、河岸に菜の花が咲き乱れる姿は最高だという。

 そして三つ目の長所は観光資源が多いことだ。名物となっている「十石舟」はその代表だ。
 十石舟は濠川(ほりかわ)を弁天橋のたもとから出発し、三栖閘門(みすこうもん)を経由して元の船着場まで戻ってくる。
 船の中から見ると、酒蔵の屋根が角度を変え、次から次へと現れる。

 草木の多い濠川は美しいだけでなく、川幅が狭く川縁には季節感と生活感が漂っている。片道20分ほどの川旅だが十分楽しめる。スケッチするにふさわしい風景が次から次へと現れると言っていいい。

 航路の折り返し地点にある三栖閘門(みすこうもん)は江戸時代、濠川と隣接する宇治川とつなぐ航路を確保するために作られたダムで、原理はパナマ運河の仕組みと同じだという。
 資料館にとてもわかりやすい模型があり、興味深い。

スケッチが終ったら…

 もちろん酒蔵の町だけあって、蔵出しの冷酒があちこちで味わえる。
 通常、私はスケッチ旅に出かける時は、事前に道具に気を使い(「スケッチ旅行に必要な道具とは→」を参照)、現地では時間配分にも気を使う(「モチーフと絵のサイズの決め方は?→」を参照)。 だからはっきり言って旅先の名物などにはあまり興味がない。

 ところが、どうも酒蔵に行くと勝手が違う。
 建物に風情があるので、惹かれるように中に入る。すると搾りたての酒の芳香に誘われ、つい試飲をしてしまう。
 そして旅の開放感もあり、杯を重ねることになる。

 だから、実を言えばお薦めの場所であるこの伏見で、私はまだ一枚しかスケッチを残していない。大いに反省している。

 なおこの町は京都市の「重要界隈景観整備地域」であり、月桂冠大倉記念館、月桂冠旧本社、内蔵酒造場などは経済産業省の「近代化産業遺産」に選定されている。

 ただし国の選定する「重要伝統的建造物群保存地区」ではない。
 酒蔵はかなり散在しており、まとまった町並みとして残るゾーンは濠川沿いに限られ、対象範囲が限られるのが原因なのかもしれない。
 いや、あるいは住民がそもそも今の歴史資産だけで十分と自認しているのかもしれない。

 いずれにしろ、今も昔も京の酒文化を支え続ける町並みは「描く」に値するのだ!

P.S.
 このブログの参考記事は以下の通り。興味のある人は覗いてみてほしい。

■カテゴリとしては

■スケッチ旅のノウハウは

■水彩画の描き方については

P.S.
このブログでは「旅」と「水彩画」をテーマにした記事を定期的に更新している。興味のある方は時々覗いてほしい。
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