秋の風景の描き方とは?…秋月にて

水彩で「秋」を描こうとしている人へ

プロの風景画家、あるいはスケッチ旅が好きな人、いや単に旅好きなだけでも良い、およそ日本の風景を愛する人々のシンプルな願いは旅先でその季節の風景を堪能することだろう。

春ならば言うまでもなく桜。美しいピンク色を写真をに撮る、あるいは水彩でそのピンクを表現しようとするに違いない。(桜のピンクについては「桜のピンク色はどうやって作る?→」ですでに記事を書いている。興味のある人は参考にしてほしい)

そして、今日のテーマは「秋」である。

絵描きとしては当然、紅葉の「紅」の表現を追い求めるべきなのだろうが、残念がら今回私が描く町並みには楓や銀杏の森はなく、旧城下町の街道にある。

したがって「一面の紅葉」に覆われることはほとんどない。ではどうやって秋らしい町並みを描いたらいいだろうか?
私の水彩画を描くプロセスの中で考えてみたい。

秋月を描く

今回の題材は福岡県の朝倉市秋月。武家屋敷群として国の重要伝統的建造物群保存地区に選定さているが、街道から母屋は殆ど見えず、絵にはなりにくい。

そこで今回描いたのは民家が数件並ぶ商家の町並みである。最初にペンで下描きをする(図①)。

実はご覧のように、構図的にはそれほど際立ったものはない。普通の2点透視であり、街道に沿って民家が一直線に並ぶだけ、むしろ単調な構図である。

このまま普通に素材の色を薄く塗り淡彩スケッチとして仕上げてもそれほど面白い絵にはならないだろう。しかも今回のテーマである秋の気配は表現しにくい。

そこで「水彩画」として仕上げるために、いくらか「操作」をすることにする。簡単に言えば、見たままを描くことをいったん忘れて、テーマに合わせて「強調」と「省略」を論理的にデザインするのだ。要領は以下の通り。

「秋晴れ」

まず「青」の表現に気を配ろう。空すべてに濃い青を塗ってはいけない。深い青は明るく輝く部分との対比でより「青く」見えるのだ。山のすぐ上は明るく白を残し、上部に行くほど青く、最上部は「ウィンザーブルーレッドシェード」(癖のない青でコバルトブルーよりも深い)を垂らすようにして滲ませている。

「背景の山並み」

実際の山はごく一部に紅葉が見られただけであるが、紅葉の範囲を広げて、秋を強調している。ただしいかに強調するといっても、山全体を濃い「深紅」に塗っては行けない。

遠くの山の彩度はそれほど高くない。「距離感」を台無しにしてはいい絵にはならない。

今回は空気遠近法を使い、全体を青みのある緑とし、青の濃淡で立体感を表現している。そして部分的に、「トランスルーセントオレンジ」を薄く、水彩紙を染めるようにしてぼかす。(いつも思うがこのシュミンケホラダムのオレンジ色は緑と良くなじむ…!)
ここまでで②の状態になる。

「秋の空気感」

幸いスケッチしたのは朝の9時頃。空気は澄んで朝日を浴びる民家の壁とは対照的に、道や建物に伸びる長い影は青っぽい。
建物の白壁は殆ど何も塗っていない。板壁も日の当たる部分はごく薄く茶色を引いただけである。影は青みを残すが、赤や緑の絵具を多く混ぜ、グレー色を強くして明度対比を強調している。

こうしてできた完成図が③である。

いかがだろう。「一面の紅葉」など描かなくても「秋の風景」が描けたと思っている。
なお、「季節の風景」をテーマにこれからも記事を書いていこうと思っている。時々このブログを覗いてみてほしい。役に立つ記事が見つかるはずだ。

P.S.
過去の関連記事は以下の通り。水彩画の好きな人は一読を。

P.P.S.
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