「モチーフ」と絵の「サイズ」の決め方は?

 水彩画の魅力を伝える・・・このブログの使命のひとつだ。絵は初心者ですというあなたに今日は「絵のサイズ」と「モチーフ」についてお伝えしよう。
 まずお聞きしたい。

あなたが今使っているスケッチブックはどのサイズ?

スケッチブックのサイズ
奥からF8、F6、F4、SM(サムホール)、F0

 描くのは風景画で、習いに行っているカルチャーセンターで教えられたサイズを使っている?それはひょっとしてF8サイズ?またはF6サイズ?
 あるいは持ち運びやすいハンドバックにも入るSM(サムホール)サイズ?
漫然と人に勧められたサイズで絵を描いていると、後で後悔することになる。実は絵にはそれぞれのサイズに適する目的と、場所と、対象がある。

例えばスケッチ旅に出かけたとしよう

 当然電車乗って移動する。抱えているのは勧められたF8のスケッチブックが入った画家用の鞄だ。座席も確保し、さて車窓を眺めながらの楽しいスケッチ旅行に思いを馳せる・・・はずが、気がつくと隣の人から非難の目線。
 当然だ。実はF8サイズのスケッチブックは幅が45cmくらいあり収納ケースは50cmくらいになる。電車やバスの座席幅は40cmくらい。つまりそれをひざに載せて座席に座ると、隣席にはみ出すことになる。そう、F8は周りの人にとても迷惑なのだ。ゆえに私はF6のスケッチブックを持っていく。これなら何とか隣の人と仲良くやれるサイズだ。
 そして電車に揺られること2時間。やっと目的地に到着。ここは日本の伝統的な民家が残る町並みだ。いい景色を求めてさっそく歩き回るとしよう。

あった! F6にちょうどいい構図だ。

F6のスケッチブックに描いた町並み

 さっそく描き始める。 ずらりと並ぶ民家。美しい町並みと背景の山並みがきっちりと画面に納まる。 約1時間経過。まだ下書きも終わっていないけどそろそろ昼時だ。人によってはここで中断。昼食後また書き始める。そしてまた約1時間が経過。
 早い人はそろそろ完成だろうが、まだ終わらない人もいる。帰りの電車まであと2時間たらず。さてどうする。F6をもう一枚描ける人はたぶん少ないだろう。でもせっかく一日をつぶしたのに成果が一枚では寂しすぎる。

そこでSM(サムホール)の登場だ

SMのスケッチブックに描いた町並み

 この大きさは面積にしてF6の約1/4。2時間足らずでも十分描ける。しかも2、3軒の民家なら町並みとして描き込める最小限の大きさなのだ。私がこのSMのスケッチブックを愛用する所以だ。
さて最初のスケッチにたっぷり時間をかけた人には残り時間は1時間しかないはずだ。

ここで登場するのが0号のスケッチブックだ。

F0サイズのスケッチブックに描いた民家

 サイズは葉書よりも一回り大きいだけなので、描くのにさほど時間は要しない。一時間あれば十分だ。ただし、このサイズでは「町並み」は描けない。一軒の民家とその周りの雰囲気だけだ。それでも2枚目が描けるという事実は大切にすべきだ。こんなときのために私はこの0号のサイズも持っていくようにしている。
 その他に旅行携帯用の葉書サイズのスケッチブックもある。紙質はまったく変わらないプロの絵描き用だ。さすがに小さすぎて作品にはなりがたいが、旅先からのプレゼントには最適だろう。
 実は学生のころ、この葉書に旅先で水彩画を描き、その地から投函、当時好意を寄せていた女性に送ったことがある。私の絵の出来が悪かったからなのか、もともとそんな芽が無かったのか、結果的に、葉書サイズスケッチブックに神通力は無かったことを報告しておこう。

あなたは人物画の絵画教室に行ったとしよう

いつものF6サイズを持っていく。スタイルのよいモデルさんで衣装は半そでのブラウスと短パン。この日は立ちポーズだ。さて構図を考える。

F6サイズ 人物の立ちポーズで全身を入れる

モデルさんのスタイルがいいので全身を入れたい!・・・と思った人。F6サイズは縦が約40cmなので余白を取ると、顔のサイズはご覧のように必然的に4cmくらいになってしまう。人物画は基本的に表情が決めて。この大きさでは残念ながら「いい表情」は描き難い。つまり

全身を描きたいならF8以上!

 カルチャーセンターで教えられる「F8以上がいいね」はまさに、この時のことだったのだ。

F6サイズの場合は上半身だけの構図が良いだろう。

F6サイズ 人物の半身を入れる

 顔の大きさも大きくなり、女性の表情もきちんと表現できる大きさだ。脚は当然画面に入らないが、必ず手は全部納めよう。手の無い上半身は服だけのつまらない肖像画になってしまう。一方で

顔だけを描きたい人は?

 こんな人はF4、F3くらいでも、人の表情の魅力を伝えることは十分可能だ。私は時間のないときはF4で顔だけを描くことがままある。顔だけと言うのは中途半端に上半身を入れるより対象が表情にフォーカスされるので絵としてそれなりに描く価値があるのだ。このサイズのときのポイントはやはり目だ。まつげまで描きこめる。こちらもチャレンジしてみてほしい。

F4サイズ 人物の顔をメインに描く

「絵画」と「サイズ」についてだけでも絵描きなりの苦労はあるのだ。

P.S.
このブログでは以下のような関連する記事を書いている。興味ある方は参照してほしい。

■カテゴリ「絵画上達法→
■「水彩画入門!始めに買うべき道具は?→
■「スケッチ旅行に必要な道具とは→
■「水彩画入門!これだけ揃えれば十分?→



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9 件のコメント

  • […]  結果として練習を重ねることにもなり、上達も早かったと思っている。ただし将来個展を開いてみたいと考えている人はもう少し大きい6号ぐらいのスケッチブックも欲しい。小さい絵ばかりだと展示壁面に緊張感が生まれないからだ。 私の場合は、6号、サムホール、0号を一式持って行き、現地の風景に合わせて適切なサイズを選択するようにしている。まずはこれと思った風景をたくさん描くことだ。(紙のサイズとその選び方はこちら→) […]

  • […]  まず冒頭の水彩画の説明をしておこう。この寺の名は願成寺。別名「達磨寺」という。 寺の門の前に2体の達磨の木彫があることから名づけられたという。 絵を描くのに使用した道具はいつもの0.3mmの油性サインペンではなく、イラスト用のペン(Tachikawaのラインマーカー)だ。このペンは先が万年筆のようになっていて、線の強弱がつけやすい。説明書きには太さ0.5mmとあるが弱いタッチで描けば0.1mmくらいでも平気だ。 今回はなぜサインペンではなく、イラストペンを使ったかというと、屋根や軒、欄干周りの木組みが細かく、サインペンでは滲んで表現できないと思ったからだ。 絵具は透明水彩。いつものウインザーニュートン製だ。 対象が単体の山門なのでスケッチブックの大きさはSM(サムホール)とした。(テーマによってスケッチブックの大きさを使い分けるコツはこちら→) 建物を中心とする絵を描く場合はやはり透視図法をマスターしておく必要がある。 一番大切なことは、自分の目の高さがどこかということ。そこが水平線になるので、屋根や欄干やすべてのパースペクティブな線はその水辺線上に集まる。この絵の場合は階段を登り切った段の鼻先のラインがスケッチブックにおける水平線だ。 この絵は2点透視で左側、右側それぞれに焦点があるが、いずれも画面からはみ出している。各水平線をいちいち焦点と結んでいてはどれだけ時間があっても足りなくなるだろう。 私の場合は何本か目印となる代表的なパースラインを先に引いておき、あとは高さ方向を半分、またその半分と記しをつけておいて、描くときの目安にしている。 この時、「下書きはしないのか?」という質問をよく受ける。私はよほど複雑な文様のある建物をそのまま描くとき以外は下書きしない。この時も鉛筆などの下書きはしていない。 パースの目安となる線も実はペンで直接描いている。ただし端から端まで一気に引かず、ところどころ切るようにしている。何故かというと、そのパース線がそのまま屋根や軒の線になる場合はいいが、実際には使わない線の場合、つながった線は「まちがった」線に見えて気になることがあるからだ。 逆に言うと切れた線は多少間違っていても、気にしなくていいい。人間の目は正しい方の線を自動的に認識してくれるからだ。(デッサン練習法についてはこちら→) 塗りは先にブルーで明暗をとり、上に葉の緑、柱や梁の茶色などを塗っている。軒下には最初に入れた影のブルーが残っているのがわかるだろうか。 […]

  • […]  原則として一つのバッグに全部詰めることを目指す。中に入れるのはまずスケッチの道具一式。(必要な道具についてはこちら→)鞄の絶対的な大きさは持っていくスケッチブックの大きさ(詳細はこちら→)が決め手になる。 F6のスケッチブックが入る手提げバッグは普通の鞄屋では意外に売っていない。ビジネス用書類ならA3以上の大きさが必要になり、需要が少ないからだ。 それに大きいビジネス鞄は、部分的とは言え、皮を使うことが多いのでとて重い。しかも外形が大きいので総重量から考えて必然的に厚みは薄くなる。するとスケッチブックと鉛筆やペン、絵具程度しか入らず、旅に必要な荷物、例えば水筒、弁当、カメラ、折り畳み椅子、着替えなどが入らなくなる。 かと言って画材店で売っているナイロンやポリエステルのスケッチブック専用バッグは弱く、耐久性がない。 スケッチ先の山野で岩肌に擦れたりするとすぐ破れてしまう。しかもこの類のバッグは大抵小物を入れるポケットがない。財布や小銭入れもバッグの底に沈んでしまい、使いにくいことこの上ない。 丈夫で軽く、スケッチブックの6号が入る。しかも小物が入るポケットが付いている。こんな手提げ鞄を発見した。 ホルベインから出ている。素材はデニムで丈夫。長財布が入るチャック付きポケットと小銭、カード、携帯電話などが入る内ポケットが3つ付いている。マチも広く、飲み物なども入る。実に使いやすく長くこれを愛用していた。 […]

  • […]  絵の解説を少ししておこう。スケッチブックの大きさはSM(サムホール)。残り時間があまりないときによく使うサイズだ。(スケッチブックサイズについてのアドバイスはこちら→) 私の風景画の基本的な制作プロセスはこのブログで詳しく書いているので参照してほしい。(詳細はこちら→)。サインペンで輪郭を描き、透明水彩を施している。 今回のポイントは菜の花なので、まずその部分をマスキングインク(マスキングインクの詳細はこちら→)で隠しておく。影の部分を先に塗り(グリザイユ画法)、乾いてから全体に色を重ねる。そして最後にマスキングインクを剥がし、そこに菜の花色つまり鮮やかな黄色、ウインザーイエローを塗ってやれば完成だ。 […]

  • […]  そして三つ目の長所は観光資源が多いことだ。名物となっている「十石舟」はその代表だ。十石舟は濠川(ほりかわ)を弁天橋のたもとから出発し、三栖閘門(みすこうもん)を経由して元の船着場まで戻ってくる。船の中から見ると、酒蔵の屋根が角度を変え、次から次へと現れる。 草木の多い濠川は美しいだけでなく、川幅が狭く川縁には季節感と生活感が漂っている。片道20分ほどの川旅だが十分楽しめる。 三栖閘門(みすこうもん)は江戸時代、濠川と隣接する宇治川とつなぐ航路を確保するために作られたダムで、原理はパナマ運河の仕組みと同じだという。資料館にとてもわかりやすい模型があり、興味深い。 もちろん酒蔵の町だけあって、蔵出しの冷酒があちこちで味わえる。通常、私はスケッチするときは、事前に道具に気を使い(そのノウハウはこちら→)、現地では時間配分にも気を使う(詳細はこちら→)。はっきり言って旅先の名物などあまり興味がない。 ところが、どうも酒蔵は勝手が違う。建物に風情があるので、惹かれるように中に入る。すると搾りたての酒の良い香りに誘われ、つい試飲をしてしまう。休日の開放感もあり、杯を重ねることになる。 だから、実はお薦めのスケッチ場所である割には私はまだこの地のスケッチは一枚しか描けていないというわけだ。 […]

  • […]  さて、そんな美しいミラノの大聖堂を描こうとしたものの、実は完成のイメージをどうするかしばし悩んだ。塗りなおしの効かない水彩画は油絵と違っては最初の制作計画がとても大切なのだ。 先に述べたようにこの聖堂のファサードはとんでもなく複雑だ。無数の尖塔を、見たままに、いつものようにペンと水彩で描き切るか?(私の風景画の描き方に興味ある方はこちらを→)あるいは思い切って省略し、面の変化と形だけの表現とするか? 当然前者は相当の時間と根気が必要だ。さらにいつもならペンの線も多少の失敗は何とでもなるという気で描くのだが、これだけ線が複雑に絡む建物はさすがに慎重さを要する。 悩んだ末、結論はいつも通り「ペンと水彩で見たままを描く」だ。せっかくイタリアまで来たのだから、とことん自分の描き方で・・・と思ったからだ。 私が旅先で使用するスケッチブックのサイズは通常F0、SM(サムホール)、6号の三種類(その理由はこちら→)だが、今回はもちろん6号だ。大きめのサイズでないとあのディテールは描ききれない。 いつものように下書きをせず、いきなりペンで描いた・・・と言いたいところだが、さすがに今回は鉛筆で軽くあたりを採っている。と言ってもあまり細かく鉛筆で下書きしていてはそれだけで時間を採られてしまう。 だから、建物全体の縦横のサイズ、屋根の勾配比率、目立つ尖塔の位置と間隔だけをチェックすることにした。おおまかな鉛筆の線を頼りにその間にある尖塔や装飾は、誤解を恐れずに言うと、「上から、目に入る順番に」描いていく。 本来、スケッチの基本は「全体から細部へ」なのだが、これだけ「細部」が多いと「全体」と「細部」を行き来するだけで時間がかかってしまうからだ。 もちろん各パーツの位置は透視図法に従って矛盾の無い位置に描くことは必要である。ただこれもあまり図法にこだわって分割線を何本も引いているとこの無数の垂直線、どれがどこにあるかわからなくなり、やはり時間をロスしてしまう。(透視図法を使った建物の描き方はこちら→) だからある程度のガイドラインがあれば、思い切って(対象をよく見ながら)直感で位置決めをする勇気も必要だ。 それでもペン描きだけで2時間半以上はかかったかもしれない。気が付いたらすでに日が傾いていた。 […]

  • […]  油絵の保存ならばとても場所を取る。キャンバスフレームに厚みがありかさばるからだ。実は若い頃描いた油絵は現在、私の手もとに一枚もない。若い時の住宅事情では保存ができなかったからだ。 だが幸い水彩画は紙の厚さのみ。基本的には油絵ほど苦労することはない。私は大半を市販の書類用クリアファイルに入れている。これができるのは、以前にも勧めたように私は作品のサイズをF0、SM(サムホール)、F6の3種類に統一しているからだ。(その理由はこちら→) だからF0サイズはA5サイズ、SM(サムホール)サイズはA4サイズの百円均一店で売っているクリアファイルに余裕をもって、かつ無駄なく収まっている。一覧性も良い。本棚に並べている限り紫外線やほこりにさらされることもない。 ただ付け加えるならば、最初はブログを書く時に思い出しやすいように、描いた制作順にファイリングしていたが、個展の準備、SNSで発信するためのスキャニングなどで結構出し入れが多く、通しナンバーをつけない限り管理できないことがわかった。 だから最近は、海外の風景と日本の風景、および次回個展用などアクティブな作品と大まかに3種類に分けてファイリングしている。 […]

  • […]  ここにかかっている絵は両側の2枚が、F0サイズの絵、中央の4枚がSM(サムホール)サイズの絵だ。家具の大きさと比べてそれほど違和感ない大きさであることがわかってもらえるだろうか。 このブログの記事、「スケッチ旅に必要な道具とは」や「絵画とサイズのエピソード」の中で、SM(サムホール)サイズあるいはF0号サイズのスケッチブックを主としてお勧めしているのは、このように普通の住宅に飾るのに至極、適当な大きさであるからだ。 ちなみに私がやはり初心者にお勧めしているF6号までは全く問題ないが、F8号だとやや威圧感を感ずる気がする。まして公募展に要求される通常の最低サイズであるF20号などはかなりの大邸宅でないと似合わない。 […]

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