風景画は実物通りに描いてはいけない!?

あなたは風景画を描くとき、何を心掛けていますか?

初心者の方はたいてい「見たままを描く」ことに集中するはずだ。特に正確な輪郭、縁取りに気を遣っていると思う。
もちろんその訓練は大切である。だが実は単なるスケッチではなく、水彩画の作品に仕上げようと思うと、「実物どおり」という観念は制作の邪魔になる。
「なぜ邪魔になる?」・・・それが今日のテーマである。

「ビッグベン London」を描く


実例を挙げよう。
上の写真は世界一周スケッチ旅をした時(「ピースボートでゆく世界一周スケッチ旅→を参照)の取材写真および私の水彩作品である。
タイトルは「ビッグベン London」。そう世界遺産であり、イギリスの国会議事堂として有名な建物である。
さてこれらの資料を使って今日のタイトルで記した「実物通りに描かない」ことがなぜ良いことか説明しよう。

①は現地で最初に撮影した写真。②はしばらく時間を置いて撮影した写真、③がアトリエで私の最終的に仕上げた水彩画作品である。各々の写真についてさらに詳しく説明しよう。

写真①

一番重視したのはビッグベンと背景となる建物のプロポーションである。背景の建物の上端は画面の中央よりやや下に、ビッグベンの時計塔は中央よりやや左に配置する。

最初はこの構図、非常に気にいっていたの。だが、よく見ると画面に占める橋の割合が小さく、その存在感がない。。近景として重要な要素である橋をもう少し目立つようにしたい。また空の割合も広すぎる気がする。

写真②

写真①の欠点をなくすために撮影した写真である。時計塔は中央よりやや左で同じだが、橋の上端が画面中央よりやや上に来るため、橋に存在感が出る。
両者の関係は文句なしなのだが、一方で橋の向こうにある背景の建物は屋根しか見えず、セーヌ川沿の町並みの雰囲気が伝わらない。

作品にする構図は?

さてあなたにお尋ねしたい。あなたはどちらの構図で絵を描くだろうか?
このブログで以前に風景画で一番大切なものは構図だと記した(「風景画のコツ・・・構図と距離感→」を参照)。
だからあなたはどちらかの構図を選び、実物通り描くことに四苦八苦することになるというわけだ。

だが私たちが制作するのは写真ではなく「絵」である。
こんな時どのように描くべきか、答えは私の作品(写真③)にある。よく見てほしい。時計塔と橋のプロポーションは写真②と同じ、背景の建物のプロポーションは写真①と②の中間である。

もうお分かりだろう。私は②を基本としつつ、背景の建物を①を参考に実物よりも少し高くしたのである。つまり両者のいいとこどりをしたわけだ。

さらにもう一つ付け加えておこう。もしあなたが写真①をベストとして絵を描き始めたとしよう。この時は、「霧のロンドン」らしい曇天で空も川の水面も暗い。光が少ないため有名なビッグベンの外壁装飾も平坦でほとんど見えない。たぶん魅力的な絵にはなりにくい。

実は②の写真は①と構図が違うだけではない。テムズ川の水面が明るく光り、建物のディテールがよく見えるまで、つまり晴れ間が出るまでこの場所で、待ち続けた写真なのである。

水彩画の制作テクニック

構図と水面の明るさという要素は決定した。だがテーマと構図を選ぶだけで絵は仕上がらない。今回の絵を仕上げる水彩テクニックについて少し説明しておこう。

透視図法について

ただしこの時注意することがある。実際よりも「建物を高く描く」には透視図法を知っている必要がある。実際の写真よりも軒の角度は急になる。とは言っても恐れることはない。
水平線の小質点に向かって軒のラインを結べばいいだけのことだ。
より詳しく知りたい方はこのブログの記事下書きはいらない!建物のある風景をペンで描く→を参照してほしい。

色彩について

あとは画面全体の色調を整えるだけ。雨模様の風景なので実際の写真はグレー色が支配的。青空が見えた瞬間とはいえ、その面積はあまりに小さい。橋に沿って水面全体が明るくなることはない。
だが先に述べたように私たちが制作するのは「絵」である。空も水面もより明るく仕上げよう。さらに彩度を上げるために、生のグレー色でなく青や紫をうまく使おう。(透明水彩で描く風景、陰と影は何色を塗るべきか?→」を参照)
こうして③の「風景画」が完成だ。

まとめ


風景画が苦手だという方へ。
「実物通り…lの呪縛にとらわれるのはもうやめよう。楽しく、ほんのちょっとの手間をかけるだけで、あなただけの美しい水彩画ができるはずである。
あなたも是非チャレンジを!

P.S.
風景画の描き方については以下の記事を書いている。こちらも一読してほしい。

水彩画の基本についてもっと知りたいという方は以下の記事をどうぞ


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