水彩画入門! 森の緑はどう描く?

 皆さんは風景画で建物を描くのと森の緑を描くのとどちらが得意だろうか?

 おそらく、建物よりも森の緑を描く方が得意、いや簡単!と考えているのではないだろうか?

 でも実は「緑」を描くのはとてもむつかしい。今回はそんな「緑」について考えたい。

目次

1.あなたが持っている緑の絵具はどんな色?

2.風景画の緑にはどんなパターンがあるのだろう?
 2.1遠景の山
 2.2中景の林、木立
 2.3近景の草花、木の葉や枝

3.どんな色をどう使えばいいのだろう?
 3.1距離感
 3.2明暗
 3.3季節
 3.4樹種

4.まとめ

■あなたが持っている緑の絵具はどんな色?

 あなたのパレットにある緑はどんな色だろうか?
ホルベインの標準12色の中にある緑はビリジアン(ヒュー)とパーマネントグリーンNO.1だ。
 前者はかなり派手な緑、後者は明るいが落ち着いた緑だ。

 理論的に言えば、赤、青、黄の三原色さえあればどんな色でも作れるのはずなので、不足はないはずなのだが、スケッチ先で時間を気にしながら描く」となるとどうしても現実の緑に近い色を手っ取り早く塗りたくなるのが人情というものだ。

 そういう意味で言えば、ビリジアンはとても使いにくい。派手すぎるのだ。だから私が学生のころ水彩12色セットを使っていた時はパーマネントグリーンばかりが減っていったのを覚えている。

 私の経験で言うと、しばらく風景を描き続けると、だんだん好みの緑が出来てくる。私の場合は「サップグリーン」や「オリーブグリーン」がパレットに追加されるようになった。

 皆さんのパレットにもきっと追加の緑があるのではなかろうか?(絵具とパレットの使い方については「透明水彩入門!絵具とパレットの使い方を知っている?→」を参照)

■風景画の緑にはどんなパターンがあるのだろう?

 風景画に見られる緑は当然ながら一色ではない。どんなパターンがあるのかみてみよう。

①遠景の山
 ほとんどシルエットとしか見見えない緑。たいていは空気遠近法を考慮して青みを帯びた薄い緑色である。

②中景の林、木立
 樹木の形、重なり、樹種などを描き分ける必要がある。

③近景の草花、木の葉や枝
 目に見える幹や枝の形、葉の形まで描く。すべてを描く例は少ない。意図した部分を強調してディテールを描く場合が多い。

■どんな色をどう使えばいいのだろう?

 先にあなたのパレットの緑を聞いた。注意してほしいのは自分が「好きな緑」と「目で見た緑」は違うということだ。初心者の風景画を見ると、緑はほとんど一色の濃淡で表現されている。

 建物と違ってデッサンにそんなに正確さを要求されないので、それなりに絵になる。だが緑の表現にはもう少し時間をかけてほしい。きっと風景画がさらに好きになるはずだ。

①距離感
 先に述べた遠いものほど青っぽくなるという「空気遠近法」を考慮すると、同じ一面の草原でも遠くほど寒色に近く程暖色になる。
 具体的にはパーマネントグリーンをベースにするとすれば遠くの草原はややコバルトブルーを混ぜ、近くの草原はパーマネントイエローを混ぜるようにすると草原に距離感がでる。

 透明水彩のウォッシュによるグラデーションはこの色相の変化を柔らかに処理できる最適の技法である。(詳細は「水彩画入門 色塗りの基礎技法を覚えよう!→」参照)


②明暗
 これは単純だ。太陽の方向に応じた位置に影を描く。木立は円錐であることを思い出してほしい。例えば左上に太陽があれば、右下が暗くなる。
「当たり前でしょ!」と決めつけてはいけない。何となく木立の輪郭だけ意識した同じ緑ばかりで描かれた単調な風景画をよく見る。それらは樹木、木立を立体としてみていないからだ。

 明暗を正確に描くには、樹木の細かな色の違いを無視することだ。私はグリザイユ画法でまず明暗を描き分け、それから樹木の色を塗ることにしている。(グリザイユ画法については「水彩画の基本!知っておきたいグリザイユ画法と絵具の透明度→」を参照)

 ③季節
先に述べた「好きな緑色」と「目に見える緑色」の差を最も区別すべき要素がこの「季節感」だ。花びらの色や紅葉は当たり前だが、同じ緑でも季節によって色は違う。比較的使いやすい「パーマネントグリーンNO.1」だが、5月、若葉のころの緑はさらに明るいはずだ。

 ④樹種
遠景であれあほとんど気にしなくてよい。空気遠近法の効果の方が大きいだろう。中景では樹形が重要である。特に杉林、ケヤキ並木、楠、松などは樹形に特色があるので、特徴をとらえて描くようにしよう。針葉樹は常緑樹なので一般的に緑が濃い。ケヤキなどとは形も色も明快に区別する必要がある。

 近景にある緑は本来なら、葉の1枚1枚が見えるだろう。だがそれを全部描き分ける画家は少ない。テーマに合わせて、特徴的な花、葉、枝ぶりだけをシンボリックに描くといい。その際マスキングインクを使用し、その色彩と明度を背景と区別する技法も多く用いられている。(「水彩画の道具 マスキングインクって何?→」「水彩画上達法!マスキングインクを使いこなす→」を参照)

■まとめ

 風景画の「緑」には、距離感や、季節感、あるいは明暗、樹種など好きな「緑一色」で描けない要素が多くある。
この際、あなたの目に見える今日の「緑」をもう一度見つめてほしい。きっと画力が一段と上がるはずだ。

P.S.
 私の作品での具体的な「緑」の使い方は「加藤美稲水彩画作品集→」を見てほしい。本文中の記述にあてはまるものがいくつか出ているはずだ。

 のブログで本文に関連する記事をいくつか書いている。興味ある方は参照してほしい。

■「絵具の知識 透明水彩は何故美しい?→

■「水彩画の魅力 「色」とは何だろう?→

■「水彩画の基本!知っておきたいグリザイユ画法と絵具の透明度

■カテゴリ「絵画上達法→

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