水彩画の基本!知っておきたい グリザイユ画法と絵具の透明度

 このブログ、美緑空間を読んで、水彩画を見る人から描く人になった人。そんな人のために今回の記事を書くことにした。
「透明」水彩の美しさの秘密、科学的根拠については別に記事を書いている(「透明水彩は何故美しい?→」)ので参照してほしい。
 今回はその中でも絵具の透明度と水彩画におけるグリザイユ画法の関係に着目したい。この事実を知らないと透明水彩の長所を生かせないからだ。

1.透明水彩の塗り方とは?

2.透明水彩の透明度とは?

3.グリザイユ画法とは?

4.グリザイユを使うときの注意点と絵の具の選び方

5.まとめ


■透明水彩の塗り方とは?

 透明水彩絵具の塗り方には大きく分けると「重色」と「混色」がある。重色は下に塗った絵具が乾いてから上に絵具を塗る方法、混色はパレット上で絵具を混ぜてから塗る方法だ。(「水彩画入門 色塗りの基礎技法を覚えよう!」を参照)

■透明水彩の透明度とは?

 絵具の「透明度」とは下の色がどのくらい透けて見えるかを言う。もっとも今のところ各色に透明度〇%とかいう定量的な数字で表現されているわけではないが、ホルベイン、ウィンザーニュートン、シュミンケホラダムの絵具(「水彩画を始めた人へ!プロが選ぶ絵具とは?→」を参照)はおおよそ、透明、半透明、半不透明、不透明の4段階のうちのどれであるかがカタログに明記されている。

■グリザイユ画法とは?

 私の水彩画は途中段階でグリザイユ画法を使う(「水彩画にふさわしいグリザイユ画法とは→」を参照)。下地で明暗を表現してから、上にモチーフの固有色を重ねる方法だ。

 この時、上に重ねる色がもし不透明色だったら下の描いたグラデーションがどんなに完璧であっても、その効果は台無しになってしまう。(「水彩画の基本!知っておきたいグリザイユ画法と絵画の透明度→」を参照)

 ところが初心者はそんなことは知らず、欲しい色相だけを見て塗ってしまう。しかも水分を乾燥させてから塗るべき色を湿っているときに塗ったりするので、濁った(汚い)色が画面に広がってしまうのだ。

■グリザイユを使うときの注意点と絵の具の選び方

 そんな失敗を防ぐ方法を教えよう。冒頭の写真を見てほしい。私が普段使用するパレット(「透明水彩入門! 絵具とパレットの使い方を知っている?」を参照)にある絵具の順に、水彩紙に色を塗り、その透明度を追記したものだ。

 〇は透明色、△は半透明色、△×は半不透明色、×は不透明色だ。私はこの表をプラケースに入れ、絵を描くときにいつも見られるようにしている。

 この表は、私のようにグリザイユを多用する者にとって、とても役に立つ。例えば風景画を描くときは森や林など緑色が必要だ。私がよく使うサップグリーン、ウインザーグリーンは完全な透明色。

 しかしシュミンケホラダムのオリーブグリーンは半透明なので濃い色を重ねるとグリザイユで描いた明度の微妙な差が見えなくなってしまう恐れがあるので要注意だ。

 皆さんに特に注意してほしいのが黄色系の絵具だ。一般に黄色は不透明色が多い。カドミウムイエロー、レモンイエローはそれ自身は鮮やかだが完全な不透明色なので下の色を見えなくしてしまう。

 だからせっかくグリザイユを美しく施してもこれらの色を濃く重ねると、明暗表現が消され、それまでの苦労が台無しになってしまう。注意が必要だ。

 ウインザーニュートンで私が持っている標準色の黄色で透明なのはインディアンイエローだけだ。

 実は私も当初は透明度を深く考えず、結構カドミウムイエローを上に重ねていた。しかしこれらの事実を知るようになり、下地の色を生かして黄色を塗りたいときは必ず、インディアンイエローを使うようになった。

 木の幹、あるいは建物の外壁の板材を描くときに使う茶色系の色も要注意だ。よく使うローシェンナとバーンとシェンナは透明色だが、暗色系のセピアは不透明、明色系のイエロオーカーは半透明であり、いずれも透明ではない。

 だからグリザイユの明るい部分にセピアを重ね塗りするとセピア部分が一番暗くなってしまう。イエロオーカーもセピアほどではないが、半透明なので注意が必要だ。

 もっとも半透明の特質を逆に利用する方法もある。私のようにブルー系の絵の具でグリザイユを施すと、透明度の高いローシェンナーは暗い部分、つまり下地のブルーが濃い部分に重ねると「青色」が勝ちすぎて、茶色が感じにくくなるのだ。

 そんな時ローシェンナーにイエローオーカーを混色してから重ね塗りすると不透明度が上がるので狙い通りの暗い「茶色」が表現できる。

■まとめ

 何年も経験を積んだプロの画家が書いた水彩画教本には「パレット上の混色と水分の混ぜ方は、経験によって学ぶもの。多くの絵を描くことで初めて自分のものになる」というような表現を時々見かける。

 だが私はそうは思わない。ある程度の透明水彩絵具の理論、知識を学べば、最小限の経験でいい水彩画が描けるはずだと思っている。
 この透明不透明の理屈を皆さんも是非理解し、試してほしい。

P.S.
 今回は絵具の透明度とグリザイユ画法の関係について書いた。グリザイユ画法の描き方については「水彩画にふさわしいグリザイユ画法とは→」を参考にしてほしい。
 また透明水彩を学び始めた方にこのブログでは「絵画上達法→」というカテゴリを設けている。興味のある人は参考にしてほしい。



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18件のコメント

[…]   実は最近私の風景画制作プロセスに潜む欠点を感じ始めた。 透明水彩の場合、油絵よりもさらに透明度が高い。したがって、下地のブルーのグラデーションの上に明るい色を重ねると、下のブルー色が強すぎて上に重ねた淡い色が綺麗にでないことがあるのだ。透明水彩絵具の透明度については別に詳細な記事を書いているので参照してほしい(詳細はこちら→) さらに明暗をペンとブルーのグラデーションで完全に取ってあるので、その上から塗る絵具はその明暗の境界を意識せざるを得ない。だからたっぷり水を含ませた水彩絵具が偶然生みだす「滲み」のテクニック(詳細はこちら→)が使いづらいのだ。 冒頭に透明水彩の二つの方法のいいとこ取りを目指していると書いた。それが、上記の不満を解消する私の新しい手法だ。 ペン画による線の美しさを生かしつつ、透明水彩によるグラデーションで立体感を出し、水をたっぷり使ったにじみの面白さで素材感を出すのが狙いだ。 現在何作かに制作チャレンジ中。ある程度そのプロセスを体系化出来れば、いずれ報告したいと思っている。 […]

[…]  私は通常、旅先での時間を節約するため、現地のスケッチはペン描きまでで止め、なるべく多くのスケッチをすることにしている。だからこのスケッチも着彩は帰国後のものだ。今回の水彩画の制作プロセスを簡単に簡単に説明しておこう。使った紙はアヴァロン300g/㎡、絵具はウィンザーニュートン透明水彩だ。①図 まず、ペン画の上に下塗りを施す。下塗りは絵のモチーフにより様々だが、今回は聖堂の外壁の石色を意識して薄い黄色(ウィンザーイエロー)と赤(パーマネントローズ)を混色して平塗り(色塗りの基礎技法についてはこちら→)し、乾かないうちに空にブルー(コバルトブルー)を垂らした。②図 いつものように、グリザイユ画法で明暗をつける。今回は都市の風景で森や林などの緑系の色が無く、画面が単調になりそうだったので、グリザイユを施すときにプルシャンブルーとウェンザーバイオレットを併用し、下塗りの段階で単なる明度差以上の変化をつけるように工夫した。 今回はこの段階でリブ柱や人物にマスキングインクを施している。 ③図個別の色を塗ってゆく。地面の表現、両側の建物は画面の雰囲気を出すための重要な要素。細かく描きすぎないことと、色調のバランスを考えることが大切だ。④冒頭の絵(完成図)仕上げ。 濃い影はさらに濃く色を入れる 。外壁は同じ材料だが頂部をやや黄色を強く、下部をやや赤みを強くし、変化をつけている。最後にマスキングインクをはがした後に、全体になじむように色を入れて完成だ。 […]

[…] P.P.S.ケース1の彩度が高すぎる場合は、ケース2のように別な色を重ねても(透明水彩では)思うような色にはならない。むしろ同じ構図を模写して新しいテクニックを試した方がいいだろう。その際、水彩の塗り方の基礎技法(詳細はこちら→)と透明水彩絵の具の透明度(詳細はこちら→)については別に記事を書いているので参考にしてほしい。 […]

[…] P.S. 今回は人物画のデッサンの実践的なプロセスを書いたが、人物画を描くための基礎練習、技法については、下記の記事を書いている。興味のある方は参考にしてほしい。■「人物画の基礎!クロッキーの道具と描き方」(詳細はこちら→)■「水彩画入門 色塗りの基本技法を覚えよう!」(詳細はこちら→)■水彩画の基本!知っておきたい グリザイユ画法と絵具の透明度(詳細はこちら→)なお、今回の記事の続編として、この絵の色塗りのプロセスを説明する 「透明水彩で描く人物画 色彩編」を書くつもりだが、できればトップページで募集するアートギャラリー「美緑(みりょく)空間」のメンバー間で共有し、技術向上に役立たせたいと思っている。 興味ある方は是非参加して欲しい。 […]

[…]  冒頭の水彩スケッチの説明をしておこう。町並みは一見、美しいが手入れの行き届いていない、廃屋に近いものもある。「ベンガラ色」も色あせ、褐色に近いものもある。 それでも絵描きの目で見ると、この町には他の町にない魅力がある。それは平入と妻入りが混在する珍しい町並みである上に、山道に沿って民家が並ぶのでうねるような高低差が軒のラインと屋根のスカイラインに現れることだ。 静的な佇まいが多い一般的な日本の町並みに比べてとてもダイナミックなのだ。だから絵としての構図はとても気に入っている。 次に色彩だ。町は確かに「赤い」が、水彩画として真赤に塗るわけにはいかない。先に述べたように、実際は風化した褐色に近い色も多いからだ。 だからこの絵ではいつものようにグリザイユ画法を使い、下地にプルシャンブルーで影をつけ、さらにベンガラの彩度の落ちる部分にもプルシャンブルーを入れている。 上に重ねる赤はクリムソンレーキとバーミリオンだ。両方とも単独で使用すると彩度が高すぎて風景画には使いづらい色だが、このように下地にブルー系を塗っておくと、ちょうどいい味が出るようだ。 なお、私の風景画の基本的な描き方については、「ペンと水彩で描く風景画の魅力とは(詳細はこちら→)を、グリザイユ画法と絵具の透明度については「水彩画の基本!知っておきたいグリザイユ画法と絵具の透明度(詳細はこちら→)」を参考にしてほしい。 […]

[…]  そんな私が初めて「裸婦」の絵画をじっくりと見たのは19歳、予備校生の頃だった。その絵が、冒頭のアングル作「グランドオダリスク」だ。 最も実物を見たわけではない。画集だ。(なお余談だが、この画集は私が初めて母以外の女性からもらった誕生日のプレゼントだった。) 実を言えば、別に裸婦の絵を見たのがその時初めてではない。もちろんその画集にも、他に何枚も裸婦の絵が収められている。何故この絵に惹かれたのか。最大の魅力は白い官能的な背中を見せ、振り返ってこちらに視線をむける独特のポーズだと思う。 神話世界を描いた古典絵画はもちろん人間そのものを描いたルネサンス絵画(私のコメントはこちら→)だってこんなポーズの裸婦は見たことがない。 そして絵が好きな人ならば、どうやって描いたのだろうと、誰もが見入ってしまうその滑らかな肌のリアルさ。この超絶技巧はどうやらこのブログで何度も触れたグリザイユ画法(詳細はこちら→)によるものらしい。 […]

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[…] P.P.S.今回は水彩の「基礎編」だった。本文でリンクを張った記事以外に、もっと詳しいことが知りたい方は下記に記事をまとめているので参考にしてほしい。■透視図法のコツを知りたい方は「鉛筆はいらない!下書きしない風景画の描き方→」■「水彩画の基礎技法!「下塗り」の大切さを知っているか?→」■「水彩画の基本!知っておきたい グリザイユ画法と絵具の透明度→」■「水彩画にふさわしいグリザイユ画法とは→」 […]

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