水彩画を始めた人へ!プロが選ぶ絵具とは?

水彩画を描き始めたあなたへ。絵具はどれを買ったらいいのだろう??

 以前、水彩画を描くにあたり一番重要なのは「水彩紙」であると書いた(水彩画入門!始めに買うべき道具は?」を参照
 当然、次に大事なのは水彩絵具だろう。今回は絵具の基礎知識と選び方について解説する。

 まず絵具の種類について説明しよう。大きく二つに分ければ透明水彩不透明水彩に分類される。

 透明水彩の特徴は絵具を重ねた時下の絵具が透けて見える。例えば黄色の絵具の上に青色の透明水彩絵の具を重ねると透明感ある緑色に見える。

 不透明水彩の場合は下の色が何色であっても上に重ねた色しか見えない。
 一般に水彩画家、watercolor- painter が使う「水彩」絵具といえば通常透明水彩を指している。

不透明水彩とは?

 不透明水彩とは透明水彩以外の水彩絵の具であり、古くからあるのはガッシュと呼ばれる絵具である。発色剤である顔料を展色剤のアラビアゴム水溶液で練った物であり、顔料の成分は油絵の絵具とと変わらない。

 顔料の量が透明水彩よりも多く、絵具の透明度が低いため、塗り重ねが可能である。色数も豊富で重厚な表現が可能だが、油絵のような保存性は望めない。

 展色剤をアラビアゴム水溶液でなく、アクリル樹脂を水に乳化した液体(アクリルエマルジョン)を展色剤とした物がアクリル絵具である。

 油絵よりも乾燥が圧倒的に早く、油絵と同様に重厚な表現ができ、保存性も十分という都合のよい材料であるため、最近の作家には人気の絵具のようだ。

 また、アクリルガッシュという似た名前の絵具もある。こちらはやはりアクリルエマルジョンを展色剤にしているが展色剤が低濃度であり、顔料成分が多く、全て不透明色である。
 速乾性が抜群に良く、イラストを描くデザイナーに良く使われているようだ。

 ややこしいのが「半透明水彩」「マット水彩」などと呼ばれている、私たちが小学校の頃使っていた絵具だ。

 これは顔料とアラビアゴムを成分とするという意味では水彩絵具だが、安価な顔料と展色剤にさらにデキストリンという澱粉を増量剤として使っており、発色も、保存性も期待できない。

 もちろん12色セットが百円均一店でも買えるくらいなので、そのコスト競争力には敬意を払うが、私たちが目指す作品作りには不適だ。

透明水彩とは?

 というわけで、「水彩画入門」を果たしたあなたが手にすべきは「透明水彩絵具」だ。不透明水彩には無い美しい透明感あふれる表現が可能だ。

 紙の白色と透明色の重ね塗りによる明るく深みのある色、水分をたっぷりと含ませた滲みの表現は油絵や不透明水彩では困難で「透明水彩絵具」独特の世界だと言っていいだろう。

どんな絵具を買えばいい?

 透明水彩絵具はメーカーも多く、色数も多い。基本は有名メーカーのものならそれほど問題は無い。
代表的な絵具をあげてみた。リンクを張っておくので参照してほしい。

 ちなみに私が初めて買ったのはホルベインのチューブ入り「透明水彩24色セット」だった。

 全く不満はなかった。今でも初心者はもちろんプロの画家にもこの絵具を愛用する人は多くいる。

 ただその後、スケッチ旅行に行くことが多くなり固形絵具を使うようになった。
 固形絵具は筆に水を含ませ絵具の表面を軽くこするだけで、筆が絵具に染まり、すぐに絵が描ける。通常パレットも一緒になっているので屋外で使うのにはとても便利なのだ。

 最初はやはりホルベインの12色セットを使用していたが、色数が少なく、個人的には現地での発色具合がが気に入らなかったこともあり、今はウインザーニュートンの固形絵具24色セットを愛用している。

 もちろん携帯性も発色も文句なくとても気に入っている。(詳細は固形水彩絵の具の使い方→を参照) 

 ちなみにチューブ入りの透明水彩絵の具も本来はパレットにいったん出して、固まってから使うのが正式な作法らしい。その意味では全く固形絵具との差はないと言っていいだろう。

 ウインザーニュートンの固形絵具は全96色。後から好きな色を足すこともできる。私は油絵を描いていた時の癖で、サップグリーン、オリーブグリーン、レモンイエロー、セピア等を追加して使っている。

 私は使ったことがないが、クサカベの絵具も知名度が高い。「日本の色」が魅力的だと言う。ただこの絵具は普通の画材店にはないことが多いようだ。

 最後に一つ気になる製品に触れよう。「シュミンケホラダムの透明水彩絵具」。現代水彩画家の永山裕子氏が愛用していることで有名だ。

その「永山裕子特選24色セット」のうち何色かを試してみた。コバルトターコイズ、スカーレットレッド、トランスルーセントオレンジメイグリーンなど、特に(透明度の低い)鮮やかな色の発色は群を抜いている。使いこなせばあなたの画風形成に大いに役立つだろう。

  ただしリンク先から調べてもらえばわかるが他の絵具に比べ値段もワンランク高い。セットで購入するにはそれなりの覚悟がいるかもしれない。

P.S.
実は絵具についてはとても科学的な説明がいる。

例えばコバルトブルーはなぜ青く見える?
透明色と不透明色があるのはなぜか?
水彩画と油絵の表現の違いはなぜ起こる?


こんなことを疑問に思ったことはないだろうか。
私自身興味があったので、各種文献を調べた結果を「絵具の知識 透明水彩は何故美しい?→」にまとめてみた。是非あわせて読んでほしい。

P.P.S.
水彩画の道具については本文にリンクを張った以外にも下記の記事がある。いずれも初心者には役立つと思う。是非参考にしてほしい。



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15件のコメント

[…]  水彩画を描き始めた人へ。必要な道具はもう全部揃えただろうか。もしまだ道具に不安があるなら、水彩紙について→、水彩絵具について→、筆について→、マスキングインクについて→別に記事を書いているので参考にしてほしい。 今日は意外に皆さんが気を使っていないイーゼルについて説明しよう。 […]

[…]  水彩画の絵具と色について、このブログで以下のようにいくつかの記事を書いた。水彩画入門!プロが選ぶ絵具は?絵具の知識 透明水彩は何故美しい?有名絵画に見るブルーの秘密 しかし実は色彩の科学はかなり奥が深く、記事の中で書ききれなかった部分、あるいは記事を書いた時点ではわからなかったが、その後解明できたこと、そして私の中で未だに解決していないことなどがある。 ここでは、さらに深く「色彩」について私が調べた興味深い事実をお伝えしようと思う。参考にした文献は以下の通りだ。さらに自分で調べたい方は参考にしてほしい。・世界史を変えた新素材 佐藤健太郎・いやでも物理が面白くなる 志村史夫・絵具の科学 ホルベイン工業技術部・絵画技法と画材の話 第64回日府展関連事業 市民講座 佐藤勝明・画材の博物誌 森田恒之・水練顔料に関しての考察 東京学芸大学リポジトリ 速水敬一郎ほか・光と色彩の科学 齋藤勝裕 […]

[…] まず店に「画材」として並んでいるものからチェックしよう。・水彩絵具12色セット 残念ながら絵描きとしてはこれは使えない。発色も良く無いし、本格的な水彩の技法も使えない。理由は別に記事を書いているので(詳細はこちら→)参照にしてほしい。・筆 ナイロン製はやめたほうがいい。理由は別記事で書いているので(詳細はこちら→)参照してほしい。 ただし最近「馬毛」の大、中、小3本セットを発見した。柔らかく、水の含みもいい。毛先も細く、ある程度しなるので私はぼかし用の筆として愛用している。・画用紙 これも水彩紙としては使えない。理由はやはり別記事で書いたので(詳細はこちら→)参照してほしい。 ただしクロッキー帳としてなら十分使える。ちょっと小さいのと、背表紙が薄く、描くときに支えにくいのが難だが、画板が準備できるようなアトリエだったら十分だ。・パレット プラスチック製しかないが、十分使えると思う。私自身は固形絵具とパレットがセットになったものを使っているので、この品は使っていない。 ・刷毛 透明水彩絵具をわざと滲まて使うとき、水彩紙全面に水を引く。この際に通常の平筆では幅が狭すぎて手間である。 画材店で日本画用の刷毛を見ると結構高い。そこで百円均一店で探したところ、幅6cm程度の刷毛を見つけた。 多目的用と説明してあるだけに、毛先はちょっと硬いが絵具をつけるわけではないので、問題はない。これも重宝している。 ここからは正式な絵の道具ではないが、持っているととても役に立つ。試して欲しい。・パレット皿 同じ色を大量に塗るときは、通常の随時混色用パレットではなく、単独の皿に混色しておくと良い。 浅すぎると水が広がりすぎて絵具濃度が一定しない。深すぎると筆を出し入れするのに邪魔になる。そしてできれば何色か同時に準備出来るほうがいい。 というわけで私は普通の白い陶器の薬味皿(二つ仕切)を2セット準備している。そして仕切りの大きさは、当然自分の使う最大筆が余裕を持って入る大きさ、深さは一度に作る色の量に十分な深さのものをえらべばよい。・水入 これも画材店に行くとかなりいい値段がする。携帯用で特殊な機能が必要な場合はともかくとして、実は水入ほどシンプルな機能の画材はない。百円均一店で十分なはずなのだ。 そう思って探してみたが、実はなかなかそれらしいものが見当たらず苦労した。 食器類は全般に浅すぎる。バケツの類は深すぎる。何より仕切りがない。筆を洗う部分の汚れた水と混色用のきれいな水は分けるべきなのだ。 可動仕切りのある整理ボックスは仕切りが、密着していないので、水が隣と混ざってしまう。 しかしある日、ついに全ての欠点を克服した理想の水入を見つけた。それは卓上リモコンボックスだ。広い、深い、仕切りが密着して水漏れがない。以来私の愛用の水入はこれである。十分だ。・水彩紙保存袋と乾燥剤 水彩紙風邪ひき現象(詳細はこちら→)とその後の苦労(詳細はこちら→)については別にところで述べたとおり。 そこで、水彩紙を乾燥した状態に保つため、最近は密封袋に入れ、乾燥剤を同梱して保存している。 袋は寝具や衣類を入れるものにすると8号のスケッチブックでも楽々入れられる。乾燥剤は好きなものを選べば良い。豊富に揃っているはずだ。 […]

[…]  水彩画は誰もが子供の頃から馴染んだ、扱いやすい画材だ。だからと言って、全くの直感だけでいい絵が描けるほど、単純な世界でもない。このブログの目的はトップページに書いたように、他人に喜んでもらえるような絵を描くことだ。そのためにはそれなりに基礎の理論とテクニックが必要だ。 絵具や水彩紙の理論については「絵具の選び方」「絵具の歴史と科学」や「初めに買うべき道具」「水彩紙とは?」の記事を参照してほしい。 デッサンについてはとりあえず「誰でもできるデッサン練習法」と「顔のデッサン、5つの勘違い!」を読んでほしい。 今回の取り上げるのは水彩画ならではの「色塗りの基礎技法」だ。特に透明水彩の世界では案外専門用語が多く、戸惑うこともある。人により定義も若干違うようだが、基礎となる考え方に大差はない。一通り理解しておくと、あなたの制作に役立つだつに違いない。 […]

[…]  透明水彩絵具の塗り方には大きく分けると「重色」と「混色」がある。重色は下に塗った絵具が乾いてから上に絵具を塗る方法、混色はパレット上で絵具を混ぜてから塗る方法だ。(塗りの基本技法についてはこちら→) 絵具の「透明度」とは下の色がどのくらい透けて見えるかを言う。もっとも今のところ各色に透明度〇%とかいう定量的な数字で表現されているわけではないが、ホルベイン、ウィンザーニュートン、シュミンケホラダムの絵具(絵具の選び方についてはこちら→)はおおよそ、透明、半透明、半不透明、不透明の4段階のうちのどれであるかがカタログに明記されている。 […]

[…]  ある日、アトリエを片付けようと、昔の資料を整理していた。本棚の奥から古いメモ書き兼用の安物のスケッチブックが出てきた。どのページも黄ばんでいる。パラパラとめくる。その中に見つけたのが、冒頭のスケッチ、長崎の「グラバー邸」だ。 私のサインの上にある日付を見るとなんと1984年4月。30数年前のスケッチである。この頃は今のように真剣に絵を描こうなどとは思っていなかったはずだが、一応スケッチだけは残していたようだ。 水彩紙ではないので、最初から水彩絵具を塗るつもりがなかったようで、影の部分をサインペンでハッチングしている。 今も風景画を描くとき(詳細はこちら→)はサインペンを利用するが、ペンによるハッチングの影は描かない。何故なら透明水彩の淡く、明るい発色の表現とそれはなじまないのだ。それでも今思えば、とても貴重なスケッチだ。 […]

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