水彩で描く桜の風景 世界遺産姫路城!

姫路城 春爛漫

 私が描く日本の風景は古い町並みが多い。その理由はトップページで触れた通りだ。そして「町並み」は一般に建物単体で見るとそれほどの文化的価値はない。住民の努力によって町ぐるみで保存活動をしないと、すぐに町並みは歯抜け状態となる。このブログでも、いくつかの町並みで残念なコメントをせざるを得なかった。

 一方、関西には単体で絵になる建物も多い。数では圧倒的に京都だが、私の住む兵庫県にも特別な存在の建築がある。
 言うまでもなく「姫路城」だ。国宝であり、世界遺産でもある。自宅の神戸から近いこともあり、何度も訪れたことがある。
 姫路城の姿そのものを楽しむならゴールデンウィークに行くことをお薦めする。特に2009年から2015年にかけての平成の大修理により、屋根も壁も真白に蘇った「白鷺城」が若葉色の樹林に建つ美しさは筆舌に尽くしがたい。

 しかし姫路城にはもう一つ名物がある。桜だ。
 とある4月の初旬、スケッチに出かけたこの日、いつもの私なら、当然歴史と文化が匂う姫路城を中心に描くのだが、満開の桜を見た瞬間、その考えは捨ててしまった。
 姫路城は脇役に回ってもらおう。そしていつもなら、サインペンで建物を描き始めるところだが、ペンもやめて鉛筆で描くことにした。というのはペンを使うと普段ならシャープで美しく感じる黒い線が桜の淡いピンク色を蹂躙してしまうのではないかと考えたのだ。

 だからこの絵は私のいつもの風景画制作プロセス(ペンと水彩で描く風景画の魅力とは?→)とは違う。鉛筆で濃淡を取り、その上に透明水彩を塗っている。
 具体的に説明しよう。(残念ながらこの制作過程の記録写真を撮っていなかった。わかりにくいと思うが、ご容赦願いたい)
 まずHの鉛筆で城の輪郭、桜のヴォリュームを描く。
 この時注意して見て欲しい。満開の桜は全てが均一なピンク色ではない。よく見ると、両の掌で柔らかく包むくらいの細かな花びらの塊で成り立っている。そしてさらにそれが枝の流れに沿っていくつも重なり合うのだ。
 そのピンク色の濃淡を画面全体に鉛筆で丁寧に表現していく。明るい部分の塊は2Hから4Hの薄い鉛筆で、桜の枝や幹はHB~4Bまで使い分けている。
 明るいところは当然練りゴムを使う。幹や枝の上に浮かぶ明るい花びらは薄い鉛筆で描くのではなく、濃い鉛筆の背景に練りゴムで描くイメージだ。
 この絵は6号。いつものSM(サムホール)に比べると相当大きい。この花びらを鉛筆で丁寧に描くには相当に根気がいる。現地でのスケッチに4時間、風景を写真に取り、帰ってからも続きを描き、結局鉛筆による下描きだけで10時間ほどかかったと思う。

 次に着彩だ。
 まず、桜の花びらのうち最も明るい部分にマスキングインクを塗る。そしてその上に薄く下塗りをする。この時は薄く紙全面にベージュを塗っている。
 そして、乾かないうちに、明るい枝についた花びらの塊のゾーンをティッシュで拭き取るのだ。
 つまりまず下地だけで、紙の真っ白、薄いベージュ、濃い目のベージュと3つの階調を施したことになる。
 次にグリザイユで影をつける。いつものプルシャンブルーを使った。このブルーの水加減により、さらに細かな明度差をつけていく。城の部分も樹木の部分も、桜花びらとの明度バランスをとりながら青一色で描き分ける。
 グリザイユによる描画が完全に乾いてから、初めてピンク色をのせる。主にローズマダーを薄く、何度も、濃さに応じて塗り重ねる。石垣、地面、木々の緑の固有色をさらに重ねる。
 桜以外の色の彩度を上げすぎると、相対的に桜の柔らかなピンクが死んでしまう。かと言って薄くしすぎると、桜のピンクが引き立たない。少しづつ調整しながら根気よく塗るしかない。
 延々とその作業を繰り返した後、マスキングインクを剥がす。白過ぎる部分は少しピンクを入れて調整をして、やっと完成だ。
 いつもの同じサイズの作品に比べると、2倍ほど時間がかかったと思う。

 その甲斐あってこの絵は数人の方から購入希望を頂いた。
 トップページにも書いたように、私はなるべく多くの人に私の絵を飾ってもらいたいと思っている。だから最先端の印刷技術であるジークレー版画印刷での提供をお願いしたところ、2枚だけ了解をいただいた。
 おかげで原画は今も私の手元にある。今後の絵描きとしての活動の中でまた購入希望があれば提供していきたいと思っている。

P.S.
姫路城のほかにも、描くべき日本の風景は他にも多くある。私が過去に言った場所のリストにコメントを添えて公開している(ここが描きたい日本の風景!→)。スケッチに出かけようと思っている方は参考にしてほしい。

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