鉛筆画の消す技術と道具

 鉛筆は絵描きにとってある意味、主役となる道具である。石膏デッサン、人物デッサンをそれだけで完成させることができるし、水彩画の下書きとして風景画にも使用できる。とても表現豊かな画材なのだ。

 一方消しゴムや練りゴムなど、「消す道具」は一般的には脇役で、教本で取り上げられることもほとんどない。でも「消す技術」なしには、鉛筆の持つ本来の表現力は決して発揮できない。

 今回はそんな鉛筆画の「消す」技術と「道具」について考えたい。

目次

1.鉛筆線をなぜ消すのか?
 1.1黒い線を消す
 1.2白い線を描く

2.消す道具の種類
 2.1消しゴム
 2.2練りゴム
 2.3特殊な道具

3.「消す」道具の使い方
 3.1練りゴムで消す 
 3.2細かなハーフトーンを描き込む
 3.3ハイライトを描き込む

4.まとめ

◾️鉛筆線をなぜ消すのか?

 せっかく描いた鉛筆の線。そもそもなぜ消すのだろうか?その理由は多分以下の2つだ。

・黒い線を消す

 例えば、鉛筆で文字を書く時。字を間違えれば、その黒い線を消す。あるいは私が若い頃徹夜して描いた建築製図。作図技能が劣り図面として汚い線しか引けなければ「消す」時間の方が描く時間より多いことさえもある。設計内容が悪ければ、二度と同じ場所に線が引かれることはない。

 そして絵の基礎訓練である石膏デッサン。この「消す」行為はデッサンの狂いを修正して、正しい線を残すために必要不可欠な作業である。練りゴムや消しゴムは初心者にとってとても心強い道具である。

・白い線を描く

 ちょっとわかりにくいかもしれない。上述の「黒い線を消す」技術が白地に黒い図を描く時に使うものであるのに対し、「白い線を描く」技術は黒字に白い図を描くときに使うものだ。

 例えば同じく石膏デッサン後半のプロセスを考えよう。画面は無数の鉛筆の線で埋まり、ほとんど真っ黒な部分がある。だがモチーフをよく見るとその中にカーブを描く明るい線がある。さてどうしたらいいだろうか?

 こんな時は練りゴムの先を細くし、狙うカーブに沿って軽く画面をなぞる。すると背景の黒地に薄い白い線が引ける。この時あなたは消しゴムや練りゴムを「白い線を描く」ために使ったのである。

◾️消す道具の種類

まず鉛筆の線を「消す道具」について触れておこう。

・消しゴム

 子供の頃から使ったお馴染みの道具である。私が子供の頃は本当に「(天然)ゴム」からできていた。だが「消す」能力は今ひとつで、薄いノートは力を入れて消しゴムを使うとすぐ破れてしまったものだった。

 最近は塩化ビニルを中心とする合成樹脂製で本当はゴムではないが良く消える。繊維の間に落ちた炭素の粉をゴムよりも強力に吸着し、消しカスとして捨ててくれる。この消しゴムが出回り始めて「消す」作業はずいぶん楽になった。

・練りゴム

 主成分は合成ゴム。鉛筆の粉の吸着力は塩化ビニルの消しゴム同様に強力だ。一番の違いはその柔らかさだ。手で揉んで先端の形状を変えれば、消す部分を狭くも、広くもできる。吸着した粉は消しゴムと違って、練りゴム内に取り込まれる。だから使い込んだ練りゴムは黒くなる。

・特殊な道具

1図

 電動消しゴム:先の細い消しゴムをモーターで回転させて消すもの。擦り減ってきたらホルダーの先を引っ張り出して使う。完全に無くなったらゴムを交換して使う。(1図上の製品)

 シャープペン型消しゴム:同様に先の細い消しゴムをペン先につけて使う。使い方は消しゴムと同じ。電動消しゴムと違い、擦り減ったらペン尻をノックすれば良い。無くなったらやはりゴムを交換する。(1図下の製品)

◾️「消す」道具の使い方

 絵を描く時の「消す」道具の具体的な使い方を3つの場合に分け考える。

・練りゴムで消す

 鉛筆で絵を描く時は一般的には消しゴムは使わない。ケント紙のように表面が硬ければいいが、一般的には画用紙、水彩紙はデリケートにできており、消しゴムで擦ると表面が毛羽立って、綺麗に水彩が載らなくなるからである。

 だから消すのはもっぱら練りゴムを使う。デッサンの間違いを修正するにはゴムの先を修正部分の大きさに合わせて形状を変えて使えばいい。

 ただこの作業は当然だが少ない方がいい。消すことを繰り返していてはいつまで経っても絵が完成しないからだ。なるべく消さずに済ませるためのコツや注意点を以下の記事に書いているので参照してほしい。

・「顔のデッサン練習中!?知っておきたい5つの勘違い→
・「忘れがちな人物デッサンのコツ→
・「透明水彩で描く人物画 デッサン編→

・細かなハーフトーンを描き込む

 さて、何本もの鉛筆線が重なり、デッサンの狂いも修正して、絵全体がグレーの「面」の表現になる。ここから「白い線を描く」作業が必要となる。

 絵のなかには何段階ものハーフトーンがある。例えば人物画であれば、顔の光の当たる面は明るく反対側は暗くなり、中間部はハーフトーンになる。

 だが人の顔はそれほど単純ではない。そのハーフトーンよりもより少し明るい部分、少し暗い部分がある。暗い部分はさらに鉛筆の線を重ねれば良いが、問題は明るい方の部分だ。

 こんな時の私の対処方法は以下のとおりだ。「少し明るい部分」の範囲を軽く練りゴムで鉛筆の粉を落とす。この時決して真っ白にしないように。他の部分との馴染みが悪くなる。

 その部分にベースとなるハーフトーンよりもやや硬い鉛筆でハッチングを入れる。周りとの境界は線を重ねてやればいい。

 例えばハーフトーンが2Hで描かれていれば「やや明るい部分」には3Hのハッチングを入れてやればいい。

 なお「やや濃い部分」は同じ2Hで密度を上げるか、少し柔らかいHでハッチングを重ねる。どちらが良いかはモチーフの明暗バランスを見て考えよう。一般的には後者の方がより早く暗い面になる。

・ハイライトを描き込む

 人物画においては鼻の頭および両頬がハイライトとなる。もちろんこの部分は最初から意識して鉛筆の粉が載らないように描いてはいるが、絵を描き進めるに従い少しづつ汚れてくるものだ。

 最後に練りゴムの先端を細くし、点を打つように置く。するとハイライトが描ける。

 このハイライトを描き込む作業、実は人物画は先の2点に注意すればいいのでそれほど難しくない。

 個人的には鉛筆で風景画を描く時のハイライトの表現の方が難しいと思っている。というのは、風景画は人物画と違って連続する面がほとんどない。明暗の変化が激しいのだ。遠くの影は薄く近くの影は濃い。

 しかし同じ距離にあっても木の葉は一枚一枚角度が違い、その反射、明るさのぐらいも千差万別である。人物画の様に最後に鼻の頭に白い点を入れるだけでは済まされないのだ。

 上の図は私の鉛筆画の制作途中の画面である。桜の無数の花弁の塊を練りゴムで表現しているが、さらに細かなハイライトの花びらは小さすぎて練りゴムでは困難だった。

 そこで今回は電動消しゴムを使うことにした。消しゴムの直径は2.3mm。花びらの一点だけにゴムを当てて回転させる。ピンポイントで明るい花びらが描ける。余計な部分は消さずに済む。とても都合が良いと今は思っている。もっとも使いすぎると水彩紙を痛めるのであくまでもピンポイントで使うだけだ。

 一方で屋根のラインは反射する細い線としての描画が必要だ。こちらも練りゴムでは一定の太さの線が引けないので難しい。そこでシャープペンシル型消しゴムを使う。太さはやはり2.3mm。先端を回転させて使うとさらに尖らせることができる。

 これを使って屋根ラインを描く。こちらも使い勝手はなかなか良い。皆さんも試してみてはいかがだろうか。

◾️まとめ

 たかが「消す」技術と思ってこの記事を書き始めたが、思ったよりも長文になってしまった。どうやら大切な技術だということは間違いなさそうだ。

 初心者の方は特に「白い線を描く」技術を意識してほしいと思う。絵のレベルが格段に上がるはずだ。

P.S

このブログにある関連する記事は以下のとおり。興味ある方は参考にしてほしい。

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