顔のデッサン練習中!?。知っておきたい5つの勘違い。

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勘違いその1 アイドルのデッサンが得意!?

 よく人物画を描く。私の場合は女性像ばかり。うまくいかないときもある。そんなときにこの便利な世の中、インターネットを利用しない手はない。ためしに「顔、デッサン」とグーグル検索してみた。

 驚いた。大半がアニメのキャラクターの描き方のサイトだ。時々リアルな顔の描き方をうたったサイトがあると思って覗いてみると、アイドルの写真を下絵に顔のパーツの描き方を細かに教えているものだ。

 たしかに手っ取り早い。インターネットが発達した現在、無料の人物画像をダウンロードすればモデルをやとう必要もないのだから。だがこのやり方で、アイドルの顔を完全にコピーできたとしても絵描きとしての喜びはちょっと少ないだろう。なにしろ最高に出来た作品がカメラマンと同じアウトプットなのだから。

 もちろん、鉛筆の使い方の訓練としてはOK。枚数をこなせば上達も早い。でもここでは敢えて、対象とするその人物像の生きた表情を描くことにこだわりたいと思う。もちろんアイドルがモデルになってくれたら最高だが・・・。

勘違いその2 デッサンは似顔絵じゃない

 私は女性像を描くために、近くの人物画教室に行っている。一人でモデルを雇う必要も無く安価だからだ。その教室に最近来たばかりの初心者と思われる人が、講師の先生に聞いている。
「全然モデルさんに似ないんです・・・」。
さすがに講師は心得たもの。
「ここは似顔絵教室ではありません。似てないことを気にする必要はありません・・・」。

 この講師の言葉には2つの意味がある。ひとつは初心者に対するファーストステップとして似せるよりも「顔」の基本比率を守りなさいと言うこと。例えば顔を正面から見たとき1/2の位置の高さに眼がある。眉から鼻下までの距離と鼻下からあごの先端までの距離は同じ。眉、目、鼻、唇は顔の鼻筋を通るラインに対して左右対称であるとか・・・。

 もうひとつのポイントは人の個性と表情を描くことはとてもむつかしい。今日、明日ですぐにマスターできるものではなく、練習が必要ということだ。

 念のため断っておくと、大前提として「似顔絵」は人の顔の特徴を誇張して個人を特定することを目的としたもの。だから極端な話、前述の一つ目のポイントである「顔の基本比率」を無視することもある。新聞の政治欄にある風刺画が典型的な使用例であるが、ここでは扱わないことにする。

勘違いその3 目と眉と鼻の関係をよく見て・・・も描けない!

 私がプラハにスケッチ旅行に行ったときのことだ。かの有名なカレル橋で、とある画家が美しい婦人を描いていた。それもいわゆる特徴を誇張した似顔絵ではなく、ちゃんとした肖像画だ。

 使っているのはたぶんガッシュ(不透明水彩)。私が使っている透明水彩のにじみやぼかしというテクニックは使えないが乾燥が速く、橋の上での肖像画制作にはうってつけだ。

  どんな風に描くのか画家の背後で見ていた。恐ろしいスピードで、筆を動かしている。まったく動きに躊躇が無いのだ。
 そんな動きの中で唯一、筆が止まる瞬間があった。それが両目と鼻、眉を描いている時だ。つまり個性を描くレベルではその部分に一番注意を払うと言うことだろう。そして、しかもすばらしい肖像画が出来上がった。時間にして20分ほどだろうか。

 帰ってきてから、私もかの画家のやり方をまねてみる・・・。なるほど、似せるという目的からは目、眉、鼻の関係に集中することが大事だということがわかる。
 でも残念ながら絵全体としてはうまくいかない。なぜならその3点の関係は正確でも、そこだけを見ているとどうしても遠いところにあるパーツつまり顔全体、画紙全体の中で決めた構図内での位置関係がどうしても狂って来るからだ。

 つまりこのやり方は画面の正確な構図が要求される作品には向かない。今思えば、かの画家は画面の中央に眉、眼、鼻の3点セットを描き、それに合わせてあごや髪のラインを最後に調整していたようだった。
 20分という短時間の中で顔だけを描くきわめて特異な手法だったのだ。

 という訳で、橋の上で短時間で美人を仕上げる必要ない私たちは、やはり構図を決め、全体の位置関係を決め、正確なプロポーションを追う地道な練習が必要なのだ。

勘違いその4 決められた比率にこだわるな

 私が顔のパーツの基本比率を知ったばかりの頃。顔の大きさを決めるとすぐにその割付位置に目、鼻、口を置くようにしていた。そうすると、極端な話、モデルを見なくても人物画として違和感が無い、安心して見られる絵となるからだ。

 だがその人らしい個性が出るかと言うとそれだけではだめなのだ。理由は2つある。
 ひとつ目の理由は、パーツの比率には個性があるからだ。眉から鼻下、鼻下からあごの下までの長さは同じと書いたが、当然だが人によってその比率は微妙に違う。一般的に言うと、女性のほうが鼻下からあご下の寸法比率が小さい。だから女性の唇もあごも男性に比べ小ぶりで、女らしい顔になる。
 二つ目の理由は、ここでいう比率とはあくまで正面から見たときの比率であって実際に見える比率とは違うからだ。だから本当は正面から見た似顔絵以外には使えない。
 私たちが描くときは近い部分は大きく、遠い部分は小さく見える。顔にも遠近法を適用しないといけないのだ。
 例えばあなたは立ったままで、座っているモデルさんを描くとしよう。この時あなたはモデルさんを上から見下ろすことになる。すると正確に言えばモデルさんの眉から鼻下の距離は鼻下からあご下までの距離より、あなたの目に近い分、大きく見えるのだ。これを紙の上で同じ比率に描いてしまうと、相対的にあごや唇が実際よりも大きくなることになり、可愛らしい女性にはならないのだ。

勘違いその5 表情にこだわるな

 モデルさんのその瞬間の魅力をストレートに伝えるには、顔のパーツの形を正確に描く必要がある。目の開き具合、黒目の大きさ、瞳孔の開き具合・・・。
 口元の向きで笑顔にもなるし、不機嫌な表情にもなる。小鼻の影、まつげの形も気なるだろう。場合によっては化粧の紅も気になってくる。
 するとついついその魅力的な部分だけを見て影を付け始める。その結果、本来全体として明るいはずの面に暗い塊が現れる。本来暗いはずの面に明るい塊が現れる。人間の目と脳は正確だ。不自然な鉛筆の濃淡は顔の陰ではなく、腫れや出来物のように見えてしまう。こうなると、その修正に膨大な時間がかってしまう。ちょっと逆説的だが、個性を魅力的に表現しようと思えば、まず顔の大きな、自然な明暗を捉え、その明暗の中に個性のパーツがあると考えたほうがいいのだ。是非お試しを。

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