石膏デッサンを練習する意味とは?

 皆さんは「石膏デッサン」をしたことがあるだろうか?

 「知っている」

 「見たことはある」

 「知ってるけど、やりたいと思わない」

 おそらく、大部分の人がこんな感想だろうと思う。多分、一度もやったことのない人もいるのではなかろうか?

 今回はそんな石膏デッサンの意味について考えようと思う。

目次

  1. 石膏デッサンとは?
  2. 石膏デッサンの基礎技術
  3. 石膏デッサンのメリット
  4. 石膏デッサンの描き方
  5. まとめ

■石膏デッサンとは?

 白い石膏像を鉛筆や木炭で表現すること。有名な石膏像はヴィーナス、ブルータス、アリアス、アグリッパなど。私が学生の頃学んだ建築学科のアトリエにはいずれの像もあったと思うが、私はヴィーナスを描いた。女性像を描きたいという気持ちは今も昔も同じようだ。

 建築や美術を志す学校では必ず最初に課題となる石膏デッサンだが、普通の人にはあまり人気がないようだ。

 その証拠に、普通のカルチャーセンターには「水彩画教室」や「人物画教室」「趣味の風景画」等はあるが、「デッサン教室」などはあまり聞いたことがない。

 何故人気がないのか?
 おそらく、石膏デッサンはやはり「練習」であって、「作品」にはならない。モチベーションを持ちにくいのが原因だろう。

■石膏デッサンの基礎技術

 一応、石膏デッサンの基礎技術をおさらいしておこう。

測る

 鉛筆を親指で押さえ指先と鉛筆の先までを基本寸法とし、モチーフの各所寸法が基本寸法の何倍あるかを数えて測る。

 この時、目に対する鉛筆の角度を一定にしないと、比例に狂いが出る。だから肘を伸ばし、肩を軸に回転する様にして測るのがコツだ。

描く

 「測った」ポイントを起点として、主要なポイントを「直線」で結ぶ。

 「主要な」と「ポイント」の解釈については、教本により相当差があるようなので、ここでは割愛するが、「直線」とわざわざ書いたのは、いきなり曲線で描き始めると、早い段階で部分の狂いに目が向きがちになるからだという。経験上、私もそう考えている。

 「ポイント」とは通常は頭の上、顎下、肩の関節などをいう。人によっては目や眉や鼻下、頬骨の位置などを基準にする。

消す

 木炭の場合は食パン、鉛筆の場合は練りゴムでを使う。
 初心者は最初から、間違えた線をすぐに消すために使おうとするが、本来の使い方は、ある程度グレーの諧調が出来てきた段階で、「白い線を描くために」使用するものだ。

■石膏デッサンのメリット

 石膏デッサンを練習することのメリットは二つある。

 一つは白と黒、グレーの階調で構成する表現の美しさを知ること。私が今でも鉛筆のデッサンが好きなのはこのモノクロの表現の豊かさ、可能性に魅力を感じるからだ。(詳細は「鉛筆デッサンが教えてくれるもの→」を参照)

 もう一つは、「立体が作りだす陰影の理屈を知る」こと。石膏デッサンの最大の目的はこちらだ。そしてポイントは石膏像が白いことだ。

 あなたが仮にカルチャーセンターの人物画教室に通っていたとしよう。多分鉛筆で軽くデッサンし水彩画で仕上げることになる。

 当然ながら講師の指導はどうしても人物の肌や服の「素材色」になる。観る対象に色が付いているからだ。

 本来、立体は光を正面から受ける面は明るくなり、角度がつくに従って暗くなる。白い石膏像は正確にその陰を教えてくれる。

 だが、色がついていると、明るい面にある青の方が暗い面の白より暗く感じてしまうことさえある。言い方を変えると、綿密な立体感を表現しなくても、絵になってしまうところがある。

 だが人間の目は案外に正確だ。描き手はこだわった青色が暗くても気にならないが、主観なしで見た人は青の明度、再度のバランスが何となくおかしいことにすぐ気付いてしまう。

 カルチャーセンターで教えられる「常套句」に「目を細めて見なさい」という指導がある。

 これは色の情報を消して、明暗をきちんと見なさいということだ。

 色彩に興味がある人ほど、ついそのアドバイスを無視しがちになるようだが、横着をせずに実行して見て欲しい。

 私もデッサンをしていて「何かおかしいな」と思った時は真っ先の「目を細めてみる」ことにしている。

■石膏デッサンの描き方

 一度は真っ白な石膏像を正確にデッサンしてみよう。

 その際多分複数回に渡って描くことになる。その度に陰影が違っていてはデッサンの練習にならない。石膏像に当たる光の角度も強さも同じ条件にする必要がある。

 だから石膏に光を当てる窓は北側がいい。直射日光は天候に左右されるからだ。描く時間帯も同じにした方がいい。

 そして描くプロセスと注意事項は以下の通りだ。

  • プロポーションはきちんと鉛筆を立てて測ろう。
  • 最初は直線で、細部の曲線は後半で。
  • 最初から練りゴムを使わない。練りゴムは後半に白い鉛筆を使う気持ちで。
  • 人物デッサンをする時は、立体感を色でごまかしてはいけない。目を細めて、最後まで明暗をチェックしよう。

■まとめ

 誰もが気になる「石膏デッサン」について、どの教本にも載っていそうな、内容をまとめたつもりである。
 ちょっと面倒臭そうだし、「作品」には多分ならないが、ためになりそうなことは間違いなさそうだ。

あなたも是非「石膏デッサン」にチャレンジを!

P.S
 私は人物画を描く時、鉛筆でまず石膏デッサンをするつもりで下描きをする。まずは鉛筆だけで明暗を表現するようにして、その上にグリザイユ画法の要領で色を重ねている。

 敢えて言うと「石膏デッサンの発展形」でもある。興味のある方は「素描をデッサンだけで終わらせない!私の人物画作法とは→」を参照してほしい。

 今回は「石膏デッサン」をテーマとしたが、このブログには以下のような関連記事がある。興味のある方は読んでほしい。

■カテゴリとしては

■基礎練習については

■人物画の描き方については


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6件のコメント

[…] P.S. 今回は人物クロッキーについて書いた。デッサン全般については次のような関連記事を書いている。参考にしてほしい。■顔のデッサン練習中!?知っておきたい5つの勘違い→■顔のデッサンがモデルと似ない理由はこちら→■人物デッサンのこつと注意点についてはこちら→■石膏デッサンを練習する意味とは?→ […]

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