人物画の背景に風景を描こう!

 絵を描き始めた方へ。

友人に「あなたはどんな絵が得意ですか?」と聞かれたら何と答えるだろうか?

 風景画?人物画?

 私はどちらも好きなので、両方を一枚に描くことがある。つまり人物画の背景を風景画にするのだ。
 でも実はそんな絵を描くのはそれほど簡単ではない。今回は私が実践している取材のプロセス、作品に仕上げるコツを解説しようと思う。

 基本的にすることは、旅先で「これは!」と思った風景を写真に撮っておく。そしてイメージに合う女性のモデルが現れたら、その写真を元に人物画の背景にその風景を描けばいい。これだけだ。

 この制作プロセスで一番大切なことは、写真の出来を考えるのではなく、目の前にモデルがいると想像したうえで、その構図を決めることだ。 
 そしてその風景とモデルになる(女性の)表情、服装のイメージを合わせることが重要だ。和服を着た日本女性が、ドイツの古城を背景にしてもちぐはぐな作品、下手をすれば単なる「旅の記念スケッチ」になってしまうかもしれない。

 具体的にはどうすればいいのだろうか。以下にその秘訣を具体例で説明しよう。

■南国の祈り

 上左図はハワイに旅をした時、撮影した写真だ。通常なら手前の地面など入れず、水平線とダイヤモンドヘッドを中心とした横長の画面で構図を決めるのではなかろうか。だがこの時敢えて地面を入れ、縦長の構図とした。いずれ人物画の背景にしようと思っていたからだ。しばらくしてから、ハワイの民族衣装を着た女性がモデルとしてやってきた。

「やった!」ほくそ笑んだのは言うまでもない。下の写真にあるパーツは人物の左右にバランスよく配置し、海面の波やダイヤモンドヘッドの山並みはやや強調してある。こういう誇張が出来るのが「単なる写真」ではなく「絵画作品」を描く醍醐味でもある。

■夏風

 左上の写真はイタリアの世界遺産「エステ家別荘」だ。私が好きなフランスの画家コローの絵にこの別荘のバルコニーに座る子供の絵がある。
 人物よりも背景にあるローマ郊外の長閑な風景に感銘を受け、いつか私もその風景を背景にして人物を描きたいと思っていた。だから二度目にローマに旅した時に真っ先に訪ね、撮影したいわくある写真でもある。

 この時のモデルの女性は長い髪、柔らかい布地のブラウスとスカートを纏い、いかにも涼しげだった。涼風を楽しむポーズがこの風景にぴったりだと思った。
 顔は実はやや変えている。眼を若干強調したのは、無意識に外国の風景に馴染むことを考えたのかもしれない。

■水辺を想う

 ベルリン郊外のニンフェンブルク城の風景だ。遠くに城を手前に草原と川を配する構図で写真を撮った。すぐにヨーロッパの庭園風景とわかるので、ぴったりのモデルさんがなかなか見つからなかった記憶がある。

 真夏のアトリエにやってきたのがこのモデルの女性。大柄でとても爽やかな表情をしていた。ヨーロッパの水辺の風景が似合うと思い、この背景を使用した。
 ただ、正直に写真通りに描くとやはり城は存在感がありすぎる。女性のポーズより魅力的であってはいけない。かなりぼかして描いている。

 この絵は特に背景の説明もせずSNSに投稿したのだが、しばらくして、とある外国のフォロワーから「子供の頃ここでよく遊んだ。懐かしい」と言うメッセージをいただいた。
 思わぬところでコミニュケーションが拡がる・・・このテクニックにはそんな効用もあるようだ。

■アルハンブラの踊り子

 左上の写真はあまりに有名なスペイン、グラナダのアルハンブラ宮殿。内部を見学していて、窓の外を見た時の風景だ。いつか絵にできると思って写真を撮った。幸いにもフラメンコの衣装を着たモデルさんを描く機会があり、早速背景に使用したものだ。

 この時も手前に人がいることを想定して写真を撮っている。通常の記念写真ならばきっともっと窓の外の風景をズームして撮影するだろう。

 だが主役は室内にいる人。そう考えると床や、壁も写真に入れておく必要があるわけだ。なお絵の背景としてより完成度を上げるため、別の写真を利用して室内に濃密なイスラミック装飾を施したことも付け加えておく。
 単なる記念写真では人物画の背景にはならないということを分かってもらえただろうか。

P.S
今回は人物画の背景について述べた。だが人物画を描くためには当然知っておくべき知識が多くある。下記に関連する記事をまとめてあるので、興味ある人は参考にしてほしい。

■私の人物画の描き方についてはこちら→

私の人物画が売れた訳→

人物デッサンの具体的なプロセスについてはこちら→

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