人物画で水彩紙が風邪をひくと…!

目次

1.水彩紙が風邪をひくとはどういうことか
2.風邪をひいたらどうするか
 2.1風景画の場合
 2.2人物画の場合
 2.3・特効薬はあるか?
3.水彩紙のための風邪の予防策は?
4.まとめ

■水彩紙が風邪をひくとはどういうことか

 「水彩紙が風邪をひく」…水彩画の世界の専門用語だ。ただし絵画のテクニックの話ではない。水彩紙という材料のある意味宿命的な欠点である。
 水彩紙はコピー紙など普通の紙に比べて繊維素の隙間が多いので、元来水や水彩絵の具を吸い込みやすくできている。(「もっと知りたい水彩画の魅力!水彩紙とは?→」を参照)
 だがそのままではティッシュに絵の具を垂らした時のように、絵具があっという間に広がって筆のコントロールがまったくきかなくなってしまう。そこで水彩紙は出荷前ににじみ止めの液を表面に塗っている。

 だがこのにじみ止め処理はどうやら湿気にとても弱いらしい。初心者は絵を描く頻度も少なく描き始めたら一気に描き上げるのことが多いのでそれほどこの現象に気が付かない。私も当初はそうだった。

 ところが絵を描く頻度があがるにつれ、何枚もの絵を並行して描くようになる。すると知らず知らず仕上げを後回しにする絵がでてくる。

 そうするとその間空気中の湿気にさらされ、サイジングが劣化する。次に仕上げにかかろうとして絵具を塗った瞬間愕然とする。それが冒頭の絵である。背景に点々と濃いピンクの斑点が出来ているのが見えるだろう。拡大図では人物の、特におでこの当たりにやはり斑点が出来ている。

 これらはこの部分のサイジング剤が劣化し、筆をおいた瞬間に絵具が染み込んでしまった跡である。この絵具は紙の表面ではなく繊維の奥に入り込んだ絵具なのでどんなに拭き取ろうとしても絶対に取れない。始末に負えない最悪の結末になってしまうのだ。


■風邪をひいたらどうするか?

・風景画の場合

 不幸にも水彩紙が風邪をひいていしまったらどうするか?私は往生際が悪い。せっかく描きかけた作品をなんとか仕上げたいと試みたことがある。

 実は風景画の場合は、吸い込みムラを生かすという方法がなくはない。上の図はイタリア、シエナのスケッチだ。壁面の表現に斑模様が見えるだろう。これは斑になるのを予測してわざと別な色を垂らして、古い石壁を表現しようとしたものだ。

 ただしこの方法は、明度が暗い面にしか使えない。明るい面ではやはり斑だけが暗く、顔料の生の色が部分的に見えるのでとても絵にならない。この出では明るい中央の塔の部分は水彩を塗らず、色鉛筆で仕上げている。

・人物画の場合

 人物画の場合は、明るい部分が決め手なので、そこが斑模様になると手の施しようがない。残念ながら冒頭の作品は私の「作品保存の際の戒め」にしか役に立っていない。

・特効薬はあるか?

  一つだけ、期待している特効薬がある。「マルチサイジング液」である。じつは今現在やはり描きかけの作品の一部のサイジングが劣化し始めた。そこでこの原液を表面に刷毛で塗り、乾燥してからさらに上に水彩絵の具を重ねるという試みに挑戦している。顛末をいずれ報告したい。お楽しみに。

■水彩紙のための風邪の予防策は?

 通常スケッチブックはフィルムで密閉されている。私は画材セールの時にけっこうまとめ買いするのだが、経験上このフィルムで包まれた状態であればサイジングは劣化しない。

 問題は封を切った後だ。かつては本棚にそのまま立てて、その都度取り出し使用していた。だがしばらくすると、筆先を紙に置いた瞬間、醜い色むらが発生することに気づき、最近は百円均一店で買った衣料用の密閉袋に乾燥材を同梱して保存するようにしている。この状態で保存すれば一年くらいたった水彩紙でも問題ないようだ。

 ただ冒頭の作品のように、描き始めた作品は、扱いがむつかしい。毎日描いているうちは問題を感じないが、日を空けるとどうも劣化していることが多い。水彩画の場合は「膨大な制作時間をかけた力作」はむつかしいようだ。なるべく早く仕上げることをお勧めする。

■まとめ

 初心者のうちはなかなか気が付かない「水彩紙の風邪ひき」。だがいずれ知ることになる。筆をおいた瞬間にできるあの「悪魔のような斑点」。

 自分の傑作を台無しにしないためにも、いますぐ水彩紙の保存場所を確認してほしい。

P.S.
 このブログでは本文中のリンク以外にも関連する記事を書いている。興味ある人は参照してほしい。

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