逆光の風景を水彩でどう描くか?…杵築の武家屋敷

水彩画を描く旅…大分県杵築(きつき)市

早朝6:30、大分港に到着。
実は生れて初めての大分県上陸である。
同じ九州でも新幹線のある博多~鹿児島の西側路線はかつて建築設計の仕事をしていた時、何度も通ったことがあるが、東側はまったく縁がなかったのだ。

だから、いやむしろ水彩画を描くためだけに訪れたいと思っていた土地でもある。

今回大分県を目指すにあたり、交通機関を何にすべきか随分悩んだ。通常は新幹線で博多まで行き、在来線に乗り換えるのだろうが、私の地元神戸からでは時間がかかりすぎる。移動先でその日、満足に絵を描く時間が確保できないのだ。

幸い、神戸からはサンフラワーというフェリーが出ている。19時に神戸を出発し大分に翌朝6:30に着く。その日のスケッチ時間は十二分にあると言う訳だ。

さて、港からバスで大分駅へ行き、JRで杵築駅に行く。約50分の旅だ。そして駅前からバスに20分ほど乗り「杵築バスターミナル」へ。ここから歩いて15分ほどでやっと「杵築重要伝統的建造物群保存地区」にたどり着く。

逆光の武家屋敷を描く!

この町はいわゆる「武家屋敷街」である。実を言えばスケッチにはちょっと注意を要する。
言い換えると、町の保存状態が良いほど、通りからは武家の「門」しか見えず、武家屋敷そのものは見えないことが多い(「透明水彩で描く風景 知覧の武家屋敷→」を参照)。
白川郷のような民家そのものが主役となる町並みとは趣を異にするのだ。

今回もしかり。冒頭の水彩画はその一画。やはり門しか見えない。だが今回はその門と塀そのものが歴史を感じさせるモチーフであったので、十分絵になると思いスケッチを始めた。

しかし、実はこの風景には危険な落とし穴がある。
それはこの敷地が街路の北側にあることだ。つまりこの門や塀は一日中逆光となるので、絵に描く壁面は陰となり、陰鬱な表情となる。

見たままを描いてしまうと、水彩画の画面全体が薄暗くなり、魅力のない作品になってしまう可能性がある。「逆光」の風景をどう水彩で表現するか、それが今回のテーマである。

ポイント1:画面での明暗の構図を考える

最大のポイントは制作に先立って、明暗の方針を確定しておくことだ。つまり見たままを描くのではなく、光の「強調」と「省略」を意図的にコントロールすることである。

具体的に説明しよう。
①図を見てほしい。明るい部分を以下の3箇所にまとめ、他の部分との明度差をつける。一つは門と塀の上に見える樹々と空。二つ目は太陽光を反射する瓦屋根。
そして最後は影の無い、太陽光に照らされる地面である。

最初に明るい部分を白地のまま残し、陰影となる部分を①図のように「黄」で塗ってみる。そして画面の明暗のバランスを再度チェックしよう。

画面全体が薄暗くならないように紙の白を残す部分を慎重に計画しよう。(実物の影をある程度変えてよいと思っている)

ポイント2:白を残しながら陰影を施す

背景の緑はサップグリーンを中心に、建物はローシェンナをベースに青や紫を混ぜながら陰影を塗ってゆく。(明るい部分を塗り残すこと)

最後に屋根の下、建具まわりなど最も濃い影となる部分に、サップグリーン、インディアンブルーレッドシェード、クリムソンレークの3色を混ぜた(黒に近い)濃いグレーを塗って画面を引き締める。②が完成図である。

今回は「逆光」をテーマとした。作品制作の過程で気がついたことを今後も記事にしていくつもりである。このブログを定期的にチェックしてほしい。

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P.S.
「スケッチ旅」と「水彩画」をテーマとした参考記事は以下の通り。興味のある方は参考にしてほしい。