二つの伊勢街道を結ぶ町! 宇陀千軒の風景をスケッチ

 次の個展に備えて、出品予定作品をチェックした・・・。いかん、作品が足りない・・・これでは壁面が埋まらない!。
 慌ててスケッチの予定を追加する・・・毎度のことだ。自由なアーティストを気取ると、ついつい予定が伸びてしまう。大いに反省している。
 でもすでに海外のスケッチ旅は計画が終って航空チケット代は払ってしまった。予算的には近場でのスケッチしか許されない。

 というわけで、選んだスケッチ先が今回の奈良県、宇陀松山だった。しかしそんな理由とは関係なく、絵描きにとってはとてもいい町だった。私がスケッチに出かけたその日も、実はスケッチブックを持った日曜画家がずらり。かれらといい構図を争って場所取りをしなければならなかったほどだ。

奈良県には重要伝統的建造物群保存地区が三つある。一つが寺内町である「今井町」。江戸時代の町並みをほぼ完全に残している貴重な町であることは先の記事(詳細はこちら→)で述べた通り。
 そして一番新しく認定された商家町である五條新町(詳細はこちら→)。そして今回取り上げるのが、商家町かつ陣屋町である宇陀市松山である。

この宇陀松山は江戸時代は幕府の天領であったため商業地として栄えた。しかし奈良の三つの重要伝統的建造物群保存地区の中では最も行きにくい場所にある。JRは通っていないので近鉄大阪線に乗り、長谷寺のもう一駅向こう、榛原駅で降りる。名張駅の少し手前と言えば概略の位置が掴んでもらえるだろうか。そして駅から本数のとても少ないバスでさらに15分ゆられないといけない。

よく考えてみると、こんなに僻地なのに何故天領とされ、商業で賑わっていたのか不思議である。調べてみるとちゃんと理由があった。
江戸時代の庶民の一代行事が「お伊勢参り」だったことはご存知だろう。関東から行くにはもちろん「東海道」を使うのだが、関西からは玉造神社で祈願、出発して「伊勢本街道」を通り伊勢神宮に行く道が一つ。そしてもう一つ和歌山から紀州徳川家が参勤交代に使った道が「伊勢南街道」だった。先に述べた重要伝統的建造物群保存地区「五條新町」はこの伊勢南街道が通る町だったから商家町として発展したのだ。

そしてこの「宇陀松山」は当時のこの二つの大動脈「伊勢本街道」と「伊勢南街道」を最短距離で繋ぐ「松山街道」沿いに位置していたのだ。まさに交通の要所として発展し、その繁栄ぶりは街道沿いの民家が千軒以上あったのでこの辺りを「松山千軒」「宇陀千軒」と名付けたという事実でもわかる。

 前置きが長くなってしまった。さて、個展までのスケジュールに少々焦りを覚えてスケッチに訪れたその日。
 家を発ってから2時間。やっとバスを降り、お目当ての町に向かう。早速宇陀川沿いで目にしたのが冒頭の風景だ。すばらしい!
思わずスケッチブックを取り出そうと思ったが、もう少し町並みを見てから描く場所を決めようと、先を急ぐことにした。

 先ほど見た酒蔵は街道の南寄りに位置する。その街道沿いにいくつかの民家が並んでいる、一番南側の酒蔵の正面。間口の広い、立派な家だ。当時の繁栄ぶりが想像できる。
 街道は2kmほどある。長さにおいては今井町よりも、五條新町よりもはるかに長い。先ほどの酒蔵から北に向かって歩くと、交差点の近くに「まちづくりセンター」がある。ここで案内地図をもらっておこう。単なる観光案内状ではない。旧歯科医院の建物で内外観とも当時のままに保存改修されている。この案内所は当時の松山千軒にちなんで「千軒舎」と名付けられている。

森野旧薬園
 江戸時代からある民間の最古の「薬草園」。大正15年に国の史跡に指定され、今でも栽培しているところを見ることができる。(有料)

黒川本家
 名物の「吉野葛」を扱う老舗。間口10間の大豪邸。格子戸、虫籠窓と言う江戸の民家の標準ディテールを備える一方、間口と棟の高さの比は普通の民家に比べ極端に横長で、独特のプロポーションが美しい。

林家住宅
 こちらも大きな民家だが、平入の町並みをの中で妻を見せた蔵がアクセントになっている。絵を描くにはいい構図になるだろう。

万法寺界隈
 松山街道から一本西の道に面する寺院。こちらも寺院の屋根が町並みに変化を与えていて、面白い構図になるだろう。

 さて、一通り町歩きして、3枚スケッチしたところで、帰りの数少ないバスの時間が来てしまった。バス停へ急ぐ帰り道、最初に見た酒蔵に来た。
 冒頭の写真をもう一度見てほしい。切妻屋根の酒蔵と宇陀川、背後の山並みがセットになるとてもいい構図だ。よく考えると街道が狭いせいもあり、ほかの写真では川はもちろん、背景に山並みはほとんど映っていない。
 しまった!ここを描けばよかったと思ったが、時間切れだ。どなたか、私と同じように、日本の風景を愛する方、私に変わってこの風景をスケッチして、皆さんに公開して欲しいと思う。

P.S.
今回はスケッチ旅の様子を記事にしたが、「肝心の水彩画はどうやって描くの?」と思っている人は以下に制作編をまとめているので参考にしてほしい。
■ペンと透明水彩を使う本格的な風景画の描き方は「ペンと水彩で描く風景画の魅力とは」を参照。
■透明水彩の基本を知りたい方は「色塗りの基礎的技法」を参照。
■建物を描くための透視図法のコツを知りたい方は「鉛筆はいらない!下書きしない風景画の描き方(詳細はこちら→)を参照。
■透明水彩の正しい着彩手順を知りたい方は「何故上達しない?知っておきたい水彩画の正しい着彩手順!(詳細はこちら→)」を参照。
■ペンと透明水彩による風景画の制作プロセスを具体的に知りたい方は「ペンと水彩で描くミラノ大聖堂(詳細はこちら→)」を参照。

P.P.S.
トップページで「美緑空間アートギャラリー」のメンバーを募集しているが、今回のように、メンバー間で「あそこを描いて」などという情報を開示しあえればいいなと思っている。もうしばらくお待ちを!

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