奈良を描くなら…
奈良を題材に水彩画を描きたい!・・・東大寺、興福寺など奈良には有名な観光地がいくらでもある(「世界遺産興福寺と東大寺を描く→」を参照)。
でも今日はそんな観光客の多い場所ではなく、もっと素朴な日本の暮らしをスケッチするのに最適な場所を教えよう。
その町の名は「五條新町」。紀州街道など5つの街道が交差する町なのでこの名がついたそうだ。
五條新町とは?
アクセスはJR天王寺駅から和歌山線で1時間20分、「大和二見駅」で下車、徒歩15分くらい。私の地元神戸からでは、たっぷり2時間以上かかる。
私が訪れたのは、ゴールデンウィークの真っ只中。それなのに、ほとんど観光客はおらず、路端でスケッチブックを広げでも、誰に気兼ねすることもない。古い町並みをスケッチするには最高の環境だ。
実を言うと私は最近までこの町の存在を知らなかった。というのも、この町は「重要伝統的建造物群保存地区」なのだが、国の指定を受けたのが2010年の12月と比較的新しかったからだ。
この町の特徴は江戸時代から続く商家町の町並みとその生活風景がよく保存されていることだ。
同じ伝統的建造物群保存地区でも外観は民家だが内側は町の歴史とは関係ない観光客相手のみやげものやレストランばかりという町が増えている。しかしこの五條新町は今でも古い町屋でそのまま商売を営んでいる店が多い。
五條新町の見どころを紹介!
冒頭の写真のように、のどかな日本の風景が続く町並みなのだが、実は建築デザイン的にはほとんどの家が「平入り」で軒の高さも屋根の高さも揃っている。雰囲気はあるのだが、絵を描こうとすると、構図的には平凡で今ひとつ。平地なので背景に緑豊かな山並みもない。
こんな時は、町の建築ルールに従わない変わり者の家を見つけることだ。この町にも、ご覧のように一軒だけ妻入りの建物がある。
その建物を入れると町並みに変化が出る。この絵は0号(180mm×140mm)でかなり小さなスケッチブックなのだが、構図が面白ければ、それほどディテールを描き込まなくてもそれだけで絵になるのだ。
この町の特徴は生活感であると書いたが、街道から狭い路地に入ってみることをお薦めする。
家の壁伝いに、奥へ奥へ、先に何があるのかわくわくするに違いない。そんな路地を抜け、現れたのがこの蔵のある風景だ。
今でも現役の酒蔵らしい。雑草が生茂る小川にも町の人の生活が感じられる。
この絵は、そんな「生活感」を描こうとしたのだが、実はかなり苦労した。というのは私はどちらかというと、優しく綺麗なイメージを絵にすることが多い。日常に密着した生活感がやや希薄なのだ。
結局どうしたかというと、いつもなら絵具を塗らず、紙の白を活かす漆喰壁だが、今回は何度も複数の色を重ねることにした。
その汚れの中に歴史の重みが感じられるようにしたかった。一方川辺に生い茂る雑草は今に生きる生命感を表現しようと、いつもより緑濃く塗っている。
内部が公開されている建物がいくつかある(いずれも無料)。上の写真はそのうちの一つ、土間から座敷に上がり中庭を見たところだ。
ここには有名なデザイナーなどいない。生活に密着した何気ない障子のデザインにこの町の歴史が凝縮されている。
P.S.
このブログでは文中のリンク以外にも関連記事を書いている。今日ものある人は参考にしてほしい。
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■私の水彩画作品は「加藤美稲水彩画作品集→」
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■スケッチ旅については
[…] 五條市五條新町 […]
[…] 奈良県には重要伝統的建造物群保存地区が三つある。一つが寺内町である「今井町」。江戸時代の町並みをほぼ完全に残している貴重な町であることは先の記事(詳細はこちら→)で述べた通り。 そして一番新しく認定された商家町である五條新町(詳細はこちら→)。そして今回取り上げるのが、商家町かつ陣屋町である宇陀市松山である。 […]