世界遺産興福寺と東大寺を描く

奈良の世界遺産とは?

 奈良には世界遺産「古都奈良の文化財」として、以下の8つの文化遺産が含まれる。東大寺、興福寺、春日大社、春日山原始林、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城京跡である。
 私の絵描き活動(美緑(みりょく)空間へようこそ!→」を参照)の主要テーマである「古き良き日本の風景」を描くにはとても都合の良い街なのだ。

 このうち、平城京跡(「いにしえの都 平城京を描く→」を参照)は、同じ世界遺産でも、もはや人の住んでいない、言わば「廃墟の美」とでもいうもの。 
 それに対して、今回訪ねる興福寺と東大寺は今でも多くの参拝者が訪れる、現役の歴史文化遺産であり、人の生きている空間の美がある。スケッチするにふさわしい。

興福寺の建物

五重塔

 魅力的な建物が多くあるが一番描きたいのは、やはり五重塔だ。宮大工の方に話を聞いたことがある。建てるのが一番難しいのが「塔」建築だという。バランスを取るのが難しいのだ。

 この塔が建てられたのは室町時代。高度な測量機器も加工道具も重機もない時代に、高さ51メートルもある塔を建てた事実に感動せざるを得ない。間近に見る五重塔はスリムで巨大だ、棟梁の言う「難しい」が実感できる。

 だが、境内を出て隣にある猿沢の池から眺めるとその様相はガラリと変わる。土台の部分が木で覆われて程よく反り上がる屋根だけが樹々の上に浮いている・・・勇壮というよりむしろ、軽やかで優美な印象を受ける。

 奈良の観光用の絵葉書には必ずこの構図が含まれていると言っていい。選ばれるにはやはり誰もが認める魅力があるのだ。

南円堂

 興福寺で私がおすすめするもう一つの建物が「南円堂」だ。寺の南西端の入り口付近にあり、いつも参拝者で賑わっている。
 八角形の平面に急勾配の大屋根が載り、正面の入り口に唐破風がつく。とてもユニークなデザインで、絵になる建物だ。

 実は興福寺にはもう一つ対となる「北円堂」がある。そして「南円堂」は重要文化財、「北円堂」は国宝だ。
 その差の理由はわからない。おそらく建てられた時代や再建の有無などの判断があるのだろう。だがデザイン的に見ればこの南円堂の方が面白い。私は文句なく、こちらをスケッチしたが皆さんはどうだろうか。

東大寺の建物

 さていよいよ東大寺だ。ただし初めにお断りしておく。
 この寺は、例えば大仏殿は「世界最大の木造建築」であるとか、南大門は大仏様(「お寺を描こう!寺院建築4つの様式を知っている?→」を参照)と呼ばれる特殊な様式で学術的な価値が高いとか、建物単体の記事を書き始めるとそれだけで何冊も本が必要になってしまうほどの文化遺産だ。

 今回はそんな文化遺産の解説が目的ではない。あくまで絵描きとして「絵になるか?」という個人的な感想をコメントしている。そのつもりで読んでほしい。

 私は小学校の修学旅行で初めてここを訪れた。おそらく日本人訪れたことのない人は一人もないに違いなく、その価値は今更いうまでもない。
 特に大仏殿は素晴らしい・・・が、回廊の内で大仏殿を見上げると、そこはもはや完全に純粋な宗教空間であり、あまり人間臭さを感じない。

 残念ながら私の描きたい「日本の風景」とはやや趣が異なる。だから何度もスケッチブックを開きかけたけれども、大仏殿は結局描かなかった。

二月堂と三月堂

 「風景画」を描くにはやはり背景に自然の風景があった方がいい。その点、東大寺は山ごと寺なので自然も豊かだ。

 山の中腹にある「法華堂(三月堂)」はその意味ではスケッチするにはふさわしい。
 建物は小ぶりで周囲の自然に溶け込んでいる。よく見ると、建物の右と左で屋根の形が違っている。ユニークなデザインだ。

 なお、個人的思い出としては中学の頃、法華堂といえば「日光月光菩薩」と「不空羂索観音像」と暗記した記憶がある。調べると現在は両仏像とも博物館に移設されており、このお堂では見られないそうだ。
 
 法華堂の隣にあるのが「お水取り」で有名な二月堂。こちらは法華堂と対照的に巨大な建築で、山をくり抜いて森にはめ込んだような形態だ。

 ダイナミックな造形は実に魅力的だ。いい構図を求め、周辺を歩き回ると、建物の西側の参道に絶好の写生ポイントがあった。

 起伏ある石垣と土塀が伸びる参道の先にちょうど二月堂の大屋根が視線を受け止めるように聳え立つ。最高の構図だ。あなたも是非ここで一枚描いたらいかがだろうか。

P.S.
 今回のような私のお薦めする日本の風景をリスト化(ここを描きたい日本の風景!→
を参照)
してみた。
 スケッチ旅に出かける人は参照してほしい。

 海外の風景画を描きたいという人はこのブログのカテゴリ「スケッチの旅 海外編→」も参考にしてほしい。

 私の描いた水彩画はカテゴリ「加藤美稲作品集」に収録してある。こちらも見てほしい。


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4件のコメント

[…] P.S.山辺の道は世界遺産を目指していると書いたが、奈良にはすでに3か所の世界遺産が登録されている。そのうち「法隆寺地域の仏教建造物(詳細はこちら→)」と「古都奈良の文化財(詳細はこちら→)」については別に記事を書いている。興味あるひとは覗いてほしい。 […]

[…]  さて改めて奈良の世界遺産を調べてみると正確には以下の3つがある。①「法隆寺地域の仏教建造物」②「紀伊山地の霊場と参詣道」③「古都奈良の文化財」 法隆寺と法起寺が①、熊野古道が②である。そして③にはさらに以下の8つの文化遺産が含まれる。東大寺や興福寺(「世界遺産興福寺と東大寺を描く→」を参照)、春日大社、春日山原始林、元興寺、薬師寺、唐招提寺、平城京跡である。 […]

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