金沢・・・その本当の魅力とは

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 「懐かしき日本の風景」を求めて能登半島の輪島市~金沢市を旅した。石川県には重要伝統的建造物群保存地区が5箇所もあり、スケッチの効率がいいのだ。そのうち金沢市の3ヶ所の魅力をまとめてお伝えしよう。

主計町茶屋街

 まず主計町(かずえまち)。江戸時代から続く茶屋街だが重要伝統的建造物群保存地区の面積はわずか0.6ha。全国118箇所の中で最小だ。通りを端から端まで歩いてもほんの5分ほど。建物も明治から昭和にかけて作られたもので特に様式的にすばらしいとは思えない。一体どこに魅力がある?その答えは脇を流れる浅野川を渡って振り返った風景にあった。歴史ある町並みだけあって街路樹も3階建ての母屋に引けをとらない巨木だ。さわやかな川辺の風と緑。立ち並ぶ茶屋の甍はリズミカル。2階の座敷からは唄や踊の気配が漏れたに違いない。堤にスケッチブックを載せ、さわやかにスケッチが完了した。

東山ひがしの茶屋街

 次に向かったのは東山ひがし。主計町から歩いてほんの10分程度の場所にある。こちらはずらりと軒を並べるようにして建つ茶屋の統一感ある町並みが圧巻だ。ただしインバウンドの観光客も多く、ここで大きなスケッチブック広げるのは芸術のためとはいえ、ちょっと気が引ける。目の前を横切る観光客の間から控えめに町並みをスケッチ。まさに労作だ。

卯辰山麓寺院群

 最後は卯辰山麓の寺院群。東山ひがしの北の小道が多くの寺院をむすぶ「心の道」とひとつになる。一つ一つの建物はそれほど意匠的に優れているわけではない。どの寺もスケッチするにはいまひとつ。ただ信仰心を抱かせる道と門は期待を抱かせてくれる。そうだこの先に緑の背景があれば・・・。ついに絶妙の構図を発見。納得のスケッチが完了した。

ビルに囲まれながらも営業を続ける商家

 でも本当のことを言えば、金沢に来て一番感動したのはこの3つの重伝建ではない。これらはいずれも国に指定された地区で観光客向けにやや表情を作られた感がある。それに対して市内には近代的なビルにはさまれながらも、何気なく建ち、かつ今でも普通に商いをしている旧い商家がいくつも建っている。柱や梁の太さ、黒光りする仕上げ、玄関周りの装飾など重厚な美が際立っている。私が感動したのは高騰しているに違いない固定資産税にも負けず、現代の東京や大阪が捨てた町の伝統文化を簡単には捨てまいとの人々の気概に静かな感動を覚えるのだ。

 帰りの列車まで時間があったので、そのうちのひとつをスケッチしていると、地元の新聞記者が私の手元を覗き込み「すばらしいですね」と声をかけてくれた。彼は私に質問した「金沢のどんなところが魅力ですか?」
 そのときは三つの重伝建についてありきたりの答えを返したのだが今ならこう応える。「それは加賀百万石の繁栄を支えた商人の矜持だ」と。


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