大阪にもあった、江戸の風景をスケッチ! 富田林の町並

富田林の町並み

大阪に古い街並みはあるか?

 トップページ美緑(みりょく)空間へようこそ!→に書いた私の水彩画家としての活動の一つは「古き良き日本の風景」を描くことだ。

 それを私の地元である関西で描こうと思ったら、大抵の人は京都奈良を思い浮かべるだろう。一方で関西の中心である大阪には、有名な近代建築こそ豊富だが、古き良き町並みは残っていないと、私自身思っていた。

 だがある時、いつものように次のスケッチ先を探すためにインターネット検索をしていると、大阪にも平成9年に「重要伝統的建造物群保存地区」に指定された町があったことを知ったのだ。

富田林市の寺内町とは

街角のデザイン

 それが今日取り上げる「富田林市の寺内町」である。近鉄富田林駅から歩いて5分、交通の便も良い。

 比較的最近保存地区に指定された割には保存状態はとても良い。だがよく見ると、建築の意匠は昔のままだが、材料はかなり新しい。

 どうやら町の再生にかなりコストをかけたようだ。例えば、他の都市に残る町並み保存地区では、建物は保存再生されているが、道路は黒いアスファルト舗装のままというところが多い。

 だがこの町の道路は黒いアスファルト舗装ではなく、豆砂利仕上げの舗装であったり、同じアスファルト舗装でも骨材に白い石が使われていて、当時の雰囲気を壊さないような工夫がされている。

 そして一部には花崗岩が敷いてある。さらに町の排水路となる側溝の蓋も石、あるいは玉砂利で処理されている。上の写真をのように、街角には花を生けたりする演出も心憎い。きちんと街全体でインフラの整備を考えているようだ。

絵になる風景は?

 一般に商家町の場合は外壁は全て板張りであることが多い。統一感があって日本らしい風情があるのだが、絵を描く者から見ると、色彩的にはやや単調だ。

 それに対してここ富田林では、木の腰壁の上に漆喰または土壁というデザインが多い。だから腰壁の濃い茶褐色と上部の白のコントラストがとても美しい。絵描きとして大歓迎だ。

 もちろん虫籠窓(むしこまど)やかまどの煙を外に出す屋根の上の煙だしといった古民家のパーツも全て揃っている。上の写真を見てほしい。色彩も構図も絵にするには文句なしだ。

 「寺内町」と言うからには中心となるお寺があるはず・・・。
 それが上のスケッチにある「興正寺別院」。パンフレットによれば戦国時代1561年の建立されたとある。

 似たような意匠の民家が続く町並みの中にあって、ユニークな花頭窓を持つ「鼓楼」と背の高い「鐘楼」が程よいアクセントになっている。

 しばらく歩いていると、面白い住居を見つけた(上の写真)。
 普通、商家の町並は高さを合わせた二階建ての建物が並ぶ。揃えた軒先が美しい日本の町並みを演出するわけだ。

 しかし画面の中央にある建物は少し風変わりだ。珍しい木造の3階建てだ。
 しかも周りの家屋は平入なのに、この一軒だけが妻入り。当然他の家と軒は揃うはずもなく、町並みの統一感を乱している。

 しかもよく見ると小屋根は垂木を一本づつ斜め部材で支えるという、伝統的な工法には無いユニークなディテールを採用している。

 もし京都の町並みならこんなことは許されるはずもないが、さすがにここは大阪だ。誤解を恐れずに言えば、個性を許す、いや競う商人の気風なのかもしれない。

 そして画一的なルールを嫌い、ユニークな技術で存在感を示すこの建物は、天邪鬼(あまのじゃく)の私好みでもある。

 必ずしも学術的な形式に揃う必要はない。面白くて、絵になる・・・絵描きとしてはそれで十分だ。

 今のところ、「大阪にある古い町並み」がそれほど有名でないためか、訪れる人もごくわずかだ。
 京都のような人ごみを気にすることも無く、ゆっくりと江戸時代の雰囲気に浸り、スケッチブックを広げたい人にはお薦めである。

P.S.
 古き良き日本の風景を描きたい人にために、私が実際に行って「絵になる!」と思った場所をリスト化している(ここを描きたい日本の風景!→)。今後も整備してゆくつもりなのでぜひ参考にして欲しい。

 また私が描いた水彩画の一部を(加藤美稲水彩画作品集→)で公開している。こちらも参考にしてほしい。

 その他の関連記事は以下の通り。風景画に興味のある人は参考にしてほしい。


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