竹原とは?
今日の絵は広島県にある「竹原」。JR広島駅から呉線という単線のローカル線に揺られること、約2時間。
国の指定した「重要伝統的建造物群保存地区」だ。元々は製塩の町として発展し、今も江戸時代の街並みがよく残っているという。
この日は、真冬、1月だったがぽかぽかと陽気がよく、スケッチブックを持ってこの町を訪れた。
駅前の観光案内所で担当者にこの町の見所を聞くと酒蔵だという。それもそのはず、NHKの朝の連続ドラマ、マッサンの実家の舞台は実はここなのだ。
そして町歩きを始めてすぐにお目にかかるのが冒頭の水彩画にある風景だ。ご覧のようにとても素敵な風景だ。
古い町並みという意味では同じく重要伝統的建造物群保存地区の奈良今井町(「江戸の風景、完全再現!? 今井町の町並みをスケッチ→」を参照)の方がよく残っているかもしれない。
しかしこの竹原の良さは自然との一体感だろう。だから町並みを描いても背後に大きな自然の緑が広がる。空の青、山の緑、屋根瓦のくすんだ鼠色、民家の赤褐色の格子、白い漆喰壁などなど・・・淡い水彩色の重ねとにじみが活かせる水彩画にぴったりの題材なのだ。
作品制作のプロセス
この作品の解説をしておこう。紙はもちろん水彩紙。パルプ100%の英国製ラングトンだ。
最近購入したラングトンは、すぐ表面が風邪をひいてしまう気がして、使うのをやめてしまったが、かなり以前に購入したこの水彩紙はまったく問題がない。ロットにより差があるのか、製法が変わったせいなのかは不明だ。
この絵は少し前にこのブログでも触れたが、一度描き終えた後、上から再度着色をしている(「意外に知らない水彩画上達法とは?→」を参照)が、表面強度はコットン100%紙とまったく遜色なかった。
画面の線は、いつものようにサインペンだ。それほど複雑な構図でもないので下書きはしない。いきなりペンで描く。多少の失敗は気にしない。
よく見てもらえればわかると思うが、間違えた線が所々ある。皆さんも、ペンで描くなら、なるべく大胆に描く練習をするといい。実は案外気にならないものなのだ。
絵具はウィンザーニュートンの透明水彩絵具の24色の固形絵具、パレット付タイプだ。
この絵の大きさはSM(サムホール:227mm×158mm)。それほど大きなサイズではく、同じ色を大量に塗る必要はないので、本当は20色も要らない。赤、青、黄色を混色するだけで描けるはずだ。
ただやはり人によって好みの色が何色かあり、それがいつも安定して、同じ発色をしてくれるというのはありがたい。
私の場合はグリザイユ(「ペンと水彩で描く風景画の魅力とは→」を参照)に使うプルシャンブルーと、森を描く時のサップグリーン、草原を描く時にサップグリーンに混ぜるウインザーイエローは欠かせない。木々を描くときはセピアも必須だ。
どの水彩画家も自分の画面にオリジナルの色調を持っているが、その秘訣は案外どのメーカーのどの色を中心に据えるかという好みで決まっているのかもしれない。
ここが竹鶴酒造がある酒蔵の一角。妻入りの高い屋根の建物が特徴的だ。実は私がこの地をスケッチしたのは、TVで「マッサン」の放映が始まるかなり前。
当然「竹鶴」との関係など知る由もなし。ここをスケッチしたのは全くの偶然だが、今は近くに「竹鶴政孝とリタの銅像」もあるらしい。観光で行く方はそちらもどうぞ。
竹原の魅力とは?
竹原の魅力は「自然との一体感」だと先に書いた。それは背後に山があるからというだけではない。
実は重要伝統的建造物群保存地区も、道路はアスファルト舗装になっているところが多い。せっかく保存してきた雰囲気ある建物に対して、無粋なグレーのアスファルトが美しくないのだ。
しかしここ竹原は道の大部分に陶磁器質の床材が埋め込まれており、とても雰囲気が良い。
そして一番驚いたのが、お寺の境内に続く坂道だ。なんと土のままなのだ。だからよく見れば、陽の当たるところは乾燥してひび割れているし、年中影の部分は苔が生えている。道路脇の湿気のある部分にはぺんぺん草が生えている。
この土のある道がとても気に入り、この日3枚目のスケッチをした。
安芸の小京都での一日。あなたも是非スケッチを!
P.S.
私の描く水彩画について下記に基本的な記事をまとめている。参考にしてほしい。
[…] 竹原市竹原地区 […]
[…] 「ペンと水彩で描く風景 安芸の小京都→」 […]