ペンとパソコンでスケッチ!消えゆく「一丁倫敦」の風景

スケッチはペンで描くに限る

その理由は常々このブログで皆さんに「デッサン練習法」としてお勧めしている通りだ(「誰でもできるデッサン練習法とは→」を参照)。今回はちょっと思い出のある私のペンのスケッチについてお話ししよう。

 10年ほど前のその日!

 東京 に用事があって、新幹線に飛び乗った。打ち合わせは午後1時から。幸い打ち合わせ場所は東京駅のすぐ近く。昼食は新幹線の中で済ませたので、1時間ほど余裕があった。

 東京には、昔の民家の類はほとんど残っていないが、明治以来の「首都東京」、いわゆるの「一丁倫敦」の名残がある。東京駅や三菱一号館はその代表だが、冒頭の「東京銀行協会」もそのひとつだった。

 もちろん、大正5年に建てられた近代建築がこの一等地にあって、3階建てのまま放って置かれるはずがない。このペン画は1993年に建て替えられた建物をスケッチしたものだ。

一丁倫敦の風景をスケッチ!

 それでも、三角の塔と窓周りのクラシカルな装飾が特徴的な煉瓦建築だ。せっかくのチャンスだと、いつものクロッキー帳を取り出して、立ったままペンを走らせた。

 クロッキー帳は水彩紙のように表面に凹凸がない。だからペンの走りは滑らかで、スピーディー。しかもペンで描いた線はどうせ消せないと割り切ると、間違えることを恐れず、大胆な線が引けるものだ。画面の中央に何がくるかだけを決めていきなり描き始めるのが良い。

 先に触れたように(「誰でもできるデッサン練習法とは→」を参照)、人間の目は明確な対象物がある時、複数の線があると脳が正しい線を勝手に認識してくれるようだ。だから間違えた線をそれほど気にする必要はない。

 ただし私の経験で言うと、恐る恐る引いた線は、往々にして、交わるべき点で線が交わっていない。すると同じようなラフに描いたペン画でも、思い切って、線を引き、きちんと線が交わっている絵に比べて、だらしなく見えてしまうようだ。とにかく線は思い切って引くことが大事だ。

 その意味でこのスケッチは時間がなかったことが幸いしたのだろうか、自分では出来栄えに、それなりに満足していた。

パソコンで色をつける!

 だが、ペン画の最大の欠点は色が無いこと。つまり本来この建物の最大の特徴である「煉瓦造り」が表現できないのだ。

 かと言ってクロッキー帳には水彩絵具を塗ることができない。そこで考えたのがパソコンソフトで着彩すること。実は私にとってのパソコンによるお絵かき第一号はこの絵だったのだ。

パソコンによる作品の作り方はすでに「パソコンで描く水彩風イラスト初級編→」でコツを書いているが、この時はその初級のテクニックも知らず、とりあえず筆ツールで色を塗っただけと言うものだ。でも外観の雰囲気はそれなりに表現できたと思っている。

背景は高層ビル・・・

歴史の1ページを記録する!

 しかしこのスケッチで気になるのは建物の背景だ。何やら影のようなものを描いている。ペン画でも、パソコンによる着彩でも、その違和感は消えない。実は後ろにあるのは上の写真の通り、ぴったりと張り付いた「高層ビル」なのだ。

 この建物は建築の玄人にとってあまり評判のよろしくない、面の皮一枚を保存するいわゆる「ファサード保存」だった。実際に建物として機能している、東京駅や三菱一号館(「甦った? 首都東京の風景を描く→」を参照)に比べると、建築的価値は落ちると言うわけだ。

 そのせいだろうか。実はこの建物、2020年にオープンする大規模再開発に先立ち、2016年に解体されてしまった。その完成予想図を見る限り、この建物のファサードは影も形も無い。どうやら今回は「保存運動」は起きなかったようだ。

 考えてみれば、あの時、隙間の時間を利用してスケッチしなければ、私の記憶にこの建物は残らなかったに違いない。次に目にする時は、現代的デザインの超高層ビルに生まれ変わっているはずだから。

 私は言ってみれば、スピーディに移り変わる東京の歴史の一瞬をスケッチしたのだ。
ということは、もし将来「消えた東京のファサード」などと言う新聞記事の特集があれば、この私のスケッチは貴重な「歴史の一ページ」として掲載されるかもしれないということだ。

 なんだかわくわくしてこないだろうか。
 まもなく旅に出かけるあなたへのアドバイス。旅先ではペンと紙を忘れずに持ち歩こう!!

P.S.
 日本各地のお薦めスケッチ場所を「ここが描きたい日本の風景→」でリスト化している。さっそくペンと紙を持って出かけようとしている人は是非参考にしてほしい。
 私のペンによるスケッチはこのブログ「街角スケッチ→」で紹介している。興味ある方は覗いてほしい。



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1 個のコメント

  • […]  そんな「首都東京」に比べるといまひとつ、活気に劣る大阪だが、街づくりにおいては粋な試みをしている。 その一つが中之島界隈の都市整備だ。先にこのブログで書いたように東京が「一丁倫敦」の風景の要であった建物を次々と取り壊し(三菱一号館の記事はこちら→、東京銀行協会の記事はこちら→)生まれ変わっていったのに対し、大阪市はかつての「水都大阪」のイメージを前面に押し出す政策を取っている。 そのパンフレットの一文から察すると、どうやら「中之島をパリのシテ島とする」ようだ。言われてみれば、堂島川と土佐堀川にはさまれた中之島ゾーンはセーヌ川のシテ島とスケールもそれほど違わない。 建物も冒頭に掲げた有名な辰野金吾設計の中央公会堂(中之島公会堂)や辰野金吾の弟子野口孫市設計の府立中之島図書館、同じく辰野金吾の日本銀行大阪支店など、パリのノートルダム寺院ほどの歴史はないものの、名だたる名建築が並んでいる。 建物だけではない。バラ園で有名な手入れの行き届いた中之島公園。「大江橋」、「難波橋」など石造アーチの橋梁もシテ島に架かる橋とデザインにおいて遜色ない。 スケッチするなら中之島公会堂、中之島図書館は5月、新緑鮮やかなゴールデンウィークの頃がお勧めだ。 […]

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