江戸の風景、完全再現!? 今井町の町並みをスケッチ

 トップページにあるように、私の絵描きとしての活動の一つが古き良き日本の風景を描くことだ。私が訪れた日本の風景のお薦めリストは別の記事で書いている(詳細はこちら→)ので、ぜひ参考にして欲しい。
 その中でも最も私が感動した町の一つがこの奈良、今井町だ。

 初めて訪れたのは社会人になった年。私のプロフィールのページで書いたように、私の大学時代の専攻は建築史で、今井町は学生の頃から行ってみたいと思っていた町だった。幸いにも就職した会社が関西だったので、初めてのゴールデンウィークに早速この街を訪れたと言うわけだ。

 当時「重要伝統的建造物群保存地区」としてのこの町の価値を知っている人などほとんどいなかった。だから気候の良い連休であったにもかかわらず、人影は全くと言っていいほどなかった。だが観光客の数で町の素晴らしさは測れない。事実、私はこの町に一歩足を踏み入れた途端、一気に中世の世界に迷い込んだような、不思議な興奮を覚えたのだ。特に住民の生活と古い町並みが自然に守られていることに深い感動を覚えたのだった。

 あの日から30年以上たち、今回は純粋に絵を描くために来た。しかし、最近選定された「重要伝統的建造物群保存地区」はどれも保存状態が中途半端であることを知っている私は、「ずいぶん変わってしまったのだろうな」とかすかな危惧を抱いていた。
 ところが、再び町に一歩を踏み入れた瞬間、またあの時と同じ感動が蘇ったのだ。全く変わっていない。
 いや正確に言えば、あの時土産に買った地酒を探したが、その酒屋はすでに無かった。30年も経って人も、建物も同じであるはずはない。それでも目に映るイメージは当時の記憶と全く同じなのだ。
 この町には派手な「美容室」の看板が見えることもないし、家の駐車場のシャッターが見えることもない。もちろんエアコンの室外機が露出していることもない。
 改めてこの町の住民の「変わらない」ことに対する情熱に頭が下がる思いだ。

 そんなわけで、この今井町はどこを描いても絵になる。
 だがせっかくならこの町らしい特色を描くのがいいだろう。今井町の発祥は戦国時代だと言う。一向宗徒による城塞都市だ。だから通りは屈折し、わざと見通しを悪くし敵の侵入に備えたつくりになっている。
 実は、このことは絵描きにとっては都合が良い。何故なら通りに面した町並みと、突き当たりの町並み両方が画面に入るので構図上、変化が出て面白い絵になりやすいのだ。

 この「河合家」(重要文化財)は屋根上の煙出しがユニークで、建物単体としても面白い。そして通りの突き当たりはやはり三叉路で古い町並みが続いている。つまり町の向こうにあるはずの現実は見えない。
 だから画面の内は本当に中世のまま・・・隣のビルや背景の高速道路を苦労してカットする必要も無く、400年の時間を素直にスケッチすることができるのだ。

 今井町の中心は称念寺。寺内町らしく、お寺と民家の両方を入れてスケッチするのがいい。
 本堂は重要文化財に指定されているが、残念ながら、この時は改修中で見られなかった。それではと、隣の「大鼓楼」に的を絞ってみると、うまい具合に、またしても三叉路がある。
 そこから振り返って見ると、思ったとおり、小ぶりな屋根と花頭窓が、狭い路地の突き当たりに顔を出す。しかも背景は緑の森と青い空。早速ここもスケッチしたことは言うまでもないだろう。

 最後にもう一つ付け加えておく。町の外に建っているこの建物は旧今井町役場。今は観光案内場になっている。この記事を見て今井町をスケッチしてみたいと思った人は、まずここを訪れて案内図をもらい、係の人から説明を受けてから出かけるといい。

p.s.
私の描いた日本の風景の一部を加藤美稲作品集で公開している。そちらも参考にしてほしい。

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