東京でスケッチするとしたら?
建物のある風景、古い街並みを描くのが好きな人にとって、「東京はスケッチする場所が少ない!」と思っているのではないだろうか?
私自身、10年ほど東京で仕事をしていて、そう思っていた。事実、古い町並の証明である国の選定する「重要伝統的建造物群保存地区」は東京には一つもない。
江戸東京建物園とは
だがそんな、人におすすめの場所がある。それが「江戸東京建物園」だ。
場所は東京都小金井市。「都立小金井公園」内にある。東京駅からはJR中央線で武蔵小金井へ。そこから公園までバスでゆく。1時間と少々で行ける。
江戸から昭和初期までの建物を移築、保存したもので愛知県犬山市の「明治村」と似たようなテーマパークだ。(「歴史遺産をまとめてスケッチ!明治村」はこちら→)。
最も都内に位置するだけあって、敷地の広さ自体は明治村の1/10以下である。
ただ、私が感心したのは「建物園」と言いつつ、「人」が住む場を演出していることだ。明治村はどちらかというと「博物館」であり建物は展示物である。
この「建物園」では建物は人が住む器であることを意識しているようだ。移築されている建物もいわゆる「名建築」というよりも「懐かしい建物」が多いようだ。いくつか紹介しよう。
まずは藁葺き屋根の農村(吉野家)。冒頭の写真の建物だ。周囲は緑に囲まれた林の中の一軒家。いい雰囲気だ。
近づいて見ると、屋根の煙出しから囲炉裏(いろり)の煙が出ているようだ。薄暗い座敷では野良着を着た老人が何やら手作業をしている。農村の生活が演出されていて、まるで歴史小説の1シーンを見るようだ。
もちろん観光客が話しかければ、建物の由来を説明してくれるに違いない。
こちらは昭和初期の銭湯「子宝湯」だ。私は子供の頃まさにこんな銭湯に通っていた。
さすがに、営業はしていなかったが、入口の番台も上が空いた男湯、女湯の間仕切りも当時のままだ。ただこの銭湯は私が行っていた銭湯よりもかなり格調が高い。
定番の「富士山」はもちろんだが、平家物語の那須与一や弁慶と牛若丸の絵もある。室内の装飾的な造作もなかなか凝っている。
映画「千と千尋」に出てくる「湯屋」のモデルになったらしいということで、この建物園での人気は随一だという。
最後に私の一番のおすすめを教えよう。先程の「子宝湯湯のすぐ近く、路地を曲がるとこの風景が現れる。
何ということはない、木造の古びた建物が並んでいる。感心したのは路地の風景を作り込んでいること。
まず一番リアルな演出は地面を土のままとしたこと。そして家の前の地面には各家庭が思い思いに鉢植えで季節感を演出する。
さらに窓の手すりには布団が干してあるという懲りようだ。
これだけでも、昭和の町の記憶を呼び起こしてくれるに十分なのに、しばらく懐かしさに浸っていると、何と麦わら帽子を被り、首に手拭いを巻いたおじさんが路地に水撒きを始めた。考えて見れば、こんな暑い日に、土埃の舞う道に面した家の住民にとっては当たり前の仕事だ。
これが「向こう三軒両隣」の風景なのだと納得。早速スケッチブックを広げペンを走らせたことは言うまでもないだろう。
P.S.
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