決め手はファーストウォッシュ!?水彩で描く津和野の秋

①ファーストウォッシュ

秋の風景を水彩で描く

 今回は私がスケッチ旅で訪れた「秋の津和野」を描くプロセスを紹介しよう。
今日はどちらかというと、水彩画の描き方「中級編」だ。

 もしタイトルにある「ファーストウォッシュ」がわからないという初心者の方は、水彩画入門 色塗りの基礎技法を覚えよう!」、「水彩画の基礎技法!効果的な「下塗り」とは?をまず読むことをお薦めする。

ファーストウォッシュのポイント

 いきなり水彩を塗ってはいけない。まず自分が描きたいこの水彩画のイメージとコンセプトを考えよう。

 私が思い描いたキーワードは「秋」と「古い町並み」。
そしてこの言葉からさらに「青い空」「さわやかな朝の光」「褐色の木肌」「紅葉」というイメージを思い浮かべる。

 次にそれらを表現する具体的な水彩画の色や塗り方等ふさわしいテクニックを考える。
すると今回目指す水彩画はファーストウォッシュが非常に大切であることがわかる。①図を見ながら具体的に説明しよう。

空を塗る

 水彩で如何に美しいグラデーションを表現できるかが最大のポイントである。
今回はホルベイン「コンポーズブルー」をメインの色とした。

 秋空は夏空よりも青が濃い。しかし日本の秋晴れの青はどんなに鮮やかだとしてもはるかに湿気の少ないヨーロッパの夏空の「コバルトブルー」ほど青くはない。
 「コンポーズブルー」はそんな「日本の秋の空」にふさわしい色だと思っている。

 もちろん、ただ一色の青で塗れるほど日本の空は単純ではない。特に朝の地平線際はまだ黄色っぽい光が残っている。そのグラデーションを表現するのが水彩画の醍醐味である。

 今回は黄色にウィンザーニュートンの「レモンイエローニッケルチタネート」を使用した。空の青となじむ、鮮やかすぎないいい色だと思っている。

 この2色を先に水を塗った水彩紙に滲ませながら塗る。実はこの「滲ませながら」が案外むつかしい。中途半端な乾燥具合で筆を入れると汚いムラが残ってしまう。
「水彩画」独特の注意事項と言えるだろう。

背後の山を塗る

 「秋」を連想させる「紅葉」の色が重要だ。
今回はシュミンケホラダムの「コバルトターコイズ」「トランスペアレントオレンジ」と若干の緑色を垂らしている。
 ファーストウォッシュはあくまで「イメージ色」。だから山の濃い「緑色」を気にする必要はない。

街並みの木肌を塗る

 水彩画の初心者が犯しやすい間違いは、いきなり建物の窓、扉と板壁を塗り分けてしまうことだ。最初からディテールにこだわると、建物の一体感、面の差による明暗、彩度の調子などが狂ってしまう。最初は全体のイメージ色を塗るだけでよい。

 今回使用した茶色はウィンザーニュートンの「ローシェンナ」に「バーントシェンナ」を混ぜている。
 最後に庇下の暗い部分にうすい青色(ウィンザーブルー)と紫色(ウィンザーバイオレット)を垂らしある程度の全体の明暗バランスを確認しておく。

白を残す

 水彩画では「白」は水彩紙の「白」を残すことにより表現する。従ってこのファーストウォッシュの時にあらかじめ塗り残す部分を決めておく。
 今回は朝日が照らす道と屋根を塗り残している。朝の光による建物の長い影の部分と明るい部分を区別して塗り分けておくことが大切である。

セカンドウォッシュで素材感を!

②セカンドウォッシュ

 ファーストウォッシュとは言葉を変えると画面の明るい部分のイメージ色を塗ることである。
 それに対してセカンドウォッシュはより暗い部分、より彩度の高い部分を塗り、画面に立体感と距離感をあたえることである。

 各要素の制作プロセスは以下のとおりである。②図を参考にしてほしい。

  • 山の肌合いを塗る
    樹々の表現をよりリアルに塗ろう。今回はトランスペアレントオレンジとサップグリーンを使用し、乾かないうちに塩を振って表現に変化をつけている。
  • 建物のディテールを塗る
    軒、建具、外壁等を塗る。先の2色の他、アクセントにウィンザーニュートンの「インディアンレッド」を使用している。
  • 影を塗る
    屋根下、庇下の影、道に落ちる建物のシャープな影を描く。使用色はウィンザーブルーグリーンシェードとウィンザーバイオレットの混色である。

仕上

③仕上げ

 最後は全体のバランスをチェックし、彩度と明度が足りない部分に筆を入れる。
空にはもう一度濃いめの青を入れる。使用色はファーストウォッシュで使用した色に加え、青の濃い部分にはウィンザーブルーグリーンシェードを加えている。

 窓、屋根、庇周りの濃い陰影を水分を減らした黒に近いグレーで塗り、画面を引き締める。

 さてもう一度仕上がった水彩画を眺めてみよう。

  • 明るい黄色からさわやかな青色のグラデーションの「青い空」
  • 青みを帯びた建物の陰影による「さわやかな朝の光」
  • 茶系のグラデーションによる「褐色の木肌」
  • 緑とオレンジのグラデーションによる「紅葉」

 これらはいずれもファーストウォッシュで使った色とテクニックが生きていることがお分かりになるだろう。
 実は私は「ファーストウォッシュ」が絵の出来の8割を決めるとさえ思っている。
ファーストウォッシュを大切にしてほしい!

 次回も水彩画の好きな人に役立つ記事を投稿する予定である。乞うご期待!

P.S.
このブログでの参考記事をあげておく。興味のある方は参照してほしい。

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