創作を刺激する絵描きのための読書法

 絵描きに限らず、すべてのアーチストには創作のための新たなインプットが必要だとトップページに書いた。このブログの「ためになる美術講座」ではいくつかの美術館、博物館での展示から受けた刺激を私自身のインプットとした実例を記事にしている。

 だが、実をいうとそんなにしょっちゅう美術館巡りをするわけにはいかない。それはこの「美緑空間」を読んでくれている、水彩画を愛する皆さんも同様だろう。
ならば、どこから、いつ刺激を獲るか?

 私の場合は主に移動時間を利用した読書だ。今回は読書から効果的に創作のインプットを得るための私なりの経験を記そうと思う。読書があまり好きでない人にもひょっとすると役に立つことがあるかもしれない。

目次

1.書斎を見直そう!

2.図書館利用法と読書法

3.どんな本を読むべきか?
3.1水彩画あるいは絵画全般に関する本
3.2旅に関する本
3.3歴史に関する本
3.4科学に関する本
3.5経済に関する本

4.まとめ

■書斎を見直そう!

 私は読書自体昔から好きだった。若い頃は「本こそ私の財産」と、少ない小遣いの中から一月あたり1万円以上を本代に充てていた。私の部屋はまさに本だけのためにあったと言って良い。ちなみに買い集めたジャンルはSF、ミステリー、歴史系の娯楽小説と芸術、科学、歴史、建築の専門書が多かった。引越しの時の本を入れた段ボールの多さに運送屋が眼をむいていたのを覚えている。

 だが絵描きとしての生き方に興味を覚えてからは、書斎はアトリエになった。当然必要な本も変わる。
 ちょうどその頃から、市の図書館のIT化が始まり、欲しい本をインターネットで注文すれば自宅近くの図書館まで届けてくれる。準備ができると、メールをくれるので、都合の良い時間に受け取りにゆけば良い。

 もう「本を財産にする」必要はなく、簡単に「知識を財産にする」環境が整ったことを知った。
 まずは「財産」の整理だ。わかったことは実は「本」自体にはそれほど価値がなかったということだ。まず重い「広辞苑」などの辞書、事典類。ご存知のように今はインターネットで検索すれば単純な「意味」を調べるのにコストはかからない。不要なものを引き取り、買ってくれる「買取王子」で調べると辞書の類は最初から引き取りお断りと書いてある。

 建築設計者として後生大事に保存していたハードカバーの有名建築家の作品写真集なども査定はゼロに近い。こちらも検索するだけならインターネットで可能だからだ。

 さらに、科学技術関連の専門書もだめだ。新しい理論が発見され、実用化されると昔の本は紙屑同然だ。小説なども初版本などよほどの特徴がない限り値はつかない。

 というわけで、財産整理、書斎の断捨離の結果、残っているのは芸術(建築を含む)と歴史、基礎科学関連だけ、つまり最新情報に左右されない内容の本だけとなった。開いた本棚のスペースには画材、私の作品などアトリエとしての必需品が並ぶようになった。

■図書館利用法と読書法

 さて、「知識を財産」にする準備は整った。私の図書館利用法は以下の通りだ。まず日常の生活の中で読もうと思った本が現れたら、すぐに予約をする。私は常に持ち歩いているiPadを使うが、スマホでも可能だ。

 本が届いたら、土日にまとめて取りに行く。あとは朝夕の移動時間に読むが、気になった文章、データはiPhoneのメモ帳に電車の中で立ったまま、その場で記入することにしている。

 このブログの記事にいくつか読んだ本の内容を紹介したりしているが、そのソースはこのメモがほとんどだ。

■どんな本を読むべきか?

私はいわゆる「乱読」はしない。貴重な絵描きとしての時間を無駄にしたくないからだ。当然ジャンルは人により違うと思うが、私が最近意図的に読むようにしている本は以下の通りだ。

■水彩画あるいは絵画全般に関する本。
作家の作品集、芸術論、作家論、技術論、絵具や画材の科学的な解説書、さらに遡れば素材の科学書も読む。このブログの「絵画上達法」にあげている参考図書もすべて図書館で借りた本だ。特に作品集などは通常非常に高価なので図書館で借りるに限る。私的利用ならば、写真を撮っておけばいい。

■旅に関する本
言わずと知れた、毎回のスケッチ旅行(「スケッチの旅海外編」「スケッチの旅日本編」を参照)に必要な本だ。「地球の歩き方」などは新しいものでないと、最適な交通手段を間違えることも多い。かと言って大半が同じ内容なのに、2~3年おきに新しいものを買うのも無駄である。図書館は本当にありがたい。

■歴史に関する本

 私が歴史書や時代小説をよく読むのは子供の頃から歴史が好きだったからだ。
だがその知識は実は国内外の歴史的町並みを描く時とても役立っている。

 例えば教会のある風景を描く時はゴシック建築とロマネスク建築の違いを知っているととても役に立つし(「ヨーロッパ風景画の基礎知識 ゴシックとロマネスクの違いを知っている?→」を参照)、お寺のある風景を描く時は「4つの様式」を知っているとやはり役に立つ(「お寺を描こう!寺院建築4つの様式を知っている?→」を参照)。

 また例えば江戸時代の町並みの風景を描く時は「見越しの松」の知識があるとさらに興味は増す。(「水郷のある江戸の風景をスケッチ! 近江八幡→」を参照)

 風景画に表現される人の生活や、風俗、文化を知るには歴史を学ぶのが一番早い。世界史、日本史の通史を学ぶのももちろん役に立つが、歴史小説、時代小説でも構わない。

 ただ闇雲に読むのでなく、以下のような読書法をお勧めする。過去から近代まで、描かれる時代ごとに代表的な作品を調べリストアップし、それを系統的に読むようにすると、理解が深くなる。

 確かな歴史的背景と人の生き様をリアルに描く作家の小説を選ぶとさらに良い。私の場合は吉村昭、池波正太郎、永井路子、陳舜臣、北方謙三、浅田次郎、葉室麟などの作品を読むようにしている。

■科学に関する本
最新の科学知識を得るためだ。ジャンルはなるべく幅広くするように心がけている。

 物理や科学、生物学の最新書は私たちの生活の知らないところで結びついている。例えば青色絵具はなぜ美しいか、画家がこだわるのか(詳細はこちら→)、透明水彩絵具がなぜ美しいか(詳細はこちら→)、水彩紙を使うとなぜ美しい滲みの効果が得られるか(詳細はこちら→)などは、最新科学の知識がないと理解できない。

 IT系の本も必要だ。特にネットワーク、画像、動画の取り扱いについては今後は作家自身である程度のことができるようにならねばならないと思っている。

■経済に関する本

 あなたは今、どれだけの財産、借金があって、何歳まで生きる資金力があるか答えられるだろうか?

 多分アーチストという人種が最も苦手な方面の知識かも知れない。だがそれを知っているのと知らないのでは、絵描きとしての活動内容が変わる。参考図書を記した記事を書いているので、興味ある人は読んでほしい(「絵描きのための生涯資金計画→」を参照)。

■まとめ

 絵描きとしてのインスピレーションを磨く、とても有効な手段は読書だ。でも単に書斎に積んだ本はなんの役にも立たない。少しでもいい本をお金をかけずに集め、効果的に読む。私の読書法が最善かどうかはわからないが、自分なりの「読書法」を見つけ実践することはあなたの絵描き生活にきっと役立つと思う。是非、実践を!

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