デッサン上達の近道!実物より写真を見よ!?

インターネットの書き込みに、こんな質問を見た。

「写真を見てデッサンしようと思います。グリッドはどのように引いて、どうやって消すといいのでしょうか?」

皆さんならこの質問にどう答えるだろうか?今回は「写真」「デッサン」「グリッド」について考えてみたい。

目次

1.写真と絵の正しい関係とは

2.「写真」を見て「デッサン」することのデメリット

3.「写真」を見て「デッサン」することのメリット

4.写真にグリッドを引くことのデメリット

5.写真にグリッドを引くことのメリット

6.まとめ

■「写真」と「絵」の正しい関係とは

 とりあえず「絵画」を次の条件を全て満足するものと定義しよう。

  1. 額に入れて飾る(見せることが前提)。
  2. 手描きである。
  3. 人に感銘を与える。
  4. 作家のオリジナリティがある。

 つまりカメラで撮影したそのままの作品は例え感銘度において十分芸術的であったとしても、手描きでないので「絵画」ではない。

 また手描きであっても、感銘も受けないし、机の上に置きっぱなしで、誰も見ない紙も「絵画」とは呼ばない。

■「写真」を見て「デッサン」することのデメリット

 先の定義に従えば、まずその写真が他人の撮影したものである場合、④の条件に合わないので、どんなに巧みに書いても作品にはなりにくい。

 さらに③の人に感銘を与えるかと言う意味では「これ見たことがある」と言われた瞬間に「感銘」はないだろう。つまり「作品作り」にはそもそも向いた行為ではない。

 では「練習」ならばどうか。残念だが、その効果もあまり望めそうもない。何故なら、写真は元々平面なのでグリッドを切って写すのであればそれはデッサンとは言わない。模写、転写である。空間を平面に映す行為、つまりデッサン力の訓練にはならない。

本当のデッサン力がついたわけではないので、実際のモチーフ、モデルを前にするといつまで経っても描けない状態が続くことになる。

 だから、冒頭の質問に対する答えは「やめたほうがいい」だ。

 モデルを雇うお金がないと言うなら、カルチャーセンターに行けば、一人でモデルを雇うより安く済む。それももったいなければ、自分の顔を描こう。

 鏡に向かって正面から自分の顔を描くのが、実は正しい顔の比率を勉強するのに一番良いのだから。

■「写真」を見て「デッサン」することのメリット

 本来写真は平面なので「デッサン」にはならないのだが、すでにある程度デッサン力のある人が、自分で撮った写真を組み合わせて、オリジナルな画面を構成する場合には、写真は最適である。

 特に最近のミラーレス一眼カメラは携帯性も解像度も優れている。上記の目的には最適のツールである。

 カメラを使うメリットのうち、違う場所と時間のシーンを組み合わせてできるその人だけのオリジナリティはとても貴重だと思う。

■写真にグリッドを引くことのデメリット

 グリッドがないと何も描けない人がいる。極端な人は、グリッド付きのスクリーンを通してモデルを見て、グリッド付きの水彩紙にそれを写そうとする。

 必然的に見ているのは常に何番目かのグリッドだけ。この方法の最大の問題は全体を見ずに部分だけを見る癖がついてしまうことだ。だからやはりデッサン力はつかない。

■写真にグリッドを引くことのメリット

 以上のように写真にグリッドを引くことは転写には有利だが、本人のためには余りメリットはない。

 だが逆に言うと、転写が目的であればとても便利なツールだ。例えば、自分が撮影した複数の写真の組み合わせによるオリジナルな構図の写真があるとする。

 これを大きな作品に転写し、改めて色を塗る。この時はどの作家もグリッドを使う。とても便利なのだが、唯一悩みがある。

 最初の質問に戻ると、「どうやって消すといいのでしょうか?」だ。

 グリッドを薄く、硬い芯の鉛筆で引くと、最後は絵の線でグリッドが目立たなくなるが、描いている時に線が見にくい。そして筆圧が強過ぎると、線を練りゴムで消しても跡が残ってしまうことがある。

 逆に濃く柔らかい芯でグリッドを引くと、水彩紙が芯で汚れることがある。またグリッドは最後まで目立つので完全に消そうとすると、絵の線まで消してしまう。

 実はこの悩みを解決するために発見した道具がある。「水に濡れると消える」ペンだ。元々は裁縫などに使うものだそうだが、かなりシャープな水色の線が引け、水彩絵の具を塗っているうちに完全に消えてくれる。とても便利だ。

 私は画材店で発見したが、Amazonでも売っている。是非試して欲しい。

■まとめ

 はっきり言うと昔は「写真にグリッドを引いて、写すなんて絵になるの?」と思っていた。だが最近は写真もデジタル化され、様々な加工、処理ができる。

 大きな作品を描くにはグリッド転写はとても役に立つ。いや作家によっては、合成した加工写真をキャンバスにプロジェクターで投影しその上に絵具を塗ると言う。

 広めのアトリエがあれば、グリッドをわざわざ引く必要さえもないと言うわけだ。最新の技術はどんどん使ったらいいというのが、私の意見である。

 ただし2次元の転写ではやはりデッサン力は鍛えられないと思う。デッサンを練習したい時は、自画像で練習するのが一番手っ取り早いと改めてアドバイスしておこう。

P.S.
今回は写真、デッサン、練習法について書いた。このブログでは以下のような関連する記事を書いている。興味ある人は読んで欲しい。

■ 関連カテゴリは「絵画上達法→」を参照。

■私の作画例は「加藤美稲水彩画作品集→」参照。

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