京都の秋…大原を描く

京都を描くなら…

 風景画が好きな人にとって、京都は最も描きがいのある町だろう。世界遺産の寺院がいくつもある上、交通の便が良い。新幹線はもちろんのこと、市内は地下鉄、阪急、京阪、JR、その他私鉄が通っており、どこの寺院でもアクセスは比較的容易だからだ。

 だから京都をスケッチし始めると、三十三間堂、清水寺、知恩院、南禅寺など市内の寺だけですぐにスケッチブックはいっぱいになるに違いない。

大原を描こう!

 だがそうしているうちに、ふと気付く。「京都大原三千院…」という有名な歌に出てくる大原をまだ描いていない…。

 大原の寺院群では三千院や寂光院が有名だ。その歴史は古く市内の有名な寺院に負けてはいない。ガイドブックの写真を見る限り雰囲気も良い。いい絵が描けそうだ。

アクセスは?

 だが、地図を見ると緯度的には琵琶湖沿いの堅田とほぼ同じ。つまり相当北にある。しかもアクセスはバスしかない。

 私の自宅神戸からはJR神戸線の快速で京都駅へゆき、駅前からバスで一時間揺られてやっと大原のバスターミナルに着く。そこから三千院までは細い道を歩くことになる。片道約二時間半の「旅」である。

三千院をスケッチする

 まずは有名な三千院を目指す。途中に民家風の土産物店や料理店があるが、目的はあくまでも絵を描くこと。ここまで来るのにすでにたっぷりと時間を使っているので、そんなところで時間をロスするわけにはいかない。

 三千院の正門を潜り、本堂のある境内へ入る。観光ポスターでは本堂を正面から撮った写真が有名だが、実は境内の大木が邪魔をして建物の全景は描けない。もちろんそれでも絵は描ける。だが手前の大木が構図的には今一つ。

 それならばと、脇の参道に移動、斜めから見る。今度は本堂の全景こそ見えるが、風景画の主役とするには建築的に少し役不足だ。

 境内の大木がそびえる空間そのものはご覧のようにとても魅力的だ。だが生活空間が感じられない自然の美は私の描くテーマではない。

 なかなか気にいる構図が見つからない。だが二時間半もかけてたどり着いたのに、「成果品なし」では済まされるはずもない。歩き回った末、結局私が見つけた境内で一番魅力的な光景は小さな門のある風景だった。

 主役は梢枝の間からから差込む陽の光を受けて輝く空気と、黄緑色に反射する苔の絨毯だ。門だけが人の気配を微かに伝えている。ここだ!

 こうしてとりあえず一枚、スケッチを完成させ寺を後にする。何とかもう一枚描けないかと欲を出し今度は寺の外を観察する。

 候補は「三千院」の表札が架かる正門だ。ガイドブックによく出てくるお決まりのアングルだが、階段ばかりが目立つので、やはり絵になりにくいと諦める。

 それにくらべると敷地の西南角にある通用門の方が絵になりそうだ。やはり階段が目立つがこちらは苔に覆われていてとても美しい。何より門の朱色が視界を埋め尽くす緑の中で引き立っている。

これぞ大原の秋!

 この日は11月の初旬。大原を訪れるおすすめの季節は一番が若葉の頃、5月の初旬、その次が紅葉の11月末だという。わざとずらしたのは観光客が多いと、絵が描けないと思ったからだ。

 だが帰路の途中、紅葉に負けず劣らずの「秋の風景」を見つけた。ご覧のような一面の秋桜(コスモス)畑だ。

 紅葉のように赤くない。桜のように淡くない。でも秋の風景にふさわしい涼しげなピンク色だ。そして畑の向こうには民家の屋根が顔を出す。いい構図だ。

 F6号のスケッチブックに描けばさぞ美しい水彩画になるに違いないと思ったものの、すでに陽は落ちかけている。だがこのまま諦めるにはもったいないとF0号のスケッチブックを取り出して、手早くこの秋の風景を収めた。

 京都の秋、大原を描く…この日の目標達成だ。

P.S.
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