イタリアをスケッチする フィレンツェ編

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フィレンツェの町並み 画材店休業!

ローマでスケッチ用のペンを落としてしまった私。ペンが無ければ絵は描けない。その日の夜遅くフィレンツェのホテルに到着すると、インターネットで早速市内の「画材店」を検索した。さすがに芸術の都フィレンツェ。数件の画材店がヒットした。ちょっと安心し、その日は眠りにつくことに。

翌朝食事を済ませると、まっすぐに画材店へ。けれど運命の女神は私を見放しているようだ。

訪ねた画材店は全て臨時休業だった。

私の困惑をよそにドゥオモの広場では、地元の画家たちが観光客相手の似顔絵を描いている。突然ひらめいた。発見!彼が手にしているのは、きっとプロ用のペンに違いない。
英語が苦手な私だが、この際そんなことは言っていられない。知っている単語を並べ会話を試みる。「あなたが使っているのと同じペンが欲しいのだけど、どこで買ったか教えてくれませんか?」
「今の時期、画材店はみんな夏季休暇中だよ」
「でも、一軒だけやっている店があるよ」
「地図は持っているか?わかりにくいので、注意して。今がここ。次の道を左に入って・・・ここを右。この角の店だよ。」

ありがとう!


このやりとりはなんとすべて英語。人間必死になると、会話も出来るようになるらしい。いや僕の実力に合わせて、ゆっくりと話してくれた優しいイタリア人のせいか。芸術家は気難しいと言われるが、なんの、このフィレンツェの画家の親切は一生忘れまい。

一日半ぶりにスケッチ。ドゥオモの鐘楼。

ドゥオモの鐘楼

ペンを得た喜びに満ちている・・・と言いたいところだが実はこの時かなり苦戦した。
いつも私が使っているペンは1本300円の日本製。指先の強弱とスピードにあわせて、太くなったり、かすれたりと、結構自由自在に表現できる。
ところがイタリアの画材店では日本製のペンは一本1000円もするのだ。それなのに日本では高級ブランド品のステッドラーのペンは一本300円で買える。
当然ステッドラーのペンを買ったのだがこれが実に使いにくい。強く描いても線は太くなってくれず、弱く描くと、インクが出てこない。どうやら線の強弱は筆圧でなくペンのスピードで調整する必要があるようだ。この後ペンの癖をつかむのに四苦八苦しながらのスケッチとなった。

次のターゲットは「クーポラ」。

クーポラはブルネレスキが設計した ルネサンスの「花の都フィレンツェ」のシンボルそのものだ。
ただこの町の街路はとても狭い。クーポラの全体像を描こうとすると、ヴェッキオ橋を渡ってピッティ宮へ行き、さらに「裏庭」というにはあまりに広大なボーボリ公園まで行かねばならない。見晴らしのよさそうな場所を求めて歩くこと1時間。すばらしい場所を見つけた。左からドゥオモの鐘楼、クーポラの全景はもちろん、ヴェッキオ宮とサンタ・クローチェ教会の塔も見える。いわばフィレンツェの役者が勢ぞろいといったところか。

クーポラ全景

舞台の背景は広大な青い空。ゆっくりと流れる白い雲は時を忘れさせる小道具だ。
何百年も変わらぬ光景。
夢中でペンを走らせていた私と同じ場所で
同じ光景を描いていたルネサンスの画家がきっといたに違いない。

ベッキオ宮殿

真夏のフィレンツェ。空が青い。

歩いていて感じるのはその空の青さだ。日本の夏のようにやや白く滲んだ水色の空ではない。
コバルトブルーの絵の具を大きなバケツから空一面にぶちまけたように「青い」のだ。
灼熱の太陽は褐色のはずのヴェッキオ宮の外壁を白く照らし、青空は深く、濃く、鮮やかに輝く。Cafeのテントの隙間から偶然、見上げたこの構図。まさにフィレンツェの夏だ。

サンタ・クローチェ教会

フィレンツェは路地から見る教会が美しい。

サンタ・クローチェ教会の鐘楼はこの道幅にあわせて設計したのかと思うくらい、細長いプロポーション。
しかも石と鉄、レンガと瓦、木の建具が絶妙の色彩で町に溶け込んでいる。フォレンツェの魅力の秘密はそんな歴史のパレットに詰まっているのだ。

アルノ川にかかる一番美しい橋は?

有名な橋はもちろん「ポンテ・ヴェッキオ」。 しかし実は土産物の店が好き勝手に張り付いて、観光客が群がる姿は美しいとは言いがたい。橋としての気品はお隣の「サンタ・トリニタ橋」のほうが上だ。
その事実を証明してやろうとスケッチブックを取り出したのだがすでに夕刻。強烈な夕陽が正面から、水平に僕の目を射抜く。帽子などまったく役に立たず、あまりのまぶしさにこの日は退散。

サンタ・トリニタ橋

そして翌日の早朝。朝陽のサンタ・トリニタ橋をスケッチすることにした。すがすがしい朝陽が空の青色を奪って、建物をオレンジ色に染め、水面を金色に照らしている。なんて美しい!この光景を目に焼付け、昼一番の列車でベニスへ向かう。

フィレンツェからユーロスターに乗りヴェネツィアへ。

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